2013年10月17日 決算特別委員会
政策地域部に対する質疑大要
・JR山田線・大船渡線の早期復旧について
【斉藤委員】
JR山田線について、JR東日本は、震災直後は社長が「責任をもって復旧させる」と表明していた。なぜこれが変わったのか、いつ変わったのか。
その後3つの言い分を言っていた。@安全性の確保、Aまちづくりとの整合性、B費用負担―。これについては、3月の予算委員会のときに知事は、「大方解決しつつある」と。少し甘いのではないかと指摘したが、この3つの課題はどうなっているのか。知事が言うように解決しつつあるのか。
【交通課長】
JRで課題としているのが、@津波からの安全性の確保、A鉄道復旧とまちづくりとの整合性、B費用負担―の3点。このうち、Aについては、駅の移設といったもので一部未調整の課題が残っているが、おおむね課題はしぼられつつある状況にあるということである。Bについては、国では、例えば、まちづくりに伴う鉄道のかさ上げといったものについては、まちづくりの事業と一体的に実施するということで支援するという意向を示しているということなので、先ほど申し上げた3つの課題については、方向性としてはおおむね解決がつきつつある方向にきているとは認識している。
JRの社長の発言だが、復興調整会議等の過程を経ている中で、課題の解決の必要というのがJRから示された。さらに、昨年11月の山田線復興調整会議において、今度は地元の利用促進の検討が必要だという要請がなされたという状況である。
【斉藤委員】
震災直後に社長はちゃんと復旧を言明した。復興調整会議も本当は復旧を前提にしてやらなければならないのに、その復興調整会議をやったら復旧の言明がなくなったと。JRの背信行為だったのではないか。
費用負担の問題で、太田国交相がきたときに、たしかにリップサービスした。しかし正規の場、国会の場や記者会見等でしゃべっていないのではないか。国交省の方針としてやると、負担については国がしっかり措置すると言えば、JRの逃げ道はなくなると思う。そのことを改めて確認したい。そして昨年の12月に今度は利用促進を持ちだした。復旧を前提で議論するならいいが、復旧も言明しないで新たな課題を持ち出すというところにJRの問題があるのではないか。2年7ヶ月経過している。まちづくりの取り組みは始まっている。
【政策地域部長】
JRの社長が当初「復旧をさせる」ということをその後JRとしては事実上変更していることについては、我々も遺憾なことと思っている。当初JRとして復旧を明言したにも関わらず、その後の交渉の過程の中で、いろいろな課題を提起しながら事実上復旧宣言が引き延ばされている現実、震災から2年7ヶ月以上経過している状況になっている。我々としてもこの状況を打開したいということで、これまでもJRといろいろ協議を重ねてきた。現時点でJRから提起されている最大の課題が地元の利用促進ということと認識しているが、これについても沿線の市町と連携しながら、地元から具体的な提案を出すべく鋭意検討を進めている。
【交通課長】
財源負担について、国から正式な言明があるかということだが、これについては個別の課題調整の過程の中で、具体的に財源を何に充てるかという係数ごとにやっていく中で、それは国の支援が入れられるということを復興庁岩手復興局との話し合いの中で入れることも可能だということで、個別箇所ごとに調整を進めていて、それがおおむね生まれつつあるという状況である。
【斉藤委員】
事務レベルでそういう議論になっているということは評価したいが、残念ながら国会でも大臣の正式な方針として言明されていないので、正式に言明することが大事なので。そうするとあとはJRだけである。ところが、国会の議論を見ても、国とJRはもたれ合っている。事務レベルでそういう話をしているといっても国交省の方針で示されていないので保障がない。ここをきちんと岩手県としても詰めていただきたい。
JR東日本は3月期の決算で、利益剰余金1兆4084億円、1年間で702億円増やした。いわゆる内部留保の中身である。それだけの体力があるときに、2年7ヶ月経って復旧を言明しないというのは厳しく追及されるべき課題だということを指摘しておきたい。
大船渡線については、やっと復興調整会議が最近開かれた。JRはどういう提案をしたか。
【交通課長】
