2024年10月21日 決算特別委員会
商工労働観光部に対する質疑(大要)
・物価高騰と中小企業対策について
【斉藤委員】
物価高騰の状況ですけれども、消費者物価指数、企業物価指数、企業倒産件数はそれぞれどうなっているでしょうか。
【経営支援課総括課長】
まず、盛岡市消費者物価指数は、令和2年の年平均指数値を100としますと、令和5年は106.7、令和6年は1月時点で108.3、直近の8月時点で110.6となっています。
次に、国内企業物価指数は、令和2年の年平均指数値を100としますと、令和5年は119.9、令和6年は1月時点で120.3、直近の8月時点で123.0となっています。
それから、県内の企業倒産件数、東京商工リサーチ盛岡支店のデータによりますと、令和2年は42件、令和3年25件、令和4年47件、令和5年55件となっており、さらに、令和6年は、1月から9月までの9か月で55件となっております。
【斉藤委員】
大変厳しい状況にあると思います。
そこで、県が四半期ごとに実施している事業者影響調査、ここでの売り上げ減少、利益率の低下、価格転嫁率はどうなっているでしょうか。
【経営支援課総括課長】
エネルギー価格・物価高騰等に伴う事業者の影響調査は、標本調査で実施しておりますので回答の割合でお答えします。今年8月時点で行った調査結果によりますと、「エネルギー価格・物価高騰等による経営への影響が継続している」と回答した事業者のうち、「売上の減少」を影響にあげる事業者は33.6%、「利益率の低下」を影響に上げる事業者は62.4%となっております。
また、原材料費、人件費などの増加による販売・受注価格への「価格転嫁の状況」をお聞きしましたところ、「価格転嫁を実現した」は11.2%、「価格転嫁を一部実現した」は52.6%、「価格引上げの交渉中」は4.6%、「これから価格引上げの交渉を行う」は3.9%、「価格転嫁はしていない、もしくは価格変動の影響はない」は3.7%、「価格転嫁は実現していない」は16.4%となっております。
そして、「価格転嫁を一部実現した」と回答した事業者のうち、その「転嫁率」でございますが、10%未満は42.9%、10〜30%未満は35.8%、30〜50%未満は11.3%、50〜70%未満は6.3%、70〜100%未満は3.8%となっております。
【斉藤委員】
結局、売り上げが減少しているというのは、資材が上がっていますから、売り上げが上がっても元が取れないんですね。だから売り上げ減少というのはダブルの打撃を受けているということになると思います。そして利益率低下が62.4%と。価格転嫁を聞きましたが、価格転嫁を実現したというのは11.2%で、いま答弁あったように、一部実現したという中は、30%未満がほぼ8割です。だから一部転嫁といっても7割以上は転嫁できていないということですから、本当に厳しい状況にあると思います。
そこで、物価高騰による中小企業・小規模事業者の課題と県の対応策についてお聞きしたいと思います。
【経営支援課総括課長】
ただいまお話した影響調査において、「経営課題」についてもお聞きしております。その中で課題として挙げられた割合が高いものは、「原料・資材高騰への対応」54.8%、「価格転嫁」46.5%、「人材確保」46.5%、「賃金の引上げ42.8%、このような状況となっております。
従いまして、利益確保に苦しむなかで、人材確保などのために防衛的な賃上げを余儀なくされるなど県内中小企業を取り巻く経営環境は依然として厳しい状況にあると考えております。
これらの課題に対応するため、県としましては、国や商工指導団体と連携し、円滑な価格転嫁の促進に向けたパートナーシップ構築宣言の普及拡大に取り組むとともに、利益率の向上や効率的な業務運営、新たな顧客層の獲得といった小規模事業者の経営革新計画の策定、それによる生産性向上に向けた取組支援、そしてさらに「物価高騰賃上げ支援金」による賃上げ原資の補填、「中小企業者等賃上げ環境整備支援事業費補助」による持続的な賃上げのための生産性向上の取組支援、こういった直接的な支援等を展開しております。
【斉藤委員】
賃上げ支援については後でまた聞きますが、私はパートナーシップ構築宣言は良いと思うんだけれども、どのぐらい有効性があるものですか。
