2015年7月14日
いじめ問題に関する緊急の申し入れでのやりとり(大要)
【斉藤議員】
矢巾町内で、中学2年生が、いじめを苦にしたと思われる列車飛び込み自殺事件が発生したと。昨年の5月31日の滝沢市内の中学2年生の自殺に続く事件であり、岩手の教育・学校にとって、きわめて重要で異常な事態だという認識のもとで、いじめ対策の緊急の申し入れにきました。
矢巾でこういう事件が起きたというのは、県教委が進めてきたいじめ対策が残念ながら形骸化していると、実のないものになっていたのではないかと指摘せざるを得ないと思います。改めて、いじめ対策のもっとも大事なことは何かといえば、いじめは人権侵害であり暴力だと、学校は子どもの命最優先で対応すると。いじめというのは、大人に分からないようにやられる。だから大人に情報が伝わったときには、かなり深刻な状況になっていると受け止めて、文字通り学校の最優先課題として、教職員や父母にも情報提供して総力をあげて取り組むと。このことが必要だと思います。この一番の基本を徹底しないと、いくらいじめ対策方針を決めて体制をつくっても、今回の矢巾のように、「いじめ件数は0」となってしまう。
今度の事件の特異性というのは、生徒から繰り返し、「いじめを受けている」と。新聞報道を見る限り、「いじめを受けていた」というのは5回、「死にたい」という表現が5回。それも昨年から2年にわたって。これだけのメッセージが寄せられていたのに、なぜ担任は対応できなかったのか、学校として対応できなかったのか。ここに今回の問題の深刻さ、重大性があると思う。逆にそのことが全国的にも大きな社会問題として取り上げられる直接の理由があると思う。
今度の事件にあたっては、7月7日の段階で、教育長が謝罪し、誠実に今度の事件の対応にあたるということをいち早く表明したことは良かったと思いますし、6日の段階で、矢巾町は総合教育会議を開いて、町長を含めて今回の対応の基本をそこで確認し、教育長の記者会見に至ったと思うので、そういう点では、行政・教育委員会としては誠実な対応をしてきたのではないかと。学校は昨日、校長先生が謝罪の記者会見をしたので、そういう点では、滝沢のときとは違った対応をされていると思うけれども、改めて、今回の事件を教訓にして、いじめで命が奪われることがないように、6項目の申し入れにきました。
1つは、「矢巾町内の中学2年生の自殺事件について、学校と町教育委員会が徹底した調査を行い、事件の経過と学校の対応、問題点と課題について早急に明らかにし、遺族や保護者等に対し誠実に対応するよう、県教委は指導援助を行うこと」。誠実に対応しているということは認めるんですが、学校の対応がどうだったかということについては、ほとんど明らかにされていないのが事実です。担任の問題は指摘されているんですが、クラブ活動の問題はなかったのか、その他なぜ学年とか学校で共有されなかったのかという、きわめて重要な問題は、調査途中ということもあると思いますが、明らかになっていないので、そういう学校の対応で何が問題だったのか、どういういじめ、いじめの構造があったのかということを含めて徹底して明らかにしていただきたいと。
2つ目は、「いじめ問題の対応については、『いじめは人権侵害であり、暴力』であること。『子ども・生徒の命と安全にかかわる問題』であることを徹底し、学校では『子どもの命最優先』の課題として取り組むことを徹底する」と。いじめ対策基本方針にも、魂が入らなければいけないと。文科省の言う通り方針は決めた、体制はつくった、機能していませんでしたでは、いじめ問題についての認識の浅さだと思います。県教委が毎年いじめの調査をしているので、学校の教職員が発見したいじめというのは、中学校では241件中67件です。これは子どものアンケートを含めて、3分の1程度です。あとは子どもや父母からの訴えが多いと。学校の先生方は、いじめを把握できていないというのが現実なんです。それが把握されたときには、きわめて深刻な状況になっているという認識が必要だと思うし、研修の問題でいくと、いじめの研修をやったというのは246校で約600校のうち半分にもなっていない。委員会でも繰り返し取り上げてきたけれども、やはり現場の先生までいじめの重大性、それにどう取り組むかということが徹底されていないと思うので、ぜひこの一番大事なことを徹底していただきたい。
