2013年12月4日 12月定例県議会・本会議
議案に対する質疑(大要)


・被災地福祉灯油について

【斉藤議員】
 日本共産党の斉藤信でございます。議案第1号、第3号、第22号、第24号、第26号から28号、第31号、第33号、第34号について質問します。
 議案第1号は、2013年度岩手県一般会計補正予算(第4号)であります。1憶9845万円余の補正予算でありますが、被災地福祉灯油等特別助成事業費補助として4975万円余が計上されています。
 被災地に避難をしている方々も対象になっているが、住民票を移動していれば対象にならないのは矛盾だと思います。住民票を移動した内陸に避難した方々も、この福祉灯油等助成事業の対象に運用改善でやるべきではないのか。その対象はきわめて限定的だと思います。たいした財源がなくても十分やれると思うのでその点についてお答えいただきたい。また、必要な財源の試算を担当課にも求めていたのでそれも併せて示していただきたい。

【保健福祉部長】
 沿岸部から内陸に避難した世帯については、福祉灯油の対象になる要件を満たし、かつ市町村が助成する場合に県補助の対象とするという仕組みなので、内陸に避難している世帯を対象とするかどうかは、基本的には市町村の判断だと考えている。
 どれぐらいの数かということは、沿岸部から内陸部に住居を移転している世帯が1700世帯ということだが、この中で低所得者がいくらかというのは現在確認できていない。

・災害対応にかかる超過勤務手当について

【斉藤議員】
 災害対応等超過勤務手当として、1億400万円余が計上されています。7月から10月の大雨・台風被害への対応等にかかる超過勤務手当ということでありますが、超過勤務の実態、人員と超過勤務時間、1人当たりの超過勤務手当額はどうなるでしょうか。

【総務部長】
 7月から10月の大雨・台風被害対応や、被災地ご訪問にかかる行幸啓対応などにより、当初想定していたよりも多くの超過勤務が必要な状況にある。
 本年4月から9月までの1ヶ月あたりの職員一人当たりの月平均超過勤務時間数は、議会事務局が13.2時間、知事部局が11.1時間、人事委員会事務局が19.7時間、教育委員会が7.6時間、警察本部が22.7時間となっている。
 4月1日現在の超過勤務手当の支給対象となる職員数は、議会事務局が27人、知事部局が3399人、人事委員会事務局が12人、教育委員会が1061人、警察本部が2239人となっており、今般の補正予算額を加えた現段階の年間予算額を、仮に4月1日現在の支給対象者数で単純に割り返せば、1人当たりの年間支給見込み額は、議会事務局が42万6千円、知事部局が41万4千円、人事委員会事務局が31万8千円、教育委員会が30万7千円、警察本部が54万円余となるところである。
 今後とも超過勤務の縮減に努めつつ、実態に応じ適切に対応していきたい。
 
・労務費の高騰、超過勤務手当について

【斉藤議員】
 県警本部長に質問します。警察施設費、警察施設災害復旧費の補正では、労務費の高騰等に伴う工事費の増額が計上されています。労務費等の高騰の実態を示していただきたい。その他の工事の実態と今後の見通し、対応策を示していただきたい。
 警察本部費の補正では、3390万円の超過勤務手当が計上されています。改善措置として評価しますが、超過勤務の実態と超過勤務手当の支給率はどうなるでしょうか。

【警察本部長】
 岩手県の設計労務単価については、公共工事労務費調査の結果を踏まえ、本年4月に改定されたところであり、平成24年度と比較し23.3%上昇している。警察施設災害復旧費のうち今回補正予算要求以外の工事については、小規模の修繕工事であり、現時点において入札不調はない。今後発注する工事については、県土整備部において随時見直しをかけている資材単価による設計とし、円滑な事業実施に努めていきたい。
 超過勤務手当予算の補正については、年度当初予定されていなかった7月上旬に被災地をご訪問された天皇皇后両陛下の警衛警備、および11月上旬に被災地をご訪問された皇太子同妃両殿下の警衛警備の実施にともない、予算の不足が見込まれたことから3390万円の増額を計上したところであり、予算総額は11億7937万円余から、12億1327万円余となる。超過勤務の実態については、今年度4月から9月までの上半期の状況で、この間における超過勤務数が30万3823時間、支給時間数が22万8033時間である。上半期の超過勤務数に占める支給時間数の割合は約75%となる。なお、今年度末の見込みについては、現段階で予測することは難しい。

・消費税8%増税による県税条例の一部改正について

【斉藤議員】
 議案第3号は、岩手県県税条例の一部を改正する条例であります。その内容は、消費税を8%に増税することに伴い、その1.7%分を地方に配分しようとするものです。どの程度の増収が見込まれるのでしょうか。消費税増税による県の負担増はどうなるでしょうか。消費税を8%に増税することによる県民の負担増はどうなるでしょうか。1997年の5%に増税した時には、大不況に陥り、国の税収も増えるどころか年間14兆円もの減収となりました。県税の場合はどうだったでしょうか。

