2013年8月8日 東日本大震災津波復興特別委員会
災害公営住宅、持ち家再建支援、被災者の心のケア等に関する質疑大要
・公営住宅の整備、持ち家再建支援について
【斉藤委員】
ロードマップの最新版が出され、県当局が進捗状況を明らかにしていることは評価したい。
残念なことは、ロードマップが出る度に整備の見通しが遅れる。精度が高まったということだろうと思うが、今回111カ所延びた中で、特に災害公営住宅が46ヶ所延長と。被災者のもっとも切実な要求である住宅確保が今回のロードマップの発表では、延長という形になったことが大変残念である。
資料のページで、見直しに至った理由とあるが、用地の確保の難航、資機材・作業員の確保に時間を要したと。土地区画整理事業等の大規模造成区域内の整備等の調整が生じたとなっているが、この見直しに至った理由をもう少し立ち入って説明いただきたい。
【建築住宅課総括課長】
災害公営住宅の工期の延期について。県建設分の災害公営住宅は、用地の確保については、11ヶ所で地権者との用地交渉で2〜3ヶ月延びていると。金額の問題や複数の地権者の意見が合わないなどの事象がある。また、これまで平常時と同様の工期で工事を発注していたが、入札参加者がいないという事態が発生し、以前からも話を聞いていたが、意見交換等で、工期が心配だと。職人20人を集めないとまともな工期でできないところが集まらないといった話があり、工期を延長せざるを得ないということがある。
平成28年度までに延ばしたものについては、大規模な土地造成で土地を確保するというところに計画を定めたということで、造成が進捗状況に合わせて28年度までは完成できないというようなものが4件ある。そういったものが複数合わさって3ヶ月が足ささり6ヶ月とかそういったものもある。
【斉藤委員】
ぜひこれはもっとも切実な課題なので、いま指摘されたような課題をしっかり1つ1つクリアして進めていただきたい。
例えば今年度、約125戸前回より減ると。来年度は1753戸も当初のスピードより遅れると。かなりの数である。これは被災者の見通しが狂うぐらいの規模だと思う。今回の見直しはかなり衝撃的なものではないか。精度が高まったとか、いろんな要件があるが、ロードマップが出る度に延長と、計画が変わると。一定程度あったとしても、このぐらい出てくると被災者の生活再建の見通しに関わるぐらいの状況になっているのではないか。
今回6086戸に114戸災害公営住宅が増やされた。これは被災者のアンケートに基づくものだと思うが、岩手県住宅復興の基本方針というのを2011年10月に決めた。このときどういうことを決めたかというと、だいたい仮設住宅に入居している17000世帯を対象に、公営住宅は4000〜5000戸、民間・持ち家住宅が9000〜9500戸、民間賃貸住宅が3000〜3500戸という見通しをたてた。すでに公営住宅はこのときから1000戸増えている。持ち家の見通しをどのように見ているか。2年5ヶ月が経過して、住宅復興の基本方針を見直すべきではないか。17000世帯を対象するという基礎数そのものが小さいのではないか。被災者生活再建支援金基礎支援金をもらっている全壊・大規模半壊・解体は23000世帯である。少なくともこの中で補修をする人たちが出るかもしれないが、このぐらいのことを想定して住宅確保の方針を決めなかったら正確なものにならないのではないか。今の時点で、住宅確保の見通しを県はどのように見ているか。
【建築住宅課総括課長】
住宅復興の基本方針については、恒久住宅の想定供給戸数、今後この数値を出すにしてもある程度の推計値にとどまらざるをえないだろうということ、それから、被災者の意向でかなり大きく変わる可能性もある。
ただ、方針として出した数値を、災害公営住宅6000戸という風に示し、6000戸超えたらやめるかということそういう状況でもない。当然必要な住宅は供給しなければならないし、不平等になるようなことはできないので、数字を掲げたとしてもそれを超えても支援はしていかなればいけないだろうと、そういったことでこれまで特にこの数値を見直すということはこれまで考えていなかった状況である。
