2013年12月4日 12月定例県議会・本会議
高田一郎県議の一般質問(大要)
1.東日本大震災津波からの復興の課題について
・被災者のケア対策について
【高田議員】
日本共産党の高田一郎でございます。
東日本大震災から2年9ヶ月になろうとしていますが、県内の震災関連死は422名となるなど被災者の命と健康が脅かされています。
大槌町の仮設住宅入居者を対象にした岩手大学学社会研究室の調査では震災後の心の変化について「ほとんど変わらない」「厳しくなった」があわせて66%となりました。前年度と比較しても8%も増加し、社会活動への参加や仮設住宅への訪問も減少している実態も明らかとなりました。
住宅再建も進まず先の見えない不自由な避難生活が被災者の精神状態を悪化させています。知事はこの調査結果をどう受け止め被災者支援に取り組んでいくのでしょうか。
心のケア対策、保健指導など被災者に寄り添った長期的な支援が必要です。内陸の被災者を含め心のケア対策は十分に実施されているのでしょうか。保健師による保健指導などが行われていますが、重点的にケアが必要な被災者および仮設住宅での一人暮らしの実態はどうなっているでしょうか。
【達増知事】
まず、大槌町の調査についてでありますが、 岩手大学教育学部社会学研究室では、大槌町内の応急仮設住宅入居者を対象に、「被災者の心の問題」や、「生活環境への不満」、「就労状況や生活費などの暮らし向き」などの内容について調査を実施し、約1、1 0 0人から回答が得られたものと承知しております。
県でも、NPOと連携し同様の調査を実施しており、時間の経過とともに、生活に関する安心度が向上している方がいる一方で、今なお、生活に不安を抱えている方がいる状況と認識しております。県としては、被災者一人ひとりの問題や悩みに耳を傾け、市町村やNPO等の関係機関が情報を共有しながら、きめ細かな支援を行っていくことが重要と考えており、これまでも、自治会活動による住民同士の支え合いの促進を図ってきたほか、生活支援相談員の戸別訪問による見守りやNPOや社会福祉協議会による住民が気軽に集える「お茶っこ会」の開催など、被災者が「孤立」しないよう、取組を行ってきたところであります。
今後も、関係機関と連携し、被災者一人ひとりに寄り添ったきめ細かな支援を行っていくとともに、一日も早い生活再建に向けて、被災地の復興を加速化させて参ります。
【保健福祉部長】
まず、被災者の心のケア対策についてでありますが、沿岸被災地では、こころのケアセンターと地域の関係機関が連携を図りながら、「震災こころの相談室」の開設や訪問活動による個別支援と併せて、住民に対する健康教育や普及啓発、支援者支援や人材育成等、包括的な取組を行っております。
内陸では、被災者支援を行う機関・団体と保健師等の連携により、こころの健康に係る相談支援を行っており、こころのケアセンターも支援者への専門研修等により技術支援を行っております。今後、仮設住宅からの転居が進むなど、地域の状況の変化による孤立感や精神的負担に適切に対応するため、専門職による支援を継続するとともに、人材育成やネットワークづくりを通して、一人ひとりがこころの健康を大切にする地域づくりを推進し、長期的に被災者を支援していきます。
次に、重点的ケアが必要な一人暮らしの実態についてでありますが、重点的にケアが必要な被災者については、精神的な不安、不眠、多量飲酒や運動不足などが課題となっており、特に、一人暮らしの高齢者については、病気などの発見の遅れが懸念されることから、定期的な見守りが必要となっております。
これらの方々に対して、市町村では、生活支援相談員や民生委員等との情報交換を緊密に行いながら、治療が必要な者には医療機関への受診を勧奨しているほか、継続した支援が必要な者には個別訪同等による保健指導などを実施しております。
・震災関連死について
【高田議員】
次に震災関連死について質問します。
震災関連死を認められず災害弔慰金の支払いを求めて陸前高田市と釜石市の遺族が盛岡地裁に提訴しました。死亡診断書は「死因の急性心筋梗塞は津波による著しい生活環境の変化とストレスが原因で発症したもの」と診断書を提出しているにもかかわらず、なぜこれが認められなかったのでしょうか。震災で苦しみ、震災関連死の認定で二重の苦しみを受けています。岩手県は震災関連死の認定率が低いと指摘がされてきましたが、この間どう検討されてきたでしょうか。
【佐々木理事】
災害関連死についてでありますが、現在、訴訟として係争中であることから、県としては、具体的な発言は差し控えさせていただきますが、県で審査会を受託していることから、市担当弁護士等との打合せや必要な資料の提出などにより、支援して参りたいと考えております。
次に、災害関連死の認定率についてでありますが、本県においては、震災から死亡までの経過期間に関わらず、申出を全て受け入れることとしております。
他県では、本県の取扱いとは異なり、国が示した新潟県中越地震における審査事例を参考としているため、震災から死亡までの期間が6か月を超える申出が、平成25年9月末現在で、本県では、全体の34.4%の235件、比較して宮城県は、11.9%の134件と少なくなっております。
認定率も震災から死亡までの経過期間が6か月以内のケースで区切って算出いたしますと、本県で77.7%、宮城県では81.4%と著しく低いものではないと考えております。
・被災者の医療費、介護保険利用料の減免措置について
【高田議員】
次に、被災者の医療費、介護保険利用料の減免措置についてです。
医療費・介護保険利用料などの免除措置が1年継続となり被災者から歓迎されています。応急仮設住宅での暮らしは、今後2年から3年以上も続くこととなります。期限を切った生活と生業の再建への支援が被災者の不安を広げています。せめて「避難生活の期間は減免措置で対応する」という支援にすべきですがいかがでしょうか。
宮城県の被災者が多い一関市では、同じ被災者でも減免が受けられないということで不満が出ています。岩手県だけの対応では不公平です。国の対応はどうなっているでしょうか。
【保健福祉部長】
医療費の一部負担金、介護保険サービスの利用者負担等の免除措置についてでありますが、県としては、多くの被災者が、未だ応急仮設住宅等で不自由な生活を余儀なくされ、健康面や経済面での不安を抱えており、引き続き医療や介護サービス等を受ける機会の確保に努める必要があることから、平成26年1月以降も、これまでと同様、県内統一した財政支援を継続することとしたところであり、平成27年1月以降については、被災地の生活環境や被災者の受療状況等を勘案し、市町村等との協議を行いながら、改めて判断したいと考えております。
国の対応については、福島県の避難指示等対象地域を除き、既存の特別調整交付金の仕組みである、免除額が一部負担金等の所要額の3%を超える市町村について、免除に要した費用の8割を交付金の対象としております。
・被災地福祉灯油について
【高田議員】
「被災地福祉灯油」は、4,900万円余の補正予算が提案されています。3年連続実施は評価します。しかし、同じ被災者でありながら内陸部に避難されている被災者は対象となりません。すべての被災者を対象とするようすべきですが、なぜできないのでしょうか。その理由を示してください。
【保健福祉部長】
次に、「被災地福祉灯油等特別助成事業費補助」についてでありますが、この事業は、東日本大震災津波により甚大な被害を受け、財政事情が極めて厳しい中で福祉灯油を実施しようとする沿岸部の市町村を支援するため、平成23年度、平成24年度に引き続き実施しようとするものであります。
補助事業の対象世帯は、これまでと同様に、市町村民税非課税の高齢者世帯、障がい者世帯、ひとり親世帯又は生活保護世帯で、市町村が助成を必要と認める世帯とし、これらのうち、内陸に避難している世帯についても、市町村が助成する場合は県補助の対象と考えております。
・持ち家の再建への支援について
【高田議員】
次に、被災者のもっとも切実な住宅再建についてです。
資材の高騰などで建築単価も坪約60万円にもなっており、用地購入費を含めれば40坪の住宅を建設した場合3000万円にもなり、財産を失った被災者にとっては更なる支援が必要です。災害公営住宅の一戸当たり建設コストは1600万円にもなっており完成後の維持費を考えれば持ち家再建へのさらなる支援が必要です。日本共産党は県として100万円から200万円のさらなる支援を求めてきましたが、どう検討されているでしょうか。
災害公営住宅の買取は入居後5年後となっており、27年に完成の災害公営住宅の買取は32年以降となります。被災者生活再建支援法による申請期限は30年4月10日まで、県の100万円の補助は29年3月31日までとなっています。被災者から「申請期限が過ぎて買取できない」「お金をもらえるかどうかは老後を左右する問題だ」との声も寄せられています。加算支援金の申請期限の延長を国に求めるとともに県の住宅再建支援事業も延長すべきですがいかがでしょうか。
【達増知事】
