2013年8月6日 商工文教委員会
県立高校の編制に関する質疑大要


・被災生徒の状況について

【斉藤委員】
 震災復興がまだ2年5ヶ月近くで、被災者の状況に大きな変化が起きない、被災地がまだ区画整理や高台移転などで姿が見えないという状況の中で、県教委が高校再編に現段階で着手する条件がないというのは全くその通りだと思う。
 仮設住宅から通学している生徒はどのぐらいいるのか。被災した家庭の生徒はどのぐらいか。

【高校教育課長】
 7月末現在で、今年度入学生においては、243名10.7%が仮設住宅から通っており、県等による経済支援等に該当している生徒は548名24.2%、2年生は636名27.3%で仮設住宅から通っている生徒は273名11.7%、3年生では749名31.8%で仮設住宅から通っている生徒は273名11.6%となっている。

【斉藤委員】
 本当に被災地の学校・生徒の状況は大変なもので、まだ安定していない状況だと思う。復興の進展を見ながら、地域の復興の状況を見ながら高校再編は考えるべきで、新たな不安を今の状況で与えるべきではない。


・大船渡高校の学級減について

【斉藤委員】
 今回2つの高校の学級減、福岡高校浄法寺校は募集停止と。今年度の入学で、1クラス以上定員を割った学校はどのぐらいあるか。

【高校改革特命課長】
 1学級定員以上定員割れした学校は、岩谷堂56人不足、千厩高校普通科54人不足、大船渡47人不足、大槌46人不足、伊保内47人不足となる。

【斉藤委員】
 5つの高校が1クラス以上の不足になったと。そして結果的には、大船渡と千厩を来年度学級減にすると。ダブルスタンダードではないのか。特に岩谷堂高校は56人で一番多い。なぜここに手をつけないのか。総合学科高校だからか。そして大船渡高校については、被災地の高校で1年前は30人の不足である。今回は47人。たった1クラス+2である。震災の中で、不安定な中で47人の減になったとは思うが、こうした中でなぜ大船渡高校が矢面に立って学級減になるのか。7月に同窓会の総会で学校の状況を聞いたが、本当に大変な困難な中で、課外授業を含めて頑張って、大学進学では大変積極的な成果を上げたと校長先生からお聞きし、さまざまな文化・スポーツ活動でも頑張っていると。そういう意味でいくと、被災地の学校というのは、高田高校の場合には、バス8台で旧大船渡農業高校の校舎まで送り迎えしている。実は、震災前は、大船渡高校へ高田から通う生徒も結構いた。震災を通じて、地元高校を守ろうという、これは当然のことだと思うが、そういう思いで、大変困難を抱えているが、高田高校の希望者は深刻な被害を受けたわりには減らない。大変立派なことだと思うが、ただそういう被災地の状況の中で、40人を超えたから学級減だというのは、2年3年続けて割ったというのなら分かるが、少し配慮が足りないのではないか。
 岩谷堂高校はなぜ学級減の対象にならなかったのか。大槌高校も46人不足しているがやらなかった。当然である。47人減の大船渡は減らすと。ここはまったく考え方がおかしいのではないか。

【高校改革特命課長】
 岩谷堂高校については、胆江ブロック全体の中学校の卒業予定者数が、来年度今年の3月と比べて98人増えるという状況になる。そういったことを勘案したときに、胆江ブロックの学級減は難しいという判断である。
 大船渡高校については、たしかに前年は30人、今回は47人で、以前から1学級程度の定員が割れていることについては学級減を指摘している状況もあった。いずれ入試の段階で1学級以上の定員が割れているところについては検討しなければならないという状況がある。さらに大船渡高校は、我々の試算で、来年240人の定員にしたときに、200人を超えるというのはちょっと難しい状況にあると考えた。来年も空いてしまうという状況は、そのままというのはやはり難しいと。
 大槌についても同程度の欠員が生じているが、釜石・遠野ブロックの中学校卒業者数の見込みだが、来年3月は53人増える。特に大槌町だけで32人増えるという状況があるので、ここはやはりこのまま定員を維持して様子を見たいという状況である。こちらの試算でも1学級以上割れないと見込んでいるのでそのままとした。

【斉藤委員】
 大船渡市は来年度どのぐらい増えるのか、減るのか。

【高校改革特命課長】
 大船渡市は、今年の3月と比較し25人増える。陸前高田市が42人減り、住田も22人増えるということで、トータルで1人増えることになる。大船渡は25人増えるが、学校が2つあるという状況もあり、大船渡高校に高田市内からの入学者が増えている状況もある。ブロック全体で考えさせていただいた。

【斉藤委員】
 大船渡市だけ見ると来年の入学生が25人増える。大船渡高校に高田市内からの入学者が増えているというが、3年ぐらいの経過を示していただきたい。

【高校改革特命課長】
 大船渡高校への高田市内からの入学者の状況は、23年度は37人、24年度は33人、25年度は43人となっている。

【斉藤委員】
 震災翌年24年度は減って今年度は盛り返したので単純ではないと思う。被災地での流動的な状況の中で、47人の不足ということですぐに手を付けるというのはいかがなものか。
 例えば岩谷堂高校は56人も不足している。学科改編したらいいのではないか。数合わせではないと思う。そういう県教委の考え方というのが、震災の中で最小限にするという気持ちは伝わるが、それが貫かれていないと思う。ぜひ再考していただきたい。


