2022年9月2日
県立沼宮内高校の学級減の計画の見直しを
求める申し入れでの教育長の回答
(大要)


【佐藤教育長】
 まず、本日は日本共産党県議団と岩手町からお二人の町議もお見えということで、申し入れをいただきました。
 まずもって、岩手町さんから沼宮内高校へのこれまでの多くの支援等をいただいてございます。この場をお借りしまして御礼を申し上げたいと思います。
 先日ですね、8月31日に岩手町の町長さん、副町長さん、教育長さんがですね、私のところにいらしてですね、要望書を提出していきました。そこでいろいろと要望内容―学級減の延期についてということでお話をさせていただきました。「後期計画の期間中は岩手県立高等学校の管理運営に関する規則による入学者数の減少による学級減や募集停止は行わず、現在の学級数を維持し、地域の高校教育体制の確保に資するよう要望します」という内容でございます。あとはいろいろとお話をさせていただいたところです。
 申し入れの中でも、前段のところで「地方創生において重要な役割を担う1学級校及び 1学年2学級の学校については、できる限り維持しつつ…」と。そのあり方ということでまさに引用されております。
 私どもの後期計画の中でも、ブロック別のプログラムで、引用されたところ、再編の方向をまさに書いてございますけれども、その再編の方向の中でも、再下段のところには「なお生徒数の減少等に対応し、学級数調整、統合や学級減等を行う場合もあります」ということも明記をさせていただいてございます。
 そして実は、岩手町さんの方にも、これまでかなり早い時期から、沼宮内高校の状況についてはお話をさせていただいてきた経緯もございます。平成27年に、80人に対して42人ということで38人の欠員、翌平成28年にはですね、29人で51人の欠員が出たところです。その翌年は42人で38人の差というところで一旦は持ち直ししたんですが、平成30年にはまた37人になって差が43人ということで、そういうこともありまして、かなり早くからこういう状況について情報共有をしていたと思います。
 そして、令和2年度からですね、私教育長に就任してから2年目以降については、県単独事業で「魅力化促進事業」と、1学年3学級以下の学校28校に対して、予算規模でいきますと700万円ほど予算計上しました。そして28校に、額的にはそう大きくないんですが配分をして、地域との連携とかさまざまな魅力づくりに取り組んでいただくようお願いをしてきました。そうした取り組みがけっこう盛んになってきまして、県内全体でも、報道等に取り上げられるようになって、取り組みが進んできたと思っております。
 そういったことも踏まえまして令和4年度からはですね、小規模校の魅力化の取り組みをさらに拡大しようということで、全県展開をする形で、今年度は地方創生推進交付金を活用して、情報発信等も含めて積極的に取り組んでまいりました。そういった中で沼宮内高校さんも取り組みを進めてきておりましたが、なかなか歯止めが効かなかったというところがございます。
 平成30年に−43人という話をしましたが、その後平成31年(令和元年)には−36人まで縮小したんですけれども、令和2年には42人で差が38人、この辺になると数人減っただけで厳しい数字になると。令和3年度は31人しか入っていないと、差は49人で、今年度にいたっては25人で差が55人に拡大しているということで歯止めがかからなかったということがございます。
 昨年7月にも町教委の方にうかがって、教育長さんにも「大変厳しい状況にありますよ」ということは昨年度からお話をしてございました。そういった中で今年度の実績を見ますと、非常に厳しいものがあったと。そして今後の岩手町内の中学校卒業予定者数ですとか、実際に町内から沼宮内高校に入る生徒の割合もずっと減少してきているんですね。そういう厳しい状況につきましては、私ども以上に町当局では認識されていたんだと思いますが、なかなか成果がおもわしくなかったという実情がございます。
 そういった中で私どももさまざま取り組みを進めておりますが、こういう状況の中で岩手町の中学校卒業予定者数も増える様子も少ないと。なかなかこのまま維持することにつきましては、厳しい状況にあるととらえてございます。そういった意味でも、高校再編を昨年度末に計画を策定しておりますが、またさまざま魅力化の取り組みも進めてきている中でですね、なかなか難しいところでの苦渋の判断にならざるを得ないと考えてございます。
 本日いただいたこの申し入れと、8月31日に町長さん含め町から要望書も出されました。これらを今月の定例会で委員の方にも内容については報告をさせていただいた上で、今後の対応等についても、委員を含めて意見交換をしながら判断していきたいと思っております。