次に、住宅再建に対する支援策の拡充についてでありますが、県としては、持ち家での再建を望む被災者の意向は復興に弾みをつけるものであり、支援の充実を図ることが極めて重要と考えております。
県では、「被災者生活再建支援制度」の支援額の増額と、震災復興特別交付税などの地方財政措置による支援の拡大を、国に要望しているところでありますが、国では「被災者に対する国の支援の在り方に関する検討会」を立ち上げ、検討を行うと間いております。
一方、住宅再建への支援策の実施期間の延長についてでありますが、住宅の建設・購入に際し、市町村と共同で補助する、本県独自の「被災者住宅再建支援事業」については、平成28年度までを実施期間としているところでありますが、土地区画整理事業などの面的整備には、さらに時間を要することが見込まれますので、現在、市町村の意見を伺いながら、実施期間の延長について、具体的に調整を指示しているところであります。
さらに、平成30年4月10日まで延長されている「被災者生活再建支援制度」の加算支損金の申請期間についても、面的整備の進捗状況等を総合的に勘案し、事務を取り扱っている(財)都道府県会館に再延長を要請してまいります。
・災害公営住宅について
【高田議員】
災害公営住宅の建設を急ぐことも重要課題です。知事はこれまで希望するすべての被災者が入居できるようにするとの方針で取り組まれてきましたが、災害公営住宅の建設はどうなっているでしょうか。8月8日の県の復興ロードマップでは3025戸となり1700戸も減少しました。さらに、9月末段階の復興庁のロードマップは2405戸となり、わずか2ヶ月でさらに600戸も減少する事態となっています。その要因と対策を示してください。
災害公営住宅は、住宅供給というハード面だけでなく買い物、交通の確保など居住環境、生活環境などソフト面と一体で整備することが必要です。どう検討されているでしょうか。
【県土整備部長】
まず、災害公営住宅についてですが、災害公営住宅の建設は、全体6、079戸のうち11月末現在で304戸完成しており、これも合わせて今年度末までに689戸の完成予定となっております。平成26年度に1、716戸、27年度に2、953戸、28年度に721戸の完成を見込んでおります。
復興庁が10月末に公表した「住まいの復興工程表」においては、来年度までに県内で完成する見込みの災害公営住宅の戸数が、8月8日公表の復興ロードマップと比較して、620戸減少しております。その要因としては、@設計の遅延(標準建設費に収めるための設計修正や建築士不足等による)A工事の入札不調B資機材や作業員の不足による工事の遅延C造成工事の時期の精査等により工程の精度が上がったことが挙げられます。
遅れに対する、対策といたしましては、設計施工一括選定方式や敷地提案型買取式による発注に取り組んでいくとともに、施工確保対策連絡調整会議等を通じての円滑な工事の実施に努めて参ります。
居住環境や生活環境については、@一部の比較的大規模な団地では、商業施設を併設する計画があること。Aグループ入居や地域住民を特定しての入居を必要に応じて行っていること。B市町村が入居者の見守り等を行う場合に、その費用を県が補助する「復興住宅ライフサポート事業」を今年度より行っていること。などの取り組みを進めているところでありますが、市町村と連携しながら今後とも被災者の方が暮らしやすい環境の整備に努めて参ります。
・二重ローン対策について
【高田議員】
住宅再建にとって二重ローン問題は切実な課題です。個人版私的整理ガイドラインにもとづく債務整理の申し出件数125件、債務成立は182件とあわせても307件にとどまっております。これは申請のわずか3分の1となっています。審査の収入基準が730万円になっており復興の中心となる共働き世帯は対象外になっており、これでは住宅再建も復興もすすみません。個人版私的整理ガイドラインは1万件の目標で始まりましたが、債務整理が進まない原因、どう県として具体的に改善を求めていくのでしょうか。
【佐々木理事】
次に、二重ローン問題についてでありますが、個人版私的整理ガイドラインに基づく債務整理が進まない原因については、被災者に制度の内容が十分に伝わっていないことに加え、一定額の収入や資産があることにより、返済が可能と判断されるケースや、震災前に滞納があったことにより、制度利用対象外と判断されるケース等、利用要件が厳しいことも原因と聞いているところであります。本年7月の東北弁護士会連合会での決議では、被災各県において2万人近い債務者が条件変更の契約を締結し、金融機関に対し、今なお支払を続けている現状が指摘されており、県としても、これら被災者に対し、あらためてガイドラインを周知することが重要との考えのもと、先月開催された県主催の岩手県中小企業金融連絡会議においても、参加金融機関に対し、ガイドラインの利用を積極的に勧めていただけるよう要請したところです。
県では、これまでも国に対し、個人の二重債務解消に向けた支援について、繰り返し要望してきたところであり、先月26日にも、復興庁及び金融庁に対し、現行制度の効果的な運用や法整備を含む新たな仕組みの構築について、本県の実態を踏まえて強く要望してきたところであります。
今後とも、ガイドラインの利用促進に向けた周知と併せ、あらゆる機会を捉え、国に対し、個人の二重債務解消に向けた支援について要望して参ります。
・仮設住宅での生活の改善について
【高田議員】
被災者は応急仮設住宅で厳しい3度目の冬を迎えています。「床や壁がゆがんできた」などの声も寄せられており寒さ対策は十分実施されているでしょうか。保守管理センターによる年2回の定期点検、24時間の相談体制も行われていますが、その結果と改修状況はどうなっているでしょうか。
【県土整備部長】
次に、仮設住宅の生活改善についてでありますが、県では、応急仮設住宅の居住環境を適切に維持していくために、応急仮設住宅保守管理センターを設置し、建物および設備の維持修繕、浄化槽などの保守点検を行っているほか、入居者からの相談等への24時間対応を一元的に行っているところです。
寒さ対策につきましては、建設当初の、床、外壁及び天井面の断熱に加え、外壁部への断熱材の追加、窓の2重化、風除室の設置を行い、そめ維持修繕に努めてきたところです。
次に、定期点検及び相談の内容についてですが、梅雨期、厳冬期の前の年2回の定期点検では、主に敷地や建物の屋根、基礎杭などの項目について4全団地について、外部からの目視による点検を行っているところです。
これまでの点検では、主に強風対策のための建物固定用ワイヤーのたるみやフェンスのぐらつきについて、不具合が確認されておりますが、梅雨期、厳冬期の前までに、不具合の修繕対応を行っております。
次に、日常の相談の内容としましては、給排水設備からの水漏れ、建具の建て付け不良、通路や駐車場の路盤の不陸調整など、さらに、外部に面した木製の階段など雨が当たる部分の腐食対策に係る依頼が多くなっているところです。
定期点検による不具合や入居者から相談があった修繕依頼については、資材や作業員の手配がつき次第、できるだけ早急に対応すると共に、長期化してきている応急仮設住宅での生活に支障が生じないよう、適切な居住環境の維持に努めて参ります。
・復興事業用地の特例措置について
【高田議員】
相続未処理や多数の共有地などが多く、復興用地の取得が進まず復興の足かせになっています。復興事業用地の契約予定数は2万件といわれていますが、県・市町村の相続未処理などの懸案件数はどうなっているのでしょうか。
県は弁護士会と共同研究し特例制度をまとめ 先週政府に要望活動をおこないましたが、国の対応はどうだったのでしょうか。議員立法の可能性も含めて取り組むべきです。知事も政党要望されたようですが、なぜ日本共産党には要請しなかったのでしょうか。要請した各党の対応も示してください。
【達増知事】
次に、復興事業用地の特例措置についてでありますが、11月27日に行った特例制度の創設を求める要望におきましては、国には、復興を進める上で、事業用地の円滑かつ迅速な取得が非常に重要な課題であると改めて認識をいただいたものの、根元復興大臣からは、憲法上の懸念も示されたところであります。
今後は、個別具体の事例に基づき、用地確保の円滑化、迅速化に向けて、さらに協議を継続していくこととなったところであります。
なお当日は、実質的に半日という短時間で要望活動を行わなければならない状況にあったことから、日程の都合上、すべての政党・政治団体を対象とすることができなかったものであります。
当日要望した各党からは、事業用地の確保が非常に重要な課題であると認識していただけるとともに、今般、県が提案した特例制度について、党としても研究したいなどのお話をいただいたところであります。
【県土整備部長】
次に、復興事業用地についてでありますが、県事業では、10月末現在で、契約予定件数が4、759件と見込んでおり、このうち相続未処理や共有などで取得に時間を要することが懸念される件数は1、501件となっております。また、市町村事業、については、9月末現在で、契約予定件数が約14、700件となっており、このうち取得に時間を要することが懸念される件数は約2、300件となっておりますが、この他に相続調査などの権利者調査が未了なものが約6、400件あることから、今後、取得に時間を要する案件はさらに増加するものと見込まれるところであります。
