2013年10月16日 決算特別委員会
知事に対する総括質疑大要
【斉藤委員】
日本共産党の斉藤信でございます。被災者の切実な願いを踏まえて知事に大震災の復興の課題について質問します。
1.被災者のいのちと健康を守る「命綱」となっている医療費・介護保険利用料の免除措置の継続について
知事は、昨日の答弁で、被災者の医療費、介護保険利用料等の免除措置について、「平成26年1月以降についてもこれまでと同様、県内統一した財政支援を継続する」と、平成26年12月までの1年間延長を表明したことを高く評価したい。
今後の復興を進める上で、何よりも被災者のいのちと暮らしを守り、生活再建を最優先に進めることが必要です。
今年度の免除対象者数、免除総額はどう見込まれるでしょうか。
【達増知事】
推計を含んだ粗い数字ではあるが、免除者数、国保24000人、後期高齢者13000人、介護4000人、障がい者20人、計約4万人。
県所要額、国保5億5500万円、後期高齢1億3100万円、介護1600万円、障がい100万円の計7億円と報告を受けている。
【斉藤委員】
被災者の免除総額は42億9000万円になるのではないか。
【達増知事】
その通りです。
【斉藤委員】
被災者にとっては42億9000万円余の免除総額になるということで大変重要なことです。
震災復興を考えるうえで、被災者の切実で深刻な実態というのを共通認識にして進めることが重要だと思います。
大震災津波から2年7カ月が経過しました。被災者のおかれている実態はどうなっているでしょうか。応急仮設住宅、みなし仮設住宅、県内での避難生活などピーク時との比較を含め示していただきたい。震災関連死、震災関連の自殺、仮設住宅での孤独死はどうなっているでしょうか。
【達増知事】
被災者の置かれている実態について、本年9月30日現在、応急仮設住宅27202人、みなし仮設住宅8314人、県内の在宅避難者15524人、さらに災害公営住宅に321人となっており、ピーク時に比較し、応急仮設住宅は4526人、みなし仮設住宅は3792人、県内の在宅避難者数は1004人それぞれ減少している。
本年8月31日現在、災害関連死の認定者数は413人、震災関連の自殺者数は内閣府自殺対策推進室の公表によると28人、一人暮らしの方で応急仮設住宅で亡くなられて発見された方は県警本部生活安全企画課調査で17人となっている。
【斉藤委員】
津波で助かっても、その後震災関連死で417人という数は大変深刻だと思う。
いま避難生活をしている方々は、4畳半二間のプレハブ仮設住宅で、被災者はストレスをため、頭痛やめまいなど「仮設病」といわれる事態も広がり、健康を悪化させています。健康悪化の状況をどう把握しているでしょうか。
県保険医協会が8〜9月に実施した「医療費負担にかかる被災者アンケート」に深刻で切実な被災者の実態と声がたくさん寄せられています。知事にも届いていると思いますが、どう受け止められたでしょうか。
【達増知事】
岩手医大が平成24年度に実施した沿岸4市町の被災者の健康調査によると、応急仮設住宅の住民は、睡眠障害のある者の割合が高くなっており、岩手県心のケアセンターで対応した相談においては、めまい・頭痛などの身体症状や睡眠の問題を訴える方が多くなっていたところである。また被害の大きかった宮古市以南の沿岸6市町の平成24年度特定検診結果について、震災前と比較したところ、血圧や中性脂肪、肝機能なので保健指導や医療機関での受診が必要となった男性の割合が増えていた。このようなことから、心のケアセンターを拠点とし、心の健康に関する相談や訪問を行うとともに、全戸訪問等によりハイリスク者を把握し、食生活や運動習慣を改善するための健康教育や保健指導を実施するなど、引き続き市町村と連携し、被災者への健康支援を推進していく。
県保険医協会の被災者アンケートについては、多くの被災者がいまだ応急仮設住宅等で不自由な生活を余儀なくされ、健康面や経済面の不安を抱えているなど、依然として厳しい状況にあると認識している。
【斉藤委員】
被災者の命と健康が脅かされていると。本当にあらゆる万全の手立てを講じることが必要だと思う。
あわせて、当面の生活再建の支援策で、県議会でも請願が採択されましたが、福祉灯油・被災者支援灯油の取り組みについて。昨年度の取り組みの実績、今年度の灯油価格の状況、市町村の動向はどうなっているか。今年度も実施すべきではないか。実施する決意を含めてお聞きしたい。
【達増知事】
昨年度は、東日本大震災津波により甚大な被害を受けた沿岸地域の市町村が、高齢者世帯、障がい者世帯、または一人親世帯であって市町村民税の非課税世帯または生活保護世帯にたいし、灯油購入費等を助成した場合に、その経費の一部を補助する被災地福祉灯油等特別助成事業を実施し、12市町村16359世帯にたいし4089万4千円を補助した。