【斉藤議員】
 教育長さんの話は、高校再編計画がなくても通用する話なんですよ。昨年の5月に高校再編計画の後期計画が策定されて、先ほども私が引用し教育長も引用した「地方創生において重要な役割を担う1学年1学級校および1学年2学級校の学校については、できる限り維持しつつ」と。「入学者の状況、地域の実情等を踏まえながら、そのあり方を検討します」と。これは昨年度からこの計画は始まっているんですよ。一番大事なことは、従来の延長でなくて、昨年あれだけ議論して、策定の時期もずらして決めた高校再編計画後期計画。ここであなた方が決めた方針に基づいて学級減のことも検討しなければだめだと思うんですよ。あなた方が言う「できる限り維持しつつ」というのは何なのかと。
 南高校・不来方高校の統合は、あれだけ盛岡市も含めて地域・関係者の反対があったけれども強行されました。その目的は盛岡一極集中の是正でした。盛岡一極集中是正というんだったら、その効果も見て、周辺校の維持にできる限り取り組むべきじゃないですか。来年から学級減なんですよ、南高校も不来方も。2学級減です。その効果はその後に表れるんですよ。一極集中是正、周辺校を守ると言いながら、その効果も出ないうちに周辺校を学級減にすると。これはあなた方が決めた、昨年度から始まった高校再編計画に逆行すると思いますよ。従来の延長線上ではなくて、あなた方が決めた、大激論して策定された高校再編後期計画を踏まえて、やはり県立沼宮内高校については検討されるべきだと。
 一番のネックは、町内からの進学者が少ないことです。それは私も町長さんや教育長さんに率直に言ってきました。やはりせめて地元から4割、できれば5割目指してほしいと。私は話を聞いてきてその可能性はあると思っています。「沼高通信」を校長が率先して配っているんですよ、学校に。そういう努力が始まって、実は高校で生徒・父母にアンケートをとったんですよ。そうすると、どういうイメージかというと、やはり沼宮内高校は「進学校ではない」という意識なんですね。でも、少ないけれども岩大にも県立大にも、山梨学院大学はホッケーの関係で入っているんだけれども、入っているんですよと言うと、進路指導の先生がびっくりすると。今この進学については、公営塾を始めて、今の2年生が進学するときにはかなりの成果があがってくると思います。そうすると、地元の高校でも進学ができると。「来年から成果」と言われるときついけれども、2年3年、できる限り県教委が見守って努力してくれれば、今年は25%ぐらいですけれども、3割4割、できれば5割という、町内からの進学も引き上げることは可能だと、私自身は高校や町長・教育長の話を聞いてそう感じてきました。
 だから、高校再編計画を決めて立派な方針を決めた翌年から、理念と基本方向に反する学級減をやったら、言っていることとやっていることが違うんではないかと。教育長、従来型の発想じゃなくて、昨年5月に侃々諤々あれだけ議論して決めた、あなた方が決めた、高校再編計画を踏まえて、周辺校をどうするかということを、「できる限り維持する」という、そこの精神を発揮してほしいんですよ。
 そして、やはり岩手町もかなり本気で、町長は言っていましたけれども「まちづくりの課題として高校の魅力化に取り組む」と。遅れたのは事実だけれども、そういう構えになって、予算もつけて、取り組み始めた矢先なんですよ。決して2年続けて1学級以上の減になったら学級減するという基準はないわけだから、この間文教委員会で確かめたように。たしかに2年間連続1学級以上の減ですけれども、必ずやらなくちゃならないというわけではないんだから、盛岡一極集中の是正と、周辺校を守る、できる限り維持するという精神で対応すべきだと思いますよ。その点どうですか。
 この高校再編後期計画の方針から見て、私の言っていること、今日の申し入れの方が道理あるんじゃないですか。