・いわて東北メディカルメガバンク事業について
【高田議員】
いわて東北メディカルメガバンク事業が被災地で実施されています。この事業は地域住民の健康調査とともに被災者の遺伝子情報を三世代にわたって調査するものです。究極の個人情報である遺伝子情報を系統的に調査・解析しょうとするものですが、被災者には十分な説明もなく進められ健康調査とともに実施されていることは重大です。
日本学術会議は7月26日「100万人ゲノムコホート研究の実施に向けて」の提言で、「事業参加者からの提供目的を限定しない包括同意や将来の健康情報の提供についての了解を得ておくことが不可欠」であり、「倫理問題について十分検討し適切なプロセスを構築しておく必要がある」と指摘しています。研究に当たっては第一に、被災者と自治体に丁寧な説明と包括的な合意を得ること、第二に、条例制定した長浜市の例に学び遺伝子情報の保護など厳格なルールを岩手医大と市町村で確立すること、第三にこの事業が被災地の医療再生と医療機関の復興にどのような役割を果たすか具体的に明らかにすること、こうした課題が示されないままでの研究の取り組みは中断を求めるべきと考えますが、知事の見解をお伺いします。
【達増知事】
次に、いわて東北メディカル・メガバンク事業についてでありますが、 実施主体である岩手医科大学においては、遺伝子情報の保護は最優先事項であるとの認識のもと、7月以降順次、関係市町村と秘密情報の取扱い等に係る覚書を取り交わすとともに、住民に対しても、事業の目的や実施内容を丁寧に説明し、同意された方のみ参加いただくなど、厳格な運用をしていると聞いております。 `
個人情報の取扱いについては、生命倫理の専門家等による国の審査を経て事業を実施しており、また、大学では今後、各界の専門家や地域代表による外部委員会を設置する予定であるなど、厳重な保護・管理がなされていると聞いております。
本事業では、被災地の県立病院に延べ8人の医師が派遣され、地域医療に従事しているほか、これまでに約5千人の健康調査を実施するなど、地域医療の復興に寄与することが期待されるところであります。
2、原発事故による放射能汚染対策と原発ゼロをめざす課題について
・放射能汚染対策、賠償の課題について
【高田議員】
干ししいたけの価格が震災前の2割下落するなど深刻な風評被害が続いています。県内農産物などの風評被害の実態と県としての対策を示してください。出荷制限されたしいたけ農家は1000戸に上り、再開に取り組む農家はわずか335戸になっています。出荷制限解除の見通しが立たず再建をあきらめる農家もありますが、解除に向けた対策と見通しはどうなっているか。産直施設の賠償が進んでいるでしょうか。
【農林水産部長】
まず、農産物などの風評被害の実態についてでありますが、農産物の風評被害の実態と対策について、JA系統及び森林組合系の損害賠償協議会が、これまでに、風評被害があったとして東京電力に損害賠償請求した額は約18億5千万円となっております。
県では、風評被害の払しょくに向けて、県産農林水産物の魅力の発信や、産地見学の開催などに取り組んでおります。
また、原木しいたけの出荷制限解除の対策と見通しについては、出荷再開に向けて、汚染ホダ木の処理や落葉層の除去等に取り組んでいるほか、出荷制限解除に向けて、出荷制限地域を、ほとんどの生産者が基準値を超過している地域と、基準値を超過した生産者と超過していない生産者が混在する地域に区分し、区分ごとに、それぞれの出荷制限解除に向けた検査方法等について国と協議を進めております。産直施設の損害賠償請求については、本年10月時点で、賠償請求した施設数は25施設、うち22施設に賠償金が支払われております。
県としては、東京電力に出席を求めての相談会の開催や、東京電力担当者による個別訪問のあっせんなどにより、引き続き、産直施設の取組を支援していく考えです。
・原発ゼロへの知事の見解について
【高田議員】
原発問題では小泉元総理も原発ゼロを提言しています。事故原因も明らかにされず汚染水問題を制御できない非常事態に陥っています。いまこそ汚染水問題の抜本的な解決を最優先し、英知を結集しなければならないときに、政府が再稼動や輸出政策を進めようとしています。すでにすべての原発が停止しており、原発の再稼動を中止し廃炉にしていくことこそ現実的です。知事の見解を求めます。
【達増知事】
次に、原発ゼロについてでありますが、原発事故以降、国民の間で原子力の安全性に対する信頼が大きく揺らぎ、昨年度のエネルギー政策を巡る国民的議論においても、エネルギーに対する国民の問題意識や、再生可能エネルギーヘの新たな意欲の高まりが表れており、こうした意識の変化を踏まえたエネルギー政策が求められているものと考えております。
岩手県としては、再生可能エネルギーは地産地消のエネルギー自給率の向上はもとより、地球温暖化防止や防災のまちづくり、地域振興など多面的な効果をもたらすものと 認識しており、再生可能エネルギーによる電力自給率を、平成32年度までに、平成22年度の約2倍の35.0%とする目標の達成に向けて力強く導入を推進しているところであります。
3、大雨災害対策について
・豪雨・台風被害の対策と検証について
【高田議員】
7月、8月、9月と県内を襲った豪雨・台風災害の被害総額400億円余となり大きな被害となりました。9月補正では、住宅再建、観光施設、農地災害などで大震災並みの支援策が示されましたが、最大の問題は来春の作付けに間に合うかどうかにあります。被災農家では、個人負担が高すぎて復旧をあきらめる農家も出ています。農地被害、治山施設及び林地荒廃被害の復旧状況はどうなっているでしょうか。
砂鉄川、松川、岩崎川など災害が繰り返されており抜本的な治水対策が求められています。「内水排水施設のポンプの稼動がしなかった」「水位周知河川になっていなかった」「堆積土砂が被害を拡大した」などの問題点も指摘されています。どう検証され、改善が図られたのでしょうか。
局所的な豪雨災害が全国各地で相次いでいます。気象庁では局地的な豪雨予報は困難としていますが、自分の住んでいる地域が豪雨災害などになったらどうなるのか、予測し事前に行動を決めることが大事です。洪水による浸水の被害範囲を予測したハザードマップの作成と災害危険箇所を住民に周知徹底する取り組みを強化すべきですが、現状と対策はどうなっているでしょうか。
【県土整備部長】
つぎに大雨災害の検証と改善の状況についてですが、今年の大雨災害では、短時間で局所的な非常に強い降雨に伴う水位の上昇、そして部分的な土砂堆積等により、各河川で氾濫等の被害が生じたところであります。
また、内水排水施設のポンプ等の管理においても、夜間に水位が急激に上昇している中で、想定した対応がとれない状況となるなど、検討課題があると認識しております。
水位周知河川については、これまでに、流域内の人口や資産が集中する河川、過去に浸水被害が発生した河川等の指定を優先的に進めており、砂鉄川の一関市東山町の区間、松川、岩崎川は未指定でありましたが、平成16年度から19河川(20区間)を順次指定してきたところであります。
県では、今般の被災状況や氾濫要因、過去の被害データの調査・分析に基づき、沿川の土地利用状況や上下流のバランス等を勘案した上で、国や地元と十分に協議しながら、必要な対策を進めてまいります。
現時点では、砂鉄川においては国に申請していた「災害対策等緊急事業推進費」が採択され、岩崎川においては「広域基幹河川事業」の事業区間の延長について県政策評価委員会に諮問しており、他の河川においても被災の状況に応じた治水の手法やそれに対応した事業の導入の検討を進めているところであります。
なお、堆積土砂等については、河川巡視による状況把握に努め、緊急性の高い箇所から掘削等を進めており、内水排水施設等の管理については、操作者の安全確保のための照明や道路の整備等について地元と調整しているほか、操作等に関する勉強会を開催しているところであります。
一方、降雨の強さや継続時間等によっては、改修を行った場合でも氾濫の恐れがあることから、雨量や水位情報の更なる周知に努めるとともに、今般、被災のあった砂鉄川や松川等の水位周知河川の指定を進めるなど、国や市町村と連携し、ハード対策とソフト対策を組み合わせた総合的な治水対策を推進してまいります。
【農林水産部長】
次に、農地・治山施設の復旧状況についてでありますが、農地の復旧については、国の災害査定が、10月15日から順次行われており、11月29日までに査定予定件数850件余りのうち、約5割が完了し、残る約5割についても、査定の実施班数を増やすなどの対応を行い、年内には全ての査定を完了させる予定としております。
また、復旧工事は、災害復旧事業の査定前着工制度を活用し、既に着工している地区があるほか、査定を終えた地区から順次着手することにより、可能な限り来春の営農に間に合うよう取り組んでおります。
