2013年10月8日 9月定例県議会・本会議
議案に対する質疑(大要)
【斉藤議員】
日本共産党の斉藤信でございます。議案第1号2013年度岩手県一般会計補正予算(第2号)、議案第43号岩手県一般会計補正予算(第3号)について質問いたします。
・7、8月豪雨対策および台風18号被害対策について
今回の9月補正予算の総額は、第2号、第3号を合わせて総額455億円余となるものですが、最大の課題は、7、8、9月と連続した豪雨災害と台風18号の災害対策であります。
岩手県が独自に被災者生活再建支援金支給補助として、全壊世帯に100万円、大規模半壊に50万円、半壊に20万円、床上浸水に5万円の補助を決め、さらに全壊・大規模半壊世帯の住宅再建に200万円、補修に100万円、賃借に50万円の加算支援金の支給を決めたことを高く評価したいと思います。
知事に質問します。今回の県独自の被災者支援策についての考え方をお聞きします。また、それぞれの支給対象世帯数の見込みはどうなっているでしょうか。半壊世帯、床上浸水の世帯は基礎支援金だけでありますが、半壊の被害世帯の実態は、修繕費や家財の購入費等で400万円前後の費用がかかっています。被害の状況をどう把握しているでしょうか。さらなる支援の引き上げが必要ではないでしょうか。被災市町では、独自の見舞金や住宅改修の補助金も実施していますが、具体的にどう把握されているでしょうか。
今回の災害の特徴は、局地的な豪雨によって、大量の土砂とともに流木が橋梁をふさぐとともに、川が氾濫したことによるものです。雫石川、岩崎川、松川等の災害復旧と抜本的な河川改修が必要と考えますがどうなっているでしょうか。岩崎川上流の煙山ダムは、今回越流しました。大量の土砂も堆積していると考えますが、治水ダムとしての機能が果たせていないのではないでしょうか。現状把握と対策についてお聞きします。被災した矢巾町岩崎川橋や盛岡市玉山区の石花橋等、現在も不通となっている箇所と復旧の見通しはどうなっているでしょうか。
台風18号の災害では、災害情報の伝達、避難勧告の遅れが大きな問題となりました。盛岡市玉山区では、141人が孤立する事態も発生しました。121人が孤立した下田地区では、避難勧告さえ出されませんでした。松川の玉山区古川橋の水位は、午後2時段階で氾濫注意水位2.5mに接近し、3時段階では3.54メートルとなっていました。なぜ避難勧告等の対応がとられなかったのか。災害対策というのは、災害の事後対策ではなく、災害を未然に防止する対策でなくてはなりません。3カ月連続した豪雨・台風災害について、現段階でどう検証し、対応しているか示していただきたい。松川の水位情報周知河川への指定などどう対応されているでしょうか。防災体制の強化も必要と考えますがいかがでしょうか。
【達増知事】
今回の県独自の被災者支援策について。被災者生活再建支援法は、自然災害によりその生活基盤に著しい被害を受けた世帯に対する生活再建支援を目的としているが、住宅の全壊被害を受けた世帯が地域内で一定数以上発生したことが適用要件となっており、今回の本県の災害は、適用とならないものである。しかしながら今回の災害については、地域限定的に深刻な災害が続き、全壊や大規模半壊といった制度の支援対象と同程度の被害が発生していることから、これらの世帯の早期の生活再建を図ることが必要と判断し、県独自に制度に準じて支援を行うこととした。さらに制度の対象となっていない半壊や床上浸水の世帯についても、比較的被害程度が大きく、被災者の生活再建の一助とするため支援を行うこととした。
【保健福祉部長】
被災者生活再建支援金支給補助について。支給対象世帯数は、10月2日現在で、7月・8月の大雨洪水および台風18号災害において、全壊14世帯、大規模半壊25世帯、半壊161世帯、床上浸水368世帯となっている。半壊世帯の住家被害の状況は、住家の被害調査を行う市町村から被害世帯数および被害総額の報告を受け把握することになるが、現在市町村で調査中となっている。
基礎支援金については、被災後の当面の生活再建の一助とするため支給するものであり、内閣府が示す被害認定基準を参考に全壊世帯の基礎支援金100万円の20%相当を半壊世帯への支援金とした。
