2014年2月28日 2月定例県議会・本会議
一般質問(大要)


【斉藤議員】
 私は、日本共産党を代表して、達増知事に質問します。
 東日本大震災津波から3年がたとうとしています。今、被災地では高台移転や区画整理事業によるかさ上げ工事など、大型ダンプが行き交い、復興事業のつち音が聞こえるようになりました。しかし、4畳半二間の応急仮設住宅には、1月末現在で11772戸、戸数ではピーク時の88.9%、25942人が生活しています。みなし仮設住宅を含めると14701戸、33699人が生活しています。災害公営住宅の入居者は277戸、519人にとどまっています。東日本大震災津波からの復興は、県政最大の課題であり、国政の最優先課題であります。また、復興の最優先課題は被災者の生活再建であります。

1、被災者のいのちと健康・くらしを守る課題について

 大震災津波から3年が経過し、被災者は狭く、寒い仮設住宅で大雪も重なり、ストレスをため「心の不安」を募らせ、「我慢の限界」に直面しています。県南の被災地で1月末、津波で夫を亡くした女性が、高台移転が決まっていたにもかかわらず自ら命を絶つという痛ましい事件がありました。被災者のいのちと健康を守ることは最も切実な緊急課題であります。 
 県は来年度予算に5億4千万円余を計上し、被災者の医療費・介護保険利用料等の免除措置を12月末まで継続することを示したことは、被災者の願いにこたえるものでした。私は、被災者が基本的に住宅を確保し自立するまでの間、この免除措置を継続すべきと考えますがいかがでしょうか。国は、国保の医療費の増額に対して特別調整交付金の増額を決めました。県内ではどれだけの増額となるでしょうか。国の免除措置の動向、宮城・福島の動向をどう把握しているでしょうか。
 今年の灯油価格は史上最高値となりました。県は3年連続で被災地福祉灯油を実施ました。福祉灯油を実施した市町村とその対象者数、被災者支援福祉灯油を実施した市町村とその対象者数はどうなるでしょうか。これからでも内陸に住民票を移した被災者を含めた福祉灯油を実施すべきではないでしょうか。
 今年から来年にかけて、被災者の災害公営住宅や高台移転等への移動が大規模に実施されます。格差も取り残された気持ちも募ります。これまで以上に、被災者一人一人に寄り添った見守りや支援が求められますが、具体的にどういう対策が講じられるのでしょうか。

【達増知事】
 医療費・介護保険料の免除措置について。多くの被災者がいまだ応急仮設住宅等で不自由な生活を余儀なくされ、健康面や経済面で多くの不安を抱えており、引き続き医療や介護サービス等を受ける機会の確保に努める必要があることから、平成26年12月まで県内統一した財政支援を継続することとしたところであり、平成27年1月以降については、被災地の生活環境や被災者の受療状況等も勘案し、市町村等との協議を行いながら、改めて判断したい。
 国の特別調整交付金の増額だが、昨年末国が公表した市町村国保に対する新たな財政支援は、東日本大震災津波で財政状況が悪化した岩手・宮城・福島の市町村国保について、平成25年度から3年間市町村国保にたいする国の特別調整交付金が追加交付されるものである。具体的には、医療費の一部負担金免除に対する直接的なものではなく、医療費の増加にともなう医療給付費の負担増および前期高齢者交付金の減少にともなう財政負担増にたいする財政支援だが、市町村国保にたいする交付額の増額分を平成24年度の実績から粗い試算を行った結果、約8億円と推計される。
 一部負担金等の免除措置の動向だが、国は免除に要した費用を全額補てんする特別な財政支援を平成24年9月末をもって終了し、それ以降は既存の特別調整交付金の仕組みに変更しており、特別な財政支援措置は行わないものと聞いている。宮城県の国保については、平成25年3月末をもって免除措置を終了したが、昨年末に公表された市町村国保に対する国の新たな財政支援を契機として、すべての市町村が免除対象者を住家が大規模半壊以上の市町村民税非課税世帯に限定した上で、本年4月から免除措置を再開する予定と聞いている。福島県の国保については、原発による避難指示等対象地域における免除措置のほか、現在3市町で本年3月まで免除措置を継続しているが、4月以降の実施については、現在県が各市町村の意向を確認中と聞いている。
【保健福祉部長】
 福祉灯油等について。県の被災地福祉灯油等特別助成事業費補助を活用して福祉灯油を実施したのは沿岸部の12市町村で、助成見込み世帯数は、19343世帯となっている。この他、内陸部では、3町村(葛巻町・軽米町・九戸村)が独自に、約1600世帯を対象に実施していると聞いている。被災者への灯油購入費等の支援については、8市町村(北上市・釜石市・二戸市・奥州市・葛巻町・金ヶ崎町・普代村・野田村)が独自に、約1500世帯を対象に実施していると聞いている。また、内陸に住民票を移した被災者については、事業対象となる要件を満たし、かつ実施主体である沿岸市町村が助成対象とした場合は、本補助事業の対象としている。
 被災者の見守りや支援について。生活支援相談員を社会福祉協議会に継続して配置し、被災世帯の見守りや相談支援活動を行うほか、応急仮設住宅団地等に設置する高齢者等サポート拠点による総合相談や介護予防教室等を引き続き実施する。応急仮設住宅からの転居等による被災者の生活の変化や、長引く応急仮設住宅生活からのストレス等により、求められる相談支援内容は多様化し、専門的な知識が必要な相談ケースもあることから、相談員の資質向上のための研修などにも取り組んでいく。また、市町村が行う災害公営住宅等入居者の相談や見守り等にたいし補助する「復興住宅ライフサポート事業」についても、市町村向け研修会を開催するなど、充実に努めていく。