次に、治山施設と林地荒廃被害の復旧については、緊急に対策が必要な16か所のうち、規模の大きい8か所は、年度内の事業着手に向けて、「災害関連緊急治山事業」の導入を国と協議中であり、国の採択基準に満たない8か所は、県単独事業により今年度中に復旧する予定としております。
このほかの被災箇所については、人家や公共施設などの保全対象の状況や緊急性を勘案しな、がら、順次、通常の治山事業で復旧に取り組んでいく考えです。
【総務部長】
まず、災害防止対策についてでありますが、市町村におけるハザードマップの作成状況は、平成25年3月末現在で、洪水災害では、33市町村のうち20市町村が作成済となっており、およそ3分の1の市町村が未作成となっています。
県では、今般の一連の大雨災害を踏まえ、関係機関と連携し、災害対応に関する市町村との意見交換を実施したところでありますが、この意見交換の中では、浸水想定区域や避難所等をあらかじめ住民に周知するため、ハザードマップの必要性等を再認識した市町村もありました。
こうした市町村の意見等を踏まえ、県では、市町村におけるハザードマップ作成の促進に向けて、国に対し市町村に対する財政支援措置を講ずるよう要望したところであります。
また、県としても、引き続き、浸水想定区域等の指定の際に活用したデータを市町村に提供していくなど、技術的な側面から市町村を支援していくこととしています。
・市町村合併による防災力の低下について
【高田議員】
市町村合併による防災力の低下について質問します。
平成の大合併による職員の削減で旧町村の支所では4割から5割も減少し防災担当職員が不在、人事異動により地域の実情がわからない職員が災害対応に追われ十分な対応が取れなかったとの指摘もされています。
合併した新潟県長岡市では、被害状況は旧市町村ごとに異なることから対策本部も一本化するのではなく支所と本部と二本立ての体制としています。平成の大合併で防災力が低下していると指摘もされていますが県は課題をどうとらえているのでしょうか。
【総務部長】
次に、市町村合併による防災力についてでありますが、今般の一連の大雨災害を踏まえた災害対応に関する市町村との意見交換において、合併した一部の市町村からは、本庁と支所との連携に不備があったとする意見があったほか、合併した市町村に限らず、災害に対応できる職員が限られているため、災害時に十分な対応ができなかったとする意見や、庁内各課や消防等との連携が不十分であったとする意見もあったところであります。
こうした課題を踏まえ、市町村では、本庁と支所との連絡体制の見直しを行うなど、防災体制の充実に向けた取組が進められておりますが、県としても、一義的な災害対応を担う市町村の防災体制が充実されるよう、市町村地域防災計画の見直しや住民への情報伝連手段の整備なども含め、引き続き、市町村に対し助言等を行っていくほか、市町村職員を対象とした研修や訓練の充実にも努めてまいります。
また、被災した市町村を県としてもサポートしていけるよう、県の防災体制の見直し等にも取り組んでまいります。
4.福祉の課題について
・介護保険制度について
【高田議員】
次に、介護保険制度について質問します。
県内の特別養護老人ホームの待機者は3月末現在6542人、うち早期入所が必要な待機者は前年を上回る1233人となっています。全県で852床が整備予定となっており、施設整備が追いつかない現状にあります。待機者解消の見通しはどうなっているのでしょうか。
介護保険のサービス削減と費用負担を増やす介護保険制度の見直しが議論されています。特養ホームの入所を制限し要介護3以上に限定するものです。入所する軽度者は介護者不在、居住問題、認知症などそれぞれやむ得ない事情を抱えていますが影響はどうなるのでしょうか。要支援者へは訪問介護やデーサービスの給付サービスをやめ市町村の地域支援事業にうつす方向も示されています。通所、訪問サービスの保険はずしでサービスが受けられなくなる人数はどうなるのでしょうか。市町村事業で対応できるのでしょうか。
【保健福祉部長】
次に、介護保険制度についてでありますが、特別養護老人ホームに早期入所が必要と判断されている在宅の待機者1、233人に対し、平成25年4月1日以降、第5期介護保険事業計画期間中に、特養852床のほか、認知症高齢者グループホーム279床の整備が計画されており、一定の対応は可能と考えている。
県としては、必要な施設整備と併せ、地域包括ケア推進の取組みについても、積極的に支援していくこととしている。
また、国では、現在、特別養護老人ホーム入所を、原則、要介護3以上とする申重度者への重点化について検討しており、本年8月時点の広域型特養入所者の内、要介護2以下の方は520人となっている。
併せて、要支援の方が受けている訪問介護と通所介護を地域支援事業に移行することも検討しており、本年8月時点の要支援の方の利用人数は、訪問介護2、975人、通所介護6、3 9 9人となっているが、いずれも既にサービスを受けている方は、移行後も既存サービス相当のサービスが利用可能とされており、必要なサービスは継続されるものと考えている。
・難病の医療費について
【高田議員】
難病の医療費助成の対象を56から約300に拡大する難病の医療費見直し案が検討されています。医療費上限の引き上げ(2%から10・6%に)住民税非課税世帯も最大6000円の負担です。対象を広げる代わりに今まで制度の対象だった難病患者に負担を求める、「難病の中で負担をしあえ」ということに患者と家族から不安と怒りの声が寄せられています。
重症筋無力症の53歳の一関市内に住む男性は「外来で1120円から12000円と10倍となります。10日間入院し窓口負担は2250円でしたが、差額ベットで6万円の支払い通院費も大きな出費」と訴えられました。県内の難病患者の数、影響を受ける重症認定患者数はどうなっているでしょうか。治療や薬で症状を抑えている難病は誰もがいつ突然発症してもおかしくない病気です。新たな負担とならないよう国に、改善を求めるべきですがいかがでしょうか。
【保健福祉部長】
次に、難病の医療費についてでありますが、平成25年3月末現在、特定疾患治療研究事業による医療受給者証の交付を受けている難病患者が8、901人であり、このうち、これまで医療費の自己負担が無かった重症認定患者等については、新たな自己負担の導入が検討されており、その数は934人となっております。
また、今回の見直しについては、要綱による治療研究事業の制度を、法制化により公平かつ安定的な制度として確立しようとするものであり、具体的には、「制度として確立された医療の社会保障給付とすること」、「対象疾患の拡大」、「対象患者の認定基準の見直し」、「類似の制度との均衡を考慮した自己負担の見直し」などについて、現在、国の難病対策委員会で検討されていることから、今後の国の動向を注視して参ります。
・保育制度について
【高田議員】
次に、保育制度について質問します。
「次女が入れず離職したことで長女も保育所から退所させられた」こんな訴えが寄せられました。いま子育て環境改善を求める父母の声は切実です。待機児童、保育士不足の実態はどうなっているでしょうか。保育所の整備、保育士の処遇改善について県の取り組みを示してください。「子ども・子育て支援新制度」では、多様な主体による保育所設置・運営を促すとしていますが、市町村の保育実施義務は残されています。父母の願いに答えていくためにも、認可基準など現行の基準より後退させず、市町村の保育所整備への財政支援をすべきですがいかがでしょうか。
市町村に「子ども子育て会議」を設置する努力義務がありますが、充分なニーズ調査を実施し保育関係者の声が反映できる子育て会議とすべきですが設置状況はどうなっているでしょうか。
【保健福祉部長】
次に、保育制度についてでありますが、県内の待機児童数は、平成25年4月1日現在、7市町村168人となっている。また、平成25年7月に全保育所を対象に実施したアンケート調査によると、定員には余裕があるが保育士が不足していると回答した保育所は32か所、不足している保育士は60人となっています。
県では、待機児童の解消に向け、保育所の緊急整備に集中的、重点的に取り組んでおり、平成25年度の保育所整備は7市町村12か所、331人の定員増を計画しています。
また、喫緊の課題である保育士の人材確保のため、保育士等処遇改善臨時特例事業として6月補正予算で4億4千万円余を計上したところであり、各市町村において順次事業が実施されており、処遇改善が図られるものと考えております。
子ども・子育て支援新制度施行後の保育所整備の財政支援については、現在国の子ども・子育て会議において検討されており、その動向を注視していくこととしております。
市町村の子ども・子育て会議は、平成25年11月1日現在、22市町村で設置済であり、今年度中に全ての市町村が設置予定となっております。県としては、市町村が地域の多様な保育ニーズ等を把握し、子ども・子育て会議において、子育て当事者などの様々な関係者の意見を伺いながら、子ども・子育て支援施策の審議を行うことが重要と考えており、引き続き必要な支援を行って行きます。
・子どもの医療費助成について
