2013年12月5日 商工文教委員会
特別支援教育、全国学力テスト問題に関する質疑(大要)
・いわて特別支援教育推進プランについて
【斉藤委員】
パブリックコメントで125件の意見があったと。特に共通して寄せられた意見はどういうものか。
【特別支援教育課長】
地域説明会、パブリックコメント合わせ延べ125件寄せられた。主だった意見としては、就学に向けた取り組みに関する意見、震災対応の部分もプランに盛り込んではどうかという意見、特別支援学級・通級指導教室の設置あるいは指導の充実に関わる意見、高等学校における特別支援に関する意見、そして特別支援学校の進路、高等部のあり方に関する意見等があった。
【斉藤委員】
6ページのところで特別支援学級の設置数が出ている。小学校で337学級、中学校193学級と、実際に増えているようだが、専門性をもった教員はどう配置されているのか。教員の体制はどうなっているか。
【小中学校人事課長】
特別支援学級について、昨年度と比較し41校ほど増えている。ただしこの教員については、資格を持った教員、いわゆる盲学校等の資格を持った教員というのは非常に少ない状況である。学校の中においてさまざまな研修を行ったり、県・市町村においての研修をおこなったりしながら、そういうニーズについても高めていくということである。
【斉藤委員】
どのぐらい少ないのか。リアリズムでお願いしたい。
【小中学校人事課長】
数字については今手元に持ち合わせていないので後ほど報告したい。
【斉藤委員】
地域で障がいを持った生徒が守られたいというのは当然の要求である。だから増えている。ただ問題は、障がいを持った子どもたちに対する教育というのは専門性が求められる。そういう条件がなかったら、本当の意味でのインクレシブ教育にはらない。そこの抜本的な対策がこのプランには見えないのではないか。研修ばかりであまりやられていない。
【特別支援教育課長】
特別支援学級については、それぞれ市町村の小中学校に設置されているので、教育事務所での研修、市町村教委単位での研修、特別支援学級設置校長協議会があるが、そういう中での研修、いわゆる校長自らが設置してある学級にたいしてどのように支援していくかということも大きな学級運営について大事なことでそういう研修も行っている。その他、県としては、新人の先生にたいして4月の第一週に、専門性を持ち合わせていないけれども学級がスタートすることもあるので、特別支援学級担当者のスタート研修というものを開催している。そういう担当の方にはハンドブックを作成している。また、より一層の専門性を高めていくということについては、国立の特別支援学級総合研究所に2ヶ月程度の派遣というものが毎年2〜3名ほどいる。
日常的な個々の課題に応じた研修というものについては、近隣の特別支援学校がセンター的機能という部分を活用して、地域の特別支援学級担任に、児童生徒の理解や指導、教材教務等の紹介といった支援も行っている。
【斉藤委員】
特別支援学校で、教員数と非常勤、臨時の先生で資格を持った先生は何人いるか。そういう先生を優先して採用すべきではないか。
【県立学校人事課長】
25年5月1日現在では、125人、非常勤104人である。
資格については、資料を持ち合わせていない。
【斉藤委員】
資格がある人を常勤講師にしているのではないか。
【県立学校人事課長】
教員採用試験を受けたり免許があるということで講師登録をしてきている、したがいできるだけ資格がある人を任用しているが、なかなかそういう人たちだけで間に合わないということで、非常勤講師については常勤講師よりも割合は少ないものと考えている。
【斉藤委員】
小中学校で530学級、できるだけそこに資格をもった専門性をもった教員を配置することは当然のことではないか。特別支援学校で免許をもっても、4年も5年も6年も採用されない講師はたくさんいる。もう少しきちんと政策的方向をもってやるべきである。
教育環境整備の促進について。ここで何度も議論してきたが、危機感が足りない。特別支援教育の最大の問題はここにあると思う。75学級が教室不足ということをなぜ書かないのか。そういう深刻な事態、それもこの間どんどん増えている。そういう状況を書きもしない、抜本的な対策もない。そういう点でいけばこのプランは欠陥だと思う。それはすべての学校の整備計画を今すぐ立てるのは難しいかもしれないが、例えば当面5年間で優先してどこを整備するのかぐらいは示さないといけないのではないか。
【特別支援教育課長】
今後の特別支援学校の整備計画の策定について、前推進プランには、平成22年度中に取りまとめるということで示していた。老朽化や狭隘化、多様なニーズに応える教育環境等の整備という部分についての諸課題について検討はこれまで行っていきたいというところだった。
その後、国によるイングルシブ教育を進めることを趣旨とした障がい者制度改革にかかる検討が急速に始まり、特別支援学校の将来的な姿について見通すことが難しい状況になってきているというのも現実である。またこの度の東日本大震災津波により、長期にわたる整備計画を作成し、「毎年この学校について整備します」ということを明確に示すという部分が難しい状況にあり、次期推進プランについて盛り込むというのは難しいということで判断した。
