2013年11月29日 決算特別委員会
山田町NPO問題―商工労働観光部に対する質疑(大要)


【斉藤委員】
 11月25日に参考人質疑が行われた。山田前町長と県の前沿岸広域振興局副局長。一言で言うと、6億7000万円もの不正支出と返還が求められているにも関わらず、責任回避に終始した。そして肝心な問題については答弁を回避すると。きわめて不誠実なものだった。
 今日は県が相手なので、県の対応に焦点を絞って質問したい。


・「御蔵の湯」の建設問題について

【斉藤委員】
 第一に、この無料入浴施設の整備は、いつ、どういう内容で、事業費はいくらで事業計画に盛り込まれたのか。

【雇用対策課長】
 山田町から提出されている資料を見ると、23年7月28日に、町から県にたいし補助金交付契約の変更、その基になっている事業計画の変更申請が出されている。翌29日に、県と町が補助金交付契約を締結し、その中で、公衆浴場設備のリース料1000万円を計上し、その内容は、山田町とNPO法人の委託契約だが8月22日に締結した委託契約の中にそれが反映されたということである。

【斉藤委員】
 リース料1000万円でこの事業計画は始まった。ところが、造られたものはそんなものではなかった。これは町長も認めている。県もびっくりした。11月15日に、宮古地域振興センターは、建設中の御蔵の湯について、「建設土木事業は認められない」と町に調査を求めた。その経過と対応はどうだったのか。

【雇用対策課長】
 当時の担当者だが、「建設土木事業は実施できないなど、要件に該当しないものは緊急雇用事業ではできないので、緊急雇用事業で実施しているかどうか調査してほしい」と山田町に連絡したことは確認している。
 その後、現地に現物を見には行っているが、町に対する調査結果を求めると、その後の処理については記憶が曖昧であり、経過としては、11月末に県内地元紙の報道があり、翌12月には開所式に至っているということである。

【斉藤委員】
 先ほど、御蔵の湯についてはあなた方が「何も知らなかった」というのはウソである。こういう対応があるのだから。11月15日に建設中の建物を見てびっくりした。
 どういう場合に基金事業は建設土木事業になるのか。

【雇用対策課長】
 1つの考え方として、なぜ建設土木事業を禁止するかというのは、財産の取得につながるからである。だから建物を建てるだとか、公共事業を行うというものは、そういったことは認めないということになる。
 緊急雇用事業なので、人力を、いわば労働者を雇用して、さまざまな事業を行うケースがあるので、判断に迷うところはあるが、その1つの判断の要因として、重機を使っていればそれは建設土木事業という性格のものだろうという見解を厚労省は示している。

【斉藤委員】
 1000万円のリースで始まった。あの建物は1億3000万円の建物である。見たら当初の計画と全然違うではないか。重機も使われた。
 工事の看板を見たのか。建築確認申請は、大雪りばぁねっと。がやった。カガヤには大雪りばぁねっと。が発注した。看板を見れば分かるのではないか。建築工事の看板を見たのではないか。

【雇用対策課長】
 ご指摘のあった11月15日の翌日に現地に行き、写真を撮ってきている物が残っているので、現地で確認したと申し上げたが、建築申請の看板まで確認したかについては承知していない。

【斉藤委員】
 12月に開所式が行われた。建物を見て1000万円でできると思うか。全然計画と違うではないか。この計画の違いをあなた方は質しているか。開所式にまで出て、NPO法人が建設したとまで書いて、全然事業計画と違うことがやられているのではないか。そのチェックはどうだったのか。

【雇用対策課長】
 開所式の案内を、県の当時の宮古地域振興センターで受けて、当然この施設と緊急雇用事業の関連はどうなっているのかという確認をした。それに対する回答は、「鉄骨とリースで約2000万円、その他人件費および光熱費は緊急雇用事業での対応です」という説明を受けている。

【斉藤委員】
 鉄骨と組み立てで2000万円もウソである。ただ1000万円のリースですら違っている。
 副局長にも聞いたが、復命書の中で、「緊急雇用事業で県内でもっとも進んだ例」だと言っている。驚くべき話である。
 大事なことは、御蔵の湯について、山田町の決裁文書、「御蔵の湯について、工事設計書の写しを県庁に送付し判断を仰いだ。その結果、御蔵の湯4276万6500円は建設土木事業に該当するため補助対象外となる旨、県庁から回答があったので連絡する」と。この対応は正しかったと思う。工事設計書の写しを見て判断したのだから。誰が判断したのか。高橋参事(雇用対策課長)はその相談を受けなかったのか。