【高田議員】
岩手県は平成16年度に就学前まで拡充して以来9年間医療費助成は拡大していません。
非正規労働者の拡大、扶養控除の廃止など子育て環境は悪化しています中にあっても医療費無料化を拡充する自治体がひろがっています。今年度7自治体が拡充し小学校卒業まで9自治体、中学校卒業まで11自治体、高校卒業まで3自治体となっており、県基準より拡大している自治体は25自治体にもなっています。
子育てするなら岩手県でという視点で県はせめて小学校卒業まで広げるべきです。なぜ放置してきたのでしょうか。岩手の未来と復興を担うこどもの成長を応援すること県政の仕事ではないでしょうか。県の対応をお伺いします。
【保健福祉部長】
子どもの医療費無料化についてでありますが、本県の乳幼児医療費助成制度は、乳幼児の適正な医療を確保することにより、心身の健康を保持するとともに、生活の安定を図ることを目的として、市町村が医療費を助成した場合に、その経費の一部を補助しているところであり、これまでも助成対象等の見直しについて検討してきたところです。しかしながら、その対象を小学校卒業まで拡大した場合、粗い試算ではございますが、これに要する県費負担額が約4億円と見込まれ、現在の厳しい県財政の状況を考えると、ただちに実施することは難しいと考えています。
・生活保護の改悪について
【高田議員】
生活保護基準額引き下げはこの8月から始まっています。特にも子どもをもつ世帯は影響が多く、月2万円も引き下げられた母子世帯もあります。しかも基準額引き下げは、就学援助、個人住民税の非課税限度額、保育料や介護保険の減免にも影響を与えるものです。帯広市の調査では、50事業で市民の75%に影響するとの試算をしました。政府は保護費削減で制度に影響しない措置をとるよう各自治体に要請し予算措置すると述べてきました。影響はないのでしょうか。県、市町村の対応はどうなっているでしょうか。
【保健福祉部長】
生活保護基準額の見直しによる他の制度への影響についてでありますが、国では、できる限り他制度への影響が及ばないようにするとの対応方針を示しており、国からの通知を受け、速やかに市町村に周知を図ったところであります。
本年度の対応としては、例えば生活保護基準額を基に決定される要保護者に対する就学援助については、本年度当初の対象世帯は、引き続き援助を受けることが可能となっており、各市町村とも、国の方針に沿って対応していると聞いております。
また、個人住民税の非課税限度額や非課税限度額を参照している保育所保育料や介護保険料などの制度については、本年度は影響がなく、平成26年度以降の税制改正において対応するとしている。
・国保の広域化への対応について
【高田議員】
国保を納めるために土地を売却しなければならない、こんなやりくりで大変だ」という声も寄せられました。一関市では高すぎて払えず、過酷な徴税攻勢のなかで自殺に追い込まれる事態になりました。国保は加入世帯の53%が課税所得100万円未満、課税所得金額に占める負担はこの10年間で5%も増加し16.72%にもなりました。高すぎて払えない国保税になっていると思いますがどう認識しているでしょうか。
財産差し押さえや人権無視の取立て、保険証の取り上げが行われていますが、県内では資格証明書の発行は346件、短期被保険者証は9,173件となっています。盛岡市では基本的にやめています。医療を受ける権利を保障すべきで税の徴収と切り離すべきですがいかがでしょうか。
低所得者が多く加入する国保制度は年々国保運営が厳しくなっているにもかかわらず、この間逆に国庫負担は50%から25%となりました。こうした問題を改善するどころか国の役割を放棄する都道府県化を進めようとしています。自治体の努力で行われてきた一般会計からの繰り入れは24年度10市町村で12.6億円余となっています。広域化になれば市町村の独自の繰り入れができなくなってしまいます。また、地域の実情や住民の声を踏まえた対応は困難になってしまいます。市町村国保は被保険者が参加する運営協議会の議論を通じ予防活動など地域の実情に合わせて事業運営を決めますが、こうした広域化には反対するべきですがいかがでしょうか。
【保健福祉部長】
国保の広域化への対応についてでありますが、国保税に対する認識でございますが近年の医療の高度化や高齢化の進展等により保険給付費が増加している中で、厳しい経済状況や雇用情勢により県民の収入が伸びない状況にあることから、県民の国民健康保険税に対する負担感は、増加しているものと認識しております。
資格証明書、短期被保険者証の発行は、市町村が滞納者と接触し、納付相談の機会を確保することを目的としているものであり、滞納者の生活実態など状況をきめ細かく把握したうえで交付しております。
県においては、市町村に対し滞納者個々の実態を十分把握したうえで、細やかな対応をするよう通知し、また、会議等の場でも、この基本的な考え方に沿って適切に運用するよう要請しているところでございます。
国保の広域化については「持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律案」(いわゆる「プログラム法案」)では、国保が抱える財政上の構造的な問題を解決することとした上で、都道府県が財政運営を担うことを基本としつつ、保険料の賦課徴収、保健事業の実施等に関する市町村の役割が積極的に果たされるよう、都道府県と市町村との適切な役割分分担ついて検討し、必要な措置を講ずることとされており、
国では、今後地方団体と十分に協議を行うこととしており、県としては、全国知事会等を通じて、十分意見を述べてまいります。
5.教育の課題について
・いじめ問題について
【高田議員】
次に、いじめ問題について質問します。
いじめはどの学校でも起こりうるといわれていますが、いかなる形をとっても許されない暴力行為であり子供の人権に関わるものです。子供の命を優先し教職員で情報を共有して対応すること。子供の自主性を高めていじめが起きない人間関係を築くこと。加害者がいじめから立ち直るまで対応することなど、日本共産党は、子供の命優先で取り組むことを提言してきました。昨年のいじめ緊急調査では2004件と報告されていますが、学校現場での研修等どんな具体的な取り組みがされたのでしょうか。
いじめを禁止し罰則で取り締まる、道徳教育の強化などを盛り込んだ「いじめ防止対策推進法」が議員立法で成立しました。地方公共団体には、「基本方針」を策定する努力義務が定められているほか、「いじめ対策連絡協議会」を設置することができるとされています。いじめは教育の営みの中で解決するものであります。厳罰や道徳教育に流れることなく、いじめに詳しい専門家や被害者など現場からの意見聴取や参加で実効性のある対策が進むようにする必要があります。「いじめ防止対策推進法」の評価と今後の対応について教育委員長の見解をお伺いします。
【教育委員長】
まず、いじめ防止対策推進法の質問についてお答えします。
いじめは、小・中・高等学校、特別支援学校、どの学校においても、いつでも誰にでも起こる可能性のある問題として、平素の教育活動のあらゆる場面を通じて粘り強く指導していかなければならない問題と捉えております。
今般公布施行された法律は、児童生徒の心身の健全な成長と人格の尊厳を守るため、いじめを防止する組織を学校内に設けたり、被害者側の児童生徒や保護者に対してすみやかに情報提供したりするなど、子どもを取り巻く大人を含め社会総がかりでいじめ防止等に取り組むため、基本的な理念や体制を定めたものと承知しております。
いじめの防止等にあたっては、素早く対応することはもちろん、すべての児童生徒が互いに尊重し、認め合える人間関係を築くとともに、教育活動全体をとおしていじめを生まない、いじめを許さない土壌づくりに務めていくことが大切であると考えております。
県教育委員会では、平成25年8月に大学教授やスクールカウンセラーなどの専門家をメンバーとする「いじめ問題等総合対策協議会」を立ち上げたところでありますが、各委員から十分にご意見を伺いながら、「県いじめ防止基本方針」を策定するとともに、この協議会の在り方についても検討して参ります。
【教育長】
まず、いじめ防止等の具体的取組についてでありますが、県内の公立学校全てにおきまして「職員会議等を通じていじめへの対応について共通理解を図った」、「いじめ問題に対応するため、校内体制の整備など教育相談体制の充実を図った」等の取組が行われております。
また、教育委員会といたしましても、昨年度に引き続き県内6教育事務所ごとに小中学校担当者への研修会の実施、高等学校につきましては県内8地区において、生徒指導主事を対象とした研修会を実施しております。また、8月に、県内の公立・私立を含めて、小・中・高・特別支援学校の全児童生徒に対して、「24時間いじめ相談ダイヤル紹介カード」を配付したところでございます。
・教育現場の実態調査について
【高田議員】
次に、教育現場の実態調査についてです。