被災市町の独自支援策については、床上浸水以上の被害が生じた市町のうち、13市町において独自の見舞金を支給済み、または支給予定と聞いている。また見舞金に加えて、盛岡市では、8月の大雨洪水における半壊世帯を対象とした住宅の応急修理などへの支援を実施しているが、他の市町においても独自の支援を実施または実施に向けた検討を行っていると聞いている。
【県土整備部長】
雫石川等の災害復旧と河川改修について。護岸等が被災した箇所については、災害復旧事業により早期復旧に努めていくとともに、新たに河川改修が必要な箇所については、現在行っている調査・分析の結果を踏まえながら、早急に必要な対策を進めていく。
7月の梅雨前線から台風18号までの3度にわたる大雨被害により、現在も不通となっている箇所は、県管理では4路線5ヶ所、市町村管理では64路線66ヶ所となっている。現在、復旧工事の前段となる災害査定を進めており、査定終了後順次緊急性等を考慮しながら工事を発注し、早期復旧に努めていく。
松川の水位周知河川の指定については、盛岡市からも要望をいただいているところである。今回の大雨災害の経験を踏まえ、技術的な検討を行いながら、松川における水位周知河川の指定を進めるとともに、情報共有や市民への情報伝達が確実になされ、盛岡市が行う水防活動や避難勧告、住民の避難が適切に行われるよう、国や市と連携しながら防災対策に取り組んでいく。
【農林水産部長】
煙山ダムは、農林水産省が農地への灌漑等を目的に設置し、矢巾町が国から管理を受託しているダムだが、ダム管理を受託している矢巾町は、毎年土砂の堆積量の調査を実施しており、現在災害復旧事業を導入しての土砂の撤去に向け国と調整している。県としてもその取り組みを支援している。
【総務部長】
今般の一連の災害では、市町村において、国や県が公表している河川の水位情報が十分に活用されず、避難勧告等の発令の適切な判断に結び付かなかった事例があったこと、また県において、避難勧告等の発令状況を含め、初動期における市町村の情報を十分に把握できなかった事例があったことなどが課題であると現時点では認識している。
したがい市町村にたいし、県の河川情報システムの活用方法等について周知を図ったところだが、今後、市町村等の関係機関が参加する協議の場を設定するなど、今般の一連の災害を踏まえ、県民への情報伝達や県・市町村の一層の連携のあり方などについて、市町村と連携しながら検証し対応策を整理していきたい。
今般の一連の災害対応にかかる検証を行う中で、必要な防災対策を整理し、市町村を含めた全県的な防災対策の強化に取り組んでいきたい。
・国際リニアコライダー(ILC)の誘致について
【斉藤議員】
第二に、プロジェクト研究調査事業について質問します。これは、国際リニアコライダー(ILC)の誘致に関連するものであります。
知事に質問します。日本学術会議が9月30日、文部科学大臣に対して「国際リニアコライダー計画に関する所見」を提出しました。極めて重要な課題と問題点が指摘されていますが、その内容と知事の受け止めについてお聞きします。
補正予算を含め総額6199万円余となりますが、事業の中身を示していただきたい。ILCに関する専門家が国内の誘致地域に北上山地を選定したことを歓迎するものですが、日本学術会議の「所見」を踏まえるなら、今後の取り組みは過大なものにならず、慎重に、必要最小限の範囲で、学術界全体の動向と国の動向を踏まえて進めるべきと考えますがいかがでしょうか。
【達増知事】
日本学術会議の回答について。日本学術会議は、ILCを実現することの学術的意義は認めた上で、他の学術分野の進歩に停滞を招かない予算の枠組み、国際的経費分担、国内研究体制のあり方などを2〜3年かけて検討すべきとして提言している。これらの提言の内容は、そもそもILCを実現するために検討していかなければならない事項であり、政府には、日本学術会議の提言を十分に踏まえ、必要な予算の枠組みに関する検討や海外主要国との協議等を早急に行い、ILCの日本での実現に向けて取り組んでいきたい。
今後の取り組みについては、学術会議は「ILCの学術的な意義は十分に認められる」とした上で、政府がILCの調査検討を行うことを提言していることから、まず県としてはその検討作業に必要な資料提供等を求められた場合には全面的に協力し、政府の誘致決定を後押ししていきたい。またILC計画の進展を見据え、建設候補地域を国内外にアピールするとともに、研究者等の受け入れ体制の整備などの準備を行う必要があると考えており、政府の動向等を踏まえながら適切に必要な取り組みを行っていきたい。
