2013年10月23日 決算特別委員会
農林水産部(林業・水産部門)に対する質疑大要


・漁業・水産業の復旧状況について

【斉藤委員】
 漁船の確保の状況―1トン未満の小型漁船、2トン以上の大型船、養殖作業船等の状況はどうなっているか。
 登録漁船数、使える漁船数は被災前と比べどこまで復旧しているか。今年度末の見込みはどうなっているか。

【漁業調整課長】
 8月31日現在の補助事業による新規漁船の登録数は5976隻、使用可能な漁船数は、震災を免れた漁船、補助事業で整備した漁船、自力復旧した漁船の合計で9892隻となっている。
 震災前の漁船登録数に対し69%、復興実施計画第一期の目標にたいし88%となっている。今年度の見込みは、補助事業により整備を予定している漁船数の25年度末の登録数は6443隻、可能な漁船数は10359隻となる見込みである。
 なお漁船のトン数別の隻数は、年末に集計しており、24年12月末現在における漁船登録数は9129隻、うち1トン未満の漁船数は7134隻、1〜3トンが1268隻、3トン以上が727隻となっている。養殖作業船については、多くが採介藻等の漁業と兼用されている状況にある。

【斉藤委員】
 養殖施設の復旧状況は、海藻類の施設、貝類・ホヤ等の状況、漁業者の再開状況、生産量・生産額はどうなっているか。がんばる養殖漁業の取り組みはどうなっているか。

【漁業調整課長】
 養殖施設については、9月末までに、ワカメ・コンブ等の海藻類の施設は約12000体、カキ・ホタテ等貝類の施設は約4000台、ホヤ等の施設は約1000台が整備され、全体で震災前の64%となる約17000台が復旧している。
 養殖業については、国が25年3月11日現在で調査している結果では、震災前の72%が再開している。
 養殖生産額については、ワカメは25年度産で生産量が16000トン、金額が19億8000万円である。25年度集計ができていないコンブ・ホタテ・カキについては、コンブが24年度の実績で5000トン・8億2000万円、ホタテが1000トン・4億7000万円、カキは剥き身で換算した数字で87トン・1億8000万円となっている。
 がんばる養殖復興支援事業については、本年10月末現在で、12漁協39グループの計画が認定を受けている。延べ483名の漁業者が事業に参加している。

【斉藤委員】
 再建整備が順調に進んでいるが、こうした漁業用施設の固定資産税などの減免措置はどうなっているか。

【団体指導課総括課長】
 若干これまでの経緯を含めてお答えする。
 本年4月に県漁連および沿岸地域の各漁協から、県および沿岸12市町村にたいし、固定資産税の免除について要望があった。要望の趣旨・内容は、水産業の早期復旧を図るために創設された補助事業を活用し、漁協が被災漁業者に代わって整備した漁船・漁具・漁網・養殖施設にかかる固定資産税の負担が重くなっており、その免除をお願いしたいというものであった。
 このため県においては、沿岸12市町村の水産担当課長、税務担当課長、国の岩手復興局の職員も集めて意見交換・協議を行った。最終的には、固定資産であるので市町村の判断によるものだが、被災者自身が被災した設備の代替資産を取得した場合に適用される地方税法付則第56条第12項に規定する「被災代替資産取得特例」と同等の軽減措置を講じる、つまり本年度から4年間について、固定資産税を2分の1 に減額する措置を講じるということにされたところであり、沿岸地域のすべての市町村の6月議会において、地方税法第367条の規定に基づく税条例の一部改正を行い、固定資産税の軽減が行われている。
 なお、固定資産税の軽減にともなう市町村の減収分については、国と協議し、25年度で約8000万円、4年間で約2億円が見込まれているが、震災復興特別交付税が措置される予定である。

【斉藤委員】
 固定資産税が2分の1減免で一歩前進だが、2分の1の課税でも大変な額だと思う。宮古市ではさらに独自に軽減策をとっていると聞いたが、この間の漁船の確保や養殖施設の整備、何百億円という試算である。これから再建・再開する漁協にとっては耐えきれないもので、さらに各市町村が上乗せの減免をしていると思うが、そこは把握しているか。