3つ目は、「いじめの情報については、様子見せずに、すでに深刻な事態となっているとの認識で、全教職員が情報を共有し、保護者にも知らせ、連携した取り組みを行うこと」と。いじめの軽さ重さというのは、改めて文科省のいじめの定義が重要だと、矢巾町の教育長さんは言っていた。当人にとっていじめがどういう問題なのかということで把握しないと、第三者が判断するのではなく、様子見しないで、情報提供されたら学校全体で共有して対策をとると。今回の場合は様子見にもならなかったと思いますが、保護者にも知らせると。今回、生活記録ノートというのを先生と生徒の物で、思春期になるとそういうノートを勝手に親が見れないというのも常識だと思います。そういう意味では保護者にも知らせると。保護者とも連携して取り組むということにする必要があるのではないかと。
4つ目は、「子ども・生徒の自主的活動の比重を高め、いじめを止める人間関係をつくることを重視すること」と。いじめを最終的に解決するのは子どもの力ですから、基本的にはそういう力を持っていると思うけれども、学校や先生がいじめを隠したら、これは子どもたちが学校を信頼できないし、子どもたちも様子見になってしまう。学校も真剣になる、子どもたちを信頼して一緒になって解決するということが必要だと。
5つ目は、「被害者の安全を確保し、加害者には『いじめ』をやめるまでしっかり対応すること。そのためにもスクールカウンセラーとともにスクールソーシャルワーカーの配置を抜本的に強化すべき」だと。いじめる子どもにもストレスとか問題を抱えているわけです。いじめる子どもの問題を解決しないと、これは繰り返されるわけで、いじめる側の子どものフォローというのもしっかりやるべきだし、そのためのスクールカウンセラーやソーシャルワーカー、家庭の経済問題などが入ってくると、学校だけでの対応では、不十分なことも出てくるので、家庭と学校をつなぐスクールソーシャルワーカーの役割は一段と大事になってきているのではないかと。聞くところによると、盛岡では3人、そういう配置をきちんとしてフォローするような体制にすべきではないかと。
6つ目に、「教員の多忙化や成果主義等が教職員の共同を妨げる要因となっていること。過度の競争的な教育制度など、競争と管理主義の教育の見直しをはかる」と。いま先生方で自由に職員室で話し合うということがないんです。それは成果主義でお互い競争で、上司に自由にモノが言えない職場になっていることも事実なんです。本来教育というのは、教師の共同の事業です。特に中学校は、担任といえど自分の教科しか教えないので、それだけにいろんな目で見ているので、教員自身が協力・共同するという体制づくりが特別に重要だと思いますので、その背景問題としてそういうところにも目を向けて、今回の対応と全県的ないじめ対策の徹底を図っていただきたいというのが今日の申し入れの趣旨でありますのでよろしくお願いします。
【教育長】
まさに真摯に正面から受け止めなければならないと思っています。事の重大性については、きわめて深刻に受け止めますし、亡くなられた中学生の子どもさん、保護者の心中を察すると本当に言葉もないという思いです。
今回の事案を受けて、まず保護者の思いに寄り添った対応をしなければならないと思っています。現段階で、いじめがあった可能性は高いということですが、直接的に自殺につながったかどうかというのは、これからの検証を待たなければ、いじめた相手方もありますし、丁寧な検証をした上で事実を解明することが大事だと思っています。そのためには、第三者委員会を立ち上げるという話も矢巾町で方針を決めていますが、それに対する全面的な協力もしていかなければならないと。それから、正常な学校教育の環境をつくっていくことも大事で、事件が発生して以来、県教委としては、指導主事もそうですが、スクールカウンセラーも含めて支援体制をとっています。今もやっていますが、今後なお、検証のプロセスで新しい問題も出てくると思います。そうすると、学校の先生方のマンパワーで、情報をみんなから取りながら、それが表に出てくると動揺する面もあろうかと思います。そういう面で、学校、町教委もまた厳しい状況で、必要とすれば支援を強化することも考えていきたいと思います。