【総務部長】
 消費税率8%になった場合の増収見込みは、平成24年度の地方消費税実収入額約244億円にたいし、消費動向が増税後も変化がない場合での推計で、地方消費税実収入額は約416億円となり、増収額は約172億円と見込まれる。
 消費税増税による県の負担増だが、消費税増税にともなう県の歳出への影響について、平成25年度当初予算をベースに単純に試算した場合では、約95億円の負担増になるものと見込まれる。
 消費税増税による県民の負担増は、平成24年度の地方消費税額等から推計した国・地方合わせた消費税額のうちの家計負担分の増収額を平成25年11月1日現在の県内の世帯数51万5788世帯で割って推計すると、消費税8%で1世帯当たり年間約63000円の負担増と見込まれる。
 消費税率5%増税後の県税収入の状況については、議員ご指摘の14兆円は、消費税増税前の平成8年度と平成22年度との租税総額の比較であり、これを県税に当てはめた場合、平成8年度の県税決算額約1242億円にたいし、平成22年度の県税決算額は約1010億円となり、約232億円の減となっている。

・指定管理者制度について

【斉藤議員】
 議案第24号、26号から28号は、岩手県公会堂などの指定管理者の指定に関するものであります。
 それぞれの指定管理について、県民・利用者にとってどう具体的に改善が図られてきたでしょうか。今後の事業計画ではさらにどのように改善が図られる内容となっているでしょうか。雇用については、これまでの常勤・非常勤、正規雇用・非正規雇用の状況はどうなっているでしょうか。今後の事業計画では雇用は改善される計画となっているでしょうか。それぞれ具体的に示されたい。非正規雇用・不安定雇用が拡大されるなら、指定管理者制度そのもののあり方を再検討すべきと考えますが、いかがでしょうか。
 岩手県公会堂の指定管理者は、第一商事、龍沢学館、アイビーシー開発センター、総合企画新和グループの企業体となっていますが、中心はどの企業でしょうか。アイビーシー開発センターはアイビーシーの100%小会社であります。マスコミ関係の会社が県行政の仕事を受注することに違和感を感じます。こうしたやり方で厳しく行政のチェックができるのでしょうか。マスコミとしてのあり方が問われる問題だと考えますが、検討されたのでしょうか。

【総務部長】
 岩手県公会堂については、インターネット予約システムの導入による利便の向上や、アンケート調査の実施による利用者満足度の把握を行ってきたところだが、今後は公会堂通信の発行、公会堂ツアーの実施、施設案内ガイドの設置など新たに計画している。
 種市漁港レクリエーション等施設駐車場および漁港環境整備施設については、各種イベントの主会場として積極的に活用し、施設利用者数の拡大を図ってきたところだが、今後はさらに利用者の安心安全のため、危機管理マニュアルを作成することとしている。
 県営住宅等および県営特定公共賃貸住宅等については、修繕等に迅速に対応するためのサポートの設置や単身高齢者の相談対応をする専門スタッフとして、福祉アシスターの配置などを行ってきたところだが、今後は災害公営住宅の建設に伴い、沿岸地区に支所の設置や福祉アシスターのサービス対象の拡大、加えて入居者サービス検討委員会の開催も計画している。
 それぞれの雇用形態だが、県公会堂については、現在は常勤5名、非常勤2名の配置となっているが、今後は新たな指定管理者の下、ボイラー・清掃・整備業務を自ら実施することから、常勤4名・非常勤12名の職員配置となる計画である。
 種市漁港レクリエーション等施設駐車場および漁港環境整備施設については、これまでと同様に洋野町が指定管理者となることから、引き続き常勤3名の職員配置となる計画である。
 県営住宅等および県営特定公共賃貸住宅等については、現在常勤21名の職員配置となっており、今回指定管理者に変更はないが、県営災害公営住宅の建設等事業の進捗に伴い増員を計画している。
 職員配置については、基本的には各施設ともそれぞれの機能・性質・設置目的に応じ、運営に必要な職員を確保されるものと理解しており、今後においても引き続き指定管理者制度の円滑かつ適切な運用をしていく。
 県公会堂の指定管理者についてだが、第一商事、龍沢学館、アイビーシー開発センター、総合企画新和グループの代表団体は、第一商事株式会社である。お尋ねのアイビーシー開発センターは、報道を事業目的とする会社ではなく、公会堂の利用率の向上を図るため、広告代理店のノウハウを生かし、広報活動や自主事業の企画等を担う構成員として参加しているものと承知しており、募集要項上も公の施設の指定管理者となることに特に問題はないと認識している。