2、住宅再建への支援、住宅の二重ローン問題の解消について

【斉藤議員】
 被災者の住宅再建への支援を強化することは最も切実な課題です。持ち家再建への県と市町村による100万円の補助、被災市町村による100万円から300万円への上乗せ補助、住宅ローンの利子補給などによって、持ち家再建の希望が増加しているところもありますが、時間の経過とともに被災地での持ち家再建をあきらめる方も出ています。県としてどう把握しているでしょうか。災害公営住宅の1戸当たりの建設費は約1650万円、造成費用を含めると1800万円におよぶことから、持ち家再建に国はもとより県、市町村もさらに100〜200万円以上の支援を強化することは、被災者にとっても、費用対効果、今後の維持管理費にとっても大きな力になると考えますがいかがでしょうか。
 住宅再建の大きな障害となっているのが、津波で流出した住宅のローン問題です。この間、私的整理ガイドライン運営委員会への県内の申請は、1月末現在で911件に対し、債務整理開始申し出件数が115件、債務整理件数が202件、合計317件、32%にとどまっています。申請の3分の2以上が排除されていることは重大であります。全国的には1万件の利用が見込まれていましたが、債務整理の申し出・成立件数は1238件にとどまっています。大きく立ち遅れている具体的な要因・課題は何でしょうか。国、ガイドライン運営委員会、金融機関等への強力な働きかけが必要ですが、この間、具体的にどう取り組んできたのでしょうか。

【達増知事】
 被災者生活再建支援金の受給状況をもとに、持ち家再建の状況を見ると、平成26年1月末現在、4087世帯が持ち家再建にかかる加算支援金を受給しており、前年同月に比べ1600世帯増加している。
 県では、今後持ち家再建が本格化するものと考えているが、土地区画整理事業などの面的整備の完了には時間を要することが見込まれることから、今般本県独自の被災者住宅再建支援事業の実施期間を平成30年度まで2年間延長することとした。
 持ち家再建に対する支援額の増額については、県としては今回の大震災のような広域災害においては、本来国において住宅再建が十分に図られるよう制度設計を行うべきと考えており、被災者生活再建支援制度の支援額の増額と、震災復興特別交付税などの地方財政措置による支援の拡大を引き続き国に対して強く要望していく。
【復興局副局長】
 個人版私的整理ガイドラインに基づく債務整理が進まない原因については、被災者に制度の内容が十分に伝わっていないことに加え、一定額の収入や資産があることにより、返済が可能と判断されるケースや、震災前に滞納があったことにより、制度利用対象外と判断されるケース等、利用要件が厳しいことも原因と聞いている。
 このため県では、ガイドラインの目的や内容について、被災者への周知に努めてきたほか、岩手弁護士会等関係機関と連携し、被災者向けの無料相談会を各地で開催してきたところである。
 また、被災者の債務整理を確実に促進するためには、制度の運用の見直しにとどまらず、法整備を含む新たな仕組みを構築していくことが重要であり、昨年11月の復興庁・金融庁への要望も含め、繰り返し要望してきたところである。
 今後とも、金融機関等、関係機関との緊密な連携のもと、ガイドラインの利用促進に向けた周知とあわせ、あらゆる機会をとらえて国にたいし、個人の二重債務解消に向けた支援について要望していく。


3、被災者の希望を踏まえた災害公営住宅の建設を

【斉藤議員】
 災害公営住宅の建設は、ロードマップが発表されるたびに完成時期が遅れるという事態となり、来年度中に完成する見込みは累計でも2128戸、計画戸数の35%にとどまります。被災者の入居希望をみると、町中心部の公営住宅に希望が集中し、特に県が建設する集合住宅への希望は整備戸数を下回る状況となっています。最大限被災者の希望に沿って建設場所や建設戸数、戸建て・長屋形式の木造住宅に見直すべきと考えますがいかがでしょうか。また、新たな復興住宅のコミュニティの確立に特別の努力を払うべきですがどうなっているでしょうか。

【県土整備部長】
 県では、災害公営住宅をより早く、十分な戸数を建設することを重視し、早期に建設可能な土地に集合住宅形式を中心に整備することとし、建設場所や建設戸数等について市町村と調整をしながら建設してきた。
 現在、災害公営住宅で空き住戸が発生している要因としては、自力での住宅再建か災害公営住宅への入居かを決めかねている被災者がいること、利便性等の条件がより良い団地の入居募集を待っている被災者がいること、応急仮設住宅等に住んでいる間は家賃が発生しないこと―といったことが考えられるが、随時募集に切り替えるとともに、被災者への周知を行うなど、引き続き入居の促進に努めていく。
 建設戸数については、意向調査をもとに市町村と協議のうえ、必要な見直しを行っていく。
 災害公営住宅におけるコミュニティの確立については、グループ入居や地域住民を特定しての入居を行っていること、通常の公営住宅と比較し広い集会所を確保していること―などの取り組みを進めているところであり、今後も市町村と連携しながら、災害公営住宅におけるコミュニティの確立に取り組んでいく。