【経営支援課総括課長】
パートナーシップ構築宣言は、サプライチェーン間で、ウィンウィンの関係を築くという基本的な考えがございますので、価格転嫁をお互い適切に進めていきましょうという機運醸成、意識醸成のためには、非常に有効な取組と考えております。
【斉藤委員】
実は、例えばトヨタ自動車は5兆円の利益をあげたと。全国商工会議所会頭が「5兆円の利益のうち1兆円は下請け中小企業に回すべきだ」という異例の発言をしました。いわば、下請け中小企業に回さないで、賃上げもほんの一部です。ほとんど株主と内部留保です。ここも根本的に解決しないと、下請け中小企業というのは賃上げの原資が出てこない。そのことは全国的な問題ですから、県としてどのように取り組んでいくのか考えていただきたい。
そこで、いまゼロゼロ融資の実績、返済の状況、条件変更等の伴奏的支援の状況について示してください。
【経営支援課総括課長】
令和2年5月から3年5月末まで取り扱われた新型コロナウイルス感染症対応資金、いわゆるゼロゼロ融資の融資実績は、12,110件、1,944億790万円余となっております。
次に、この資金の令和6年8月末時点の件数残高は、貸付残高を有する件数7,115件、貸付残高は775億2,181万円余となっております。
次に、この資金の返済状況ですが、令和6年8月末までに約定返済が開始されたものは6,658件、687億9,586万円余でございます。令和6年9月以降に約定返済開始予定のものは、457件、87億2,595万円余となっております。
続きまして、ゼロゼロ融資の返済開始に伴う借換需要に対応するため、国の保証制度の改正に合わせて令和5年1月10日から県の貸付要件を緩和した新型コロナウイルス感染症対策資金の伴走支援資金については、要件緩和以降の保証承諾実績が今年8月末時点で2,927件、748億1,691万円余、このうち借換需要に対応したものは、2,092件、442億2,566万円余となっております。
最後に、これら感染症関連の融資に係る条件変更、据置期間や最終期限の延長等の状況は今年8月末時点で、対応資金は512件、69億9,055万円余、対策資金は147件、43億2,182万円余となっております。
【斉藤委員】
いままさにこのゼロゼロ融資の返済がピークを迎えているといってもいいと思います。厳しい物価高騰が続いている中で、この伴奏的支援を強めていただきたい。1社たりとも倒産させないというぐらいの気持ちでやっていただきたい。
そこで、先ほど55件の倒産件数だったという答弁がありました。このうち社会保険料滞納による倒産の状況を示してください。
【経営支援課総括課長】
東京商工リサーチ盛岡支店によりますと、令和6年1月から9月までの県内企業の倒産件数は55件あり、このうち、倒産企業に関するコメントに「社会保険料等の滞納」の記載があったものは8件と承知しております。
【斉藤委員】
55件のうち8件というのは14%です。いわば社保倒産というのが大きな問題になっていて、県内で2番目の中央タクシーも社会保険料滞納で、タクシーを差し押さえされて倒産したんですよ。そのときに、実は銀行と返済の相談をしていたさなかでした。そのときに乗り込んできて差し押さえして倒産したと。
実はこれだけにとどまらないんです。党県議団として一関の民主商工会から話を聞いてまいりました。これは年金事務所がやっているのですが、「『コロナは終わった。納付できないのは事業者の責任』などと言い放ち、去年の4月頃から強権的な徴収を行うようになりました。そして夏頃からは、業者に対する差し押さえを連発するようになり、複数の業者が廃業に追い込まれました。この事態を重く見て、民商は年金事務所と21回にわたって交渉し、業者の実情を鑑み、すぐに差し押さえすることは避けるように求めてきました」と。先ほど倒産8件といったけれども、廃業に追い込まれたのはもっと多いと思います。本当にいま税務署より社会保険庁の方がひどいと。こうした実態をどのように把握されているでしょうか。
【経営支援課総括課長】