いじめ対策は学校の先生が果たす役割が重要です。教職員が子供の命最優先で取り組む上で子供と向き合う時間が確保できない現状を改善することは急務です。「給食指導で昼休みもなく報告などが多すぎて準備できない」「もっと子どもにわかるまで教え、向き合いたい」との声が出ており、多忙化解消は切実です。県教委は、県立学校の勤務実態調査を行いましたがその結果はどうなっているでしょうか。多忙化解消として会議、研修会の精選、短縮など取り組まれていますが多忙化は改善されているのでしょうか。
【教育長】
次に、教育現場の実態調査についてでありますが、平成24年4月から全県立学校において教職員の時間外勤務の状況を調査しており、平成24年度の教職員1人あたりの月平均時間は、県立高校では32.6時間となっております。
また、本年度はこの調査に加え、実際に県立学校を訪問して管理職や教職員に聞き取りを行い、負担となっている勤務の実態等についての把握・分析にも取り組んでいるところであります。
学校訪問による聞き取りでは、私費会計を担当する非常勤職員の配置や部活動休養日の設定、校務分掌の統廃合などにより教職員の勤務負担の軽減に一定の効果が現れている学校が見られたところです。
一方、部活動指導や課外授業対応、多様な事務的業務への対応など、教職員の勤務負担の軽減が容易でない事項も見られたところであり、今後、これまで行った調査等の結果を踏まえ、各種調査や会議・研修の見直しなど特に事務的業務の効率化を図ること、優良取組事例の共有化などにより学校における業務の改善を促進すること等によって一層の負担軽減に努めて参ります。
・学力テストの公表問題について
【高田議員】
文科省も従来の実施要綱を変更し市町村教育委員会による成績公表を認めると発表しました。2007年開始にあたり「いたずらに競争をあおることがないよう学校の序列化に配慮すべき」と述べてきました。全国学力テストは競争を目的とするものではないと説明してきた文科省の説明の破綻を示しています。成績を公表したら弊害がありやるべきではありません。市町村の対応はどうなっているでしょうか。教育委員長の見解を伺います。
【教育委員長】
次に、全国学力テストの結果公表についてでありますが、これまでは、都道府県による個々の市町村名・学校名を明らかにした公表及び市町村教育委員会による個々の学校名を明らかにした公表は行わないこととされてきましたが、平成26年度調査より、市町村教育委員会はそれぞれの判断に基づき公表することが可能であること、都道府県教育委員会においては、市町村教育委員会の同意を得た場合には、当該市町村名または学校名を明らかにした公表を行うことは可能であると変更されました。
その際、主な配慮事項として、単に平均正答率等の数値のみの公表は行わず、分析結果や分析結果をふまえた改善方策についても公表すること、児童生徒の個人情報の保護や学校・地域の実情に応じた必要な配慮を行うこと、などが求められております。
従いまして、それぞれの市町村教育委員会において、今後、具体的な対応が検討されるものと思います。
また、県といたしましては、配慮事項に十分留意するとともに、調査の目的である「全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握・分析し、教育施策の成果と課題を検証し、その改善を図るとともに、学校における児童生徒への教育指導の充実や学習状況の改善等に役立てる。さらに、そのような取組を通じで、教育に関する継続的な検証サイクルを確立する。」という、調査本来の目的に沿った形で、対応する必要があると考えております。
・障害のある子どもたちの教育条件の改善について
【高田議員】
障害のある子どもが学ぶ@特別支援学校A小中の特別支援学級B通級指導教室の在籍児童生徒が本県ではこの10年間で911人も増加し4487人になっています。特別な教育を必要とする生徒が増えている要因は何でしょうか。設置基準がなく「既存の人的・物的資源」で対応するというのが文科省方針です。教室不足はこの5年間で22教室も増え75教室となりました。特別支援学校では音楽室や図書室を転用しトイレの男女共同化など劣悪な環境の中で学んでいます。国に「設置基準」を求めるとともに県としては整備計画を策定すべきですがいかがでしょうか。また、教員不足についての配置基準の改善を求めるべきですがいかがでしょうか。
【教育長】
次に、障がいのある子どもたちの教育条件の改善についてでありますが、まず、特別な教育的支援の必要な生徒の増加要因につきましては、文部科学省が平成19年度に行った調査及び独立行政法人国立特別支援教育総合研究所が平成21年に行った調査によれば、保護者の方々の特別支援教育に関する理解の浸透やこれまでの学習指導・生活指導・進路指導における実績への評価と期待、そして特別支援学級の増加、医療の進歩などが想定されるとされております。
次に、国に対して設置基準を求めることについてでありますが、国におきましては、在学する子どもたちの状況や施設の現状など、その時々において、それぞれの学校が抱える課題も違うことなどから、その施設や設備について一律に基準を設けることが困難であるといたしております。
また、県としての整備計画の策定につきましては、今後の地方財政の状況が見通せない現状にあっては、長期にわたる整備計画の策定が難しい状況にありますことから、それぞれの学校の状況に応じて、対応してまいります。
次に、教職員の配置基準の改善についてでありますが、県の政府予算提言・要望や全国都道府県教育長協議会等を通じ、教職員定数改善計画の早期策定を国に対して要望しているところであります。
6.TPP、農業問題について
・TPP交渉について
【高田議員】
次に、TPP交渉についてであります。
大詰を迎えたTPP交渉は他の参加国から関税全廃を迫られています。「聖域」としてきた重要5品目を例外としても自由化率93.5%にとどまることから自民党の西川公也TPP対策委員長が重要5品目の中で関税撤廃する品目を検討すると報道されました。「聖域が確保できない場合は脱退も辞さない」とする衆参農水委員会の決議や「守るべきものは守る」という公約に明らかに反するものです。フローマン米通商代表が「原則関税を最終的に撤廃するものだ」と述べているように、関税撤廃が原則で例外を認めても経過措置を経ていずれ関税ゼロになることは明らかです。交渉参加を表明したとき、国民への丁寧な情報提供を約束したにもかかわらず、参加したとたんに「秘密保持契約」に署名する等あきらかに公約違反です。国民にとって取り返しのつかない不利益になるTPP交渉から強い決意で撤退を求めるべきです。知事の見解を求めるものです。
【達増知事】
次に、TPP交渉についてでありますが、TPP協定は、本県の基幹産業である農林水産業のみならず、投資、医療、労働、政府調達など、国民生活や経済活動の幅広い分野に大きな影響を及ぼすことが懸念されているにも関わらず、交渉内容の詳細は公表されていないところであります。
TPP協定の交渉については、拙速に走ることなく、国民に対し十分な情報提供と説明を行い、国民的議論を尽くし、慎重に進めるべきであり、交渉を行う政府は、地方の経済活動や国民生活に影響が生じると見込まれる場合には、交渉からの撤退も含め、断固たる姿勢で臨んでもらいたいと考えているところ。
政府に対しては、これまでも機会があるごとに本県の考えを要請してきたところであり、今後ともあらゆる機会を捉えて要請していきます。
・生産調整の廃止など政府が決定した農政改革について
【高田議員】
次に、生産調整の廃止など政府が決定した農政改革についてです。
政府は26日、「農林水産業・地域の活力創造本部』を開き、5年後をめどにコメの生産調整を廃止するなど「新たなコメ政策」を正式決定しました。TPP参加によって輸入が増えることを見越した措置で、コメの需給と価格を市場まかせにするものです。40年続いた農政の大転換を短期間で決定することに戸惑いと怒りが広がっています。知事に質問します。第一に、米価下落対策がなく中小農家には離農を迫るものですが、大規模経営ほど総所得に占める所得保障の依存度が高く影響はむしろ大規模農家です。本県農業への影響はどう考えているでしょうか。第二に、転作を促す補助金は市場原理が前提です。米価暴落及び加工品、畜産物を「聖域」としない方針では助成単価が下がり所得増にならないと考えますがいかがでしょうか。第三に、生産調整の廃止やコスト削減政策の下では暴落は必至です。市場まかせにせず価格と需給は国が責任もつことを求めるべきですがいかがでしょうか。
【達増知事】
次に、生産調整の廃止などの農政改革についてでありますが、まず、本県農業への影響については、国は、5年後を目途に、米の生産数量目標の配分を止めることとしていますが、現時点で、制度見直し等に関する十分な説明がないことから、その影響を申し上げることは困難でありますが、本県の農家は、経営転換が難しい小規模農家のみなず、規模拡大を進めている意欲的な担い手も、米価下落や販売競争激化への懸念など、将来に不安を抱いていると認識しております。
なお、国が公表資料で示している経営所得安定対策見直し後の農家所得のシミュレーションは、転作した場合、現行制度より所得が増加するとの結果となっていますが、これは、―定の前提条件を置いた上で、制度を見直した場合の試算であり、当てはまらない場合もあると承知しております。