それから、第三者委員会について、公平・公正な検証がなされることが大事だと思ってまして、一番は人選の問題もあろうかと思います。職能団体等とも話をしながら、人選について県教委として主体的に関わっていきたいと思っています。
まず、矢巾町の問題に適切に県教委として、岩手県の教育界の話ですので、滝沢の事案もあった上でさらに起きたということで、きちんと対応していかなければいけないと思っております。
それから、現時点でもそういうリスクというのは、全県の学校で起こりえる可能性は常にあるという認識をもつことが大事だと思っています。そういうことで、お渡しした資料には、先週金曜に、全県立学校、市町村教委を対象に、1つに、命の大切さということもあります。それから、情報をきちんとキャッチすると。そのためには、生徒児童の声も聞くと。担任以外の先生たちの情報もキャッチする。それから、地域と家庭の協力も得ながら、いじめの早期発見・早期対応等を徹底させていかなければならないと。
あとは、各学校の方針ですが、いずれスタートはそういう環境をつくると。ただこれは目的ではなく、1つの手段だということで、狙いとするところは、いじめに的確に対応するということなので、今回の事案を受け止めて、その辺の検証も県教委として、全県的な状況の把握と、あとは、いじめ防止対策推進法がこれまでの反省に立ってできている法律なので、それを十分踏まえた対応を進めていきたいと思っています。
今日の総合教育会議では、まずこれまでの経過と、5日から13日までの状況について、知事や教育委員の情報共有ということで、早急にやろうということで知事や教育委員からも話がありまして開いたものですが、やはり矢巾町の動向も踏まえて適切なタイミングが今日だったと思っています。その経過を申し上げた上で、学校が今どうなっているのかということを、生徒・保護者・学校・教育委員会の状況を記載しています。今後の対応としては、矢巾町に対する支援・サポートということと、全県に対する対応というようなことということでやっていこうと。あとは各学校で、先導的な取り組みをしているところもあると思います。すべてが作っただけでやっていないということではありません。昨年の滝沢市の事件以来、さまざまな機会を通じてこの重要性については、先生方の共感を得ていたと思います。ただ結果的に、こういう残念なことが起きてしまったということは、教育行政を推進する私たちの立つ姿勢として、現実を直視することが大事だと思っていまして、共産党さんからいただいた申し入れを十分に踏まえて、できる限りの努力をしていきたいと思っています。
【斉藤議員】
いま調査中で、24日ぐらいを目途にまとめたいということなので、その段階で具体的ないじめの事実や経過、学校の対応など示されると思うので、遺族の立場に寄り添って、保護者もみんな心を痛めており生徒もそうです。そういう立場で、調査をしっかりやっていただきたい。
やはり2年連続で起きたということに痛切な思いがあります。滝沢市の事件自身が深刻なことで、その矢先なので、重大性があると思うので、この機会に、すべての学校に通知したという程度にしないで、きちんと通知を踏まえて時間をかけて、全教職員に徹底すると。研修もすべての学校でやるというくらいのことをして、いじめ問題の認識が矢巾の場合欠落したんだと思います。あれだけのことが言われていて、いじめとして認識していないし、全体で共有しなかったと。一人の話ではないんです。そういう点で県教委も危機意識をもって、この機会にすべての学校が自らの問題として受け止めて。