4、産業の再生と安定した雇用の確保について

【斉藤議員】
 被災者の生活再建の土台は、安定した雇用の確保です。1月にハローワーク大船渡の所長さんから雇用状況について聞いてきました。大船渡管内は、有効求人倍率が12月末で1.9倍と県内最高となっていますが、実態は、震災前と比べて建設関係で雇用保険の被保険者者数が1000人増、一方で製造業は1000人減となっていました。復興需要で求人倍率は上昇していますが、水産加工業など地場産業が回復していないというのが実態です。被災市町村の商工会議所・商工会の今年2月の調査では、被災事業所4341社に対し、営業継続・再開が3229、74.4%となっています。仮設店舗等での営業再開が359カ所1804区画・店舗となっています。水産加工事業所、仮設店舗等の営業と本設への支援を強化すべきと考えますが、状況をどう把握し、支援を強化する計画でしょうか。地場産業の雇用確保はどうなっているでしょうか。
 がれき処理の事業が3月末でほぼ完了します。1300人の雇用の継続と再就職が求められています。来年度の緊急雇用創出事業も1330人余減少します。合わせると2630人余の新たな雇用確保が必要ですが、この対策はどうなっているでしょうか。
 被災地では、そもそも働き手が不足しています。Uターン・Iターンして復興に取り組みたいと思っても住む場所がありません。復興庁はやっと2月1日、被災地に応急仮設住宅の目的外使用を認めるとしました。被災地に来て働きたいと願う人達が1日も早く応急仮設住宅を活用できるようにすべきと思いますが、時期を含めて県の対応はどうなっているでしょうか。

【商工労働観光部長】
 水産加工業を取り巻く状況については、震災前の売上水準と比べ、いまだ回復していない事業者も多く、依然として厳しいものと認識している。この課題解決には、売り上げに直結する販路開拓や取引拡大に向けた支援が特に重要と認識しており、商品開発をはじめ、商談会・フェア出展など、被災事業者のニーズに応じたきめ細やかな支援を継続することが必要と考えている。
 仮設店舗については、岩手県産業復興相談センターの昨年10月の調査では、調査事業所482のうち約6割が震災前に比べて売り上げが減少したと答えており、経営力や集客力の向上が重要と考えている。そのため、専門家による販路活動の指導やイベントへの助成を通じて、にぎわいの創出を支援するとともに、本格再開に向けてグループ補助金が活用できるよう、計画づくりを支援していく。
 雇用の確保については、地場産業の労働力確保が重要と考え、特に水産加工業は、年度当初から事業者や関係機関と意見交換を実施し、住居の確保や工場見学会・面接会によるマッチング支援などに取り組んできたところである。今後も、岩手労働局をはじめ関係機関と連携しながら、地場産業の雇用の確保が着実に進むよう対応していく。
 緊急雇用創出事業等からの離職者の雇用確保についてだが、緊急雇用創出事業の規模縮小と災害廃棄物処理業務の年度内終了にともない、これらの事業に従事している方々を対象としたアンケート調査を実施し、その結果を踏まえ、平成25年10月から再就職支援に取り組んできた。具体的には、ハローワークや市町村と連携し、緊急雇用創出事業や災害廃棄物処理事業による雇用者への求人情報の提供や、就職説明会、相談会を実施するほか、就職面接会を開催するなど、再就職の支援に努めてきた。こうしたマッチング支援の取り組みを進めるとともに、平成26年度は、産業振興施策や事業復興型雇用創出事業の活用などにより、約5160人の雇用を創出することとしており、離職者の安定的な雇用の確保に取り組んでいく。
【復興局副局長】
 仮設住宅の目的外使用について。現在県では、県内外からの住み替えを行う被災者からの入居が見込まれるなど、応急仮設住宅としての活用を継続しようとしている場合で、入居を希望する被災者が現れるまでの期間に限り、本来の応急仮設住宅の供与の妨げにならない範囲で一時的な入居が可能となるよう、市町村に対する財産の目的外使用許可を行う方向で検討を進めている。
 具体的には、市町村においてそれぞれの実情に応じて、地元に戻りたいが実家が被災し住む家がない方、被災地で就職し定住を希望するが住む家がない方、漁業集落防災機能強化事業などの面的整備等のまちづくり事業で一時的な転居を必要とする方―などを対象とするほか、期間は原則として1年を超えない範囲とし、使用料については、応急仮設住宅の間取り等に応じた適正な金額を徴収する方向で検討している。
 運用開始時期については、市町村における予算措置の問題もあるので、できるだけ早く市町村が対応できるよう運用方法を示したいと考えている。


5、住民の参画と合意に基づくまちづくり事業の推進について

【斉藤議員】
 被災地12市町村では、120地区で8513区画の宅地造成をめざすまちづくり事業が取り組まれ、57地区6302区画で着工しています。しかし、私が調査した大船渡市では、防災集団移転事業の希望者は、1年間で630世帯から392世帯に238世帯、26%も減少していました。時間の経過とともに被災者の希望・気持ちは揺れ動いています。それだけに被災者が中心となってどういう町づくりを進めるかが特別に重要な段階です。知事は、復興の取り組みへの住民の「参画」を強調しています。まちづくりアドバイザーの派遣を含め、町づくり事業への地域住民の「参画と合意づくり」を具体的に進めるべきと考えますがいかがでしょうか。
 まちづくり事業にとって、用地確保が大きな課題です。県と弁護士会で検討した用地確保の特例措置について、この間の県の対応と国の動向、各政党と国会の動向、東北3県の共同の取り組みはどうなっているでしょうか。

【達増知事】
 東日本大震災津波からの復興の取り組みについては、県・市町村ともに初期の段階から住民参加による計画づくりに努めてきた。特に、土地区画整理事業や防災集団移転促進事業などの面的整備事業については、被災者の生活再建に直結するとともに、将来の町の姿を形づくるものであることから、市町村ではそれぞれの地域の実情に即した手法により、地域住民の参画を得ながら合意形成を図り、事業を進めている。県では、平成24年度に復興まちづくり活動等支援制度を創設し、市町村が進める面的整備事業とあわせて、住民等が自ら行うまちづくり活動を支援しており、今後復興事業の本格化にともない、まちづくりアドバイザー派遣のニーズも高まるものと考えている。
 今後とも、時間の経過にともなう被災者の意向の変化に対応して、住民の合意形成のもとで計画を見直し、住民や被災者の希望に沿ったまちづくりや住宅再建が実現できるよう市町村を支援していく。
【復興局副局長】
 用地確保の特例措置について。昨年11月に国に用地確保にかかる特例制度創設の要望を行ったが、国においても、復興を進める上で事業用地の円滑かつ迅速な取得が重要な課題であるということを改めて認識いただいた。
 現在、要望の際に国から課題として示された憲法上の懸念への補足説明を行うとともに、具体の用地取得困難事例を示しながら、協議を進めている。
 各政党に対しては、これまで特例制度の創設について要望・説明を行ってきたところであり、その後、県選出の国会議員などを通じてさまざまな助言や支援をいただきながら制度の実現に取り組んでいる。
 また宮城県と福島県との間では、事業用地の円滑かつ迅速な取得が復興の重要課題であるという共通認識のもと、今後の連携した取り組みを含めて協議を進めている。


