2013年10月24日 決算特別委員会
県土整備部に対する質疑大要


・住宅再建に対する支援策について

【斉藤委員】
 県独自の生活再建住宅支援事業(新築、補修・改修、利子補給、宅地復旧)の実績はどうなっているか。

【建築住宅課総括課長】
 新築については、制度開始当初から今月7月末までの数字で、735件・約4億5500万円、補修・改修は4866件・13億5100万円、利子補給は533件・101億2600万円、宅地復旧は896件・8億500万円となっている。

【斉藤委員】
 県独自の施策でこれは大変有効な施策だったと思う。
 新築については、バリアフリーも県産材も平成28年度まで、ところが補修の関係は25年度までとなっているので、これだけの実績があるのでこれは継続して来年度以降も実施すべきだと思うがいかがか。

【建築住宅課総括課長】
 補修についても、かなり職人不足とかそういったことで当初よりは終了するのが時間がかかっている状況を鑑み、継続の方向で検討していきたい。

【斉藤委員】
 新築の場合のバリアフリー・県産材活用件数はどうなっているか。これは被災者生活再建支援金の加算金受給者との比較でどうなっているか。どのぐらいの比率で利用されているか。

【建築住宅課総括課長】
 生活再建住宅支援事業の新築のバリアフリーと県産材の利用実績だが、制度開始当初から今年7月末までのバリアフリーについては511件、県産材は224件の計735件の利用実績となっている。
 加算支援金の建設および購入については、今年7月末までの件数で3238件となっている。単純に比較すると、22.3%となっている。

【斉藤委員】
 大変良い制度だが、2割程度だと。これはなぜもっと活用されないのか。課題は何か。

【建築住宅課総括課長】
 この制度については、被災者の方が住宅をできるだけ安く早くつくりたいと希望される方が多いという中で、補助対象になるような計画にする、施工をする、資材を納入するとか、今までの施工者にとって違うルートから納入しなければいけないとか、さまざまな時間や手間がかかるところが弱点ではないかと認識している。

【斉藤委員】
 岩手型地域復興住宅は、390件ということだった。この1件当たりの建築費また坪単価は分かるか。

【住宅課長】
 390件の建築費と坪単価は不明である。
 なお、岩手・宮城・福島3県で地域型復興住宅推進協議会が行った調査結果では、岩手県の住宅生産者グループの平均的な工事単価は、坪当たり51万7000円となっている。

【斉藤委員】
 この間、被災者生活再建支援金の加算支援金が200万円、県と市町村で100万円、市町村がさらに100万円から300万円、住宅ローンの利子補給が250万円〜最大700万円という形で支援策が充実して、最近の新聞報道を見ると、野田村では平均して540万円の補助を受けていると。
 最近では、釜石市で自立再建が増加してきたと。大変これは前向きの方向だと思う。そういう形で住宅再建の基本は持ち家と。希望する方々が最大限持ち家再建できるように支援すると。その点では、このバリアフリーや県産材の活用をもっとやられる必要があるし、県の支援も100万円ではなく、さらに100万円200万円と上乗せする必要があるのではないか。

【県土整備部長】
 被災者の方がどこに住まわれるかということでは、持ち家で住まわれるということは我々も望ましいことだと考えている。
 加算支援金の話だが、財源の問題があるので、今ここで上乗せすると申し上げる状況にはないが、引き続きこういう支援がなされるよう努めていく。


・災害公営住宅の建設について

【斉藤委員】
 この間の災害公営住宅の入札不調の状況はどうなっているか。その対策はどうなっているか。

【建築住宅課総括課長】
 今年度入札を行った建築工事において8件あるが、そのうち3件―陸前高田市中田地区第2工区、陸前高田市柳沢前地区、大船渡市下欠地区において入札不調が発生している。
 入札不調対策としては、これまでも積算単価の見直しを頻度を増やしてやると、それから必要な宿泊費等を含める契約金額の変更を認めるなどの対策を行ってきたが、入札不調が生じたことを踏まえ、参加資格を県外業者まで拡大すると。あるいは積算単価の考え方を見直して、適切な工事金額を設定する、増額するということである。現在の工事現場の状況を踏まえ、適切な工期を設定すると。入札不調があった場合、状況を見ながら随意契約の手続きに移行するといった新しい対応も行っている。ちなみに結果として、入札不調が生じた3件については、随意契約の手続きに移行して、すでに工事業者と仮契約を締結している。

【斉藤委員】
 8件中3件が不調ということで、随契のものが明日提案されるが、例えば陸前高田市中田地区の場合は、6月に入札して不調、8月に再入札して不調、そして今回髄契と。少なくとも4ヶ月近くこれで延びてしまう。災害公営住宅全体が遅れている中でこれは被災者にとって切実な問題である。今すぐ建てられるものが何ヶ月も遅れてしまう。
 いま対策も示されたので、こういうことが起こらないように万全の手立てで対応していただきたい。
 災害公営住宅の年度別完成戸数と今後の見通し、懸念される課題は何か。