しかし、これまでも可能な範囲で施設の内部改修や特別教室あるいは作業室の増設等については、整備を行ってきている。
【斉藤委員】
教室不足の解消に取り組んでいるというが実態は増えている。このプランは魂が入っていないのではないか。解消する方向が見えない。
特別支援学校の施策の具体的取組内容というので、高等部に進学する生徒が増えていくと。特別支援学級が増えている、特別支援学校の中学部も増えている。高等部はこれから増えざるを得ないと。この対応が求められていると書いている。ではこれについて環境整備計画はどうするのか。この中で、都南支援学校の活用ということも検討課題として提起されているが、都南支援学校の跡地利用について、具体的にどう検討されるのか。
【教育長】
療育センターとあわせて、都南校を移転する計画にしている。そしてその後、現都南校はグラウンドがないという問題があるが、ここにはそのものが非常に耐用年数が十分な校舎であるので、今後盛岡市内の他の特別支援学校の状況も踏まえ、どのような活用方策があるかということについては、学校関係、いろんな方々と相談しながら、早い機会にその活用方策を示していきたい。
【斉藤委員】
先ほど研修をやっているという話があった。23〜24ページで、施策の具体的取組内容というのがあるが、上記の施策の具体的取組について、研修の実施率が現状0%になっている。やっていないということか。
【特別支援教育課長】
23ページでは、今後このプランにより、小中学校の管理職を対象とした研修、指導主事を対象とした研修等、これらの部分については新しい計画の中で進めていくということであるので現状は0となっている。
【斉藤委員】
先ほど聞いたときに、校長先生の研修とかやっていると言っていたではないか。たくさん研修がある。これは全部0なのか。
【特別支援教育課長】
先ほど述べたのは、小中学校の管理職を対象にした研修という部分については、小中の特別支援学級を設置している設置校長協議会というものがあり、その協議会が主催する研修会ということでは実施している。県教委主催という部分では行っていない。指導主事についても同様である。
【斉藤委員】
よく弁解しないと伝わらない中身である。不十分と言わざるを得ない。岩手における特別支援教育は、岩手の教育の遅れの1つの象徴である。
実際に保護者から要望が出ているので、そのことについてお聞きしたい。1つは、「教室不足だけではなく、給食も遅れている。冷たい弁当給食だ」(一関清明支援学校)と。せっかく立派に改修したのに、なぜ給食施設がないのか。義務教育だったらあるはずである。
もう1つは、「就労支援事業所の空きがなく、実習ができない。就労が不安だ」と。18ページには、就職率が94.6%(一般就労)と。しかし一関の現状は、実習先がいっぱいで、十分な実習ができていないというのも事実なようである。その点はいかがか。
【特別支援教育課長】
県内の特別支援学校で実際どのような給食の状況かということで、県内14本分校、千厩・遠野・二戸の分教室があり、分教室と分校については、市町村の給食センターから供給されている。宮古についても今年度から田老の給食センターから供給させていただいている。そのほか、厨房施設があるということで、完全学校給食ということだが、ご指摘の一関、釜石、盛岡みたけについては、デリバリーによる給食となっている。
デリバリー給食については、主食・副食等あるが、主食については温蔵庫に保管しているが、副食については10℃以下に保冷するということになっていることから、どうしても冷たい食事になってしまうのが現状かと思っている。
これまでも、関係する市町村にお邪魔し、いろいろ協議させていただいた結果、宮古については解決したわけだが、それ以外については今後も協議を続けていきたい。
一関清明の進学率については、知的障害の高等部が開設してから間もないということで、その知的障害の部分の実習先の改革あるいは雇用の部分の改革という部分はこれからだと思っている。ただ、一関だけではないが、特別支援学校と企業との連携協議会というものを立ち上げており、その中で企業の方々に特別支援学校の生徒を知っていただくということ、それから学校では企業からのニーズを意見交換を通して把握するということ等を今年度から行っている状況である。
【斉藤委員】
障がいをもった、ハンディキャップをもった生徒にこそ、温かい美味しい学校給食を提供するという精神でやっていただきたい。残されている3つの学校についてもぜひ考えていただきたい。
一関清明は、他の学校と違いがあるかもしれないが、実際に父母の方々がそういう不安をもっているのが実態なので、家族の方々に集まってもらいそういう実態・要望を聞いたので、ぜひしっかりやっていただきたい。
・全国学力テストの公表問題について
【斉藤委員】
全国学力テストというのは、実際に試験を受けている子どもたちにとってあまり役に立たないものだと思う。4月末に試験をして、8月末から9月にかけて回答が届く。こういうものを子どもたちにとって生かすということは無理なのではないか。
毎年やってほとんど同じ傾向である。何が分かるかというと、全国との比較だけである。それだけで、これは文科省もあなた方も言っているが、学力の一部だと。しかし一部ということを公表されると、低かったところは目の色を変えて次の対策をとらなければならない。これは市町村の中でもそうである。