6、JR山田線・大船渡線の早期復旧について

【斉藤議員】
 JR東日本は、大震災津波から3年が経過しようとしている1月31日になって、突然JR山田線について三陸鉄道への経営移管案を出してきました。2月11日には、そのための条件についても示しましたが、その本質は大震災に乗じて赤字路線を切り捨てようとするものではないでしょうか。結局は、自治体と地域住民に将来にわたって負担を押し付けるものではないでしょうか。JR東日本は、昨年3月期末決算で、経常利益で3174億円、内部留保で2兆4690憶円をため込んでいる超優良企業です。公共交通機関の使命からみてもJR山田線の切り捨ては許されないものと考えますがいかがでしょうか。
 JR大船渡線については、2月19日に突然ルート変更案を示し、総事業費が400億円に及ぶと提案してきました。まさに「無理難題」と「時間稼ぎ」というべきものではないでしょうか。関係市町村と地域住民が確固として早期復旧を求めるとともに、JR東日本を包囲するような運動が必要ではないでしょうか。特に、中心市街地のまちづくり事業がすでに始まっている中では、早期復旧の実施を求め、協議を並行して進めることが必要ではないでしょうか。

【政策地域部長】
 JR東日本は山田線について、復旧後の利用者の確保に懸念を示し、三陸鉄道による運営を提案してきたが、JR東日本には採算性だけで判断することなく、今一度、地域の公共交通を担う鉄道事業者としての責任を果たす立場にあることを認識すべきと考えている。
 大船渡線について、沿線市では復興に向け鉄道を前提としたまちづくりを進めているが、震災から3年が経とうとするこの時期に、JR東日本は「津波の安全性の確保のためには、山側に大きく路線を移設する新ルートでなければ復旧できない」との意向を示してきた。しかし、具体的にどの個所が危険で、その回避策がないのか等が示されていないことから、JR東日本には、現行ルートで復旧できないとする根拠等を丁寧に説明するよう引き続き求めていく。
 これまで県としては、沿線市町と連携しながら、国やJR東日本にたいし、早期復旧を求めるとともに、JRが提示した課題の解決を進め、シンポジウムの開催などで地域住民意識の共有を図ってきた。また、地域住民も、国への署名運動やJR東日本に対する要望、駅周辺の草刈り活動などを実施し、鉄道復旧を求めてきたところである。
 今後とも沿線市町と連携しながら、両線の鉄道の早期復旧に向け協議を進めていく。


7、大雨洪水災害の復旧状況について

【斉藤議員】
 昨年7月、8月、9月と連続した大雨台風災害に見舞われました。県は大震災に準じた住宅再建への支援策や観光事業者への支援策も講じました。その実績はどうなっているでしょうか。農地農業被害については、被害面積に対して国の補助事業の対象となったのはどれだけだったでしょうか。県の補助事業の対象と補助事業の対象外の面積・件数を示されたい。全体として春の作付に間に合うのはどれだけでしょうか。
 大雨・台風災害の検証と対策、砂鉄川、岩崎川、松川の抜本的な河川改修はどうなっているでしょうか。

【保健福祉部長】
 被災世帯は14市町で計510世帯であり、このうち本年1月末現在で、全壊・大規模半壊および解体を要する半壊世帯計39世帯、ならびに半壊および床上浸水世帯計467世帯にたいし、被災者生活再建支援金計1億815万円を該当市町に補助金交付することとしている。
 なお、年度内に住宅の再建方法が決まらない、あるいは解体が完了しないために今年度の支援金の対象とならない世帯については、平成26年度予算において対応する予定である。
【商工労働観光部長】
 県が9月補正で措置した「特定被災地復旧緊急支援交付金」にかかる関係市からの申請額は、現時点で復旧支援と風評被害対策を含めて、盛岡市が4721万円余、八幡平市が2220万円余で、計6942万円となっている。
 また、盛岡市による補助事業の対象が10事業者、同じく八幡平市が3事業者、合計13事業者となっている。
 なお雫石町は、事業者からの補助金申請期限が2月末日までとなっている関係で、今後申請がなされる予定となっている。
【農林水産部長】
 被災した農地約1400haのうち、国の補助事業を活用して復旧予定の面積は187haで、小規模な災害は、市町村起債事業や県の小規模農地等災害復旧事業を活用することとなるが、その面積等は、現在事業主体である市町村が精査中である。
 今春の作付については、各市町村が鋭意復旧工事に取り組んでいるが、河川に隣接し護岸も被災している一部を除き、1340haは作付が間に合う見込みである。
 農業施設については、被災農業者緊急支援事業により、盛岡市など5市町から要望のあった55件、107施設全ての再整備が年度内に終了する予定である。
【県土整備部長】
 県では、雨量や流量などの解析、浸水範囲や河道などの調査を実施し、検証を行ったところである。
 この結果、短時間での非常に強い降雨による河川水位の急激な上昇や、夜間時の出水となり、水門管理など想定していた対応がとれない状況となったこと、土砂の堆積や立木の繁茂により河道内の流下能力が低下し水位が高くなったことなどのほかに、未改修区間の橋梁に流木が詰まったことが洪水被害の要因であったものと考えている。
 このようなことから、住家の浸水対策などを基本的な方針として、沿川の土地利用状況などを勘案しながら、それぞれの河川の特性を踏まえて、治水対策の検討を行ってきている。
 現時点では、砂鉄川においては、堆積土砂の除去や立木の伐採、確実な水門操作のための照明の設置などの対策を進めているほか、昨年11月末に採択された「災害対策等緊急事業推進費」により、屈曲部の改善等を行うこととしている。
 岩崎川においては、今回被災したところまで事業区間を延伸し、来年度から河道拡幅と掘り下げによる改修を進めることとして、国と協議している。
 松川においては、地域の方々への説明を行いながら、遊水地の設置も含めた治水対策の検討を進めているところであり、できる限り早期に治水計画をとりまとめ、対策を進めていく。