【雇用対策課長】
 この資料は、4月に全体事業の調査に行った際に、時間が足りなく調査しきれなかった部分を資料を持ち帰り継続して調査している中で、入っていた資料の一部と聞いている。
 翌日には、県庁の担当者の方にその写しを送付しているが、その内容は見積書という表題の中項目程度の項目、金額の積み上げの資料で、ページも飛び飛びだったので、宮古振興センターの方では、これは証拠書類として十分使えるレベルのものではないという判断をしたと聞いている。この写しを受けた県庁の方では、委員が読み上げたような内容で、担当者の見解を述べたわけだが、雇用対策労働室内部でその協議はそこまではしなかったものである。相談については、十分記憶していないが、その写しは私に提出されたという風には聞いていた。そこは私の注意がそこまで行き渡ってはいなかったということもあるのだと思う。

【斉藤委員】
 「振興センターで判断が難しかった御蔵の湯について工事設計書の写しを県庁に送付し判断を仰いだ」と。振興センターでは判断できなかったから県にわざわざ工事設計書の写しを送付して判断を受けた。あなたもその設計書を見て異議を唱えなかったのではないか。
 だから山田町は重大なことと受け止めた。県からそういう回答があったと。受け止めるだけの中身があった。ただ、この判断は常識的判断で正しかった。これだけの建物を見て、2000万円のリースでできるなんて考える方が間違いである。そう考えるのだったらリース会社を確認して、立派なリース会社が造って、ボランティアのように委託したというのならともかく、そんなこともせずに。
 4月19日にあなた方は、課長までいって答えた。なぜこれがひっくり返ったのか。いつ、どういう会議があったのか。
 山田町はこう言っている。「4月23日に、町長・副町長・総務課長・財政課長の4人で打ち合わせをした。これでは大変だというので、副町長を窓口にして県と折衝した」と。誰が折衝の窓口になったのか。

【雇用対策課長】
 4月19日の担当から見解が伝わってしまい、委員からお話のあった通り、役場の方で町長以下で協議したということはその文書で我々も知った。
 その後、宮古地域振興センターでは、副局長以下でこの対応について協議している。補助対象であることを町がきちんと説明でき、県としてもその言い分が正当だと認められるのであれば、補助対象としてもいいのではないかと、そういう確認をしてその旨を5月7日に山田町には伝えている。これももう1つ先日の委員会でも資料として山田町の記録が提出されていたと思う。
 それを受けて山田町が県からの問い合わせに作成した回答の内容を踏まえ、最終的に補助対象とすることとしたものである。

【斉藤委員】
 5月7日の回答を、どういうメンバーで検討して結論を出したのか。

【雇用対策課長】
 その方向づけ、ケースバイケースでどう対応しようかというのは先ほど申し上げた通り副局長以下で協議した。副局長、地域振興センターもある。その下で直接担当しているのは地域振興課である。そのメンバーで協議し、最終的に山田町の回答を踏まえた結論についても、同様のメンバーで協議したと聞いている。

【斉藤委員】
 かなりシビアな問題で、町がどういう説明をしたか、リース・組み立て費・材料費でやったと言っているのではないか。そういうことだったらリース会社を確認しなければいけないではないか。1億3000万円もの建築工事をやっていて。あなた方は町の説明にたいしてめくら判を打ったのか。

【雇用対策課長】
 1億3000万円という金額は、事件発覚以来、さまざまな調査の中で出てきている数字であり、当時、その建物をそう認識していたわけではなく、山田町からは、その内容として鉄骨等リースの経費で2000万円ぐらいかかっていると、実際最終的な経理簿では2400万円と出ていたが、そういったものという風な考え方でいた。
 リース会社の確認については、県はそこまで山田町がいた完了検査をして出してきている内容であるので、それを前提に検討したということである。

【斉藤委員】
 先ほどの回答で重大な回答があった。建設会社の領収書があったと。誰宛の領収書か。

【雇用対策課長】
 宛名は「大雪りばぁねっと。」である。

【斉藤委員】
 だったらアウトではないか。リース会社などない。大雪りばぁねっと。が発注したということは領収書を見れば分かったのではないか。
 それには証紙もないのではないか。

【雇用対策課長】
 先ほどのご指摘の部分だが、山田町の回答を読み上げさせていただくと、「御蔵の湯はリース物件ですが、その組み立てには専門性を要することから、業者に依頼して組み立て作業を行ったもので、その特殊性から組み立て・解体完了までがリース経費の範ちゅうに入るものと考えております」と。たしかに建設会社が出した領収書の項目の分類は材料費、それは組み立て費だという風に役場からの説明があったものである。
 証紙の添付については、手元に資料がないので確認できない。

