2013年10月9日 商工文教委員会
山田町のNPO問題に関する質疑(大要)


・県の指導、チェック体制について

【斉藤委員】
 出された資料からお聞きしたい。24年3月16日というのは、12月に指導した後にやったものである。「会計等書類の整備状況できていない。よって検査・確認することが不可能」「大雪りばぁねっと。ではどんな書類を準備すればよいか理解できていない模様」とある。話にならない。この段階で4億3000万円である。これは12月の段階で指摘されていることである。現金出納帳、領収書がなかった。12月の指導事項でもう少し詳しいものはないのか。12月の指摘がまったく具体的でない。12月に指導して3月の結果がこうである。ここにあなた方が、宮古地域振興センターが異常だと感じなかったら、それ自身が異常である。そう思わないか。

【雇用対策課長】
 12月の記録については、先ほどお配りしたものが全てである。この結果、12月の指導を受けて3月で気が付かなければということですが、これについては、危機感をもって対応したものと考えている。

【斉藤委員】
 そういう答弁ではいけない。あなたは先ほど、「12月の時点で宮古地域振興センターは、この事業について何か問題があるという認識はなかった」と答えた。だとしたら異常なことだと言っている。12月の段階で指導して、3月になっても「現金出納帳も領収書もない、検査・確認することが不可能、どんな書類を準備すればよいか理解できていない」と。こんなNPOに4億3千万円のお金を出した。
 12月の段階で重大な危機感を持たなければいけなかった。ましてや3月でもひどい状況、この異常な事態について部長はどう思うか。これがまともなNPOがやることだと思うか。

【商工労働観光部長】
 3月時点の認識だが、ここに報告されている通り、かなり会計処理としては問題のある処理にとどまっているということが報告されたと受け止めて、しっかりと最終の完了確認検査まで整理をしないといけないという危機的な状況にあるということは、当時は私は部長ではなかったが、そのような認識をもってしかるべき内容だと受け止めている。

【斉藤委員】
 3月の指導事項では、「リース料・旅費・消耗品等の領収書類が不備多数、存在する領収書について内容を確認した結果、どこに何をしに行ったか旅費か不明、消耗品は何を買ったか不明、支払額とリース契約が不一致」となっている。この時点で、24年度7億円の雇用対策事業をやる資格はなかった。
 そして、実際にあなた方は完了検査を通して、再審査したら、1億6749万円不適正だったと。この時点で不適正が分かっていた。あなた方は完全に指摘しながら見過ごしたというか、容認した。結果として、この異常な事態を招いた県のチェック体制に重大な問題があったと思うがどう思うか。

【商工労働観光部長】
 今回の再精査により返還を求めなければならない事態に立ち至ったことについては重く受け止めなければならないと考えている。今後、緊急雇用創出事業の適正な執行に取り組んでいきたい。

【斉藤委員】
 平成24年度の5億円余も今回の1億6700万円余も、山田町民の自腹で返される。この重みを県の執行部はしっかり受け止めるべきだと思う。あなた方は返還請求をすればいいというだけではない。こうした事態に立ち至った責任の1つは、県のチェック体制にあると思う。いわば、知らないでやったのではなく、これだけ具体的な重大な指摘をしていながら、すんなり完了検査を通してしまった。24年度の7億円を超えるような雇用対策事業を認めてしまった。二重の誤りを県はしてしまった。これは許されない。だから徹底して岩手県としても検証すべきである。これだけの指摘をしながら、なぜ完了検査を通したのか。なぜ24年度の事業を認めることになったのか。これは絶対に看過できない問題である。これは徹底して検証をすべきだと思うがいかがか。

【商工労働観光部長】
 県としてこの事案については、まずきちんと事業を計画通り実施しなかったNPO法人が第一義的には説明の責任を負うべき者と考えており、そういった問題となったNPO法人に事業を委託した山田町としてもしっかりと事態に至ったことについて事情を把握した上で再発の防止に努め、本来のあるべき緊急雇用創出事業について、しっかり取り組んでいただきたいと思う。
 我々としても、山田町との契約関係の中で、NPOとの直接の関わりは持たないという制約はあるが、今後ともこういった事案の発生が起こらないよう、しっかりとした体制と事業途中における適切な指導監督をしながら、事業が遂行されるよう適切に努めていきたい。

【斉藤委員】
 5億円、さらには1億6700万円、山田町の町民が、何の責任もない町民が自腹で返すのである。そしてその経過には、ここは県議会の場なので、県政の関わりについて指摘している。第一義的にはNPO法人が問題である。問題のNPO法人に全面的に癒着して進めた山田町の責任も許し難く、当時の町長や幹部は何らかの責任をとらなければならないと思っている。しかしここは県政の場なので、県が完了検査をして7億円以上の事業を認めたということについて問題はなかったのかと。なぜチェック機能が働かなかったのかと。これは前代未聞の不祥事なので、県として検証すべきだと。どこに問題や責任があったのか。そのことを改めてお聞きしたい。

【商工労働観光部長】
 この事案については、今後山田町からの返還等も含め、全体の事業の関係等をはかるプロセスにおいて、どこに原因があったかについては、内部で検討・検証させていただきたい。