【団体指導課総括課長】
 市町村から報告いただいたものが古いデータであるので、確認して再度答弁したい。
 今回、被災代替資産取得特例の同行措置により2分の1に軽減するとしたが、実は、漁船や養殖施設については、震災復興対応の軽減措置、平常時の軽減措置もある。したがい、例えば漁船についていえば、すでに平常時で2分の1に減額になっているので、それをさらに2分の1にするということで、実質4分の1に減額になる。養殖施設については、3年間2分の1に減額という措置が通常講じられているので、25年度から今回の措置を適用することにより、3年間は4分の1に、さらに1年間は2分の1という軽減になる。

【斉藤委員】
 例えば、大船渡市の生産組合の漁民が民間から寄付を受け、それで冷蔵施設をつくったら所得税がかなりかかったと。何もないところから施設をつくったらとんでもない税金がかかったということがあり、これは国とのやりとりをしている最中だが、民間の場合も減免されるような手立てを考えていただきたい。


・秋サケ漁の状況と不漁の要因について

【斉藤委員】
 昨年度・今年度の秋サケ量の状況は先ほど明らかになったので、不漁要因の調査研究について、シンポジウムのようなこともあったので、その研究成果で示されたものはどういう問題だったのか。
 平成21年と比べれば6〜7割だという答弁だった。漁協経営に与える影響は大きいのではないか。3月に聞いたときには、共済が入るから大丈夫だということだったが、今年度はどうなのか。

【水産振興課総括課長】
 これまでの調査研究の報告によると、放流直後からオホーツク海に至るまでの稚魚の減耗が不漁原因の一つと考えられており、県の水産技術センターでは、国の研究機関などと共同研究で、今年度から新たにサケの稚魚の回遊経路の解明、回遊と生残に影響を与える要因の検証等について着手したところである。その一環として、今年度は6月下旬に、水産技術センターの調査船いわて丸を用いて、本県沿岸から北海道の沿岸にかけて、岩手県で放流した秋サケの稚魚がどのような経路をたどっているのか、分布状況や海況などを調査しており、現在調査結果を取りまとめており、内容が明らかになったらお示ししたい。

【斉藤委員】
 この間のレポートを見させていただいたが、県の水産技術センターの研究員は、今できることは何かということで、稚魚飼育、密度・水量・数字の問題と。北海道も減っているが、減り方が違う。北海道の場合はオホーツク以北の場合は増えている。そういう北海道との共通性と違いもしっかり見て対応する必要があるのではないか。

【水産振興課総括課長】
 北海道と岩手で同じ稚魚ではあっても、泳いでベーリング海まで泳ぐ距離が違いますし、そもそも北海道ではオホーツクにすぐ入り、岩手の場合はかなりの距離を泳いでいかなければならないという条件はあるにしても、オホーツクまでたどり着けるような元気な稚魚をつくらなければならないというのが一番大きな課題だろうと思っている。そういう意味では、今年度水産技術センターで、唐丹町漁協の使わなくなったふ化場を再度整備させていただき、水産技術センターで飼育試験や放流後どのようなエサで育てたものがいいのかなど、そういう観点含めた稚魚の飼育を行い、もっとも良い飼育の仕方を探るため取り組みを始めている。実際、施設整備がまだ若干かかるので、来年度からの取り組みにはなろうかと思う。
【団体指導課総括課長】
 漁協の決算の見込みについて。24年度決算は、昨年度は秋サケ漁が低調に推移したことから、漁協経営の影響が懸念されたが、漁獲共済や積立、保険金の支払い、がんばる漁業支援事業の活用による水揚げ高の赤字補てん収入などがあり、また復興需要による購買事業が好調であったことや、漁船・養殖施設などの生産基盤の復旧に伴う生産量の回復により、24年度決算では全体としては各漁協が補助事業の導入や負債整理資金の活用などにより収支を見込んでいる復興再生計画を上回る当期剰余金を確保した。
 本年度の決算見込みについては、今後各漁協から報告をいただき取りまとめることにしており、まさにこれから本格化するサケ漁がどうなるのかといったことにも注視している。
 いずれ各漁協が作成した復興再生計画の進捗状況も確認しながら、適時適切な助言・指導を行っていきたい。


