2013年10月23日 決算特別委員会
農林水産部(農業部門)に対する質疑大要
・被災農地、農業の復旧状況について
【斉藤委員】
東日本大震災津波からの被災農地・農業用施設の復旧状況はどうなっているか。
被災農家の再開状況はどうなっているか。
【農村建設課総括課長】
復旧対象農地717haについて、他の整備計画等との関連で工事に着手できない267haを除く450haのうち、25年9月までに、249haの復旧を完了している。
今後の進め方だが、現在進めている工事により、平成26年5月末までにさらに201haを復旧し来春の作付が可能となる見込みとなっている。
【農業普及技術課総括課長】
被災農家の再開状況は、ただ今説明のあった復旧された農地のうち、作付された面積は7割に相当する180haでの作付となっている。
【斉藤委員】
陸前高田市の小友地区の復旧事業を議員連盟で見てきたが、再開する農家が激減していると。それで組合をつくって何とか対応するという話だった。
面積はその通りだが、再開戸数は分からないか。
【農業普及技術課総括課長】
そういった農地を所有する農家数については、原形復旧した農地の所有者だったりこれから進めている区画整理の受益者だったりということで、なかなか正確な数字がつかめていない状況なので、農家数としては申し上げる数字はもっていない。
【斉藤委員】
180haが今年作付されたということだった。72.5%になるが、作付できなかったのはなぜか。
【農業普及技術課総括課長】
作付の状況は地域差もあり、山田町以北の県北地域ではおおむね復旧された農地についての作付は進んでいるが、大槌町以南の地域では被害面積の大きさもあるが、作付率が6割程度になっている。
作付できなった農家の声をお聞きすると、1つは震災後2年経ち、仮設住宅で暮らし、農家で体力的な問題があった。あるいは、仮設住宅から農地までの距離が以前よりも遠くなり、なかなか自分では耕作できないということで、まずは生活の再建を最優先していきたいということで、特に規模の小さい農家については、すぐ作付を再開するというような意欲が低くなっているところはあるが、それでも地域の担い手に対しての作業委託とか、そういうことでできるだけ復旧した農地については利用していくということで我々も相談に乗りながら議論している。
【斉藤委員】
農地も農業用機械等も、全部流出したということで、今回激甚災害の指定なので、おそらく30分の7程度は自己負担となるのではないかと思うが、農業用機械の整備状況はどうなっているか。
【農業普及技術課総括課長】
津波等で流出してしまった機械等については、その後速やかに国の復興交付金等を活用し、農家負担が少ない状況のもとで、必要な機械については整備してきているので、当面必要な、あるいは機械を導入して営農を再開しようとする意欲のある方については機械は十分に再整備されていると理解している。
【斉藤委員】
なかなか農業の再開に向かえない農家も出ている中で、せっかく復旧してそれが活用されないということはあってはならない。小友地区はそういう意味では生産組合をつくって農地は守るという方向も含めて、ぜひ必要な支援をしていただきたい。
農地海岸保全施設の復旧状況と今後の見通しはどうか。
【農村建設課総括課長】
被災した農地海岸保全施設10海岸のうち、本年7月までに野田海岸、大船渡市の沖田海岸の復旧が完了している。
残る8海岸についても、復旧工事に着手しており、平成27年度を目標にすべての海岸を復旧する計画としている。
【斉藤委員】
今年の豪雨災害、台風18号、26号による農地・農業用施設等の被害と復旧の状況を示していただきたい。
作物別の被害状況も示していただきたい。
【企画課長】
今般の大雨洪水災害による農地・農業用施設の被害状況は、農地や水路の法面崩壊、土砂流入などの被害が発生しており、7月26〜28日の災害では、被害個所数3889ヶ所、19億6千万円の被害額、8月9日の災害では、4351ヶ所で52億9千万円の被害、台風18号災害では2259ヶ所27億8千万円となっている。台風26号の被害状況については、21日16時現在、調査率60%段階で、農地や水路などの被害が8ヶ所、金額で400万円となっている。
作物別の被害状況は、7月26〜28日の災害では、主な作物の被害額だけ申し上げると、水稲で4200万円、野菜・果樹の園芸品目で5000万円、牧草やとうもろこしの飼料作物で500万円となっている。8月9日の災害の被害額は、水稲で3億6700万円、園芸品目で1億7900万円、飼料作物で3600万円。台風18号災害については、現在現地確認を行いながら被害額の最終精査を行っているところであり、まだお示しすることはできないが、被害面積で見ると、水稲で527ha、園芸品目で68ha、飼料作物で70haとなっている。
