2013年10月18日 決算特別委員会
医療局に対する質疑大要


・被災3県立病院の状況と再建整備について

【斉藤委員】
 高田・大槌・山田の3県立病院・仮設診療所の医師体制、患者数の状況はどうなっているか。
 再建整備の具体的な見通しを示していただきたい。

【医師支援推進監】
 医師体制だが、平成25年9月1日現在の常勤医師数は、高田病院は、内科6名、呼吸器科1名、小児科2名、眼科1名の計10名。大槌病院は、内科のみ5名。山田病院は、内科2名、外科1名の計3名配置されている。震災前の23年3月1日現在の医師数と比較すると、高田が4名、大槌が2名、山田が1名それぞれ増加している。
【医事企画課総括課長】
 患者数の状況だが、平成25年4月から8月までの1日平均外来患者数を前年同期と比較し、高田病院は191人で前年同期は228人、大槌病院は90人で前年同期は91人、山田病院は93人で前年同期は99人となっている。高田病院の1日平均入院患者数は29人で前年同期は30人となっている。
【経営管理課総括課長】
 被災3病院の再建整備の見通しだが、先般公表させていただいた被災3病院の再建方針において、大槌・山田病院については28年度の開院、高田病院は29年度の開院をめざして再建整備を進めていくということとしている。
 現在の進捗状況は、大槌病院は、本年度に用地整備を実施する大槌町と調整を図りながら、病院設計に着手した。現在、設計業者や病院とともに設計作業を進めている。山田病院・高田病院は、本年度から来年度にかけて、地元市町において用地整備を進め、これと並行して病院設計を行うこととしており、現在設計準備に向けた検討を病院とともに進めている。現在のところ3病院とも計画通り順調に進捗しており、引き続き各市町と緊密に連携しながら、早期再建に向け取り組みを進めていく。

【斉藤委員】
 被災した仮設病院という状況の中で大変奮闘していると思う。高田病院は、平成24年度1億3535万円の純利益をあげているという点も貴重な成果だと思っている。
 再建整備に関わって、高田病院だけが平成29年度開院の計画である。この間陸前高田市長にお会いしたときに、工事用の道路工事が遅れるために遅れると。もう2年7ヶ月経過し、これから3年4年と経過するというのは、本当に被災地にとっては最大のセーフティネットなので、何とか同じように高田病院も28年度開院を目指すことはできないのか。その具体的な課題・障害があれば示していただきたい。

【経営管理課総括課長】
 高田病院の建設予定場所、移転先だが、こちらが民有地であるほか、病院に隣接して市の保健福祉総合センターや小学校、住宅用地の整備が予定されるなど、大規模な土地造成となることから、他の2病院の翌年度となる29年度の開院と見込んでいる。

【斉藤委員】
 確実なラインで言っていると思うので、1日も早くというのが被災地の切実な声・実態である。
 被災したからこそ、新しい希望の持てるようなそういう病院をつくりたいという熱意を医療関係者はもっているので、きちんと医師・医療関係者の声を反映した、魅力のある復興を象徴するような病院建設に取り組んでいただきたい。

【医療局長】
 高田病院については、被災前から地域の中で特色ある医療を展開してきた。今後とも再建後についても、あるいは福祉・介護関係者等とも協議しながら、高田病院に求められる機能を可能な範囲で対応していけるように、そういったことを設計のときにも意見交換しながら病院づくりに努めていきたい。

【斉藤委員】
 先ほど高田病院は医師10名で、救急患者数も4月から8月で848人対応しているので、こうした診療機能もぜひ継続できるように努力していただきたい。


・看護師の増員について

【斉藤委員】
 たくさんの委員からこの問題について質問があった。県議会でも、全会一致で「県立病院の職員定数の拡大、医師・看護師など医療従事者の大幅な増員を求める請願」が採択された。これはきわめて画期的だと。
 まず医療局長にこの請願採択をどう受け止め、どう取り組もうとしているかお聞きしたい。

【医療局長】
 県立病院を取り巻く環境は、高齢化や医療の高度化により近年大きく変移している。そういった中で、看護師など医療従事者の業務量は増加している状況であることは認識している。
 こうした状況のもと、現在策定中の次期経営計画においては、平成26年度から30年度までの5カ年間の職員配置計画について、看護師130名をはじめとする322名の増員を行い、必要な部門・部署への重点配置を行うこととしている。今般請願が採択されたことも踏まえ、この計画を着実に実行していきたい。

【斉藤委員】
 130人ぐらいでは足らないのではないかと思う。
 看護師の労働環境はどうなっているか。年休・生理休暇の取得状況、超過勤務の状況、この間の退職の要因別状況を示していただきたい。