【斉藤委員】
 ここに領収書のコピーがある。2157万円、これは10月31日、組み立て費になっている。2月15日には2118万円、これで4000万円超えている。その他に、振込用紙で4月17日に3000万円、4月17日に8000万円。本当にこういうのを丁寧に見たら、当初の1000万円のリースだったら自衛隊の仮設風呂ぐらいだったらあり得たと思う。しかし重機を使ってあれだけの工事をやったら、とてもリース・組み立て費でできるものではない。それを無理やりリースというのだったらリース会社を確認しなければならない。

【雇用対策課長】
 金額の振込について、4月の3000万円、8000万円については、24年度補助金の中で整理をされているものである。23年度分については、リース料としての2400万円と、委員からご指摘のあった2100万円の2通、これは材料費だが、この部分である。

【斉藤委員】
 その御蔵の湯に対する県の対応が間違ったと思う。それが問題を拡大した。
 最初は1000万円のリースである。その程度だったらリース・組み立て費というのはあり得たかもしれない。自衛隊の仮設風呂程度である。ところがあんな大がかりな建設工事をやったら成り立たない。そういうことに疑問を感じながらあなた方はそれを追認してきた。町のウソの説明もそのまま認めてきた。きわめて重大である。


・異常な契約変更の容認について

【斉藤委員】
 平成23年度、5回目の異常な事業計画変更をなぜ認めたのか。3月15日の事業計画変更、これは町とNPOの間では1月25日である。1億6900万円の増額補正、このときに、休日手当が今までなかったのが突然4635万円盛り込まれた。人件費は人員増なしで7146万円増額、リース料は4905万円増額、公衆浴場建設2300万円増額、防災センターの建物が突然1100万円盛り込まれた。材料費も、これもまったくなかったのが3565万円盛り込まれた。人員増がなくて、1月というのはどこも減額補正しているときに、このNPOだけは1億6900万円の増額というのは異常なことではないか。これは不足払いである。なぜこんなデタラメな事業計画変更を認めたのか。

【雇用対策課長】
 この変更内容については、山田町が年度の終盤にさしかかり、これまでの実績を踏まえて、年間全体の見込みを修正したものと考えたことが1つある。
 もう1つ、先ほど市町村からの申請に対する県のチェックについて説明申し上げたが、雇用した失業者の人件費割合はその修正後においても2分の1以上であること、こういった事業の要件を満たしていたので県としては認めたものである。

【斉藤委員】
 第5回目の事業計画変更、これは商工文教委員会でも何度もこの問題を取り上げ、中身を見て答えていただきたい。こんなものが認められるか。1月の段階で事業費を精査したら1億6900万円も膨れ上がっていたと。事業費をオーバーして仕事をしたということではないか。ムダ使いをしたということではないか。それを認める事業計画変更である。部長はこれを見たか。

【商工労働観光部長】
 その事業計画書については、後になって担当の方から説明を受けている。
 通常はその時期・時点において、そのような増額というのは一般的には考えることはなかなか難しい内容であると認識したところである。

【斉藤委員】
 あり得ない増額変更をあなた方は認めた。これは不足払いだった。これに味をしめて平成24年度もそういうことを平気でやった。ところが平成23年度はそれをやっても2億円の不払いが出た。


・平成23年度の完了検査について

【斉藤委員】
 平成24年3月16日の指導事項というのは極めて重要な内容だった。わたしはとてもこんな内容だったら平成24年度は事業計画などやってられないという内容である。
 「会計等の書類できていない。よって検査・確認することは不可能。大雪りばぁねっと。ではどんな書類を準備すればよいか理解できていない模様。リース料・旅費・消耗品等の領収書類が不備多数、どこに何をしに行ったか旅費が不明、消耗品は何を買ったか不明。月額40万円もらっている者もいる。施設改修の費用が多数あった」―。これだけで平成23年度はアウトだと思う。なぜこれが完了検査で通るのか。いつ完了検査したのか。

【雇用対策課長】
 委員ご指摘の通り、指摘内容自体は非常に重要なものを含んでいると考えている。この指導事項をこれからは改善していこうという意味で、この間は前副局長が「入口である」という表現をしていたが、当面の完了検査そして次年度の継続実施に向けて、この事業をきちんと改善してやっていこうという意味での指摘であったと考えている。
 完了検査だが、3月31日までの人件費・活動費等を23年度の事業費として同日委託事業の完了はしたものである。しかし、事業数が多いこととその証拠書類等も当然多い、職員数も限られているということから、詳しい内容については4月に入っての補充調査も含めて、全体として完了検査を終えているものである。5月9日と記憶している。