8、被災した県立病院の再建整備と看護師増員の課題について

【斉藤議員】
 被災した高田、大槌、山田の3県立病院の再建整備に26億円余の予算が計上されています。県立大東病院は4月から40床の病院として再開する予定です。1日も早い病院としての再開が求められていますが、計画より前倒しで整備を進めることはできないでしょうか。また、医師、看護師の確保が必要ですがどのように確保するのでしょうか。大槌病院の院長からは、医師・看護師の合同宿舎については前倒しで整備してほしいとの強い要望も聞いてきましたがどう進められるのでしょうか。
 県立病院全体としても、看護師の大幅な増員が求められています。看護師不足の中で、今や看護師が病院を選ぶ時代です。せめて年休が自由に取れる、産休や育児休暇等に対応した看護師の体制にすべきと考えますが、現状はどうなっているでしょうか。新しい経営計画では来年度、看護師36人の増員となっていますが、大東病院、中央病院等を含めどのように増員がなされるでしょうか。医師は14人、初期研修医は12人の増員計画ですが、見通しはどうでしょうか。

【医療局長】
 被災した県立病院の再建整備について。過般、公表した再建方針に基づき、大槌病院および山田病院は平成28年度、高田病院は平成29年度の開院をめざし取り組みを進めているが、このうち大槌病院については、本年度用地整備を実施する大槌町と調整を図りながら、医療局において病院設計をまとめる予定であり、現在、設計業者や病院とともにその作業を進めている。
 山田病院および高田病院については、本年度から来年度にかけて地元市町において用地整備を進め、これと並行し医療局において病院設計を行うこととしており、その設計に向けた検討を病院とともに進めている。
 現在のところ、3病院とも順調に進捗しており、早期再建に向けて引き続き各市町と緊密に連携しながら取り組みを進めていく。
 被災した大槌病院・高田病院の職員公舎については、新病院の再建整備に併せて、病院敷地内に整備する予定であり、職員の円滑な配置が可能となるよう、早期完成に取り組んでいく考えである。
 被災3県立病院にかかる医師・看護師の確保だが、医師については引き続き関係大学への派遣要請、即戦力医師の招へいに努めるとともに、平成28年度以降本格化する奨学金養成医師の効果的な配置などにより、確保に努めていく。看護師については、12月に策定した「岩手県立病院等の経営計画」において、再建後の入院機能の再開等にともなう増員を計画しているところであり、必要となる人員の確保を図りながら、県立病院全体の職員の配置換えの中で対応していく。
 県立病院全体の看護師等の増員について。看護職員の産前産後休暇や育児休暇等の取得者にかかる代替職員については、正規職員で補充することとしている。平成26年1月1日現在の産育休の取得者は200名であるが、今年度は、年度当初に見込んだ産育休の人数に部分休業等の取得時間分を加え、221名の正規看護師を代替職員として、あらかじめ各病院に配置した。来年度の看護師の増員については、大東病院の入院再開に必要な人員として23名、地域医療福祉連携の効果が十分に発揮できるよう退院調整に携わる看護師を9名、医療の質の向上を図るため、緩和ケア認定看護師の専従配置に3名などを予定しているところであり、職員体制の見直しなどを含めても、平成25年度当初と比較し、正規職員および常勤臨時職員を併せて、計画通り36名の増員を見込んでいる。
 医師については、現在関係大学の医局において人事異動の調整等を行っている段階であり、現時点で来年度の具体的な増員数をお答えすることは困難な状況である。初期研修医については、昨年10月のマッチングの結果は、前年度と同数となったところだが、現在マッチングに至らなかった医学生を対象とした二次募集を行うなど、最終調整を行っているところである。


9、日本一子育てにやさしい岩手めざして―子どもの医療助成の拡充について

【斉藤議員】
 岩手県総合計画審議会は2月に「今後の岩手県の政策に関する提言」を知事に提出しました。提言の中には「日本一子育てしやすい地域をつくる」ことが提起され、「学費・医療費の無償化」「子育て期間中の、子育て経費を一定額継続助成」することなどを具体的に提言しています。
 他県から県内、盛岡市に転居してきた若いお母さん方の共通の声は、「盛岡市は子どもの医療費が高い」「窓口負担が大きい」というものです。県による子どもの医療費助成は平成16年度以来9年間も小学校入学前までにとどまっています。さらに、窓口負担のある償還払いとなっていることが、子育て中の若い世代の大きな負担となっています。知事、岩手県総合計画審議会の提言を踏まえ、県としての子どもの医療費助成を当面小学校卒業まで拡充すべきではないでしょうか。償還払いは全国10道県、東北では岩手県だけとなっています。償還払いも市町村と共同で見直すべきではないでしょうか。