【政策地域部長】
プロジェクト研究調査事業費の事業内容について。建設が予定されている北上山地において、イヌワシ等猛禽類の繁殖期の調査を行うための経費だとか、海外への情報発信のための動画製作経費、担当職員の仙台駐在にかかる諸経費の増額となっている。
・東日本大震災で死亡した民生・児童委員にかかる遺族補償等について
【斉藤議員】
第三に、公務災害補償費として3億4818万円余計上されています。これは、東日本大震災で死亡した民生・児童委員にかかる遺族補償等であります。対象者数と申請者数、認定の状況と未申請者に対する今後の対応を示していただきたい。
【総務部長】
東日本大震災津波で死亡・行方不明となっている民生・児童委員は25名となっており、うち13名から公務災害としての申請があり、すべて公務災害として認定済みである。未申請者12名のうち5名については、消防団等の他の災害補償が適用されていることから、残る7名の方から今後県にたいし、認定申請が行われる可能性があり、関係所管部局と情報共有を図りつつ、早期に認定申請がなされるように引き続き支援していきたい。
・三陸ジオパーク推進費について
【斉藤議員】
第四に、三陸ジオパーク推進費について質問します。今回の補正537万円を含め総額2484万円余となりますが、その主な内容はどうなっているでしょうか。今回、三陸ジオパークが国内のジオパークに認定されました。その中には東日本大震災で被災した遺構も含まれています。その件数とその保全の対策、その財源はどうなっているのでしょうか。認定されたメリットと課題についてお聞きします。
【政策地域部長】
当初予算分については、三陸ジオパーク推進協議会への負担金等であり、補正予算分については、情報発信を強化するため、「あまちゃん」の知名度を活用した観光マップやPR動画の配信に要する経費となっている。
大震災津波関連の被災遺構であるジオポイントについては、宮古市にある田老観光ホテル跡など7市町村14ヶ所であるが、その保全対策および財源については、今後所在市町村、資産の所有者、地域住民の方々の意見・議論を踏まえ、個々の資産ごとに検討することとしている。
今回のジオパーク認定のメリットとしては、県民の方々が三陸の成り立ち、自然の素晴らしさを再認識する契機としたり、また日本ジオパークの1つとして広く情報発信しながら、より多くの方々に三陸に来ていただき、被災地である三陸地域の復興につなげていきたいと考えている。
課題としては、地元を含めたPR活動の促進などの普及啓発や機運醸成の推進、地元専門ガイドの育成などの受け入れ態勢の整備等をしっかり進めていく必要があると考えている。
・応急仮設住宅の解体費用、被災者相談支援事業について
【斉藤議員】
第五に、救助費として7230万円余計上されています。これは応急仮設住宅の解体費用であります。応急仮設住宅の1戸当たりの建設費、解体費、その合計は現段階でどうなるでしょうか。今年度の解体戸数の見込みと転居を余儀なくされる戸数はどうなっているでしょうか。
総合的被災者相談支援事業費として2050万円余が計上され、総額5349万円余となります。この間の相談員、専門家による相談の内容、特徴はどうなっているでしょうか。
【復興局理事】
応急仮設住宅の1戸あたりの建設費は、買取による住宅については、建設費630万5千円、解体費は87万2千円の見込みで、計717万7千円となっている。今年度の解体予定戸数は、9月補正計上分とすでに撤去が決まっていた応急仮設住宅等を合わせると、121戸となっており、内訳は、通常の住宅が71戸、グループホーム型住宅が50戸となっている。このうち、現在入居者がおり、地権者などの都合により応急仮設住宅を解体するため転居せざるを得ない戸数は43戸となっている。近隣の応急仮設住宅団地の空き住戸などに転居していただくこととしている。なお、グループホーム型住宅については、全員が新たに建設されるグループホーム等に入居することとなる。
総合的被災者相談支援事業について。今年度の相談による相談は、8月末現在の相談件数4037件のうち、「担当窓口への橋渡しや関係機関の紹介」が1592件と最も多く、次いで、住宅再建や高台移転など「住宅」に関する相談が1539件、健康・医療や将来に対する不安、債務問題など「生活への不安等」に関する相談が473件となっており、これらの3区分で全体の89.3%を占めている。また弁護士やファイナンシャル・プランナーなど、専門家による相談は、8月末現在で366件となっており、内容としては、相続や離婚など「家族や生活全般」に関する相談が222件、土地登記・賃貸借契約など「土地・建物」に関する相談が116件、債務・ローン問題など「お金」に関する相談が22件となっており、これらの区分で全体の98.4%を占めている。