【斉藤委員】
 ぜひこれはしっかりやっていただきたい。県が全く責任がないわけではない。だいたいやらせてはいけないNPO法人にやらせてしまった。そういう判断の時期はたくさんあった。


・御蔵の湯の建設について

【斉藤委員】
 やはり一番の焦点だったのは御蔵の湯である。これについて、県と山田町は何度もやりとりをして、材料費・リースだったらできるという回答を県はした。その結果、直接NPO法人は盛岡の建設会社に仕事を発注して御蔵の湯をつくった。これは全く違法なやり方だった。そして実態としてはリースではなかった。あなた方が「リースなら認める」と言ったのだったら、どういうリース会社なのか、実態があるのか確かめなければならなかった。問い合わせがあったのだから。今回、これは事実上建設工事ということで返還の対象になったが、御蔵の湯の建設経過、県の対応がまったく生ぬるかったのではないか。

【雇用対策課長】
 御蔵の湯の建設経過については、県は正確には、その都度相談を受けてそれを進めてきたわけではないので承知していない。委員から、県と町が何度もやりとりをしてというご指摘をいただいたが、我々が確認する限りでは、そういった詰めた協議をしたということは確認されていないということはご報告申し上げたい。
 これまでの本会議等の中でも、説明申し上げてきたが、御蔵の湯については、現状のような内容を把握して、それをリースというベールに包んでという指導ではなく、例えば施設整備について、建設工事は認められていないが、どういう方法があるのかということに対しては、リースという方式は認められるという制度について説明したということは内部の調査でも確認している。

【斉藤委員】
 結果として、これは建設事業で対象にならなかった。あなた方は問い合わせを受けた。材料費・リースならできるという悪知恵を教えたのではないか。その通りやってこれは建設事業だとなった。だいたいNPO法人の雇用創出事業で入浴施設をつくったが何千万円とかかっている。今回あなた方が返還を求めているのは6436万円である。
 実際にやったら、リース会社を確認する、本当のリースなのか建設なのか。そのぐらいのチェックをするのは当然ではないか。

【雇用対策・労働室長】
 宮古地域振興センターに制度説明をした時点では、こういった御蔵の湯のような計画ということで示されたものではない。その後、担当者の方に、山田町では固定された施設としてつくられている、それにお金を使われているらしいという噂があり、それから山田町に照会したという事実があるので、事前の段階で県が知っていてこういうことをやることを容認したというものではない。
 その後確認して、建設ではなかったかという疑念は持った。持ったうえで、3月までいろいろ整理して4月5月の完了時点で山田町にリースの関係や組み立ての関係の文書回答をいただき、山田町の回答がリースであるということで、県としてはそれを認めたということである。
 なおそれについて、結果として不適切ではないかというご指摘は当然その通りだと思う。
 建設を認めないという趣旨というのは、財産の取得を認めないという趣旨であり、これは最終的には壊すという前提だったもので、2年後にはなくなるということも1つの要因ではなかったかと現在は推測している。

【斉藤委員】
 御蔵の湯のことに関しては、宮古地域振興センターと山田町でいろいろやりとりがあり、山田町が「材料費・リースならできるのですね」ということで、確認してやった。これは町長の特命だったとも言われており、NPO法人だけでなく山田町の関わりの重大だと思う。しかし実際に御蔵の湯がつくられたら、あなた方がチェックして、リースならどこがリース会社なのか、オールブリッジなんていう全くデタラメな架空のリース会社だった。そういうチェックもしなかったらダメである。億単位のお金をかけてやったのだから。
 だから23年度の事業のデタラメさというのは、もっと早い時期にあなた方はチェックできたはずである。そういう意味で、御蔵の湯という問題は1つの転換点だった。


・リース費について

【斉藤委員】
 前回の委員会で高速ボートの問題を取り上げた。これはリース料の中に入っており、存在が確認できないとあるが確認できるのだと思うが。高速ボート1050万円、これは実際には購入したものだった、リースだったと。このリースの不適正支出の中身について示していただきたい。

【雇用対策課長】
 「リースの対象物件の存在が確認できない(受託者が直接購入)」という表現にしたのは、今回の補助事業の成果としての報告が、リースをしてその経費としてこれだけの支出をしたという報告であったが、今回いろいろ調査した結果、リース契約書に記載された件が同じ物がNPO法人が直接購入しているとすれば、リースの対象物件にあるが、それはそもそも必要があるのか、リースした物はどこにあるのかということで、請求してきたものを否定するという形で今回補助対象外という判定をしたので、回りくどい表現となってしまった。
 リースの除外した内訳だが、オールブリッジとリース契約を結んでいたもので、内容としては計8件、内容は、ゴムボート(50万円余)、災害対応機材一式(1600万円余)、スーパーハウス9連棟(630万円余)、御蔵の湯建物(2400万円余)、船外機(84万円余)、移動式高圧コンプレッサー(294万円余)、高速ボート(1050万円余)、除雪機(357万円余)である。このうち、当方で口座記録から契約書に載っている同じ物を受託者が直接購入したと確認したのは、災害対応機材一式1600万円余のうち150万円余、御蔵の湯、移動式高圧コンプレッサー、高速ボート、除雪機である。それ以外のゴムボート、災害対応機材一式の1400万円余、スーパーハウス9連棟(630万円余)、船外機については他の事業の実施状況から、その蓋然性が高いという判断をした。