【職員課総括課長】
 平成24年の年次休暇の平均取得日数は8.3日、生理休暇は2.7日となっており、平成23年に比較し、年次休暇は0.4日の増、生理休暇は0.2日の減となっている。
 平成24年度の超過勤務の実績は、職員一人当たり平均で月11時間18分となっており、23年度の実績と比較し、ひと月当たり18分増加している。
 退職者の要因別状況は、平成24年度の退職者151名について、定年退職が36名、勧奨退職が40名、その他普通退職が75名となっており、23年度に比べ、定年退職は9名増、勧奨退職は11名増、普通退職は1名増となっている。

【斉藤委員】
 年次休暇がわずか8.3日で平均の数字である。中央病院の場合には5.7日、わたしが先日聞いた看護師は、年にたった2日しかとれなかったと。
 生理休暇の2.7日というのもほとんど取れていないという、死語に近い状況になっている。
 151人の退職者の状況が示された。そのうち75人が普通退職と。定年前に75人も辞めている。これはもう体がもたないからである。
 こういう状況の中で、今年の看護師の採用試験で応募に全然満たないと。いま看護師確保の転換点、転機に立っていると思う。今まで通り募集したら応募する状況ではなくなったと。いま看護学生が病院を選ぶ時代。県立病院は選ばれていない。この現実をしっかり見据えてやらなかったら、看護師不足で病院の機能がまわらないということになる。そういう重大な時期に直面していると思うが、そういう認識はあるか。

【医療局長】
 看護師不足のままでは県立病院がまわらない、運営ができなくなるという認識は同じである。

【斉藤委員】
 予算委員会のときに、県立中央病院のかなり深刻な実態をお話して、14名増やすという話をしたが14名増えなかった。
 改めて聞いてきたが、看護師さんは三交代勤務自身が苛酷である。10月14日でNHKスペシャル「シリーズ 病の起源」というものがあり、交代制勤務の看護師の場合、乳がんの発生率が普通の1.8倍だと。男性の場合は、前立腺がんは5倍になると。夜勤というのはこのぐらい苛酷である。ところが今、月8日夜勤というのが原則だったが、6東でも9回夜勤が11人、それが当たり前になってしまっている。夜勤専従をやられている方もいて聞いてみたが、1ヶ月に18回やったと。他の日は休めるから良いのかと思ったら、疲労が蓄積して体がもたなかったと。体調が崩れたと。夜勤専従というのも、看護師の女性の保護からいって、根本から見直すべきだと思う。
 看護師さんはこういうことを訴えている。「年次有給休暇が希望した通り取得できない」「超過勤務がいっこうに減らない」「超勤しても超勤伺いに記録しにくい」「8日以内夜勤が守られない」「上司や同僚がキリキリしていて働いても楽しくない」―これが看護師の率直な声である。中央病院の状況はどうなっているか。こういう実態はしっかり把握しているか。

【医療局長】
 中央病院をはじめとする県立病院の看護師の勤務実態の把握だが、私なり次長の立場で申し上げると、各病院において看護の現場でいろいろな課題等が出ている、あるいは何か問題があるといったことが出た場合には、担当課を通じて報告・協議を受けているので、そこで承知している。
 それから、我々局長・次長・総括課長が各病院にお邪魔して、病院の幹部職員と意見交換をする機会をもっており、その席には、総看護師長・副総看護師長、あるいは病棟師長・外来師長も同席しているので、その際にお話を聞いている。
 また、看護職員の研修会に局長・次長が参加する機会もあり、今年度は看護師長の研修会に局長・次長2人で参ったり、主任看護師の研修会には次長が出席ということで、そういった席で看護職員の方々からのお話を聞いている。
 さらに、職員労働組合との協議の際にいろいろご意見を頂戴しているので、現場の実態はそういったときに把握しているものと考えている。
【職員課総括課長】
 中央病院の増員についてだが、平成25年に看護職員を14名増員したところである。ただ、その原因で見ると、休暇者が発生したりしたということであり、5月1日現在で実増で8人が実態となっていた。

【斉藤委員】
 中央病院を調べたら、育児休業38人、産前産後休暇13人、育児時間10人、夜勤免除30人、計93人である。これは若い看護師さんの職場なので、突然のことではなく、恒常的な事態である。これを前提にした勤務体制をとらなかったら、年次休暇もとれないし、朝8時に出勤して夜の8時10時と。そして超過勤務は書きづらいと。
 こういう訴えも聞いた。妊婦さんが夜勤を8回もしている、本来なら日勤にしてほしいと。しかし人が足りないからこうなっている。
 そういう意味で本当に看護師の増員に真剣に取り組んでいただきたい。
 実は直接、間接的に、他の基幹病院の家族の方からも、「毎日の帰りが1、2時間の残業ではなく、帰りは8時9時10時、ひどいときは12時を過ぎたこともある」という訴えがされた。家族が心配して、どうなっているのかと。「3年間で5〜6キロ痩せた」「日勤で10時すぎに帰宅して翌朝7時に出勤する」「同僚で辞めた人もいる」、こういう実態である。
 やはり大幅増員を大前提にして、いま看護師の勤務環境が改善されないと、看護学生から選ばれない。こういう実態を改善する決意があるかお聞きしたい。