・県境不法投棄現場環境再生事業費について
【斉藤議員】
第六に、県境不法投棄現場環境再生事業費が1億8138万円余計上され総額4億8037万円余となります。処理費用が増加した理由と最終処理の見通しはどうなっているでしょうか。これまでに投入された事業費総額と県費負担分はどうなっているでしょうか。
【環境生活部長】
廃棄物処理費用が増加した理由については、廃棄物を保管庫に移動した際、保管量を精査した結果、当初の見込みに比べ、約6400トン増加したもの。保管量の増加は、推計総量35万7千トンの1.8%に相当し、土壌混入および比重の増加等の誤差によるものである。
最終処理の見通しは、昨年12月に掘削・選別を終了し、本年9月末までに推計総量の98.2%に相当する35万1千トンを処理したところであり、増加分も含めた残余の約6500トンは年度内に全て処理できる見通しである。
事業費総額と県費負担分については、現状回復の実施計画に計上した総事業費231億円の88.8%に相当する約205億円を平成24年度までに執行したところであり、国庫補助金や地方交付税算入措置により、県費負担分は執行額の35.9%に相当する73億円余となっている。
≪再質問≫
・豪雨災害、台風災害の検証について
【斉藤議員】
台風18号の対応というのはきわめて重大だったと。9月16日の朝6時23分に、県内に大雨洪水警報が出ている。台風というのは、時間推移で接近状況が分かる。そして松川の場合には、14時段階で注意氾濫水位に接近し、15時段階でそれを大幅に越えていた。17時段階では5m31cm、そしてこの段階で監視機能は破壊されてしまったと。避難勧告が出たのは17時半〜18時で、下田地区には出なかった。インターネットでは水位情報を出していたということだけでは話にならない。こういう時間の推移の中で、どういう風に関係市町村と連絡をとるかということが危機管理にとってきわめて重要。災害対策というのは「災害を予防する」ということを最大の立場でやらなくてはならないと思う。盛岡市の対応もきわめて問題だったが、情報をもっている岩手県の対応も問われる。なぜこういうことになったのか。
松川については、水位注意周知河川になっていないと。そのために、県からの周知義務はなかったということになるが、地元住民は「流木はかなり以前からIGRの鉄橋などに引っかかっていた。それは何度も指摘してきた」と。しかし、たらい回しで対応されなかったと。地域住民はずっとパトロールしている。しかしそういうことについてなぜ対応されなかったのか。そういう意味では、盛岡市長も「従来から県に要望してきたが進まなかった」と新聞報道されているが、やはり台風のときだけでなく、今までの対応が県管理河川としてどうだったのかということについてもお聞きしたい。
【総務部長】
水位情報の把握・伝達の件について。県では、水位情報と雨量情報をリアルタイムで公表しているということで、これらの情報については、降雨時に10分ごとに更新してインターネットで見られる形になっている。これらのデータを基に市町村においては避難勧告等の要否を判断するということが原則である。
この台風18号に際しても、情報収集を市町村と連携をとりながらやっていたが、残念ながら、こういう情報だったということについて市町村の被害状況については、先ほど盛岡市の体制の話があったが、上がってこなかったということがある。しかしながら、今回のそういった県と市町村の情報を活用できなかった問題については、今回の情報収集体制や伝達体制の課題について、県と市町村がきちんと予防策としてとっていくという仕組みの検討も必要だろうと考えており、市町村や関係機関が入った協議の場を設け、予防対策も含めた対応策を検討していきたい。
【県土整備部長】
県管理河川のパトロール等について。県では、河川巡視員等によりそれぞれの事務所で管理する河川のパトロールを定期的に行っている。ただ、やはり限られた人員体制の中であるので、今回のことも踏まえながら、地域住民の方々の情報も密に共有しながら取り組んでいきたい。