【達増知事】
 県ではこれまでも、いわて子どもプランに基づいて、県民のライフステージに沿って切れ目のない支援を総合的に推進している。
 子どもの医療費助成について、現在の就学前までの対象を小学校卒業まで拡充するためには、多額の県費負担が見込まれるところだが、県単独政策において、県立病院等事業会計負担金が多額になっていることなどから、直ちに実施することは難しいと考えている。
 また、現物給付とした場合、市町村の国保に対する国庫支出金が減額されることから、市町村等と協議をしたうえで償還払いとしているところであり、県としては、引き続き国に対してこの減額措置の撤廃を要望していく。


10、高すぎる国保税・介護保険の改悪について

【斉藤議員】
 県民の所得が減少している中で、高すぎる国保税はどの地域でも最も切実な課題となっています。国保加入者の課税所得額は、平成13年度の124万8千円から平成23年度の81万4千円に43万4千円、34%も減少し、国保税負担率は11.8%から16.2%と急増しています。支払い能力を超えているのではないでしょうか。だからこそ、今年度も県内10市町村で一般会計からの繰り入れ、値上げを抑えているのではないでしょうか。払えない滞納者に対して保険証を取り上げる資格証明書や短期保険証の発行はやめるべきではないでしょうか。滞納者に対する給与など資産の差し押さえは中止すべきではないでしょうか。また、国は、国保を都道府県を単位とする広域化を進めようとしています。広域化では市町村独自の繰り入れや対策を講じる事ができず、さらなる国保税の引き上げを招くことになるのではないでしょうか。今必要なことは、国庫負担比率を増やし、高すぎる国保税の引き下げを行うことではないでしょうか。
 政府は、医療・介護改悪法案を今国会に提出しました。介護保険では、要支援高齢者の介護サービスからの切り捨て、特養ホーム入所者の介護度3以上への制限、年金収入280万円以上の高齢者の利用料2割負担など、高齢者のサービス切り捨てと負担増を押し付けるものです。岩手県の場合、どれだけの高齢者が影響を受けるか示していただきたい。介護保険料は年金から天引きされる一方で、必要な介護サービスは受けられないとしたら、「保険あって介護なし」というべき事態ではないでしょうか。国庫負担を大幅に引き上げるなどの抜本的な改革が必要と考えますが、県はどういう認識で国に提言・要望をしているでしょうか。

【保健福祉部長】
 国保税について。厳しい経済状況や雇用情勢により県民の収入が伸びない状況にあり、県民の国保税に対する負担感は増加しているものと認識している。資格証や短期保険証は、国保税滞納者の納付相談の機会を確保するため交付しているものであり、市町村にたいし、滞納者個々の事情に十分配慮したきめ細やかな対応をするよう要請している。また、滞納処分は、税負担に関する公平性等を確保するため、担税能力がありながら納付していただけない方に対して、市町村において十分な調査を行ったうえで実施されているものと認識している。
 国保の都道府県化については、今後「国民健康保険制度の基盤強化に関する国と地方の協議」において、国保の財政上の構造問題の解決に向けた方策および都道府県と市町村の役割分担のあり方等が議論されることとなっており、国保税についても協議の中で検討されることから、全国知事会を通じ意見を述べていく。
 また、被保険者や地方公共団体の負担が増加し、家計や国保財政を圧迫している状況にあることから、国の公費負担割合を拡大し、これらの負担の軽減が図られるよう国に要望しており、今後も引き続き要望していく。
 介護保険について。今般の制度改正の1つとして、要支援の方が利用している訪問介護と通所介護の地域支援事業への移行があるが、本年11月時点の要支援の方の利用人数は、訪問介護3022人、通所介護6569人となっている。また、特養ホーム入所を、原則要介護3以上とする中重度社への重点化については、本年11月時点の広域型特養入所者の状況を見ると、要介護2以下の方は509人となっている。いずれもすでにサービスを受けている方は、移行後も既存サービス相当のサービスが利用可能とされる等、必要なサービスは継続されるものと考えている。
 一定以上所得者の利用者負担の見直しについては、国が検討している基準(年金収入280万円=合計所得金額160万円)に照らし合わせると、本県の第一号被保険者の約13%、約49000人の方が該当すると試算される。40歳から64歳までの第二号被保険者の保険料は、先に示された厚労省の告示によると、来年度は月額5273円になる見込みである。
 国庫負担の大幅な引き上げ等の抜本的な改革については、県でも、報酬改定や基盤整備の促進等にともない介護給付費が増大していることから、公費負担割合の見直しや財政調整のための交付金制度の創設などが必要と考え、国に対して要望しているところであり、今後とも引き続き被保険者や地方公共団体の負担が過大にならないよう支援策を要望していく。


11、青年の雇用対策・ブラック企業対策について

【斉藤議員】
 知事は、知事演述で「若者と女性が躍動する岩手」を強調しました。これは重要なことであります。そのためには、若者の実態と要求から出発して課題の解決に取り組むべきです。いま若者・青年の最も切実な実態・課題は、二人に一人が非正規雇用となっていることであります。連合総研の調査では、正社員になっても約2割が自分の職場はブラック企業ではないかと答えています。岩手労働局の調査では、64事業所中57事業所、89%が労働基準法違反の状況が指摘されるブラック企業というものでした。若者が躍動するためには、何よりも安定した雇用の確保とブラック企業の根絶が必要と思いますが、県として岩手労働局とも連携して取り組みを強化すべきではないでしょうか。
 トヨタ自動車東日本岩手工場は、県内最大の誘致企業であり、アクアのフル生産体制が続いています。ところが昨年11月現在では、正規社員は1698人、59.9%にとどまり、半年雇用を継続する期間社員は756人26.7%、派遣社員等は381人13.4%となっています。リーマンショック前には期間社員から100人を超える正社員化も行われましたが、最近はどうなっているでしょうか。青年を雇用調整弁として使う期間社員や派遣社員の登用は抜本的に見直すべきです。期間社員の正社員化、正社員の採用を大幅に増やすよう知事として強力に働きかけるべきと考えますがいかがでしょうか。