【佐藤教育長】
 地元から進学ができるようにということは私たちも意識しておりまして、今回の後期計画でも「生徒の希望する進路の実現」というのは方針になっております。そして実際に各学校でも、盛岡に来なくてもそれぞれの学校での学びの成果として自分の希望する進路が実現できると。この中には大学進学も当然あるわけですから、そこでさまざま進学支援ネットワークとか事業も予算化して、わざわざ盛岡に来なくても進学できるようなということで、それは努力してきております。
 地方創生の観点から、地域や地域産業を担う人材の育成も柱としておりますし、岩手町さんがさまざまな支援に取り組んでいると。今回学級減にあたりましては、県外からの入学者3人の実績があると。これを仮に2学級から1学級にしたときに、通常であれば40人の1割入れたいとなれば4人となってしまいますけれども、そうなりますとせっかく県外からの受け入れの実績ができてきて、そこはやはり配慮が必要だと考えておりまして、8人受け入れのところは配慮してあげたいということで、いま進めようとしております。これはホッケーのまちづくりとかいろいろ取り組まれていることもありますので、そういった配慮をしていくと。そして実績もともなって40人以上確保が出てくれば、場合によっては戻るということもあり得るんだと思いますけれども、斉藤議員がおっしゃったように、長い期間様子を見るとなると、生徒がいない学級を維持するということに、これは制度上そういうことができるかということもあります。これまでも1年2年と見て学級減対応してきたんですけれども、それを例えば町の要望で後期計画の期間、令和7年度まで大幅に下回ったほかに次の2年間をですね、定員を大幅に下回った状態を続けておくことについては、それでいいかということも、また本県の場合は充足率が全国でも本当に低い状況にあるんですね。そういった状況を継続できることが非常に困難…

【斉藤議員】
 教育長さん、僕が言ったのは、あなた方が決めた高校再編計画の立場で考えてほしいと。盛岡一極集中是正の効果はこれから出るんですよ。そのために統合するんですよ、無理矢理南と不来方は。その効果がこれから出るときに、出る前に学級減したら周辺校は守れないじゃないですか。これが第一点ですよ。今回の統合の目的がなんなのかと。盛岡一極集中是正なんですよ、盛岡の場合は。
 あとは、久慈工業だって5年間あなた方は放置したじゃないですか。そして一戸高校は2年連続で1学級以上の減でも手を付けないと。あなた方のさじ加減で、決して基準は定まっていないんですよ。
 私は盛岡の高校再編というんだったら、やはり盛岡一極集中是正という立場で、できる限り1学年2学級規模を維持すると。全然ここに問題ないんですよ。やらなかったらおかしいんですよ。ここをやらなかったらあなた方が去年決めたばかりの方針は何なんだと。そこにこそ矛盾が起きますよ。
 せっかく今日は地元の岩手町から来ているので、田村さん、伊藤さんは沼宮内高校出身だし、町議会もいろいろ努力しているようだけれども、ご意見を。
【田村町議】
 ご指摘のように、遅れているということはその通りだと思いますけれども、我々の力不足ですけれども、本当に町外から、そして県外からさまざまな努力によって、地域を支えてやっているというところが、大変視察で分かりました。ですから、何としてもですね、地元の産業、地元の地域を支える上で2学級をどうしても残さないと、これは大変だという思いで、特別委員会も立ち上げたところです。
 私は農業や林業など含めて、本当にそうしたところも含めた学校を目指していくべきで、そして地元を支え、やはり盛岡であれば盛岡の裾野を広げてどう守るかというのが我々の目指す地域の産業を支えるためにも、そういう提起もしながら考えています。
 まだまだ取り組みは不十分ですけれども、私も特別委員会で、当面まず地元の入学生を5割にする、6割7割をどう目指すかというところに取り組もうじゃないかと。それをまちづくりと一体となった、商工会も含めてですね、地元の事業所も含めたことをやりながら、ぜひ2学級を維持していきたいなという思いで取り組もうとしています。
【伊藤町議】
 やはり議会の超党派の動きも遅かったというところが実際ですけれども、昨年やっと特別委員会を設けたと。それで今年度からそういう補助、塾とか留学生を受け入れる体制をとってということで、まだ今年から始まったばかりなんですよね。その矢先にこういう急に1学級減らされるとなると、何のために私たちの活動をしているのかというのが問われると思うんですよ。
 やはりそういう点でいいますと、来年度、あと2年ぐらい見ていただきたいというのが私の考えです。それでもってもしも生徒数が増えないとなれば、そこのところは少し考えていかなければならないと思うんですけれども、今やっと魅力化対策というか、始まったばかりなんですよね。そこのところを見ていただきたいと思っております。

