2014年1月15日 商工文教委員会
いじめ問題に関する質疑大要
【斉藤委員】
12月10日に公表された内容について報告があった。
特にいじめの対応で、「ひどくぶつかられたり叩かれたり蹴られたりする」「金品をたかられる」「金品を隠される」「嫌なことや恥ずかしいことや危険なことをされたりさせられたりする」と。本当に命にかかわる凶悪な件数が573件17.9%を占めた。ここにかなり深刻な実態が示されたのではないか。去年が351件なので、去年を超えるような深刻な事態が今回の調査で出た。本当にここを真剣に受け止め、そして本格的な取り組みをしなければ大変なことになると思う。
教育委員会議では、この実態をどう受け止め、どういう議論がされたのか。今後教育委員会としてはどういう方針で取り組もうとしているか。
【教育長】
12月10日に公表された。実はそれ以前に、国から内報があったので、いち早くまず教育委員の方々にこの状況をご説明する必要があるということで、12月だった思うが、教育委員協議会が直近で開催されたので、まずはその場で報告した。それにたいし委員の方から、かなり深刻な問題であるということ、率直に言うと驚きのお話があった。大津の事件との関連でのお話もあった。さらに、増えた理由や具体的な1つ1つの事案についての対応、学校として現在どのように取り組んでいるのか、現在もいじめが継続して深刻な事案になっているのがあるのかないのかということ、それに対して教育委員会としてどう対応すべきか、特に昨年度からいじめに関する緊急的な研修会を実施しているので、その研修会の実施状況、それに向けての研修会の教員の評価が議論になり、いずれ教育委員会をあげて今後ともいじめの根絶に向けて取り組んでいかなければならないとの議論がなされた。
【斉藤委員】
件数からいっても、これまで調査以来最高で、中身からいっても凶悪ないじめが去年の報告件数を超えるような、17%を占めると。二重三重に今回の事態を深刻に受け止める必要があると思う。そういう点で、1つは教育委員会議、教育委員会事務局全体で取り組んでいただきたい。やはりそういう認識が出発点にならないと、問題があるところでやればいいということでは済まない。どの学校でこういういじめが起きてもおかしくない状況なので、その点では、せっかく皆さんが研修会をやってきたので、すべての学校でやるべきではないかと。教職員全体がいじめの問題について一致して取り組むという認識と体制が必要ではないか。先ほどの報告を聞くと、教職員間で共通理解を図ったというのは613校で95.2%、しかし校内研修を実施したのは277校で43%にとどまっている。ここに認識のずれがあるのではないか。これだけ全国的な社会問題・教育問題になったときに、そういう岩手県の調査からいっても、この問題を子どもの命に関わる、人権に関わる問題として、そして緊急課題として取り組むということが大事である。その認識のずれはなぜなのか、きちんと、毎年こういう研修はやられるべきである。全国の事例もいろいろ聞いているが、そういう形骸化せず、毎年やることが教員の認識、子どもたちとの信頼関係をつくる上で大事だと思うがいかがか。
【生徒指導課長】
いじめの問題に関する校内研修を実施したというのは、24年度の新規の質問項目であり、それが277校で全体の43%という数字はこの通りである。これは、指導主事を招へいしたり外部講師を招へいしながらの研修会という位置づけもあると思うので、いずれかなりの時間をとっての研修会というだったと思う。これについては元々増やしていかなければならないところだと思う。
一方で、職員会議等を通じて、いじめ問題について教職員間で共通理解を図ったというものが95%ということで、例えば、今年度も4月5月6月と校長会議や生徒指導主事を集めての研修会などをやり、それの全校的なものは、ここに含まれているものではないかと感じている。いずれ毎月の職員会議や時間をとっての会議で、いじめに関しての共通理解を図る時間は必ず設けていると思うので、あわせていじめの研修会も含めて、もっとそういう取り組みを進めていかなければならないと思っている。
【斉藤委員】
いずれにしても校長先生の間に認識のずれがあると思う。これだけ深刻な実態と教育行政上、学校運営上、最重要緊急課題という位置づけで取り組んでいないと思う。職員会議でテーマにすることは当然、でもこれはいろんな課題がある中で、やらないよりはやった方がいいが、それをもって学校全体として取り組むという風にはならないと思うので、毎年すべての学校でいじめの問題についてはしっかり研修に取り組んで、何か起こったら教職員全体ですぐ対応できる体制・対応策まで意思統一をすることが必要ではないか。