【斉藤委員】
 このリースがまったくデタラメだったと。そもそもリース会社の実態がないから当然だと思う。だから大雪りばぁねっと。とオールブリッジとの契約書というのは偽造である。実際にNPO法人自身が購入した物も言われた通りで、これはまったく偽造になるのではないか。オールブリッジが関わったのはみんな偽装だということにならないか。

【雇用対策課長】
 あまり法律に詳しくはないが、法律論に入っていくといろいろ社会常識では当たり前と思っていても、当たらない部分があり、偽造ということだが、交付した相手方に対して偽りであれば偽造という法律的にはなるそうだが、このリース契約書の取り交わしは、オールブリッジと大雪りばぁねっと。の間で取り交わされた契約書であり、法律的には偽造と言えないらしいと理解している。

【斉藤委員】
 直接NPO法人が購入したのに、オールブリッジと契約したら偽造ではないのか。売り手はNPO法人に領収書を出している。御蔵の湯もNPO法人が直接発注しているからそうである。オールブリッジが介入する余地は全然ない。ただ、あなた方をごまかすためにそういう契約書をつくったと。それはまったく事実に反するものではないか。
 オールブリッジがまったくの幽霊会社だという実態を把握したのはいつか。

【雇用対策課長】
 24年11月1日である。

【斉藤委員】
 あまりにもお粗末な話である。完全に事業が破たんしていた時である。これまであなた方が見抜けなかった平成24年3月の完了検査でさえこれだけの問題を指摘していて、この鍵を握ったのはオールブリッジだった。


・完了検査のあり方について

【斉藤委員】
 現金出納帳も領収書もなかった、それを完了検査でどうごまかしたのかお聞きしたい。おそらく領収書も何も偽造したのではないか。ただ、それにあなた方がめくら判を押したとすれば責任は重大ではないか。どうやって完了検査をすり抜けたのか。いま完了検査の領収書を調べたらまったくデタラメだったということになっているのではないか。

【雇用対策課長】
 関係等書類の整理状況として、検査・確認するものができないという記載があるが、今回の再精査の際には、山田町から再度証拠書類の提示を受け、そのコピーとして全部見たが、領収書類はある。当時の指導事項の趣旨は、そういったことから、推測だが、まったく整理されていなかったと、支出内訳というか、この証拠書類を出してくださいと言われれば出せない状況、どこにあるか、この山の中に入っていますという状態ではなかったかと推測される。

【斉藤委員】
 後から分かったのは、現金出納帳も領収書なかったということで、何かに集めてごまかしも含めてやったと思う。


・契約変更の実態について

【斉藤委員】
 平成23年度は5回の契約変更があるが、第4回で5000万円の契約変更、5000万円きっかりの契約変更ということ自体異常だが、第5回が1億7000万円ぐらいの契約変更になっている。これは不足払い、使い切ってしまって、不足補てんの契約変更だったと私の調査ではそうなっているが、調査したか。

【雇用対策課長】
 この契約変更にあたっては、県との補助金交付契約も変更しており、その中においては、不足払いということは確認されていない。
【雇用対策・労働室長】
 最終的に今回のNPO法人が倒産したことによる裁判で、4億3000万円以外に2億円ぐらい赤字があり、債権者になっている。そういう債権者がいるということは、23年度末の時点でも、現段階から見ると、委託料を超えた債務が生じていたのではないかということは今想像できることだろうと思う。
 ただ、県の方は、NPO法人についての監督権限などがないので、預金通帳をもって追いかけるというような調査はしていない。そういう意味で、把握していなかったということである。

【斉藤委員】
 平成24年度がなぜ発覚したかというと、7億4000万円の事業費を使い切って、給料を払えないというので破たんした。実は、そのパターンは23年度から起きていたと指摘している。それが12月20日の契約変更、きれいに5000万円。そして1月25日に5回目の契約変更がやられる自身が異常ではないか。これが雇用人数が変わっていないのに、1億7000万円と。これを繰り返し指摘いるのに、まじめに仕上げようともしないということ自身がおかしい。
 そういう意味で、23年度にNPO法人が破たんしたほとんどの問題は出ていた。そこできちんと県が対応していれば、少なくとも23年度だけで問題は処理できた。それを見過ごして、24年度の5億円を超えるような不正支出につながってしまった。本当にこれは許されない。あなた方の検証もきわめて不十分。議会でこれだけ具体的に指摘されているのに、まじめに調べようとしなかったら真実を隠そうとしているということになる。もっとまじめに、ここで取り上げられた指摘・疑惑については、きちんとやると。それでこそ教訓が出てくる。部長、いかがか。

【商工労働観光部長】
 これまでも議会で議論いただいたことも踏まえ、最終的に全容解明に向けて、県としても最善を尽くしていきたい。