【斉藤委員】
 私の質問に副局長は、「完了検査をやったという報告はなかった」と言っている。やっていないのではないか。3月31日の文書なんてウソではないか。そもそも日曜日で、やったという文書を作っているがやっていない。
 4月19日付の山田町の決裁文書で、「先日完了検査を行った。3日間では検査しきれなかったので、大雪りばぁねっと。については持ち帰って精査を行った」と。
 この間山田町の副町長に聞いてきたが、「5月連休明けまで続いた。伝票がなかった。収支が合わなかった」と。だから山田町の当時の総務課長(現副町長)は町長にたいしNPOへの職員派遣を申し出た。職員を派遣しなかったら大変なことになると。それを当時の町長は二度にわたり却下した。重大である。
 5月の連休明けまで、そういうずさんな実態ではなかったか。どうやってつじつまを合わせたのか。

【雇用対策課長】
 先ほど来問題としてご指摘を受けている御蔵の湯の取り扱いについて、さまざまなやりとりもあり、そういうことも含めて、連休明け、先ほど5月9日と申し上げたが、そこまでいろいろなやりとりは継続したものとは理解している。
 3月31日については、この事業は雇用であるので、一応工事のように3月中途で仕上げるものではなく、3月末まで雇用するという意味では、末日において委託事業が完了したということを確認した調書の作成自体は、後日地域振興センター長まで完了確認調書として報告を回している。
 なお、さまざまな書類がなかったというご指摘もあるが、一方で私の後ろの戸棚にも持ってきて控えをとっているが、最終的に完了確認調書を作成するにあたっては、山田町から費目ごとの経費一覧とそれに対応する領収書類の提示を受け、今回の再精査にあたってはその領収書類を見ながら、一部は該当することができないという判断を加え、再精査を行っている。したがい、現在申し上げられることは、必要な書類はもしかしたら整理が不十分、並べ替えとかそういう意味の整理が不十分な部分はあったかもしれないが、最終的にそういった必要書類の提示を山田町から受けて、その結果として県は補助金の支出という最後の手続きをとったものと理解している。

【斉藤委員】
 3月16日の指導事項には、「月額40万円をもらっている者がいる」というのがある。それで3月15日の事業計画変更で初めて休日手当というのが4635万円出る。休日手当は、土日に勤務したら日当6000円にプラス10000円、出勤すれば16000円である。こんなのは賃金規定になかった。賞与もないけど出された。これはどのようにあなた方は認めたのか。
 施設改修の費用が多数あった。御蔵の湯の建設費、B&G海洋センター設備改修費、計5000万円、これを認めたのか。

【雇用対策課長】
 給与の支出については、その額の多寡が度々問題になることはあったが、最終的には雇用主において、その根拠とする給与規定・賃金規定があるかないか、それに基づいて支給されているかどうかが審査のポイントとなる。そういう意味で認めたものである。
 施設改修5000万円ということだが、私が今回再確認する中で、23年度末に認めた経費の中にもそのような経費は含まれていない。

【斉藤委員】
 きちんと3月15日の変更計画にあるではないか。だから完了検査のときに指導している。
 これだけずさんなことが明らかになっている最中に、なぜ3月23日には平成24年度7億9000万円の事業費が内定通知されるのか。これは二重の誤り、最大の誤りといってもいい。なぜ認めたのか。

【雇用対策課長】
 24年度の内定だが、当然その時期には次年度の事業を実施するために、そういった内定等の処理が必要であり、その判断にあたっては、新年度事業について140名の雇用をする事業計画書が提出され、その人件費割合など事業の要件を満たしていたので内定したものである。
 また3月16日の指摘と絡めて考えると、やはり今後に向けてこういった事務処理がこの事業のウィークポイントと当時の担当者も言っているが、当時の認識として、そこを改善してこの事業を継続して山田町の雇用創出に努めていこうという意識で取り組んだものと考えている。

【斉藤委員】
 御蔵の湯についても完了検査についても、県はやるべきチェックを見過ごしてしまった。これはきわめて重大である。そういう警告・問題提起がありながら見過ごして、さらにずさんな経理が明らかになっている最中、7億9000万円の24年度の事業費を認めたのは二重の誤りである。
 NPOのこのずさん・乱脈なやり方は絶対に許されない。首を切られた従業員は「復興をもてあそんだ悪魔だ」と言っている。
 そしてそのずさんな事業をやる資格のなかった団体に委託した山田町の責任も厳しく問われなくてはならない。しかしそれをチェックできなかった県の責任もまた免れない。