【達増知事】
 若者の雇用確保等について。平成24年就業構造基本調査によると、本県における20代の正規雇用割合は62%と、前回調査の平成19年と比較し2.5ポイント低下しており、安定的な雇用の拡大は重要な課題であると考えている。このため県では、事業復興型雇用創出事業の活用や経済団体への要請により、正規雇用の拡大を図っている。
 労働基準関係法令違反については、就業支援員等が事案を把握した場合は、岩手労働局に連絡するなど、緊密な連携を図っているほか、若者が労働関係法令等を学べるよう、労働教育の一環としてガイドブックを作成し、高校生等に配布している。
 県においては、平成26年度の経済・雇用対策の取り組み方針に、長期・安定的な雇用の創出・拡大や、若年者の就業支援を柱と位置付けており、今後さらに岩手労働局との連携を強化し、若者が安心して働ける環境づくりに取り組んでいく。
 トヨタ自動車東日本岩手工場における期間社員の正社員化について。リーマンショック以降の平成21年度から24年度までの4年間、毎年度10名から10数名の期間社員を正社員に登用しており、今年度の登用については、現在検討している段階と聞いている。若者の安定的な雇用を確保するため、今後とも機会をとらえて、期間社員の正社員化や正社員の採用の拡大を要請していく。


12、TPPとコメ政策について

【斉藤議員】
 これまでのTPP交渉の経過は、昨年春の日米首脳会談で確認したという「(TPPは)聖域なき関税撤廃を前提にするものではない」という安倍首相の言明は全くの偽りであったことを示しているのではないでしょうか。アメリカのフロマン通商代表は「日本側の牛肉・豚肉などの関税維持は考えられない」と公言し、米議会に提出されているTPA(大統領貿易促進権限)法案には、アメリカ並みの関税と遺伝子組み換え食品の解禁を条件に挙げています。TPP交渉は、日本を含む多国籍企業の市場確保のために、国民のくらしに関わる規制も関税自主権も放棄させるものであることが鮮明になってきたのではないでしょうか。このことは日本の農業、岩手の農林漁業と地域経済の存立にかかわる問題です。知事として政府に声を上げるとともに県民と共同して運動を広げることが必要と考えますがいかがでしょうか。
 安倍政権は40年来のコメ政策を経済界の圧力に屈し、大転換しようとしています。その内容は、減反政策を廃止し、コメの直接支払い交付金を来年度は2分の1に、5年後は廃止する。コメの需給から国が撤退すること。米価についても市場任せにするとともに、場当たり的な飼料用米への転換を進めようとするものです。今、大規模農家ほど将来の見通しを持てないでいます。知事は、政府のコメ政策の岩手のコメ・農業への影響をどう認識しているでしょうか。結局は、TPPを前提にしたコメ輸入の増大に対応するものではないでしょうか。世界でも異常な食料自給率39%という状況を打開し、安全で安心な食料の確保と農業の抜本的な振興こそ必要ではないでしょうか。

【達増知事】
 今般行われたTPP交渉閣僚会合においては、合意に至らず交渉が継続されることとなったが、その交渉内容の詳細については公表されていないところである。TPP協定は、本県の基幹産業である農林水産業のみならず、投資・医療・労働など県民生活や経済活動の幅広い分野に大きな影響を及ぼすことが懸念されている。このため、交渉を行う政府は、拙速に走ることなく、十分な情報開示と説明を行い、国民的議論を尽くしたうえで慎重に判断し、地方の経済活動や国民生活に影響が生じると見込まれる場合には、交渉からの撤退も含め、断固たる姿勢で臨んでもらいたいと考えている。
 県内には、TPP交渉を慎重に進めることを求める活動などが行われていることも承知しており、県としては、政府にたいし本県がこれまで要請してきた考えを、今後ともあらゆる機会をとらえて、要請していく。
 コメ政策および経営所得安定対策の見直しの影響について。国の新たな農業政策では、米政策や経営所得安定対策の見直しのほか、農地中間管理事業や多面的機能支払が創設されるなど、農家経営に直接関わる様々な政策が見直されるが、対応するための準備期間が短いことや、見直し内容が幅広く大きいことから、農家経営に及ぼす影響について様々な不安や懸念が示されている。
 県としては、できる限り早く、国の新たな農業政策全体の影響を踏まえた本県での取り組みのあり方を明らかにしていく必要があると考え、関係機関・団体で構成する「岩手県元気な地域農業推進本部」で、経営所得安定対策、農地中間管理事業、多面的機能支払い等について取り組みのあり方などの検討を進めているが、米の規模拡大のほか、園芸作物の導入、6次産業化への取り組みなども推進し、農家の所得確保や農業・農村の持続的発展を図っていく。