今後、復興の計画を立てる上で、これではどうしても支障が出てくるというようなことがあれば、見直さざるをえないとは考える。今後これで支障があるかどうかも含め検討させていただきたい。
【斉藤委員】
災害公営住宅は、希望者にはすべて対応すると知事がきちんと答えているので、これ以上増える可能性もあると思うが、現時点で基本方針で立てた4000〜5000戸から6000戸に変わっているので、やはり全体の枠組みをきちんと精査すべきだと。というのは、住宅再建の基本は持ち家再建だからである。あなた方が予定した9000〜9500戸ということが妥当なのかどうか。これが本当に実現できるのかどうか。災害公営住宅が1000戸増えているということは、持ち家再建を断念しているということになるのではないか。そういう意味で、本当に復興の土台である持ち家再建を被災者の希望に沿って実らせると。そこから必要な支援策が出てくると思う。被災者生活再建支援金300万円では足らないと。これは500万円に引き上げると、これは県も要求しているし私たちも要求している。ただ国はかなり渋い。そういう中で、市町村が今回復興特別交付税を活用して100万円〜200万円の上乗せ補助を決めている。それでも持ち家再建は進み難いと思っている。だから、持ち家再建に対して、県は100万円の補助を市町村と協力してやっているが、これを200万円にするということも真剣に考えていくべきではないか。持ち家再建の見通しはどのように見ているか。増えているのか減っているのか。被災者の希望に答えるためにはどういうことが必要なのか。
【建築住宅課総括課長】
災害公営住宅が増えているものについては、持ち家希望からきてるのではないかということだが、その辺は民間賃貸住宅でカウントしている部分がいっているのかどうか、定かではないところがあり、必ずしもはっきり言えない。
持ち家支援は非常に重要なことだと考えており、昨年度から直接仮設にお住まいの方に住宅再建の相談等をこれまで31回ほど実施している。そういった中でできるだけ支援を受けて自力再建されるように進めている。こういったものについても、必要とする方がいるうちは支援を続ける必要があると考えており、現状の予算の確保に努めていきたい。
【斉藤委員】
復興実施計画第2期の方向性案というのが示されたが、暮らしの再建で、復興促進ニーズ第1位が住宅宅地の供給であり、第2期計画に向けた課題の中でも、恒久的住宅・宅地の確保、長期化する応急仮設住宅の生活等への支援となっている。住宅確保というのは、第2期計画の目玉中の目玉だと思う。そういう点で、2年5ヶ月経過した現状、被災者の実態・要望を現時点でよく把握し第2期計画に反映するようにしていただきたい。
もう1つ住宅確保を実らせる上で大事なのは、供給体制である。来年は新たに2228戸公営住宅ができるが、持ち家再建も、区画整理とか高台移転で来年再来年と数千戸の規模で可能になる。今でさえ、県内大手ハウスメーカーに聞いたら、「今お願いして1〜2年後」だと。来年再来年、1000戸2000戸3000戸という持ち家の条件が出たときに、2年3年待ちだとなったら被災者は持ちこたえられない。今からそういう供給体制を考えていかなくてはいけない。この問題を打開すべきだと思うが、県はどのように問題を把握し対策を考えているか。
【建築住宅課総括課長】
これから建設戸数が増えてくるので、さまざまな課題が出てくると認識している。
今月20日に、住宅関連の生産者等を集めて、生産者等意見交換会というのを開催し、さまざまな課題等を掘り起こして一緒に解決策を生み出していきたいと考えている。今後ともそういった情報交換を続けながら、少しでもそれの解消になるような方策を検討していきたい。
【斉藤委員】
1つの目玉が岩手型復興住宅だと思う。これは135グループ2417社が加わっていると聞いているが、直近の実績はどうなっているか。このグループでどれだけの供給体制があるのか。
【建築住宅課総括課長】
これまでグループとして受注したというのが、24年度からのトータルで354件である。グループではなく単社で受注されているところもあると思うので、全体でどれぐらいかは明らかでない。
135グループでの供給体制だが、どれだけの能力があるかについては、これから情報収集したい。
【斉藤委員】