社会保険料の滞納関連の事案については、いわて中小企業事業継続支援センター会議の場でも金融機関から情報提供があります。具体的には、コロナ禍に設けられた最長3年の納付猶予の特例措置が順次終了し、猶予期間中に業績を立て直すことができなかった企業が、不動産や事業用資産を差し押さえられ倒産に至ったケースなどが報告されており、なかなか対応が難しい案件だということは、関係者間での認識が一致しているところです。
【斉藤委員】
これは国会でも取り上げられました。鈴木財務大臣(当時)は、社会保険庁も国税の徴収に準じてやるんですよ。そうすると、最長で4年間猶予することが認められていると。ところが1年で差し押さえするということをやっていますから、これはぜひ金融機関その他と一緒になって、あまりにもひどいことはきちんと抗議するということをやっていただきたい。
・賃上げ支援金について
【斉藤委員】
全国に先駆けて中小企業に直接支援をしたというのは素晴らしい取り組みです。直近の実績を示してください。
【労働課長】
令和6年10月10日時点の実績でございます。申請件数は、2,653件、人数にしますと18,766人、金額としますと9億3,830万円です。
支給実績のほうは、2,502件、人数は17,646人、金額にしますと8億8,230万円となっております。
順次、支給に努めているところでございます。
【斉藤委員】
一般質問の答弁でも、2000件を予定していたけれども、今の答弁だと2653件と予想を上回る申請があったという非常に大きな成果だったと。特に20人以下の中小企業・小規模企業で実に70%を占めるんですよ。本当に零細な企業がこれを頼りにして賃上げをしたということは大変重要だと。建設業が一番多くて20.5%、製造業が16.5%、卸・小売業が15.6%、医療・福祉が13.3%となっておりました。
先ほども議論がありましたが、2600件超えたのはいいんだけれども、9億円の支払い予定ですので、21億円の事業で事務費もありますからおそらく10億円弱は残るんだと思います。旅行割引のときには延長したじゃないですか。ああいう取り組みができないのかと。そのように国との協議というのは、返還などというのはもったいない話で、これだけ良い事業は延長して実施するとか、そういうことはできないのか。
【労働課長】
先ほども答弁申し上げたとおり、繰越という性質もあって予算上の壁があるということもありますが、県内の中小企業を取り巻く状況の厳しさは重々承知しております。
そういう中で、今回最低賃金が大幅に引き上げられた状況や、それから、支援金の実施状況、そういうことも踏まえて、消費の拡大と賃金の上昇の好循環を生み出すために、大胆な経済政策、これを国にしっかりと働きかけて、今後の対応をトータルで検討していきたいと思っています。
【斉藤委員】
これは国がやらなきゃだめです。中央審議会が50円引き上げると言って、県はそれに上乗せ9円やっただけですから、本当に国が何の対策もとらずに50円上げろということ自身が矛盾していると。
そして先ほど答弁あったように、今回上げたところも防衛的賃上げなんです。財源があってやっているわけではないと。だからこうした中小企業に対する直接支援なしに賃上げはできないと思います。
日本共産党は、この11年間で大企業が内部留保を200兆円を増やした、この200兆円に5年間で年2%をかけて10兆円の財源を確保して、全部中小企業にまわすという提案をしています。財源を示して賃上げを提案しているのはおそらく共産党だけだと思います。そういう点で、本当に国の責任が問われている。
同時に、岩手県が全国に先駆けてやったのだから、これは「検討する」と言っていましたが、ぜひ継続・拡充をしていただきたい。
【商工労働観光部長】
一つ補足ですが、国への返還にはならない予定で、交付金を活用した部分は21億円の半分程度で、あとは一般財源を使っていますので、交付金はほぼ使い切る見込みでございます。
そのうえで、答弁の繰り返しにはなりますが、中小企業が大変な状況にございますので、そこをしっかりと早急に対策を講じられるように検討して参りますのでよろしくお願いいたします。
【斉藤委員】
国の経済対策も指示されて検討されていると思いますから、同時並行で、国が打ち出したらすぐ予算化して、少なくとも12月議会には提案するというテンポでやっていただきたい。全国に先駆けて第二弾もやると。そのことを強く求めて私の質問を終わります。