【医療局長】
 県立病院の看護職員の業務量は依然より増加しているものと認識している。こうした中で、勤務に対する負担感だとか不安の増大などから休職や中途退職に至るケースもあるものと承知している。そういった病院現場の状況や要望を踏まえ、現在策定中の次期経営計画において、看護職員については130人の増加を図るほか、看護補助者については別途125人の増員を考えている。
 この春以降、次期経営計画の策定等に合わせて、それまでの期間はあるが、病院長や総看護師長をはじめ、病院現場の職員が参加する会議等に出席した際は、次期経営計画は現在策定中だが、人は増やす基調で考えているんで、その中で、定数条例の改選が必要であれば県議会にもお願いしていくつもりであるということをアナウンスしてきた。これは、職員が増える方向にあるということを職員の方々が早めに分かっていただいて、今は勤務環境が若干きついところはあるが、今後緩和もしくは解消されていくのであれば、もう少し頑張っていこうといった形でのモチベーションの向上、ひいては早期辞職の防止につながることを期待している。

【斉藤委員】
 増員の決意は聞いたが、130人では圧倒的に少ない。
 例えば、中央病院で4−4体制必要だと思う。それだけでも数十人規模で必要である。そういう意味で、130人というのは一歩前進だが、本当に今の県立病院の看護師の待遇改善に結びつくかといったら、+αにしかならない。


・内視鏡手術支援ロボットの導入について

【斉藤委員】
 私もこの要望を受けたので、知事の答弁を踏まえてお聞きしたい。
 知事は、「現在医療局の医療用設備整備調査委員会において検討していると承知している」と。「さらに検討を加えていくと聞いている」という話で、ただ導入にあたっては、胆沢病院を優先的に考えていると。やる気があるのかないのか。
 内視鏡ロボットの導入の必要性と課題についてどう検討されているのか。導入の具体的な見通しについて、胆沢病院を優先と言っているが、どういう見通しか。

【業務支援課総括課長】
 内視鏡手術支援ロボットについて。当該医療機械は、より安全で正確な精度の高い手術が可能であること、そして手術の際の患者への負担が軽減されることなど、医療の質の向上などの観点から、その有用性については認識している。
 しかしながら、この医療機械の導入にかかる費用については、約4億5000万円余と高額である。ただしその反面、現在の診療報酬では、当該医療機器を使用した場合の算定対象となる手術が1項目である。それらのために、対象患者の確保が難しい、加えて、現時点では導入費用に見合った効果を得ることが難しい状況であるというのが現在の感触である。加えて、委員お話の通り、本庁の医療用設備整備調査委員会、これは前回の総括質疑でも知事からお答えしているが、その有用性は理解しているが、この金額が高額であり、一般会計からの繰り出し等も考えあわせると、なかなか今すぐという状況にはないと。
 胆沢病院が適当だという理由については、胆沢病院においては、今資格を持っている泌尿器のドクターが一番配置されているという状況の中で、県立病院の中でそういう資格あるいは地理的な部分も含めて、胆沢病院が優先的な考え方になるのかなという状況である。


・消費税増税の影響について

【斉藤委員】
 県立病院の消費税負担について、本会議でも議論になったが、消費税は累積で143億円。累積赤字が192億円。累積赤字の74%が消費税負担である。
 これが8%になったら、赤字が拡大することはあっても縮小することはない、県立病院を破たんに追い込むのは消費税ではないか。この点について、県立病院はこんなに頑張っているのに、負担できない消費税で経営破たんに追い込まれたら大変だと思うが、どのように対応していくつもりか。

【医療局長】
 税率の引き上げにともなう対応だが、消費税率の引き上げにともなう補てん措置、消費税の導入時あるいは5%になったときには、診療報酬の一部引き上げということで補てん措置があったが、今回の8%になる時点での補てん措置については、現時点では不透明である。ですので経営への影響額を正確にお示しすることはできないが、国に対して、県独自に、あるいは関係団体等を通じて、これを全額補てんするよう要望している。
 仮に8%引き上げになったときに、何ら新たな補てん措置が講じなかった場合であっても、いま策定途中の次期経営計画においては、黒字は何とか確保できるものとしているが、いずれ大幅な減益となるので、収支に与える影響は大きいことから、国の診療報酬改定の状況がどうなるのか注視していきたいと考えており、関係団体等を通じて国に対して要望していきたい。