2023年10月31日 決算特別委員会
農林水産部
(第1部)に対する質疑(大要)


・農業分野における物価高騰対策について

【斉藤委員】
 物価高騰による農業への影響と対策についてお聞きをいたします。
 昨年度以来の肥料・飼料・燃油、その他の農業資材の物価高騰の実態と農家への影響額はどうなっているでしょうか。

【農業振興課総括課長】
 国が実施しております農業物価統計調査におきましては、令和2年を基準年とした場合に、本年8月時点の農業物価指数を見ますと、総合物価指数が121.1、肥料が141.3、飼料が144.9となってございます。
 原油価格につきましては、国の調査によりますと、本年8月時点の東北地方におけるA重油の価格は1リットルあたり109.1円、昨年同時期比で14%上昇となっております。
 影響額につきましては、生産する作物や経営規模などによりまして、経営体によって生産資材の使用状況が大きく異なること、また個々の経営努力も加味しますと、影響額を把握することは難しいということでございまして、試算は困難であります。

【斉藤委員】
 A重油の価格は前年度を比べてもだめなんですね。昨年度から上がっているわけだから、令和2年度と比べるとか、そうしないとデータになりませんよ。
 それで、私はもっとも打撃を受けているのが酪農だと思います。酪農農家の減収の実態と対策はどうなっているでしょうか。酪農家戸数はどう推移しているでしょうか。

【振興衛生課長】
 飲用向けの生乳乳価が昨年11月に1sあたり10円引き上げられ、本年8月にさらに10円引き上げられたものの、配合飼料価格は高い水準で推移するなど、生産コストが大幅に増加していることから、酪農家は依然として厳しい経営環境にあると認識しております。
 県ではこれまで、酪農家の経営安定に向け、飼料等の価格上昇分を補てんする国事業の活用を積極的に進めるとともに、県独自に累次の補正予算により、飼料や肥料の購入費、酪農経営の影響を緩和するための支援を実施してまいりました。
 県内の酪農家戸数についてでありますが、国の統計によりますと、令和5年2月1日時点で728戸、前年比37戸・5%の減少となっております。直近5年間で毎年40〜30戸の減少となっておりまして、資材高騰前の令和2年と比較いたしますと、およそ100戸の減少となっております。

【斉藤委員】
 予算のときにも酪農家の具体的な実態を示しました。今回もまた別な酪農家の実態を紹介したいと思いますけれども、これは成牛100頭、子牛約20頭、畜産クラスターで規模拡大した農家です。令和4年度は月150万円の赤字だったと。12ヶ月で1800万円です。国からの補助が200万円、町からの補助が100万円、飼料価格安定基金から約200万円助成があって最終的には1200万円の赤字になったと。単純に言いますと月100万円の赤字であります。そして、今年から新畜舎施設の償還が始まったと。月150万円です。まさに返すべきお金が物価高騰で消えてしまっているという状況で、規模拡大した、借金を抱えている酪農家は本当にいま大変な状況になっております。
 そこで、岩手県は第一次の補正で、昨年度末の補正よりも拡充したということは評価をしたいと。しかしそれでもこういう状況です。最近聞きましたら、県から1頭1万円の補助が10月1日に届いたと。これだけはどういうわけか95万円と言っていましたが、これは1ヶ月の赤字分にすぎないと。さらなる酪農家はもとより畜産農家も含めて、支援の継続拡充が必要だと思いますけれどもいかがですか。

【振興衛生課長】
 ご指摘のありました今年度第1号補正予算で県独自に措置した事業の進捗状況についてでありますが、配合飼料の価格上昇分の一部を補助する配合飼料価格安定緊急対策費補助につきましては、4月から6月までの第一4半期分につきまして、約2700経営体に対し606億8000万円を交付しており、7月から9月までの第二4半期分につきましては、今後国の配合飼料価格安定制度の補てん金の金額の確定を待ちまして、11月下旬頃に県の交付金を確定し、交付金が確定することになれば12月中に交付決定をしたいと考えております。
 また、酪農家の粗飼料価格の上昇分の一部を補てん・補助する酪農経営支援緊急対策費補助につきましては、約550戸・22000頭を対象に約2億1500万円を交付しているところであります。
 今後の対策についてでありますが、県はこれまで、先ほど答弁申し上げました通り、飼料の価格上昇分を補てんする県独自の配合飼料購入費への支援のほか、酪農家への支援策について行ってきたところです。
 一方、飲用向けの生乳価格につきましては、昨年11月から段階的に引き上げられまして、11月に10円、今年に入って8月に10円、1sあたり20円の値上げとなったところであります。昨年乳牛の子牛価格が下落したところですが、昨年の最低価格から徐々に上昇してきている状況となっております。一方で飼料価格は高止まりという状況です。
 このような価格動向も注視しながら、さらに必要となる対策につきましては、現在検討が進められております国の経済対策の動向も踏まえながら機動的に対応してまいります。