今年度の灯油価格は、春先から1800円前後で推移している。市町村の動向は9月末で、ほとんどの市町村では実施するかどうか検討を始めていない段階とうかがっているが、今年度においても県として市町村に補助を行うか否かについては、今後の灯油価格の推移や国による支援の動向を注視し、市町村の意向を確認しながら検討していく。
【斉藤委員】
県議会で請願が採択されたことを知事はどう受け止めているか。灯油価格は今後さらに上がる見込みである。市町村が県の動向を見ている。県がやるならやりたいというのが実態で、改めて請願採択の結果を知事としてどう受け止めているか。
【達増知事】
重く受け止めている。
【斉藤委員】
重く受け止めて、決断していただきたい。良いことは早く実施の方向を示して、被災者を励ましていただきたい。市町村は自力だけではなかなか大変なので県の動向を見ているので。
2.住宅の再建は最も切実な要求
【斉藤委員】
住宅再建の土台は持ち家の再建です。被災者の持家の再建はどこまで進んでいるでしょうか。住宅再建の県の方針、進まない原因・課題は何でしょうか。
【達増知事】
被災者生活再建支援金の加算支援金のうち、建設購入分を支給された方は9月末時点で3508件である。
現在地元での住宅再建を希望しながらそれができない原因としては、沿岸地域はリアス式海岸特有の平地が少ない地形であり、被災していない既存宅地が少ないこと、新たな宅地を造成する防集や土地区画整理事業には相応の時間を要することなどが挙げられる。県としては、被災者の方々ができるだけ自力で持ち家等による住宅再建をしていただけるよう、被災者住宅再建支援事業等により支援するとともに、住宅を自力で確保することが困難な方には災害公営住宅を提供するべく、その整備を進めている。
【斉藤委員】
県の持ち家再建、災害公営住宅、借家等の目標はどうなっているか。
【達増知事】
目標というのは建設戸数と承るが、災害公営住宅については約6000戸、持ち家の新規取得が約10000〜11000戸、持ち家の補修が約3000〜3500、災害公営住宅以外の賃貸が約3000〜3500という見込み戸数である。
【斉藤委員】
持ち家再建の計画・目標は10000〜11000戸と増えた。これは至難の業だと思う。土地の確保の困難もあるが、資金の確保も問題である。
住宅再建の県内の平均価格はどうなっているでしょうか。国の加算支援金、県補助、市町村の上乗せ補助はどうなっているでしょうか。
【達増知事】
平成24年度の住宅着工統計によれば、岩手県全体の一戸建て持ち家の平均工事費は2084万円となっているが、被災者が住宅を再建する際の費用という形では把握が困難である。
住宅再建にかかる支援制度の活用状況は、住宅の建設購入による加算支援金の申請件数が3508件、県と市町村が共同で補助する被災者住宅再建支援事業の申請件数が平成25年9月末現在で2483件、さらに市町村においても住宅の建設購入のほか、宅地造成や上下水道の整備への補助など、市町村それぞれ独自の施策を講じている。
【斉藤委員】
国の加算支援金が200万円、県と市町村共同で100万円、被災市町村は100〜300万円上乗せ補助を決めている。さらに住宅ローンの利子補給も250万円から高いところは700万円となっているが、災害公営住宅の1戸当たりの費用は現段階でどうなっていますか。
【達増知事】
県が整備している災害公営住宅で9月末までに工事発注の手続きを行ったもの8団地612戸の1戸あたりの平均工事費は1541万円である。
【斉藤委員】
建物だけで1541万円だと思う。造成費用を含めれば1900万円ぐらいになるのではないか。
災害公営住宅で1戸1500万円以上かかるというのなら、持ち家再建にさらなる100〜200万円の支援を行うことは、復興を進める上でも被災者を励まし、経済効率性からも、今後の維持管理費用からも効果的と考えますがいかがでしょうか。
【達増知事】
持ち家再建へのさらなる支援ということでは、災害公営住宅は住宅を自力で確保することが困難な方々に提供される公的な住宅で、将来的には被災者だけではなく低所得者や高齢者などで住宅に困窮する方々にも必要となるものなので、一定の公営住宅整備は必要と考えているが、持ち家での再建を望む被災者の意向は復興に弾みをつけるものであり、支援の充実を図ることが重要と考えている。
被災者生活再建支援制度の支援額の増額と、震災復興特別交付税などの地方財政措置による支援拡大を引き続き国に対して要望していく。
【斉藤委員】
財源がどこから出るかというのが一番の問題で、経済効率性・維持管理費を考えたら、持ち家再建にさらに支援して、持ち家が進むようにすることが必要だと強く要望しておきたい。