いじめの対応件数の把握だが、教職員が発見したものが1645件で72%と。ただ、リアルに見ると、アンケート調査など学校での取り組みにより発見というのが1395件61%と。いわば子どもの自主申告である。学校の取り組みではあるがこれが実態だと思うので。そういう意味でいくと、子どもたちから絶えずそういう形で情報を機敏に努めるような体制が必要だと。実際に、担任の先生が見つけた、その他の教職員が見つけたというのは10%程度である。見つけにくいという側面と、多忙化で余裕がないという理由があると思う。やはり子どもの自主申告が61%なので、こういう子どもたちを信頼したアンケートの取り組み、先ほどは年間4回やっているところもあると紹介されたが、適切な形で子どもたちの率直な自主申告がされるような関係をつくっていくことは大変大事なことではないか。
【生徒指導課長】
委員ご指摘の部分のその通りあると思う。ただ、例年とここがなぜ大きく違ったのかということについては、やはり我々も注目していきたいと思うし、今までもアンケートについては、各学校で必ずやってくださいという通知を出しており、必ずしもそれが100%になっていなかったという風な状況もあった。今回の調査では明らかにそれは100%になっているということもあったし、子どもの声を素直に聞けるようにというご指摘もあったが、そのためのアンケートの質問項目の工夫の部分とか、単にいじめに特化するわけではなく、何か悩みがないかなど学校生活アンケート的なものの中で子どもたちの声を拾い上げた部分もあったのではないかと感じている。
いずれここについては、この前の教育委員の会議でも、数字だけではなく中身についてもしっかりと未然防止や今後の対応のために伝えるようにという指示もあったので、そこは今後さまざまな機会に、アンケートのことも含めて伝えていかなければならないものと思っている。
【斉藤委員】
これだけいじめが激増した深刻化した背景というのも大事だと思う。子どもたちをめぐる教育の状況、社会の状況が激変していると思う。
何度も取り上げているが、国連子どもの権利委員会が何を日本の教育の問題として一番指摘しているかというと、競争主義的な教育である。それが子どもたちを苦しめている、精神が脅かされているというところまで指摘している。そういうことをしっかり受け止める必要があるのではないか。学力テスト体制というのも考えていかなくてはならない。
なぜいじめが激増しているのか、なぜ子どもたちを苦しめているのか。いじめる側にはいじめるだけの理由、ストレスがある。いじめられる子どもたちの命と人権を守るのは最優先だが、いじめる側の問題も解決していかないといけない。教育上からいけば、テストづけで絶えず比べられる、そういう問題がもっとも大きな要因にあるのではないか。
もう1つは、弱肉強食の大人社会である。大人社会自身が成果主義・競争主義になっているということが大きな要因で、だから、学校というのはこういう2つの歪みから子どもたちを守る役割があるのだと思う。子どもたちの成長を阻害している、歪めているところから最大限子どもたちを守り、学力や人間的な成長を最大限支えるというのが役割としてあると思う。
激増した理由や要因をどう考えているか。
【生徒指導課長】
世の中のさまざまな影響というのは、先ほど述べたように、いじめの報道の部分を含めて、そういう中での子どもの感じ方、とらえる側の教員の感じ方というものについても、より敏感になったということもあると思う。
あとは、子どもたちの中でさまざまなトラブルが発生する部分については、当然何もないということはないわけなので、そういうトラブルの解決の仕方ということについても、なかなか子どもたち自身の中でできない、それがより深刻ないじめに発展したという状況も出てきているのではないかととらえている。
【斉藤委員】
教育委員長とも議会ではよく議論しているが、国連子どもの権利委員会の勧告は4年ごとに3回行われている。3回とも共通してこの問題が指摘され勧告されている。子どもの権利条約というのは、日本の法律に優先するものである。そういう意味では、子どもの権利条約に基づく日本政府に対する勧告というのを、教育委員会自身がしっかり受け止めて、県教委としても子どもの権利を守る取り組みに役立てる必要があるのではないか。ぜひ教育委員会議でも時間をとって、きちんと議論して、岩手の教育に生かすべきではないか。