【斉藤委員】
7〜9月の豪雨災害・台風災害の関係で、農地・農業用施設だけで100億円を超える被害と。かつてなかったのではないかと思うぐらい連続的な災害となった。先日はさらに台風26号で、特に陸前高田市では、全農の調べで6割のりんごが落下したと。大変な被害状況だった。
来年の作付に間に合わないところがあるのか。
陸前高田市のりんご被害が多かったが、共済の加入状況、りんご農家の救済策はどうなっているか。
【農村建設課総括課長】
営農上早急な対応が求められる地区については、災害復旧事業の査定前着工制度を活用しすでに復旧工事に着手している。また早期の復旧に向けて、国の災害査定も急いでいただき、10月15日から始まり、査定を受けた地区から順次復旧工事に着手する予定としている。
なお、復旧が間に合わない農地については、事業実施主体となる市町村が被害の詳細や復旧に関する農家の意向確認を行っているところであるので、確定したものではないが、市町村から聞き取ったところによると、河川護岸と一緒に被災して、河川復旧との調整を要するところについては復旧に一定の時間を要す可能性があるということである。
【団体指導課総括課長】
農業共済のりんごの加入率だが、24年度で28.1%となっている。
【斉藤委員】
農地の復旧ではさまざま支援策があるが、農家は待っていられないので自力復旧している。ところが自力復旧すると対象にならないということもあるので、市町村がその事業を認めて、市町村の事業としてやればこうした小規模も補助対象になると思うので、工夫して、頑張っている農家が対象にならないとなってはいけないので、多くの農家が救済されるようにお願いしたい。
・放射能汚染による被害状況と賠償について
【斉藤委員】
放射能汚染による損害額は現段階で各項目でどうなっているか。
損害賠償請求に対する支払額はどうなっているか。産直施設の被害と賠償請求はどうなっているか。
【企画課長】
放射能汚染による損害額の状況は、農林水産関係の損害賠償協議会における損害賠償請求額に基づくと、9月末現在で農畜産関係が208億7000万円、シイタケなどの林産関係が35億5000万円、水産関係が2億7000万円、総額247億7000万円となっている。
損害額に対する支払い状況だが、農畜産関係で171億円で82%、シイタケは32億7000万円で92%、水産関係は2億6000万円で95%となっており、総額で見ると207億円・84%となっている。
【流通課総括課長】
県が実施した有人産直277施設を対象としたアンケート調査によると、販売額の減少など何らかの被害を受けたと回答した産直施設は60施設となっている。
このうち、賠償請求を行った産直施設は19施設、請求額約4500万円、賠償金額を受領した施設はそのうち16施設・約3500万円となっている。
このほか13施設において賠償請求の手続きを進めている。
【斉藤委員】
産直施設で60施設が被害を受けて、19施設が賠償請求し、16施設に3500万円の支払いがあったと。13施設で準備をしていると。
60施設が被害を受けているので、そこをしっかり援助して、全面的に請求して支払わせるようにやるべきである。
山菜・きのこなどは、その季節に産直に人を呼べるものである。きめ細かな支援をすべきではないか。
【流通課総括課長】
県ではこれまで、東京電力を出席させての説明会への参加案内や、個別相談のための東電への個別訪問をそれぞれの被害を受けた産直に、個別に一人一人電話をかけて、そういった対応をさせていただいている。
今後も引き続き、産直施設の賠償請求に向けて、個々の産直の事情を踏まえながら対応していきたい。
【斉藤委員】
牧草の除染について、今まで除染されたところで、活用できる面積は全体のうちどのぐらいか。
牧草再生事業で、基準以下でも風評被害対策で除染しているが、どこまで進んでいるか。
【畜産課総括課長】
牧草の除染実施面積は、原乳対策分を含めた対象面積の13606haにたいし、25年9月現在で、9115ha、進捗率67%となっている。24年度および25年の春に播種を行い、牧草の生育が確認され、除染後の効果測定検査が完了した面積が4282haとなっており、うち暫定許容値および酪農における基準値を下回って、利用自粛が解除され、利用が可能となった面積は4324haとなっている。