・浄法寺校の問題について

【斉藤委員】
 先ほど去年の11月、今年の4月、7月と意見交換・説明会をやったと。最後まで「学校を残してほしい」という声が強かったと。私も聞いたが、「高校までは地元の学校に通わせたい」という父母が多い。
 たしかに小規模校だが、小規模校でもそれを生かした素晴らしい教育実践が行われているというのも特徴である。生徒全体で浄法寺太鼓に取り組んだり、地元の祭りに参加したり、文化祭は街に下りて住民の中に入って開催するなど、そういう中でやはり高校を残したいという思いが強い。小規模校というのは、単なる数だけで見てはいけないと思う。田野畑のときにも喧々諤々ここで議論したが、小規模校は小規模校なりに一人一人の生徒たちが力を発揮する場があり、地元と密着してさまざまな諸活動に参加できるというメリットがある。浄法寺校でどういう教育実践が行われているか。

【高校改革特命課長】
 浄法寺校のモットーは、小さくてもきらりと光る生徒ということをモットーに教育を行っている。
 県教委では、地域と共同して岩手の特色ある産業・文化を支える人材を育成するということで、生徒個々の多様な進路実現に向けた取り組みについて支援する目的ということで、いわて未来創造ふるさと事業を実施している。
 浄法寺校においては、その事業を活用し、生徒が地元の産業である漆塗りを体験するなどの地域交流等を行っていると聞いている。

【斉藤委員】
 ホームページでも調べてみたが、福岡高校浄法寺校第2回学校評議員会議事録が載っている。学校長や教頭の教育活動の報告のあと、評議員の方がこういう発言をしている。「初めて浄法寺校の授業を見させていただいて、生徒一人一人に応じた指導がなされていることに感銘しました。教室の掲示物からも、生徒にしっかりと目標を持たせ、指導していただいていることが分かり、生徒もそれに応えようとしている姿が感じ取れました」と。もう1人の評議員は、「今日の授業を見せていただき、生徒も頑張っています。先生も丁寧な授業で、生徒を大切に育てていただいていると感じました。学校紹介のパンフレットが浄法寺校の良さを十分に表現して素晴らしいと感じました」ということで、学校評議員の方が授業を見てこういう意見を率直に述べている。小さくてもきらりと光る、そういう教育目標に沿った効果を上げているのではないか。教育の問題としては、こうやって頑張っている学校をどう評価し、それをどう生かすかだと思う。定員の半分を割ったからなくすということであってはならない。
 先ほど通学費の問題が議論になったが、浄法寺から福岡駅まで片道780円。大変な負担である。教育は、教育の機会均等が大原則なのである。そういう意味では、これも軽視できない。自発的に福岡その他の高校に行っている生徒たちは、バス利用がたった1割、重大な障害があると、この打開を先に示さないで後から考えるという話ではないと思う。素晴らしい教育実践と合わせて、こうしたバス通学に至っていない問題を解決しなければ、簡単にこの学校をなくしてはならないと思う。
 旧浄法寺町の中学校から、卒業生がどこにどれだけ進学しているかも合わせて示していただきたい。

【高校改革特命課長】
 福岡高校、およそ過去5年間あたりでおよそ17%が福岡高校の全日制に行っている。5年間で卒業生は196人、そのうち、福岡高校の全日制は33人、福岡工業16人、一戸57人、盛岡農業14人、浄法寺校46人となっている。

【斉藤委員】
 46人というのは一戸に続いて多い。今年10人というのは少なくない。小規模校をどのように受け止めるのか、教育実践をどう受け止めるのか。決して数が少ないから教育活動に支障をきたすとかそういうことでは決してないと思うし、進学・就職の指導も大変丁寧にやっている。浄法寺校のような小規模校としての取り組みをどのように評価しているか。数だけの問題ではないのではないか。地域に根差した学校も残していくということが岩手の教育のあり方として必要な課題ではないか。
 そして、これが閉ざされた場合、大変な通学費用をかけて高校に進学せざるを得ないというのは大変なことだと思う。そういう実態としても、バス通学1割しかいない。私は、浄法寺校に通っている生徒ほど、親が車で送り迎えという条件はないと思う。そういうことを含め、どう考えているか。

【教育長】
 それぞれの学校にそこに子どもたちがいて、それぞれの高校を選んできてくれた子どもたちなので、その子どもたちの希望を少しでもかなえようということで、いろいろ学校もしくは教員がそれぞれ子どもたち一人一人の状況に応じて一生懸命対応する、それはどこであっても同じだと思う。そういった中で、浄法寺校においても、たしかに規模は小さいということで制約はある。教職員の配置や部活動も相撲部が有力なチームだったがそれも編成できなくなった問題もあるが、一生懸命子どもたちも教職員ともども頑張っているのはその通りである。
 ただ一方で、やはり高等学校教育として、将来社会に出る子どもたちなので、どういった中で育むのが一番いいのか。切磋琢磨の話もあったが、そういった点も経験させてやりたい、いろんな部活動も経験させてやりたいという思いもあるので、そういった点をいろいろ勘案しながら、過去の田野畑校の話もあった。川井校の経験もしたが、いろんな経緯を踏まえて本校に統合した経緯がある。そういった点も、バランス等も均衡等も考慮しなければならない。ただ今後、本校に統合するとした場合、どういった対応で統合していったらいいのか。例えば一気に福岡高校にもっていくのか、今いる子どもたちを卒業させるまで浄法寺校で卒業させるのか。今後入ってくる子どもたちに対しての通学支援はどうあるべきか。そういったことをきめ細かに地元と相談していかなければいけないと思っている。
 なかなか最初に方向を示すというのは、個々の問題がいろいろあるので、その辺いろいろ詰めなければならない問題もある。したがい、丁寧に今後とも地元と話し合いを進めながら対応していきたい。

【斉藤委員】
 浄法寺校については、小規模校としての評価できる教育実践があるし、何よりも地域の方々、父母の方々が存続を強く求めていると。さらには、通学への困難さもあるので、この委員会でそういう議論がなされたということをしっかり伝えて、慎重な検討をしていただきたい。