ぜひ公営住宅、持ち家再建、もっとも切実な課題で、この見通しが見えるかどうかで被災者は頑張れる。2年5ヶ月経過しているので、あと1年2年待てば、持ち家再建できるとか公営住宅に入れるという見通しをしっかり、供給体制を含めて示すべきではないか。実施計画も、被災者の立場に立って希望が見えるものにしていただきたい。
・被災者のケアについて
【斉藤委員】
くらしの再建の問題でもう1つ心配していることは、仮設住宅その他で被災者が貧困化しているし、命を脅かされている。7月26日の新聞記事で、自殺相談が岩手が一番多かったと。これは熊坂先生などがやっている社会的包摂サポートセンターの取り組みで、岩手からの電話相談が3ヶ月で5万件。中でも自殺に関する相談の割合は、被災3県の中で本県が最多、52%を占めた。阪神淡路大震災の経験からいっても、2年目3年目、緊急事態から少し落ち着いて、喪失感が出てくる、被災者の中で格差も生まれる、いろんな変化が出てくるときこそ、被災者に寄り添った心のケアを含めた対策が必要になってくると思う。この点でどういう対策を考えてやろうとしているか。
【保健福祉企画室企画課長】
被災者の心のケアに関しては、県自殺対策アクションプランにおいて、すでに重点施策の1つとして位置付けて取り組んでいる。現在、いわて心のケアセンターを中心として、市町村と連携しながら鋭意取り組んでいる。
今回、岩手県が自殺に関する相談が一番多いということだったが、さまざまな多かったことについては、さまざまなとらえ方があるかと思う。元来、自殺については、外部に発信しづらいといったこともあるが、住民の中にも必要な援助を求める意識が醸成されてきた部分もあるかと思う。いずれそのようなシグナルに対して、県としてさまざまな活動を通じて支援していきたいと考えている。
【斉藤委員】
心のケアの問題というのは、根底に生活の貧困化がある。もう1つは心の喪失感、家族を失った、財産を失った、そういう喪失感が出てくるのが2年後3年後だというのが、阪神大震災や中越地震のときも言われてきた。
そういう点で、この時期にきちんとした今までにないきめ細かな対策をとるべきではないか。先ほど述べたように、医療費や介護保険利用料の免除措置の継続だとか、仮設住宅とか被災者訪問の体制も雇用の基金事業でやっているものがある。これが25年度、今年やった分は来年度まで継続できるが、それまでしか事業は継続されない。かなり数年規模で被災者の状況を支えなくてはならない。こういうこともしっかり視野に入れてやっていただきたい。
・防潮堤の高さ、用地取得の問題について
【斉藤委員】
土地所有者が不明だと。それが3割4割と言われているが、防潮堤、まちづくりの事業で、土地所有者、相続がされていないために着手できないという状況が具体的にどれだけあるのか。
もう1つは、住民合意の話も先ほどあった。住民との関係で、県が指摘した防潮堤の高さを変更した箇所、これから変更する可能性のある箇所があれば示していただきたい。
【河川課総括課長】
防潮堤の高さについて、県が示した高さを変更した箇所、県土整備部所管の海岸施設では、示したというのが湾内の統一的な高さというものを提供し、それを湾内の地域海岸でいろいろ検討を行った結果、陸前高田市の大野海岸においては湾内高さよりも低い高さで計画されている。
【県土整備企画室管理課長】
用地の関係だが、調査したところ、もっとも問題となっているのは、多数の権利者による共有地だとか、相続が未処理のために相続人が多数にわたっているというのが非常に多く、当初懸念されていた土地所有者が行方不明だとかそもそも分からないといった事例が比較的少ない。例えば、モデルケースとして進めている釜石の片岸地区では、42件中土地所有者が分からないという件数が1件、行方不明者が1件という状況であるので、これらについては、財産管理人制度を使うことにより解決が可能であると考えている。
【水産担当技監】
国交省所管の話があったが、水産庁で所管されている堤防の高さについては、12地区において、地域海岸の堤防高よりも低く施工するということで地元との調整を終えている。
具体的に、大槌町の赤浜地区では、地域海岸では14.5mの高さだが、地元等の協議の結果、6.4mの高さというようなもので調整している。