また、国への要請については、国が検討を進めている農業政策の見直しの内容等の速やかな情報提供を求めていますが、今後とも、米政策をはじめとする農業政策について、農業者が展望を持って生産活動に取り組むことができるよう、必要な施策を求めていく考えであります。
7.「特定秘密保護法」について
【高田議員】
最後に「特定秘密保護法」について知事の見解を伺います。
法案は、政府のもつ膨大な情報の中から『特定秘密』を指定し、それを漏らした公務員や聞き出したりする者に懲役刑を科すものです。
この間の国会審議で明らかになったのは政府の恣意的判断で「特定秘密」を広げられ、原発事故情報、TPP交渉も特定秘密となり、しかも、秘密を取り扱う公務員や家族まで調査され、ジャーナリストの取材活動や一般市民の情報公開請求など特定秘密へのアクセス行為、国会議員等の調査権や立法権も制限するものです。
地方公聴会の翌日、衆議院で採決強行するという国会審議にも問題があり、法曹界マスコミ界など広範な国民が反対している、憲法に基づく国民の権利をことごとく侵害する「特定秘密保護法案」に反対を表明すべきです。知事の見解を求め質問を終わります。
【達増知事】
次に、「特定秘密保護法案」についてでありますが、この法案は、我が国の安全保障に関する一定の事項のうち特に秘匿を要するものを特定秘密として保護するため、その漏えいの防止を図り、国及び国民の安全の確保に資する趣旨で提案されたものと聞いております。
この法案については、国民の知る権利が損なわれる恐れがあるなど、国民の間に懸念する意見が数多くあります。そのような懸念が残るなかで、このような法案が成立することは好ましくないものと考えます。
≪再質問≫
・緊急雇用創出事業について
【高田議員】
被災者の生活を再建するために重要な役割を果たしている生活支援員は、緊急雇用創出事業で対応してきた。県は来年度、事業費を4割削減するということを市町村に示しているが、影響というものはないのかということをお聞きしたい。
被災者の現状というのは本当に大変であり、これからますます支援を強めていかなければならないという、絶対ケア対策というのは後退させてはならないと思うが、影響についてお聞きしたい。
【商工労働観光部長】
震災後、県では緊急雇用創出事業などにより雇用創出に取り組んできたが、平成25年5月以降、有効求人倍率は1倍を超え、雇用情勢は着実に改善してきている。このため今後は、民間への就職を進めるためにも、緊急雇用創出事業は縮小する方向で考えている。
そうした中にあっても、応急仮設住宅等に居住する方々の生活を支援する事業で、緊急雇用創出事業を活用しているものについては、継続の必要性を十分認識している。
県としては、全体の事業規模は縮小するものの、被災者支援のために真に必要な事業は優先して事業費を確保し、支障が生じないよう今後市町村との連携を密にしていきたいと考えている。
・福祉灯油について
【高田議員】
部長の答弁があったが、内陸にいる被災者についてはできないという理由を示してほしいという質問であったので、この答弁がなかったのでそこをもう一度お聞きしたい。
盛岡市が行ったみなし仮設住宅で暮らす被災者のアンケート調査では、一番困っていることとして、35%が「生活費」だと。そして693世帯のうち、収入が生活保護以下で生活用品などの支援を受けている家庭は116世帯、16.7%である。まさに年金や義援金を頼りにして不自由な生活をしている。こういう実態を踏まえ対策をとるべきである。被災地を限定しているという意味では、明らかに差別にならないか。
あわせて、内陸に広げた場合には、どの程度の人数、財源が必要なのか示していただきたい。
【保健福祉部長】
この補助については、平成23年度・24年度と実施し、引き続き実施しようとするものだが、この事業については、東日本大震災津波で甚大な被害を受けて財政事情がきわめて厳しい中で、福祉灯油を実施しようとする沿岸部の市町村を支援することである。その沿岸部の市町村が福祉灯油を実施する際に、補助対象は市町村民税非課税の高齢者世帯だとか障がい者世帯、一人親世帯、生活保護世帯だが、いずれ市町村が必要と認める世帯として内陸に避難している世帯ということについては県も対象とするという考えなので、被災地から内陸に避難した世帯について、低所得者に該当する場合に市町村が助成するということであれば県も補助の対象とすると考えている。
内陸に避難した世帯数だが、復興局の調査では、内陸部に住居を移転している世帯が1700世帯ということだが、このうち低所得に該当するかどうかは現時点では把握していない。
・持ち家住宅の再建について
【高田議員】
加算支援金の延長については国に要請したい、県の支援事業については市町村と調整したいということで、前向きの答弁と理解した。
いずれ県の支援事業についても29年3月31日までというのは、期限を切ってしまえば住宅再建は進まない。ぜひすべての持ち家再建を願う被災者を支援するという立場で、引き続き全力を挙げて取り組んでいただきたい。
釜石市の二次調査などを見ても、災害公営住宅よりも持ち家再建の方が増えてきたという結果がある。やはりこの間、県や市町村のさまざまな支援措置があったためにそういう被災者が増えているという傾向だと思う。ただ、この間資材の高騰やさまざまな要因で坪単価も上がっている。消費税増税でさらに住宅再建が困難になることも予想される。そういう中で、いま被災前と比べてどれだけ値上がりしているかという実態を踏まえて、住宅再建に対する支援措置を国にも強く求めていくというのが大事だと思うが、その点についての実態を把握しているか。
【県土整備部長】
持ち家住宅の価格の上昇についてだが、全体を網羅したような統計データはないが、岩手県・宮城県・福島県の地域型復興住宅推進協議会が今年の3月に公表した調査結果によると、岩手県の住宅生産者グループの平均的な工事単価は、震災の前後で坪当たり3.1万円上昇しているという風なことを聞いている。
・二重ローン問題について
【高田議員】
利用条件が厳しいので公的整備を求めていきたいという答弁があった。やはり持ち家再建にとって二重ローン問題の解決は避けて通れない課題だと思っている。ネックになっているのは、収入基準が730万円になっていることだと思う。これから復興を進める中心的な方々である共働き世帯が二重ローンの個人版私的整理ガイドラインの対象にならないということは問題だと思う。そういう意味で利用条件が厳しいと、法的整備を求めるということだが、具体的にどういう点が県として課題だと思っているのか。具体的にどう国に対して法的整備・改善を求めていくのか。
【復興局副局長】
ご指摘の通り、実例として世帯の年収が700万円を超えているので、残債の返済可能ということで金融機関から断られたという実態については、我々も岩手弁護士会から聞き取りしている。
ただ、現在債務整理が進んでおり、相談件数は974件、申し出に向けて登録専門家を紹介して準備中の件数が47件と少ないが、債務整理成立に向けて準備中の件数が172件ということで、徐々にではあるが、金融機関にもご理解いただき債務整理について進めている。
国に対しては、復興庁および金融庁に何度も出向き要請しているが、実態としてはなかなか芳しくないと。特に法律制定に向けては、なかなか手ごたえがないという感触だが、いずれ切実な問題なので、やはり何度も粘り強く繰り返し金融庁等に、金融機関に対する周知・指導等を求めていきたい。
・産直の風評被害に対する支援について
【高田議員】
最近また一関市内の産直施設を訪問した。昨年半年間の賠償請求を、半年間かけてやっと6月に請求したと。しかし、住民票を出せ、所得証明を出せと無理難題を突き付けられて、いまだに賠償が実現しないという問題がある。支援するといっているが県の関わりというのはどういうものか。具体的にどう支援しているか。
【農林水産部長】
風評被害について、県は直接風評被害を受けていないので、個々の産直施設の風評被害について直接東電に交渉できる立場にはないが、説明会の開催や個別相談への斡旋、さらに個別の産直でさまざまな交渉がされるわけだが、それを受けての助言、あるいは書類の簡素化等の全体に対する東電への要請、そういった形で支援を行っている。
≪再々質問≫
・福祉灯油について
【高田議員】
結局内陸部も支援できるという話だが、住所をすでに移した方は支援の対象にならない。内陸部に避難された方は、それでも事情があってできない。
内陸部の市町村の被災地支援灯油の実施予定状況の資料をいただいたが、北上市が実施、二戸市・金ヶ崎町が実施予定、葛巻町・九戸村が商品券で対応すると。国や県の支援が実施予定が6自治体、灯油価格を踏まえて検討予定が4団体と、多くの自治体が前向きな姿勢である。県が決断をすれば、内陸に避難されている方々に対しても支援できると思う。知事の決断が大事だと思っているがいかがか。
【達増知事】