この学力テストは毎年やる意味がまったくないのではないか。しかも4ヶ月ぐらい回答が戻ってこない学力テストというのは本当に一人一人の子どもにとって生かせていないのではないか。
【義務教育課長】
ご指摘の通り、4月末の実施で実際に結果が出るのが8月ごろということでタイムラグがあると。活用についてということだが、各市町村や学校においては、実施後に、詳細な結果は8月頃ごろだが、実際のテストは手元にあるので、それを使って授業に反映させるとか先生方が分析して、今後の授業に反映させるということを進めているところもあると。ただそれが全県的に行われているかどうかというと、それはまちまちなので、良い事例に関しては我々の方で全県に広げながら、子どもたちの学力向上につながる授業改善ができるということは可能ではないかと思っている。
また、8月は夏休みなので、子どもたちの詳細な分析結果を基にしながら、授業改善は2学期からということになるが、2学期3学期のところで取り組み、必要であれば高校との連携の中でそれを継続させるということも可能ではないかと考えている。
毎年実施についてだが、中長期的な教育施策という面では、何年かに1回というところで成果を見るという方法もあるかもしれないが、授業改善のプログラムの中で、毎年学校がそれぞれその人数で実施するのはその年しかないので、小学校も中学校もそれぞれの学年で取り組んだ結果を見ながら、その年度を対象にしながら改善していこうと、そのプロセスを回していきましょうという趣旨で実施しているので、まずは単年度で結果を出せるように分析しながら授業改善をして学力向上につなげていきたい。
【斉藤委員】
学力テストが生かされるという回答ではなかった。その学力テストのコピーをとって自主的に採点して生かしているということをモデルにしたら大変なことになる。それこそ学力テストのための勉強を前も後もやるということになる。そんなことを奨励したら学力テストの趣旨がまた違ってくる。
OECDのPISAのテストの結果が公表され、日本の学力は全分野で回復した、世界トップレベルだったと。学力低下論ということに根拠がなかったということである。これは去年の試験で、悉皆調査から抽出調査までしているので、そこに本当には確信をもって、一人一人に行き届いた教育をゆとりをもってやるという方向が本当の教育改革だと。PISAの結果についてOECDの教育局次長は、日本の好成績の要因について「学校施設などの教育資源が平等に行き渡っている点などを挙げた。一方、保護者の職業や教育歴、家庭の裕福さを反映した社会的経済的文化的水準で見ると、日本では高水準校と低水準校の得点差が03年以降拡大しており、教育の格差は一旦拡大すると埋めることは非常に難しくなる。注意が必要だ」と指摘している。これは全国学力テストもそうである。経済水準の低いところは低いという結果も出ている。ところが、学力テストの結果を9回もやって、文科省は何の対策をとったか。授業改善である。経済格差が問題だったら、経済格差の大きいところに先生を配置するとか特別の対策をとらなかったら上がらない。9年も学力テストをやりながら、本格的な対策を何もとらず、学校と先生の責任にしているのが文科省のやり方ではないか。
【教育長】
たしかに経済格差と教育格差の問題はいろいろ指摘されている。そういった点は教育にどういう資源配分をしていくかという我が国の政策とも絡む話だと思う。ただ、我々一人一人の子どもをあずかっている身としては、それぞれの子どもたちを学校に迎えて、その子どもたちに少しでもより良く学んでいただく、そしてその効果を上げていただくために、我々の持っているツールの中で最大限のものをやっていきたい。そして全国学力テストをああいう形で行っているが、それも1つのツールとして活用しながらいろんな取り組みを行っていきたい。
【斉藤委員】
学力テストの公表問題だが、今まで学校の序列化・競争を激しくするというので公表は原則しないとなっていた。これをするということになったら学力テストの性格が完全に変質すると思う。都道府県、市町村、学校ごとのランクが出てしまう。第三者が調べればすぐ分かるのである。これは学力テストが変質すると。
60年代に学力テストをやって、学校が荒廃して止めた経過がある。だから、当初から公表しないということを原則にしてきた。何の対策もとらないで今度は公表と。
岩手日報が県内市町村の教育長にアンケートをとり、現行通りが29人、いずれとも言えないが3人、その他が1人だった。公表するという人はいなかった。これはある意味まともだと。県教委としても問われるので、原則公表しない、いかなることがあっても序列化や競争を激化させることはすべきでないと、教育長は言明すべきだと思うがいかがか。
【教育長】
今回の全国学力テストの実施要領の改正は、公表するということではなく、市町村それぞれ所管の学校の分を公表しないという前提で行われていたものを、市町村の判断で公表することもできるという規定、実施主体は市町村なので、県はもちろん市町村教委の意向に反し県が独自に公表するということは当然行わないつもりであり、市町村の意向を最大限尊重していきたい。