・胆沢ダムの建設に関する基本計画の変更について

【斉藤議員】
 議案第31号は、胆沢ダムの建設に関する基本計画の変更についての意見に関し議決を求めるものです。胆沢ダム建設事業は、平成元年の当初1360億円の事業費で進められました。ところが、平成12年に2440億円に1.8倍に、大幅に増額されたものです。岩手県の負担は291億円から349億円に増額されています。今回わずかに2360億円に、80億円縮小されるものです。県の負担は12億円の縮小となります。当初計画から大幅に増額となった理由は何でしょうか。
 水道事業では、事業費の大幅増額によって、関係市町では、水道料金が1.8倍にも値上げが求められています。水道、かんがい用水の需要はこの間4割に及ぶ減反で減少しているのではないでしょうか。ダム負担額の増大による水道料金の値上げに対する対策が必要ではないでしょうか。

【県土整備部長】
 事業費は、平成元年の当初計画の1360億円から平成12年の第1回変更では1080億円増額され2440億円となった。そのときの増額の主な理由としては、消費税の導入、建設資材等の単価上昇、付け替え国道のルート見直し、保障基準単価の増などによるものとなっていた。今回の第2回変更では、80億円減額となるものだが、変更の主な理由は、岩手・宮城内陸地震による対策などの増が96億円、本体工事や付け替え市道の見直しなどによる減が176億円となっている。
 かんがい用水の需要については、胆沢川沿岸の農地約9700haのかんがい用水として、必要な水量の算定にあたっては、あらかじめ一定の転作を見込んでいるが、転作翌年の水稲作付時における用水量の増加や、転作地の畑作用水の需要などがあることから、必要な水量の転作により変動しないものである。
 また水道料金の値上げに対する対策だが、ダム負担金については、国庫補助金のほか、市町の一般会計からの繰り出し金にたいしても、地方交付税措置等により手当がなされており、水道料金は水道事業の経営計画をもとに、当該自治体の議会の議決を経て定められるものと承知している。

・災害公営住宅新築工事の請負契約について

【斉藤議員】
 議案第33号、34号は、災害公営住宅新築工事の請負契約案件であります。大船渡市内に建設を予定するものですが、最近、建設された災害公営住宅の入居希望者が定員を割る状況もあります。大船渡市における災害公営住宅入居希望、自立再建希望の調査はどうなっているでしょうか。同じ建設業者が二つの災害公営住宅を受注していますが、他の工事受注の状況を含め、十分な工事が可能でしょうか。

【県土整備部長】
 今年の6月から7月にかけて、大船渡市において全被災者を対象とした意向調査を行っている。回収率70.7%・1609世帯から回答があり、災害公営住宅の入居希望者が520世帯、防集も含めた持ち家再建希望が749世帯となっている。
 災害公営住宅については、現在その意向調査の結果を踏まえ、各地区の整備戸数を見直している。新しい整備戸数については、近々大船渡市において公表する予定と聞いているが、今回議案となっている2つの災害公営住宅については、その新しい整備戸数を踏まえたものとなっていることを大船渡市に確認している。
 建築工事を受注した建設業者の他の工事受注の状況と施工能力についてだが、県発注の県営建設工事のうち、平成24年度から25年度の受注状況は、今回の2件を含め5件の受注実績があり、うち1件についてはすでに完成している。十分な工事が可能かということだが、発注後の請負業者への聞き取りでは、同規模で配置技術者の要件が同様であれば、今後さらに別の工事の受注も可能とのことであった。また入札参加申請の際に提出された総合評価技術提案書では、複数の配置技術予定者を申請するなど、当初から複数の受注を想定した対応をされており、請負業者として受注可能と判断した上での対応がなされていると認識している。


≪再質問≫

・被災地福祉灯油について

【斉藤議員】
 岩手県が3年連続実施するのは高く評価したい。全国に誇れる取り組みである。
 住民票を移動していない内陸にいる被災者は対象になっている。しかし住民票を移動した方々が対象になっていないというのがこの制度の問題だと思う。
 岩手県が内陸市町村の意向を調査した。「被災者支援灯油を実施する」が北上市、「実施予定」が二戸市・金ヶ崎町、「国・県の支援があれば実施予定」が6自治体、「灯油価格等を踏まえて検討している」が4自治体、葛巻町・九戸村は独自に実施すると。多数がやりたいと言っている。
 住民票を移動した被災者も、内陸の市町村が支援するならその分は今回の事業の対象にするという運用改善を図るべきではないか。去年4900万円の予算で、実際に支出したのは4000万円弱であった。おそらくこの予算の枠でできるのではないか。だからその運用を改善すれば、すべての被災者、もちろんその中でも低所得者になると思うが、対象になるのではないか。

【達増知事】
 昨年度の事業実績だと、沿岸12市町村のうち8市町村(宮古市・大船渡市・陸前高田市・釜石市・大槌町・山田町・岩泉町・野田村)は、住民票を移動せずに内陸に避難している世帯についても助成対象としたということで、そういう沿岸市町村における判断、内陸市町村においてもそれぞれ被災者の皆さんにたいし被災者としての特別な行政サービス、また住民票を移動しているのであれば住民としての行政サービス、さまざま工夫して行っているところであり、県としてはそれぞれ市町村のやり方について市町村としっかり協議をして、丁寧に市町村の意向を確認してということだが、灯油価格や国による支援の動向なども注視しながら対応を検討していきたい。