基準値以下の対策で、いわて型牧草地再生対策事業で、24年度においては6町村で171haの実績である。今年度は20市町村で約2500haの除染計画で作業を進めている。
・TPP交渉といわての農業について
【斉藤委員】
日本政府がアメリカに示した自由化率は92%と報道されている。自民党の西川TPP対策委員長の発言を含めて、TPP交渉の動向を部長はどのように受け止めているか。
【農林水産部長】
重要5項目とされるうちで、米・牛肉・豚肉・乳製品については、本県にとって関係する農業者も多く、また農業生産額でも相当なウェイトを占めている。非常に重要な品目だと認識しており、これらの品目の関税が撤廃されれば、本県の農業に大きな影響が生じる、農村社会にも大きな影響が生じると懸念される。そうしたことから、これまでも取り組んできたが、北海道・東北知事会や全国知事会を通じて養成していくことが重要と考えている。
重要5項目については、自民党のTPP対策委員会や衆参両院の農林水産委員会においても、関税撤廃を認めないという決議がされている。そういったこともあるので、重要5項目については、必ず守られるべきものと認識している。
【斉藤委員】
自由化率92%というのは、重要5品目が崩れるという話である。岩手の農業は、県の試算でTPP交渉参加で899億円の生産減少と試算されている。国は、農業のもつ多面的機能の影響額も示しているが、それに準ずると、岩手県の場合、この多面的機能の影響額はどうなるか。
【企画課長】
多面的機能への影響額についてだが、委員ご指摘の通り、国ではTPP協定の参加による農業の多面的機能の創出額を1兆6000億円程度と試算している。ただ、具体的な試算方法については公表されておらず、県段階の試算は難しいと考えている。一方、国の試算の創出額から見て、本県農業の多面的機能に及ぼす影響も少なからずあるものととらえている。
【斉藤委員】
TPP交渉に参加した場合には3兆円の生産額の減少、そして多面的機能は1兆6000億円。おそらくこれは前の試算で、国の多面的機能の創出、その際の岩手の多面的機能の影響額は出ていたと思う。そこの推計額からいったら、岩手の場合の推計額は出るのではないか。
【企画課長】
国の方については、農業の多面的機能の評価額は8兆2000億円と全体で試算されており、それに基づいて生産減少額等、日本学術会議の答申をもとに、TPP協定参加による生産減少額から算出した、水田や畑の作付面積の減少部分に相当する機能の創出額を積み上げ試算したとされているが、ここの具体的な生産減少額から水田や畑の作付面積がどの程度減少するのか、こういったようなところが具体的な算出方法が明らかにされていないので、本県での試算は前回においても行っていない。
【斉藤委員】
この影響額もまたかなりの額になると思うので、岩手の農業、環境から見たら本当に取り返しのつかないことになる。
自民党政権の公約違反は絶対に許せないと。ぜひ県民あげた運動の先頭に、いまJAやJF、森林組合含めて共同の宣伝などを行っている。紫波町は行政も一緒になってやっているが、行政も関わって、県民あげての取り組みをすべきではないか。
【農林水産部長】
本県としては、東北知事会や全国知事会と連携しながら、TPP交渉に関する要望を政府に対して要請していきたい。
【斉藤委員】
農業問題を考えるときに、食料自給率の向上こそ大事な問題である。国民の食料を国が責任をもって向上させる、守ると。ところがTPPは食料自給率を大幅に低下させて、外国に、アメリカの胃袋に入れられるということである。
以前ブッシュ大統領が「その国の食料を守れない国はその国の安全を守れない」という発言をしたことがある。食料というのは国家安全保障に関わる大問題だと思うが、岩手の農業生産額がどう推移しているのか。
世界の流れはTPPではなく食料主権、その国の食料はその国が守るという流れにこそあると思うがいかがか。
【農林水産部長】
最初に、本県の農業生産額についてだが、平成10年には3000億円を下回っているが、米の産出額等の縮小等により減少が続いており、23年には2387億円と5年前と比べ45億円、10年前と比べ400億円の減少となっている。
食料自給についてだが、農林水産業については、本県、安全安心な食料の供給県として、食とみどりの創造県いわての実現をめざしてその振興を図っている。本県にとって農林水産業はまさに地域経済を支える基幹産業であり、TPP協定の参加如何に関わらず、将来にわたり持続的に発展していけるように、その再生強化に向けた施策が講じられていくことが重要と考えている。