過去に県内全域を対象として実施した平成19年度と20年度のケースだが、それまで1400円1500円台だった価格が1800円台から2300円台まで急激かつ著しく高騰したことで、生活弱者に及ぼす悪影響を軽減するためということで、国の特別交付税措置のもとに全市町村を対象に灯油高騰対策緊急特別支援事業というものを実施したわけである。
今回全市町村を対象とするか否かについては、当時の状況を参考にしながら、灯油価格の動向や国による支援の有無、市町村の意向などを総合的に勘案して検討していきたい。
なお国に対しては、低所得者に対する灯油購入費助成など、地方公共団体が自主的に行う灯油価格高騰対策に要する経費について、所要の財政措置を講じるように要請している。
・生活保護申請にかかる違法文書の実態について
【高田議員】
親族による扶養義務が生活保護の要件でないにも関わらず、扶養義務者の扶養を優先するという違法な文書をつくって申請を締め出しているということが国会で明らかになった。我が党の小池晃参議院議員の質問により明らかになったが、全国1263カ所の福祉事務所のうち436カ所34.5%の福祉事務所でこういう対応がやられていることが明らかになった。やはり扶養義務者を優先してしまったら、申請を諦めてしまう実態がある。生活保護が必要な人が排除されている、生活保護以下で生活せざるを得ない、これは大問題である。そこで県内市町村はどういう対応になっているのか実態を明らかにしていただきたい。やはり違法な対応が行われているのであれば是正しなければならない。
【保健福祉部長】
一部自治体において使用されている扶養義務照会において、親族が扶養義務を果たさないと申請者が保護を受けられないといった扶養義務が保護を受けるための要件であると誤認されるような表現が使われていたというケースである。こういったものが判明したので、これについて国では、11月8日に通知を出し、各福祉事務所にたいし「扶養は生活保護に優先して行われるものとされている」という表現に改めるという、いわゆる「前提」だという表現があるものを是正するように指示があり、県では各福祉事務所に国の内容を指示している。
県の状況は、県内の福祉事務所に確認した結果、19の福祉事務所のうち8ヶ所で誤認させるような表現のものが使われていた。この8ヶ所については、11月20日まですべて改善済みと聞いている。
・全国学力テストについて
【高田議員】
これまで県も学力テストについては、過度の競争にならないようにしなければならないという姿勢だった。今回の文科省の対応を受けて、わたしは公表すべきでないときっぱり文科省にたいして主張するのかと思っていたら、そういう答弁ではなかった。なぜそういう姿勢に立てないのか。
それから、今回文科省が過度の競争にならないように配慮事項を実施要綱で示した。これに教育委員長は「留意したい」と述べているが、本当にこの実施要綱で守れるのか。
それから学力テストがどれだけ学習の向上に役立っているのかという点を再度改めてお聞きしたい。
そして学力テストの結果が出るのがいつの時期なのか。どう学力テストで学習の指導・改善に生かされてきたのか。
【教育委員長】
文科省に言えないのかという話だったと思う。言えるが、私1人が言ってもどうにもならないこともあるということもあり、全国の教育委員長会議というのは年に2回ある。そこでいろいろな文科省から出た施策についていろいろ意見を交わし、そこで委員長部会としての意見を言う会もある。そこでいろいろな機会で言っている。ただ、中教審のところで議論されれば、それが十分に生かされないこともあると思うのでご理解いただきたい。
配慮事項を守れるかどうかということだが、守ってほしい、守ってくれるだろうと思っている。改めて配慮事項を紹介すると、「調査結果の公表にあたっては、調査により測定できるのは学力の一部分である」ということとか、「序列化や過度の競争が生じないようにするなど、教育上の効果や影響等に十分配慮する」と。このことは市町村の教育長も学校長も十分に分かるのではないかと思うので、ただ順位を公表することにより子どもの意欲につながることもあることもあるということを十分に考えてほしいと思っている。いずれ子どもの立場に立って考えてほしいという考えである。
学力テストは学力向上に役立っているかということだが、役立っていると思っている。
・教員の多忙化について
【高田議員】
県立高校の実態が明らかにされた。平均で月32.6時間、さまざま業務改善に取り組んでいるという話だったが、この調査結果を見て驚いたが、県立高校の月平均の時間外勤務は80時間以上が13.1%、100時間以上が6%と、過労死ラインを超えるような勤務実態になっていると。厚労省の過労死ラインというのは80時間なので。これはただちに改善しなければならない問題ではないか。
【教育長】
いずれ教職員の多忙化、そのために具体的に各学校を訪問して、1つ1つどうすればいいのかということを学校と一緒に考えているわけであり、現場の実態に即した対応を教育委員会としても努めていきたい。
≪再々々質問≫
・福祉灯油について
【高田議員】
私が述べたのは、被災地限定だと。内陸にも被災者がいると。実際住所移した人は対象にならないと。これは差別ではないかと指摘した。内陸の実態も聞くと、多くの自治体で県が支援すればやりたいと。すでに独自で実施を決断している自治体もある。そういう意味では知事が決断すれば、内陸の被災者にも支援ができるのではないか。
【達増知事】
内陸の方にいらしている被災者については、沿岸市町村の住所があれば沿岸市町村の福祉灯油の制度でカバーすることができるということで、内陸市町村の住民票を得ている皆さんに対しては、それぞれ内陸の市町村も被災者支援という観点からの行政サービスをさまざま提供しているケースもあり、また同じ住民、当該市町村の住民として低所得者向けにはさまざまな福祉をとっているという中で、福祉灯油を実施する場合には、実施主体である市町村においても負担を伴うことになるので、これは丁寧に市町村の意向を確認しながら、灯油価格や国の支援の動向なども注視しながら対応を検討していきたい。
・生活保護について
【高田議員】
本当に大変な問題で、なかなか扶養義務といっても、嫁いだ娘に応援するということは言えないということで、申請を断念する、ためらうということがあり、実際生活保護以下で生活せざるをえない状況になっている。だから生活保護で扶養義務は前提にしないということにしている。この間最長で5年10年とこういう対応をしてきたということも国会で明らかになったが、今回の法律改正というのは扶養義務を評価するような内容になってしまうような法改正である。そういう法改正になってしまうと非常に大変だと思うので、この問題については制度の改正を強く国に求めてほしいと思うがいかがか。
【保健福祉部長】
扶養は保護の要件ではないということは、これはこの考え方は変わらないと国でも言っており、例えば扶養義務者への通知だとか調査なども入っているが、これについては、明らかに扶養が可能と思われるにも関わらず扶養を履行しないとか、きわめて限定的にそういう取り扱いをすると聞いているので、基本的な考え方を変えるものではないと聞いている。
・全国学力テストについて
【高田議員】
教育委員長からは「大変役立っている」という答弁だったが、対象になるのは小学校6年生と中学校3年生で、結果が出るのが9月以降ではないか。その時期に出てどう指導・改善できるのか。学校現場からは疑問の声もあがっている。
この学力テストに年間50億円60億円と予算がつく。学校現場の声というのは、子どもたちに分かるまで教えたい、向き合いたいと。そういうお金があったら教職員を増やす、少人数学級にしてほしいと、そういうのは当然の声だと思う。
教育委員長も教員を長く務められたが、そういう現場の声にどう応えるか。
【教育委員長】
例えば、昨日PISAの結果が発表になり、日本がかなり上位にいったと。その中になぜなったかと。全国学力テストや学校で一生懸命授業力の向上など学力向上に取り組んだ結果だということも分析されている。そのように役立っている面もあるし、分析結果がなかなか出ないという話もあるが、来年も4月にやるわけで8月には出ると思う。分析結果が出るまでもなく、学校でもそのテストの結果を分析しながら指導に役立てる方法もあるのではないか。それから、井の中の蛙にならないために全国と比較しながら、どのくらいのレベルにあるかということも大事だと思っている。
教員を増やすことについては同感である。世界のテストの結果が伸びたのは、少人数指導などの成果だとも言っていたので、機会があれば教員を増やすようにということも要望していきたい。
・教員の多忙化について
【高田議員】
盛岡市が7月に行った教職員の実態調査でも、100時間を超えるような実態がある。高校だけではなく、小学校・中学校もそういう状況になっている。
一刻も早い改善が必要だと思うが、改めて多忙化解消に向けての考えをお聞きしたい。
【教育長】
多忙化については我々も少しでも改善したいと思っている。そのためには、我々と学校とが同じ問題意識をもって同じ方向を向いて考えていかなければならない。そのために先ほど申し上げた、個別の学校訪問を行い学校と一体になり考えていくという取り組みを行っている。