・漁船漁業の状況について

【斉藤委員】
 岩手県における漁船漁業の復旧状況と漁業者の経営状況はどうなっているか。

【漁業調整課長】
 漁業者の漁業再開状況については、国が25年3月11日現在の漁業経営体の再開状況を調査している。その調査結果によると、再開率は84%となっている。
 また沿岸漁船漁業者で組織する岩手県沿岸漁船漁業組合によると、加入する沿岸漁業者の再開は8割以上あり、漁船漁業者はほぼ再開を果たしていると聞いている。
 漁船漁業の経営状況については、国が震災前の22年を基準に24年の漁業所得を調査しているが、24年で震災前の67%となっている。

【斉藤委員】
 先ほど工藤委員の質問にたいし、獲れることは獲れているが、魚価が大幅に下がってというのが67%の中身か。

【漁業調整課長】
 漁獲量については、獲れている魚種として、マダラとヒラメの例を挙げたが、一方では例えば、スルメイカについてはなかなか沿岸に漁場が形成されず、漁獲量が少ないという状況になっている。
 国の調査の67%という数字については、トータルでこのようになっているので、漁獲量がそのまま表れているわけではないと思われる。


・シイタケの被害、復旧状況について

【斉藤委員】
 シイタケの被害、復旧状況、出荷規制解除への取り組み、見通しについて。被害額は先ほど賠償額ということだったが、それで受け止めていいのか。

【林業振興課総括課長】
 県の業務にも被害があるので、被害全体としては違ってくるが、生産者に支払うものとしては被害額=賠償額と考えていいと思う。
 生シイタケについては、平成23年に5978トンだったが、24年には5036トンと16%減となっている。ただ一方で全国3位の生産量というのはキープしている。
 干しシイタケだが、平成23年には216トンあったが、原木シイタケの出荷制限指示等があり、平成24年には103トンと半減しており、現在も13市町で出荷制限指示が継続されていることから、多くの生産者が出荷できていない状況である。

【斉藤委員】
 出荷規制解除のプロセス、見通しについて、これは環境改善をやって、そこでの栽培をして数値が出ないということが証明されないとできないと。
 12000人のシイタケ農家がおり、規制がかかっているのがそのうち10000人で、再開しようとしているのはどのぐらいか。

【林業振興課総括課長】
 県内では、平成24年でつかんだところでは、生産者はだいたい1500人ぐらいで、そのうち13市で出荷制限がかかっており、出荷できない方々が1006人である。そのうち、制限解除のためのほだ場の環境整備を進めており、そこの対象の方々は355人となっている。
 実際に解除申請をするということで、シイタケとほだ木の検査結果を調査しているが、現在お話の通り、関係機関や団体と一丸となり、種苗地をこえたほだ木の処理、落葉草の除去、泥のはね返り防止の資材を設置すると。そういったほだ場の環境整備をすると。あとは生産工程の安全管理の徹底、そして新たな栽培方法、例えば簡易ハウスを導入したい方がいれば補助するといったことをおこない、実際それで生産して、国が定める基準を超えないということが明らかであると、それを説明して申請して解除となる。


・松くい虫対策について

【斉藤委員】
 盛岡がいま最前線になっているが、県北まで飛び火したということで、この松くい虫の被害と対策はどうなっているか。

【森林整備課長】
 24年度の松くい虫被害は、12市町村で発生している。42000立方と、前年度39000立方に比べ8%の増加となっている。
 特に内陸、盛岡・矢巾・紫波において増加傾向が見られる。また大船渡や陸前高田、遠野、花巻地域においても増加傾向である。
 今年度に入っても、住田町、雫石町、滝沢村、九戸村でも被害が発見された。新たに被害が発見された市町村においては、全て駆除が完了している。
 被害の拡大傾向を踏まえ、県ではこれまでの防除監視員のパトロールに加え、新たに松くい虫監視協力員の制度として新たな方々を登録し、監視強化を図ることにより、被害木の早期発見に取り組み、市町村と連携した早期駆除に努めたい。
 また今年度は、これまでの防除事業に加え、新たに24年の補正予算を活用した里山再生松くい虫被害特別対策事業を実施しながら、内陸部の被害先端地域の盛岡・矢巾・紫波においては、農林水産大臣の駆除命令区域に設定し、駆除を実施するなど、できる限りの対策を講じ、被害の拡大を防ぐために努めていきたい。