【住宅課長】
 災害公営住宅の年度別完成戸数だが、9月末時点で251戸が完成しており、今年度中には546戸が完成予定となっている。平成26年度には2228戸、27年度には2336戸、28年度には725戸が完成予定となっている。
 今後完成時期が遅延する要因については、用地が確定していないものについては、用地の確保等に時間を要すること、資機材や労働者の不足により設計や工事に時間を要することといった可能性が考えられる。
 県としては、建設業関係団体との意見交換や市町村との連携等を通じて、復旧・復興ロードマップにしたがい災害公営住宅の建設を進められるよう鋭意取り組んでいきたい。

【斉藤委員】
 今年度中には797戸、計画に対して13%、来年度は累計で3025戸49.7%と。半分以上の方々は来年になっても入居の見通しがない。2年3年仮設での生活が続くということになり、この計画は現段階のベストの計画なので、上手くいっての計画なので、必要な課題を早く手当てしてやっていただきたい。
 せっかくつくったが入居に満たない、定員に満たない住宅の状況と課題を示していただきたい。

【住宅課長】
 災害公営住宅の入居状況についてだが、9月末で完成している災害公営住宅は9団地251戸で、空き住戸が発生している災害公営住宅は、具体的な入居の見込みがある住戸を除くと4団地21戸ある。
 もっとも多くの空き住戸が発生しているのは、雇用促進住宅を改修した大船渡市盛中央団地の16戸で、新しく災害公営住宅への入居を希望する被災者が多いこと、5階建てながらエレベーターがないこと、東日本大震災津波により1階部分が浸水した場所にあることなどが原因と考えられる。
 その他の3団地5戸については、より自分の希望に近い災害公営住宅の完成を待っていること、災害公営住宅の建設中に住宅再建へと意向が変わった被災者がいたことといった要因により、現在は空き住戸が発生しているが、引き続き募集を続けることにより、いずれは入居希望者があるものと考えている。

【斉藤委員】
 被災者の方々が災害公営住宅を切望して、しかしすぐには埋まらないという問題をよく分析して今後に生かす必要がある。
 例えば、いま申請中の釜石の平田団地も、半分ぐらいしか申請がなく再募集すると。だから被災者の要望に立った災害公営住宅をつくることが大事な課題だと思うので、その点をよく今後に生かしていただきたい。


・まちづくりの事業について

【斉藤委員】
 防集、土地区画整理事業、津波拠点事業の進捗状況はどうなっているか。
 防集、土地区画整理事業による住宅宅地の年度別供給見通しを示していただきたい。

【まちづくり課長】
 9月30日現在、防災集団移転事業は53地区で予定されており、すべての地区で大臣合意を得て、うち18地区で造成工事に着手している。うち3地区では一部の宅地が完成している。
 土地区画整理事業は、18地区で予定しており、17地区が決定済みである。うち15地区で事業認可を得て、現在6地区で造成工事に着手している。
 津波復興拠点整備事業は、10地区で予定されており、7地区が決定済み、うち5地区で事業認可を得て、現在1地区で造成工事が進んでいる。
 宅地の供給についてだが、復興復旧ロードマップでは、防集については約2700戸分の宅地を整備する予定としている。すでに3地区で造成工事の一部が完成しているが、年度内に約500戸が完成する見込みである。さらに26年度までには約1100戸、27年度までには約2500戸、28年度までには約2700戸ですべて完成する予定である。
 土地区画整理事業は、全体で5200戸分の宅地を整備する予定であり、26年度に約50戸、27年度までには2000戸、28年度までには約2200戸、29年度までには2400戸が完成する予定となっている。なお完成時期が具体的になっていないものもあり、約2700戸ある。

【斉藤委員】
 実は、住宅宅地の年度別供給見通しについて、8月のロードマップで9722区画から8446区画に1276区画減少した。大幅に減少した理由は何か。

【まちづくり課長】
 市町村では、復興事業を進めるにあたり住民の意向調査を行いながら、それに合わせて事業計画を変更している。
 変わった理由については十分把握できているものではないが、災害公営住宅を希望される方が出たりとか、他の地域に移転される方が出たということも考えられる。この他、事業が具体化するにともない、住民の意向を精査し、それが反映されたことなども考えられる。

【斉藤委員】
 10月16日付の新聞報道で、大船渡市で防集8団地が造成遅れと。最大4ヶ月遅れると。ここで指摘されているのが、住民との合意形成に時間がかかっていると。地権者との交渉に時間を要したということも指摘されている。
 防集や区画整理事業もそうだが、住民が主体になって進める、合意を大事にするという取り組みが特別に重要だと思うが、その手立てはどうなっているか。