先月5日の大船渡線復興調整会議で一番のテーマ、議論になったところは、JR側から現行ルートでの復旧は引き続き検討しながらも、陸前高田市の脇ノ沢地区から小友地区のルートについて、津波で浸水しない山側にルートを移設することも検討したいという提案があった。
【斉藤委員】
陸前高田市長にもお会いしてきたが、憤慨していた。今になって新たなルート変更と。これは用地交渉しなければならない。これから。これは全く先延ばし対策でしかない。今までルート変更については、2年7ヶ月経って何も言ってこなかったのに、いざこれからというときに、新たなルート変更を何の根拠もなく出してくるとはどういうことかと。BRTも、先ほど議論あったように、代替交通を確保しないで、無理やり代替交通として仮復旧した。今度は新たなルート変更ということで、用地交渉に何年かかるか分からないような提案をすると。おかしいと思わないか。
【交通課長】
私も同じ認識である。この復興調整会議の場で、私や陸前高田市の方から申し上げたが、震災から2年半が過ぎるタイミングで、なぜ新しいルートを提案してくるのか、遅すぎると申し上げた。それから、費用負担、新しい線路を敷くに等しい新ルートということになるので、そうするとその費用を誰が負担するのかという話になってくる。その会議の場ではJR側から自社で負担するという話はされていない。
用地の問題もあるということで、私も非常に憤慨し、言葉が悪くて恐縮だが、「今までの積み重ねてきた議論をぶん投げてそういう提案をするのか」ということを強く申し上げた。JRの担当部長からは、「ぶん投げるとは何事か。ぶん投げているのではなく、今までの案と並行して検討対象に加えたい」という話がされた。
【斉藤委員】
2年7ヶ月余が経過した。被災地は、新しい鉄道のルートと新しい駅舎を中心にまちづくりの事業をすでに始めている。そういう意味で、そして三鉄も来年の4月には全線開通すると。こうしたときに復旧も言明しないということがどれほど復旧に背を向ける障害になっているのか。
毎月JRに知事や副知事、部長が駆けつけるような取り組みをしなかったら、復興が遅れると思うがいかがか。
【政策地域部長】
これまでも知事・副知事については、JR本社にも何度か足を運びそういったことは強く申し入れている。いずれ今後においても、詰めるべき点はしっかり事務的にも詰めながら、JRや国にたいしても鉄路復旧を求めていきたい。
【斉藤委員】
ぜひ緊迫感をもって、毎月足を運ぶぐらいの迫力でやらなければいけない。
・被災地の交通確保について
【斉藤委員】
被災地の交通確保対策の昨年度の実績はどうなっているか。
今年度は、1市町村あたり4500万円と枠が広がったが、今年度はどういう点で拡充されているのか。
【交通課長】
国の特定被災地域公共交通調査事業ということで、この事業については、宮古市など8市町村がこの事業を活用し、路線バスや乗り合いタクシー等の実証運行だとか、応急仮設住宅の住民等へのニーズ調査といったことを実施している。
この実績については、本年2月1日に、全応急仮設住宅団地へのアクセスが確保されたというところである。
拡充の内容だが、昨年度は1市町村あたり3500万円だった。今年度からは、有償により実証運行を行う場合という条件がつくが、4500万円に引き上げられた。今年度は、拡充されたことを受け、市町村においては、路線バス等の実証運行に加え、宮古市だとか山田町においては、実証運行を行っている路線の効果の検証だとか、市町村の交通ネットワーク構築に向けた路線分析等を行っている。
【斉藤委員】
被災地の復興の特徴は、かなりの規模で高台移転が行われるということである。そうすると、復興しても分散型のまちづくりにならざるを得ない。その分散型の中でコンパクトシティをめざすとなれば、新しい交通ネットワークが形成される必要がある。いま国の補助事業でやっているが、ある意味では恒常的な新しい交通ネットワーク構築の補助制度や新しい制度が必要になってくるのではないか。
【交通課長】
国の調査事業だが、23年度から25年度までの3カ年ということで国が事業化している。現状8市町村がこの事業を活用して、住民の足の確保を図っているということで、仮にこの事業が今年度で打ち切りということになると、被災地としては非常に困るということは我々としても十分認識しているところであり、国には、ぜひこの制度を存続してほしいということでお願いしている。国の概算要求の状況では、引き続き予算を措置するということで要求は出ているということで、その方向で予算措置がされることを強く願っている。