いじめは、どの子どもにも起こり得るし、どの学校でも実際に起きている問題です。専門家は、「いじめのない学校は20%程度だ」と。実際にいじめ件数はそうなっていないので。大きな事件が起きれば2000件出て、1年経てば800件に減ると。アンケートに出ないいじめがもっとあるわけなので、そういう情報がキャッチされたら、そのときにはかなり深刻になっていると受け止めて、様子見しないで対応するという学校の体質をつくっていただきたい。
【教育長】
いじめとの関係について、いずれきちんとした事実関係を明らかにするのが大事だと思っていますし、報道や町から聞いている範囲で残念だと思うのは、担任の教諭が生徒に向き合っていた事実はあるんです。ところがその情報が共有されなかったと、そこが欠落した結果になってしまったと。そこに何が原因があるのかということ、もしも早くやっていれば…という思いがあるが、やはりそれは今後の学校教育の中で、当該校はもちろん、全県の学校で共有していくと。いま子どもたちが一時的に相対的な認知件数が減ったとしても、これはまた新しい子どもたちも入ってきますし、環境も変わりますから、そういう対応をするやり方、組織風土として根付くというところを目指して、早期発見・早期対応、悲惨な事件につながらないということをめざして、不断に取り組んでいくと。不断といっても、本当に集中的にやらなければだめだと思っています。そういう意識でやっていきたい。
【斉藤議員】
担任が何もしなかったとは思っていないけれども、痛切な訴えから見たら、それに対応したものがなかったと。そこに全国の人たちは驚いていると。ここに問題の特別な重大性があると。担任だけの問題だけではないと思う。校内研修や次の週に行事がある、結局先生がそっちに向いてしまう。それで切実なSOSに応えられないと。だから6月のアンケートが遅れたとか、アンケートでいじめと訴えられているのに集計されていないとか、これは担任だけの問題でなく、学校がそうなっていたと。今回たまたま担任が十分対応できなかったとは思うけれども、他の先生だって多かれ少なかれそういう傾向があったのではないか。そこもきちんと解明する必要があると思います。
【教育長】
おっしゃる通りだと思います。先ほど申し上げた通り、学校としての全体的なまとまり、意思形成がなされるというのが大事だと思っています。
生徒たち自身が、そういう動きになっていくと、これも必要ですし、現に今そういう動きもあります。それは子どもたちの動きに心強い面もありますが、それだけに頼るということではなくて、学校の設置者、県教委含めてきちんとやっていかなければならないと思います。
【斉藤議員】
昨日矢巾町の教育長にお会いし、とても心配していたのは、全国から電話が集中して、その対応で大変だと。全国のテレビ関係の記者というのは、取材も少し乱暴で、子どもたちのプライバシーや家庭のプライバシーの問題が心配されると。必要な支援を教育委員会にもしっかりやっていただきたいと思います。
【教育長】
できる限りの努力をします。
【川村町議】
やはり父母の中でも危機感をもってやっていかないと、子どもを真ん中にして、親も教師も…ということがずっとあったので、今回はいろいろ家庭の事情もあったと思うんですけども、子どもが一番頼れるところも大変でしたし。
【教育長】
これは周辺の話になってしまいますが、子どもたちが相談するのは一義的には学校では担任の先生だと思います。校長・副校長に言っても当然いいんですけども、なかなかそれができない、声に出せない子どもたちもいると思います。そういう子どもたちの声を聞くという、いろんな電話相談などあるんですが、それをきちんと子どもたちに改めてカードを持たせますが、そういう広がりが大事だと思っているので、そういうこともやっていきたいと思っていました。
いろんな情報を得る中で、当事者の意識がまったく違うと。いじめの基本的な考え方は、精神的・肉体的に負担を感じるということですが、お互いにどっちがいじめたみたいなこともあるでしょうし、本当に事実かどうかもきちんと確認しなければならないと。そういうときに、間違った情報だって、それはそれでいいのではないかと。全体の情報が集まった中で、そこで声を聞くということ、そこからスタートすると思うので、そういう意識を徹底するようにやっていきたいと思います。