【まちづくり課長】
 防集はとくに住民合意が必要であり、集団で移転するという事業である。市町村では、その計画づくりにおいて、合意を得るために頻繁に住民説明会をやられている。大船渡市の例で申し上げると、大船渡市は住民主体でやられているということである。
 県としては、住民のまちづくり検討会のような組織に専門家を派遣するということも行っている。

【斉藤委員】
 まちづくりに専門家を派遣するというのも1人だけである。だから、せっかくそういう制度がありながら使われていない。こういうことも周知徹底して、住民の話し合いを支援する、住民が主体となってまちづくりを進めると。結果的にはこれが事業の推進の力になってくるので、その手立てを徹底してとっていただきたい。
 区画整理事業で、住民の率直な疑問は、低いところで2m、高いところで8m〜10mかさ上げすると。本当にこんなにかさ上げして大丈夫なのかと。宮城の場合は、盛土して宅地造成したところに大きな被害が起きたということもあった。分かりやすく住民に対して、今までやったことのないような盛土をしても大丈夫という技術的根拠や実例を示すべきではないか。また、かさ上げしてすぐ住宅をつくったり公共施設をつくるわけだが、すぐにつくれるものなのかどうか、その点についてきちんと説明できるか。

【まちづくり課長】
 大規模な盛土工事だが、やはりこれまで大規模な盛土ということは少なかったかと思う。しかし全国的に見ると、東京都の多摩ニュータウンや千葉県の千葉ニュータウンでは、100ha規模の盛土をしている。
 盛土を行うにあたりいろんな検討をするが、例えば、原地盤がどうかとか、盛土台量が適切か、条件にあったどういう工法がいいかということを全て検討して、対策をとって盛土工事するということで、初期の目的が達成できるような盛土ができるのではないかと思っている。

【斉藤委員】
 ぜひこうしたかさ上げ・盛土については、被災者の方々に分かりやすく、不安を払しょくしながらやっていただきたい。そうしないと合意形成も進まないので。


・公契約条例の制定と建設業界の対応について

【斉藤委員】
 県議会の請願採択を受けて、公契約条例を県内でもチームをつくって検討している。建設業界にとってきわめて重要だと思う。建設労働者の最低賃金を確保すると。もう1つは、重層的下請構造、これも建設業界は特殊で、そういうムダな構造の改革にもつながるのではないか。いま建設労働者がこの間2割減った。若手がもっと減った。そういう意味で、この公契約条例が岩手の建設業界にも重要な意義を持つものだと思うがいかがか。

【建設技術振興課総括課長】
 公契約条例については、部局横断的組織ということで、複数の関係課からなる公契約のあり方検討チームを当部でも参加し現在検討を進めている。その中で、建設業界の方の意見も十分聞きながら進めていきたいと考えている。
 下請労働者の賃金等については、実態をなかなか把握できていない。毎年国と連携し、下請取引等実態調査を行っており、抽出になるが下請け取引が適正に行わるよう必要な指導を行っている。
 建設業界の工事の際の重層的な下請けということについては、国交省の建設産業戦略会議というところが23年6月にとりまとめを行っている「建設産業の再生と発展のための方策2011」というのがある。その中で、現在の重層下請構造は、個々の企業が経済的合理性に基づき、原則自由に行動していくために、結果として下請契約という形で形成されたとしてきており、重層下請構造は、経費の増加による生産性の低下、労務費のしわ寄せ、施工責任の不明確化など課題があるという指摘はしているが、対応策としては、下請けの実数の制限、一次下請け、二次下請け、三次下請けという数の制限については、行政で一律に縛っていくということではなく、契約当事者である建設業者・団体が自主的に取り組むべきだという指摘をしている。
 現在、連合会がその取り組みを進めているところである。

【斉藤委員】
 建設業で一番の問題は、建設労働者が激減したということである。その最大の原因は、賃金が下がったことである。全産業の7割、年収400万円、それで若手の労働者がいないと。本当に末端まで労働者の賃金を確保するというのが公契約条例で、公が発注するものを保障しようということなので、ぜひ県土整備部でも真剣になって取り組んでいただきたい。


・津付ダム、簗川ダム建設事業について

【斉藤委員】
 津付ダムについては、県が中止の方向を出し、大規模事業評価専門委員会にかかっていると思うが、当然だと思う。
 津付ダム・簗川ダムの事業費、進捗状況、関連道路も含めたものを示していただきたい。
 簗川ダムについては、本体工事費はいくらになるのか。本体工事についてはどこまで進んでいるのか。

【河川開発課長】
 簗川ダムだが、ダム事業の進捗状況は、平成25年度末の事業費の累計で484億円、進捗率は68%となっている。うち現在の状況については、付け替え道路は国道については終了し、県道の付け替え道路等を行っている。本体については現在自主設計の最中である。ダム本体については150億円程度と見込んでいる。
 津付ダムについては、平成25年度末までに102億円、進捗率で59%となっている。現在付け替え国道の工事を進めている。ダム本体の工事費は55億円と見込んでいる。