子どもの力、学校の力でいじめ問題を打開していくというのは一番の解決の道だと思う。そういう点で、いじめのない学校が良い学校ではなく、日常的にそういうことに子どもたち自身を主役に取り組んで、そういう学校をきちんと紹介していくと。上意下達にならず。やはり現場で頑張っている学校は少なからずあるので。県教委自身がリアリズムで掴んでやるべきである。
【教育長】
いじめの問題はどの学校でも起こり得る喫緊の課題だということは、委員長がそれぞれの学校、子どもたちに対するメッセージの中で述べている。教育委員会としても、子どもたちを取り巻く環境が多様化してきている中で、学校がどう子どもたちを育てていくべきかということはいろんな大きな課題だと思っている。先般の議会でも委員長といろいろご議論いただいたが、全国学長の話も含め、前回の教育委員会議でも委員からご指摘の合った点、委員長の答弁をめぐって各委員からもいろんなお話があった。そういった点、常々教育委員会を取り巻く環境が変化しており、常にそういったいろんな意見に耳を傾けながら教育委員会としていろいろ議論させていただき、子どもたちにとってより良い環境をつくるよう努力していきたい。
【作山次長】
各学校による主体的な取り組み、まさにその通りである。各学校でいじめ問題を学校経営の基軸に据えてなくそうとする努力と、起きたときにはいかにして組織的に素早く対処するかという2つをキーワードにして取り組んでいく必要があるのではないかと思う。
ただ、いじめがいろんな状況で出てきている、いじめの難しいところは、いじめられたという子どもと、いじめているという子どもとの関係性の中で、そこまで入り込んで解決しなければならないということである。したがい、各学校でその通り起きたことをただなくそうとするだけでなくなりは絶対にしない。やまあらしのジレンマの中で人間関係のトラブルなので、小学校1年生から子ども同士の悪口を言い合ったり、そっと触れあったりしながら、教員が入ったり子どもたち同士でやってきてと、人間関係の練習の場でもある。それを教員がいかにしてアンテナを高くしながらそこに入っていくということが大事なのではないかと思っている。
あえて言わせていただくと、非常に荒れている学校なり荒んでいる学校があるのかもしれないが、それがもし委員のおっしゃる通りであれば、競争主義なりが変わらなければ、学校から問題が消えていかないかというと、そういうことはないと思う。たしかに、一般的にそうした競争社会だとか一般論としてはあるかもしれないが、各学校で主体的に取り組むときには違った見方があるのではないか。ある程度の競争、切磋琢磨も必要かもしれない。ある程度のヤマアラシのジレンマという中での人間関係の練習も必要かもしれない。しかし、いじめられたという子どもをつくってはならないという気持ちで取り組まなければならないと思う。
【斉藤委員】
次長の答弁は少しずれがあるので指摘しておきたい。
全国的に、岩手県でも、これだけ深刻ないじめが出ている背景に何があるかと。子どもをめぐる教育上の問題、社会の歪みと2つの問題を指摘した。その教員の歪みというのは、世界の流れから見たら10年来指摘されている、世界の常識から見たら日本の教育は異常と言われている問題である。その子どもをめぐる歪み、教育の歪みというのと、社会の歪みというものを、大きな2つの問題というのをしっかりとらえて、だからそういう歪みから子どもを守る学校でなくてはならないという問題を提起した。
具体的ないじめの問題がイコールそうではない。具体的ないじめの問題は、その子どもの家庭から友達関係からいろんな具体的な要因で発生する。背景の問題と具体的な問題は違う。そこに普遍的な関係はあったとしても、直接それがすべて理由になるということではない。あまり単純に考えず、全体的な背景・問題と、個別のいじめの原因・要因は分けてしっかり取り組むのは当然である。
私が一番強調したのは、子どもが主役で乗り切るのが一番大事だと。いじめを許さない子どもの人権感覚、教室、学校がめざす取り組みである。この問題は、毎年学年が変わっていったりする中で、単純には継承されない。だから毎年粘り強い取り組みをしないとすぐ形骸化してしまうということなので。
大変切実で重大な問題なので繰り返すが、教育委員会でも学校長の間でも本当にそういう点で認識を一致させて、重要最優先課題ということで取り組んでいただきたい。