用地の確保も課題です。防集、区画整理事業、漁業集落移転事業等で、今年度、来年度、再来年度の住宅用地確保の見通しはどうなっているでしょうか。
【達増知事】
防災集団移転促進事業は、現在計画している53地区約2800区画のうち、今年度末で18地区(約2割)、26年度末で延べ37地区(約4割)、27年度末で延べ49地区(約9割)の区画の造成工事が完了する見込みである。
土地区画整理事業は、現在計画している18地区約5200区画のうち、今年度から一部の造成工事に着手し、26年度末で1地区(約1%)、27年度末で延べ8地区(約4割)の区画において住宅建築が可能となる見込みである。
漁業集落防災機能強化事業については、宅地造成を計画する29地区約400区画のうち、今年度末で14地区(約3割)、26年度末で延べ23地区(約5割)、27年度末で延べ28地区(約7割)の造成工事が完了する見込みである。
【斉藤委員】
持ち家の用地確保というのは災害公営住宅よりも遅れると。来年になっても半分もいかない。本当に切実な課題で、それもこれは計画で、用地確保が進まなければさらに遅れるということなので、用地確保の特別の手立てを国にも強く求めるべきだと思う。
来年以降の持ち家再建のピークを迎えますが、供給体制はどうなっているでしょうか。「岩手県地域型復興住宅」の取り組みはどうなっているでしょうか。
【達増知事】
持ち家の供給体制は、住宅着工統計によると、平成24年9月から1年間の沿岸12市町村の住宅着工戸数が3326戸で、平成22年度の814戸と比較して約4倍の住宅が着工できる供給体制が確保されている。
岩手県地域型復興住宅の取り組みについては、現在岩手県地域型復興住宅推進協議会に属する生産者グループが139グループあり、これまで390戸の地域型復興住宅が建設されている。
【斉藤委員】
いま大手ハウスメーカーに頼んでも1年2年待ちである。さらにこれから建設需要が高まってくると。だから2年待って家建てようと思ったら、さらに1年待ち2年待ちそれ以上になってしまう。本当にこの供給体制を県が真剣に考えないと、遅れている上にさらに遅れてしまうことになりかねない。そのことを知事はどう考えているか。
【達増知事】
いろいろ宮城県でも、住宅建設やリフォームが盛んになり、岩手からも人材がとられる等、さまざまその時の事情を報告を受けており、職人や資材の不足で生活の再建が著しく遅れることがあってはならないわけなので、関係者でそういった情報を共有しながら、また国にたいして全国的な人や資材の調整について働きかけている。
【斉藤委員】
住宅の二重ローン問題の解消も重要な課題です。二重ローンを抱えている被災者をどう把握しているでしょうか。これまでの相談件数、債務整理申し出件数、債務整理件数を示していただきたい。
【達増知事】
個人債務者の私的整理ガイドラインについて、10月4日現在で本県における相談件数は656件、債務整理開始の申し出件数は134件、債務整理の成立件数は153件となっている。
県はこれまでの二重ローン問題の早期解決に向けて積極的な支援を行うよう国にたいし要望してきたところだが、県議会での請願採択も踏まえて、法整備を含む新たな仕組みの構築についても要望内容に追加した。今後とも、国への要望とあわせ引き続き金融機関や岩手弁護士会等関係機関と連携した積極的な周知を行うとともに、被災者からの相談に適切に対応していく。
【斉藤委員】
二重ローンを抱えている被災者は数千人規模だと思うが分からないか。
【達増知事】
いま手元にある資料では、岩手県の個人版私的整理ガイドラインの問い合わせ件数で、平成23年8月22日から25年10月4日までで656件となっており、ひとつ参考になるかと思う。
【斉藤委員】
この二重ローンの制度は、残念ながら一定の収入があれば最初から閉ざされるということで、東北弁護士会が改善について厳しい決議をあげている。岩手弁護士会ともこの点では懇談をして対応をとられていると思うが、二重ローンの課題・改善策に県はどのように取り組んでいるか。
【理事兼復興局副局長】
東北弁護士会連合会において、二重ローンについては、被災ローンの処理について、被災ローン減免制度に関して、被災直後から利用は可能で、中立の期間が運営を行い、かつ返済計画案については、法的拘束力をもつ法制度を新設することで提言しており、我々も国にはそのように県議会の意見書も踏まえ要請している。
【斉藤委員】
国はこの制度をつくったときに債務整理1万件を目標にした。全国でまだ500件ぐらいである。国の目標から見ても全然少ない。まったく制度が歪んでいると言わなければならない。この改善を強く求めなければ、住宅再建の入り口で道を閉ざされてしまうのではないか。改めて、この打開策に取り組んでいただきたいと思うがいかがか。