【斉藤委員】
この事業の継続と、高台移転という形で新しいまちづくりが形成されるので、そこを展望しながら恒常的な対策も検討していただきたい。
・TPP交渉について
【斉藤委員】
10月9日付の河北新報は、「聖域崩す二枚舌許されぬ―また二枚舌か。農産物の貿易自由化で何度も煮え湯を飲まされてきた農業関係者はそう受け止めたに違いない」、岩手日報10月8日付、「方向転換は公約に背く。聖域を自ら切り崩す姿勢を示すことで、交渉の主導権を確保することが狙いと言うが、これでは公約違反と言わざるを得ない」と、かなり厳しい指摘が地方紙からされている。
自民党のTPP対策委員長が「重要5品目も検討対象だ」と述べたことにたいして、知事を先頭に、北海道・東北の知事が連携して直ちに抗議するなり、撤回を求めるなりの行動が必要だと思うがいかがか。
【政策監】
重要5品目については、委員ご指摘の通り、自民党のTPP対策委員会ではもちろんだが、衆参の農林水産委員会においても「関税撤廃を認めない」という決議がされている。また安倍総理も、TPP交渉参加表明の際にも、当該決議を前提として交渉に向かっていくと言明されており、昨日今日の国会においても同様の発言をされているということから見て、必ず守られるべきものであると認識している。特に重要5品目のうち、米・牛肉・豚肉・乳製品、本県にとっては関係する農業者も多く、農業生産額ベースでも相当のウェイトを持っている非常に重要な品目であると思っている。そういったことから関税撤廃ということになれば、本県への農業には大きな影響が生まれ、農村社会にとっても大きな影響になるということで、これまでもやってきたことだが、引き続き北海道・東北知事会や全国知事会等を通じて要請を続けていくという必要性については認識している。
【斉藤委員】
河北新報でもそういう危機感である。
自民党の西川TPP対策委員長だけではなく、「重要5品目を関税撤廃の例外から抜けるか抜けないか検討させてもらわなければならない」との発言については、石破幹事長、菅官房長官が直ちに追認している。
本当に岩手の農林水産業、地域経済の死活に関わる問題だと思うが、6月17日に影響数値の変更も行ったが、変更した結果はどうなっているか。本当に5品目が崩されたら、岩手の農林水産業・地域経済は守られると思うか。
【政策地域部長】
県の試算によると、生産額約3000億円だが、仮に関税撤廃されたとすれば、その約3分の1にあたる1000億円程度が減少すると試算している。非常に本県の一次産業にとっては危機的な状況を迎えるということにつながると考えているので、これまでも各東北知事会等連携しながら、国等にも申し入れはしてきたが、今後ともそういった取り組みを速やかに行っていきたい。
【斉藤委員】
農林水産物の生産減少額で1015億円、経済波及効果は1438億円余と影響額の試算は増額で変更された。本当に危機感をもってやるべきである。
・被災市町村への職員派遣について
【斉藤委員】
昨年度・今年度の必要数と実績はどうなっているか。
予算・決算額、事業費から見て、必要な職員数はどう試算されるか。
【市町村課総括課長】
昨年度の実績は、必要数366名にたいし321名を派遣した。今年度は10月1日現在、611人にたいし573人という状況で、昨年比252人増えているが、依然として38人ほど足りていない。
試算だが、例えば震災前の平成22年度と25年度を予算額で比較し、大槌町だと約11倍ほど増えている。一方で、職員数を見ると、普通会計部門で大槌町だと、22年度は111人だったが、現在応援職員を含め252人と2倍強という状況である。ただ予算が大きくなっても、一部を外注してうまくやることにより必要職員数を減らすという面がある一方で、例えば用地取得などになると、人海戦術でやらなければならないということもあり、予算の増以上に職員が必要になるという両面があり、なかなか予算額等から一律に試算するというのは難しい面もある。そのため、我々としては、連絡会議等を開き情報を集めるとともに、沿岸部に足を運び、緊密に連絡をとることにより随時必要な職員数の確保に努めている。
【斉藤委員】
大槌・陸前高田に先日行ったときに、昨年度の決算額が1000億円規模で、2000人働いている盛岡市並みである。公共事業の額は比率的にはもっと大きい。そういう意味では来年・再来年さらにピークを迎え、もっと必要数が増えるのではないか。その点で来年の見通しをどのように見ているか。