【斉藤委員】
 先ほども聞きましたが、令和2年から令和5年にかけて、正確に言うと107戸・12.8%酪農家が減少しているんですよ。これは本当に大変な事態です。毎年40戸50戸酪農家がなくなるということは存亡の危機です。ぜひ継続してさらに拡充する対策を間髪入れずにしっかりやっていただきたい。

・米価の問題について

【斉藤委員】
 次に米の問題であります。先ほど佐藤ケイ子さんも取り上げました。
 大事なことは、10月24日の農業新聞が集落営農法人調査を行った。大規模な農家です。コスト高騰に見合う農家手取りの米価は、約7割が60sあたり14000円以上としている。農家手取りの米価が14000円以上じゃないと成り立たない。この農業新聞の調査をどう受け止めていますか。岩手県内の農家をどう見ていますか。

【水田農業課長】
 現状の令和5年産のひとめぼれの相対取引価格で試算した場合でありますと、3ヘクタール以上の規模の生産者の方であれば、収入額が生産費を上回る状況とお答えいたしました。令和5年産米の相対取引価格は前年に比べて上昇しておりますけれども、活用する費用等資材の価格も上昇している状況でございますので、米農家は厳しい経営状況であると認識しているところでございます。

【斉藤委員】
 あなたは全然実態を分かっていない。私は予算委員会のときにも言いましたが、あのときは日本農業新聞の調査で、15ヘクタール以上の農家が赤字だった。相対取引価格で今の農家の現状なんて全然分からないんですよ。いま物価高騰を議論しているときに、そんなことお構いなしに、3ヘクタール未満が赤字だと。そんな甘い話じゃないでしょう。集落営農法人の調査で、60sあたり14000円以上じゃないと成り立たないと。岩手県の農家もまったくその通りだと思うけれども、技監に聞きましょう。

【農政担当技監】
 先ほど担当が答弁したのは、令和5年産のひとめぼれでございますが、相対取引価格60sあたり15436円を算定指数で割りまして、10アールあたりの収入額を試算しますと13万1492円ということで試算してございます。
 一方コストの方は、令和3年産の東北をベースにしております、最初の値としてそれは与えてございまして先ほどのような規模の答弁になりますが、令和3年に比べましてコストは上がっておりますので、収入の関係はもう少し影響が大きくなっていると認識してございます。

【斉藤委員】
 これは予算委員会でも指摘したんですよ。実際の農家を調査すれば、令和4年産米でも15ヘクタール規模で赤字だというのが日本農業新聞の調査でした。そのことを指摘しているじゃないですか。そして10月24日に日本農業新聞が集落営農法人の調査をやって、これは大規模農家の調査ですよ。手取り価格で14000円以上ないと元が取れないと。このことをリアルに見ないと、表面上の相対取引価格と昔の生産費を比較しても何の意味もない。今年の3月に指摘した話ですよ。そんな説得力のない答弁をすべきではない。
 そしてこの実態は少しどころではないでしょう。もう1回聞きましょう。この日本農業新聞の調査結果をあなたはどう受け止めていますか。

【農政担当技監】
 価格上昇前に比べますと、肥料で約4割高になっておりますので、その部分についてはコストが上がっていると思ってございます。いろいろこれまで県におきましても、資材高騰対策は、緊急的な対策に加えまして、やはりコスト低減を図っていく取り組みを進めてございます。加えまして、これからも全農の方では今回概算金を上げておりますので、そういうのを踏まえながら全体の把握、どのような経営状況になっているか把握しながら、必要な対策について検討していきたいと思います。