【佐藤教育長】
 公営塾の話があるんですけれども、2年生6人。これ対象が沼宮内高校生とうかがっているんですけれども、町としてですね、生徒らの進路実現への支援というのは、盛岡市内に多くの生徒が通っているんだと思うんですけれども、聞くところによると沼宮内高校生に限定していると聞いたときに、これは町の考え方ですからその通りなんでしょうけれども、本当は町内の高校生の進路実現に広くというのも、常識的に考えるとそうじゃないのかなという思いも個人的には思いますが、むしろ保護者の方々からすれば、進学を念頭に置かれているのであれば、私たちは沼宮内高校が1学級になってもきちんとした進路実現・進学ができるような指導体制の充実とかですね、そういうことをお願いされるのであれば、そこは積極的に地元の沼宮内高校に進学した子どもたちにもそういうことができるようにやっていきましょうと言えるんですけれども。ただ、2学級を維持するのに4割5割地元から入れるようにということで、実際どうなるか先のことは不明なんですけれども。

【斉藤議員】
 教育長さん、あなた方が決めた高校再編計画の立場と教育長の今の話はずれるんだと思うんだよね。やはり一極集中を是正して周辺校を守るとなっているんだから。

【佐藤教育長】
 先ほど言ったように、生徒の減少等にも応じて、そこは考え方も整理していくと。

【斉藤議員】
 だから岩手町は、そういう地元の県立高校を魅力あるものとしてしっかり支えたいと、こういうことなんです。地元の県立高校を支えると。そうすれば、いま7割以上町外に行っている子どもたちも安心して地元の高校に進学できると。そうすれば経済的負担も解消されるんですよ。いま大変なんですから通学費。だから、沼宮内高校の魅力化を実現するということは、地元の中学生の経済的負担、家計の経済的負担も解消されて、就職も進学の希望も叶えられるということなんですよ。何のために地元の高校を大事にしようとしているか。
 いわば沼宮内から、これは自主的に盛岡の私立だとか三高だとか行っている子どもたちはいますよ。それはそれで選択の自由ですから。しかしそれは、沼宮内高校が進学校と見られていないという側面があるんです。進学するんだったら無理してでも三高や北高に行かなくちゃならないと思っている。これは生徒・保護者のアンケートでもそう出ているんですよ。だから、そこを脱却することが魅力化にとってすごく大事。これは葛巻高校だってそうなんですよ。あれは何年もかかったけど、今は二桁以上に国公立に入る。無理して盛岡行かなくても、安心して葛巻高校で進学の希望を叶えられるというので、地元の進学率が高まっているわけでしょう。全然地元の生徒数だったら維持できないんだから、葛巻の場合は。だから留学生制度も使って、町外の子どもたちも入ってという努力をしているわけです。それは町民の利益にかなうことなんですよ。
 だから教育長によく考えてほしいのは、去年決めたばかりの後期計画ですよ。ここであれだけしっかり書いているときに、盛岡一極集中是正の効果がこれから出る前に、「できる限り努力する」方向が投げ捨てられたら、言葉だけじゃないかと。盛岡市は反対したけれども、周辺の町村はみんな賛成したのは盛岡一極集中是正があったからなんですよ。明日は我が身だから。八幡平の平舘高校だって。雫石は不意打ちでやられてしまった。
 私はそういう意味で、侃々諤々議論した結果の再編計画ですよ。それをあなた方が大事にしないでどうするのかと。そして町議も話したけど、遅ればせながら岩手町も町長先頭に、1559万円の予算もつけて、本気で高校の魅力化に取り組む矢先です。矢先に水をかけるというのは教育行政のやることではないと思う。そういう風にやろうとしているんだったら応援すると。それが教育長・教育行政の本来の役目じゃないんでしょうか。私が教育長だったらそうしますよ。

【佐藤教育長】
 ですから、かなり早い時期から危機感を持ってもらっていたんですよね。5月に計画策定した後も、実質数字が出ていて、町の方にも丁寧に早くからしゃべっているんです。

【斉藤議員】
 それは私も知らないわけじゃない。でもそういう経過の中でこの高校再編計画がつくられたのだから。去年の話ですよこれ。だからここで書かれた「従来の延長でなくて」と言ったのはそういうことなんですよ。去年の5月に決めた後期計画に基づいて、できる限り1学年2学級規模を維持すると。「できる限り」努力が見えないですよ、来年学級減やったら。せめて1年2年猶予するぐらいの、そして応援して実績あげればどっちも良いわけじゃないですか。そういう余裕が必要でしょう、教育には。1年2年の成果主義じゃないんだと。
 言いたいことは言いましたので、ぜひ改めて高校再編後期計画に立ち返って、そして何よりも地元の高校の努力、岩手町の新しい努力を踏まえて応援するという立場にぜひ立っていただきたいと改めて要請します。