国土強靭化、オリンピックの影響についてもかなり危機感を持っていた。ゼネコンがオリンピックにも対応しなければならないと腰がブレて、深刻な話である。知事も推進委員会でかなり強調はしているが、復興最優先ということでないと、これから事業を発注するときに、発注もできない、人も確保できないということになってしまうのではないか。
【市町村課総括課長】
来年度の見通しだが、ご指摘の通り27年度あたりがピークを迎えそうだということで、来年度以降も引き続き今年度並みかそれ以上で推移するものと思っている。対策だが、まずは県内でできることをしっかりやるということで、県庁として任期付き職員を新たに追加で採用してそちらを派遣すると。また県内内陸市町村にたいしては、OB職員を新たに発掘していただいたり、今も職員を派遣いただいているが、今度は新たに目標値を定めて、それに向かって協力していただこうという取り組みをしていきたい。また全国の自治体から派遣をお願いするという意味では、今年度同様に全国をまわり、御礼と継続した支援をいただけるよう努力したい。また、民間企業などといったところからの派遣も増えてきているので、総務省・復興庁などと協力して発掘していきたい。
国土強靭化やオリンピックの影響だが、たしかに新聞報道等あるが、建築資材の高騰や技術職の不足ということで、非常に懸念する声があがっており、我々としても大変不安な面はあると思っている。そのため、我々としては、被災地の復旧・復興の状況をできるだけ分かりやすくアピールする形で情報発信に努め、ご理解いただけるよう努めていきたい。
・ILC誘致の取り組みについて
【斉藤委員】
日本学術会議の提言は深く受け止める必要があると思う。「国家財政がひっ迫している中で、長期にわたる巨額の財政負担の問題をいかにして解決していくのか」という点について示されていないと。「ILCの資源配分により国家的課題の取り組みに影響が及んだり、科学技術立国を支えるべき諸学術分野の停滞を招いたりするようなことがあってはならない」「国際的な分担もまったく不明確。経費の国際分担については現状では白紙状態」だと。こういった中で、経済波及効果についても、「ILCが担う高エネルギー素粒子物理学が基礎科学の中でももっとも基礎的な分野であり、自然の根源的理解をめざした地のフロンティア開拓の営みである。だから高度に特殊化されたILC関連技術が直ちに一般民生用の技術に応用されたり、製品開発に直結されるとは考えにくい。ILCの誘致の是非に候補地を中心とした過大な期待があるようだが、ILC計画の誘致の是非に関して冷静な総合的判断が求められる」という指摘である。
消費税増税でアベノミクスが破たんして経済が落ち込んだら、ILCどころではないと思う。これが一番の心配である。そういう中で、学術会議の提言の中身をどう受け止めて、慎重に必要最小限とすべきではないか。
【首席ILC推進監】
学術会議の提言は委員ご指摘の通り、今後の課題を浮き彫りにしたかと思っている。知事も一般質問でお答えしているが、一部補足すると、今回の提言は、政府に対して必要な調査費を措置した上で、ご指摘のような課題について検討することを提言したものである。
経済波及効果については、さまざまなところで試算しており、東北のILC推進協議会でも試算している。それはイノベーションというものを含んではいないので、あくまでも建設費ということで、ILCが建設されることにより産業にどのように影響するかということを数値化したものではない。
一方学術会議の提言については、ILCを実現するために検討していかなければならない事項なので、文科省がそれに対して概算要求で5000万円を要求したり、作業部会で検討してその上で判断するとしている。
さらに、国家財政については、非常に厳しい状況だが、その中で巨額の経費を要するILC建設なので、東北の復興や日本再生に必要な投資であるということを県としても東北のみならず、いろんな方々にご理解を得ることが必要だと思っている。
必要最小限にすべきということだが、震災からの復興が最優先ではあるが、長期的な視点から県の復興計画の三陸創造プロジェクトに位置付けている。そのことも踏まえ、学術会議を受けた政府の動き、国際的な研究者の動向などを注視しながら、適切に必要な取り組みを行っていきたい。