【斉藤委員】
 そこで、日本の対応というのは、欧米と比べるとまったく違っているんですよ。アメリカもEUも、まさに生産費、所得を補償しているんです。その上で物価高騰分を手当しているんです。アメリカの農業予算というのは、年間1000億ドル=約13兆円、このうち実に64%は低所得者向けの食料購入支援制度に使われている。農家から買い上げて、こういうところに提供していると。EUもそうです。ところが日本の場合には自己責任です基本的に。世界一農業を保護していない国が日本なんです。あなた方を批判することでは全くありません。自民党政治が世界一保護しない、こういうことになってしまった。
 もう1つだけ紹介しておくと、農業所得に占める政府の補助金というのは、スイスで93.5%、ドイツ77%、フランス64%、日本は30.2%です。そこで、いま食料・農業・農村基本法について議論がされていますけれども、食料自給率の目標が曖昧にされようとしている。掲げないという。財政制度審議会の提言は「食料安全保障の議論が、自給率の向上や備蓄強化に主眼が置かれることには疑問だ。国際分業・国際貿易のメリットや経済合理性を無視してまで国内生産を増大する必要があるのか」と。こんな方向で、食料自給率の目標も投げ捨てて、食料・農業・農村を守ることができるのか。このことについて部長にお聞きしましょう。今の基本計画、こういうことでいいのかと。食料自給率の目標を掲げて、それをやり切らなかったら、国内生産を拡大しなかったら、日本の農業も岩手の農業も成り立たないと思いますが、いかがですか。

【農林水産部長】
 食料自給率についてでございます。国が公表しております我が国の食料自給率、カロリーベースですけれども、令和4年で38%となってございます。本県は令和3年の数字で108%となっております。こういった中で、今時点での国の食料自給率の目標値については、令和12年で45%と承知してございますが、いま見直しが行われている食料・農業・農村基本法の中間とりまとめにおきましては、新たな基本計画で整備される課題に適した数値目標を設定するとされたところでございます。
 食料の安定供給の確保は、国の基本的な責務でありまして、食料供給の現場である地方と国が一体となって食料自給率を高めていくよう努めていくことが重要と考えてございます。
 県では、令和6年度政府予算案に対する要望におきまして、食料の安定供給の確保に向け、食料安全保障の強化が図られるよう要望したところであり、引き続き、国に対して基本法の見直しの動向を注視しながら、さらなる提言・要望を検討していくこととしてございます。

【斉藤委員】
 本当にこれは大変なことです。食料自給率の目標を投げ捨てたら、国内の生産拡大できませんから。

・知事選挙における落選した候補の発言について

【斉藤委員】
 「銀河のしずく」の問題が議論になりました。
 知事選挙のさなか、第一声で、「銀河のしずくの栽培条件を緩和して、全県で栽培できるようにする」と。私はこれを聞いてびっくりしました。農業を分かっているのかと。銀河のしずくの栽培条件、正確に言ってください。全県で栽培するなんていうことは、ブランド米も守れないし、大問題、暴論だと思いますが、正確に答えてください。

【水田農業課長】
 銀河のしずくの栽培条件でございますけれども、栽培適地、作付経営体の要件を設けているところでございます。
 栽培適地につきましては、田植えから収穫までの生育に必要な気温を確保できる(840℃)、高温のリスクが少ないところということで、奥州以南の標高120m以下のところは除くという条件がございます。
 作付経営体の要件でございますが、面積的な要件としまして、作付面積がおおむね30アール以上、一等米比率の過去2年間の平均が95%以上、栽培マニュアルを順守して品質の確保に取り組むこと―などを要件としてございます。

【斉藤委員】
 銀河のしずくが幸い特Aを続けて、ブランドを維持していることに敬意を表したいと。
 先ほどの答弁にもありましたけれども、令和5年度は4650ヘクタールに、ほぼ倍近くに伸ばしたということは素晴らしいことです。しかし全県どこでもできるものではない。栽培適地、そして経営体の技術、本当にこういうことを大事にしてきたから着実に銀河のしずくは生産拡大してきたのではないかと。
 引き続き岩手のブランドをしっかり磨いて、農家の所得に貢献できるように頑張っていただきたい。