【達増知事】
住宅再建のピークがこれからということを答弁したが、今からこの住宅再建はますますニーズが高まってくると思うので、それに間に合うように国に対しては制度の改善について訴えていきたい。
3.災害公営住宅の早期建設について
【斉藤委員】
8月8日のロードマップの改定で、残念ながら来年度分で1,753戸も完成戸数が減少することになりました。その要因・理由は何でしょうか。
用地確保・内諾の箇所、戸数・率はどうなっているでしょうか。
【達増知事】
遅れた要因については、用地の確保が難航している団地があること、資機材・労働者の不足の発生、土地区画整理事業等の大規模造成区域内での整備となった団地があることなどが挙げられる。
災害公営住宅の9月末時点の進捗状況は、全体6086戸のうち、地権者からの測量の内諾を得たものが106団地4181戸(68.7%)、うち設計に着手したものが83団地3342戸(54.9%)、うち工事に着手したものが22団地952戸(15.6%)、完成が9団地251戸(4.1%)となっている。
県としては今後、災害公営住宅の整備が現在の復旧・復興ロードマップで示した工程により、確実に進めることができるよう鋭意取り組んでいく。
【斉藤委員】
地権者の内諾が68.7%で3割強がまだ内諾を得られていないのはかなり厳しい状況である。この得られていない理由は何か。
【理事兼復興局副局長】
1つには、価格の交渉がうまくいかないと。それから、さまざまな分割協議等がうまくいっていないこともある。
【斉藤委員】
被災者の希望をくみいれた公営住宅の建設が重要です。漁業集落等に必要な木造公営住宅、1戸建ての公営住宅の建設計画は全県ではどうなっているでしょうか。
【達増知事】
漁業従事者用の置き場、商業施設の併設、ペット飼育に対応した仕様などの対応を市町村と十分に協議を行い、必要に応じて行っている。駐車場の台数、緑地の配置、車いす対応住宅の戸数等も同様である。
木造の災害公営住宅については、県では野田村で26戸建設するほか、市町村では漁村集落等の比較的規模の小さな団地で、地域の個別のニーズを勘案して木造1戸建てを整備しており、県全体では557戸の木造の災害公営住宅を建設することとしている。
【斉藤委員】
最大限被災者の要望に応えた公営住宅、とりわけ木造を活用していただきたい。
集合住宅の場合も内装の県産材の木造を活用すべきと考えますがどうなっているでしょうか。
【達増知事】
県が整備する災害公営住宅については、8月に完成した大槌町吉里吉里団地において、内装下地材の一部に県産材を使用したほか、その他の団地においても県産材の使用に努めることを受注業者に契約書で求めるなど、県産材の積極的な活用に取り組んでいる。
4.雇用確保対策、人口減少の問題について
【斉藤委員】
いま被災地は深刻な人口減少、大槌は21%、陸前高田は15%、山田は12%と。
こうした中で、雇用確保対策が必要だと思うが、被災地の緊急雇用、がれき処理の数はどうなっているか。
【達増知事】
沿岸部の人口減少傾向は依然として続いているが、有効求人倍率は平成24年度前半に1倍を超えるなど、雇用情勢は着実に改善してきたところであり、今年度は民間への就職を促進するため、緊急雇用創出事業の規模を縮小したほか、職業訓練の実地やマッチングの促進に取り組んでいる。
来年度は、緊急雇用創出事業の規模縮小に加え、災害廃棄物処理業務も終了するので、現在従事している方々を対象としたアンケート結果を踏まえ、今後ハローワークや市町村と連携して再就職に向けきめ細かく支援していくこととしている。
こうした対策などにより、地元では安定的な雇用を確保し、人口流出を防止し、地域の復興につなげていく。
【斉藤委員】
被災者の見守りなど必要な緊急雇用があるということを被災地から強く要望されてきた。
ぜひ画一的に削減するのではなく、必要な緊急雇用を守りながらミスマッチの解消に取り組んでいただきたい。
5.復興特別法人税の廃止について
【斉藤委員】
復興を進める上での財源、安倍内閣が復興特別法人税9000億円を大企業減税にまわすと。こんなことは被災地として許されないと思うが、知事の見解をお聞きしたい。
【達増知事】
政府は現在、復興特別法人税の前倒しでの廃止を検討しているわけだが、本年1月の復興推進会議において、平成23年度から27年度までの集中復興期間の財源として25兆円程度確保するとされており、この財源規模は復興を着実に推進する上で必要不可欠であり、仮に復興法人税を前倒し廃止する場合にあっては、それに見合う財源が明確に確保されなければならないと考えている。