13、いじめ・体罰問題の解決と学力テスト、教育委員会制度の問題について

【斉藤議員】
 次に教育の課題について教育委員長に質問します。
 被災地の学校では、仮設住宅でのストレス、大人のストレスと生活苦などから「新たな荒れ」の状況も見られます。県教委が行った「心と体の健康観察」でも、「優先的に教育相談をしてほしい児童生徒」は小学校・中学校では今年度は昨年度よりも増加しています。こうした子どもたちの心の痛みをしっかり受け止めて対応を強化することが必要と考えますが、実態をどう把握され、対応しているでしょうか。
 平成24年度のいじめの実態調査では、過去最高の2286件が報告され、「いやなことや恥ずかしいこと、危険なことをされたり、させられたりする」など児童の生命にもかかわる深刻ないじめが662件も報告されています。いじめ問題について学校と教職員が一体となって、総力を上げて最優先課題として取り組む認識の一致と体制を構築することが求められています。いじめ問題の研修の実施や体制の構築はどうなっているでしょうか。
 昨年5月には体罰の実態調査結果が明らかにされました。64件、被害生徒は94人と報告されましたが、残念なことに先日の2月17日には、校長によるパワハラ、体罰による懲戒処分が3件も明らかにされました。中身をみると極めて悪質で常習的な事件ばかりです。ところが処分は戒告処分にとどまっています。対策と処分が甘すぎるのではないでしょうか。どうやって体罰、パワハラの根絶に取り組むのでしょうか。
 全国学力テストは、国連子どもの権利委員会が3度にわたって勧告した「異常な競争主義的教育制度」した象徴というべきものです。今学校現場では、「学力の向上」が最大のキーワードとなって、学力テスト対策の朝学習や6時間授業などが行われています。こうした実態を把握しているでしょうか。学力テストは、文科省自身が「学力の一部を測定するもの」としていますが、平均点が発表されれば独り歩きして学校間の競争、市町村間、都道府県間の競争を激化させます。ところが文科省は、市町村教委の判断で学力テストの結果を公表できるとしました。これは、学力テストの変質ともいうべき事態と考えますが、教育委員長はどう認識されているでしょうか。私はどの市町村でも公表すべきではないと考えますが、県内市町村教委の動向はどうなっているでしょうか。
 子ども1人1人に行き届いた教育が求められている中で、最大の障害となっているのが教師の多忙化です。高等学校では月100時間を超える時間外勤務が7.1%、80時間を超えるのが6.0%にも及んでいます。具体的な改善の対策はどう講じられているでしょうか。
 安倍政権のもとで、教育再生の名のもとに、教育委員会制度の根幹を改変し、国・首長―いわゆる政治権力による教育支配を歯止めなしに拡大しようとしています。その内容は、第一に、首長に、教育行政全体についての「大綱的な方針」を定める権限を与えるとともに、公立学校の設置・廃止、教職員定数、人員・懲戒の方針など教育行政の中心的な内容を首長に与えるとしています。第二に、首長に教育長の直接任命権と罷免権を与えること。第三に、文部科学大臣に教育委員会に対する「是正要求」などの権限を強化するというものです。こうした教育委員会制度の根幹を改変することは、教育への無制限の権力的介入・支配への道を開くものといわなければなりません。教育委員長の見解を求めるとともに、教育委員会はどうあるべきと考えているでしょうか。

【教育委員長】
 子どもたちの実態について。毎年9月に実施している「心とからだの健康観察」の結果、本年度の「要サポートの児童生徒」の割合は、沿岸部小学校においては、平成24年度の14.7%から15.6%に上昇、沿岸部中学校においては12.6%から13%に上昇した。沿岸部では、経済状況になお困難を抱える家庭をはじめ、住宅環境や通学状況などの変化により、児童生徒が抱えるストレスが震災直後に比べて複雑多様化していることなどが大きな要因であると認識している。県としては、現在、通常のスクールカウンセラー配置に加え、全国のカウンセラーの支援をいただき、沿岸部の教育事務所に11名の巡回型カウンセラーを配置し、4人のスーパーバイザー派遣とあわせて、重層的な支援体制を整備しているところである。平成26年度においては、スクールカウンセラーの増員とともに、多様なストレスを抱える児童生徒に福祉的な視点で支援を行うスクールソーシャルワーカーを増員するなど、人員体制の整備に努めていきたい。
 いじめ問題の研修について。平成24年度には、大津市のいじめ自殺問題を受け、秋に緊急研修会を実施した。平成25年度も継続し、小中学校は教育事務所単位で、高校および特別支援学校は、地区別に開催した生徒指導連絡協議会で研修を実施した。また、初任者研修や教職経験者研修でもいじめ問題を取り上げるなど、教職員の対応力の向上に鋭意努めている。これらの研修会の実施を通じて、各学校の体制づくりを促進することができたと考えており、今後も継続的かつ計画的に研修を推進していきたい。さらに、昨年9月28日に施行された「いじめ防止対策推進法」に基づき、本年度中に「県いじめ防止基本方針」を策定し、関係部局や関係機関と連携しながら、いじめの未然防止と根絶に取り組んでいく。加えて、次年度も、全児童生徒に「いじめ電話相談」の紹介カードを配布し、さまざまな相談窓口の周知を図り、いじめ防止、根絶に努めていく。
 体罰・パワハラの根絶について。先般、議員のご指摘にあった事案について懲戒処分を行ったところであり、こうした事案の発生を見たことは誠に残念であると受け止めている。今回の事案の処分にあたっては、他県や他の任命権者の事案等も参考としつつ、個々の事案の事情等を十分考慮しながら慎重に検討した結果であるものである。
 体罰については、昨年度に実施した体罰実態調査の結果を踏まえた通知の発出や会議・研修会の場等を通じた趣旨の徹底に加え、本年度から新たに怒りの感情をコントロールするスキルを身につけるための「アンガーマネジメント」という手法の研修を導入し、その根絶に向けた対策を強化したところである。
 またパワハラについては、県教委としては今回が初めての懲戒処分ということになるが、近年広く一般的に大きな問題として認知されてきているものでもあり、特にも管理職に対する研修等の機会を通じ、今回の事案も含めさまざまな事例について共有するとともに、組織運営や部下職員に対する適切なマネジメントを一層徹底することにより、再発防止に努めていきたい。
 学力テストについて。結果の公表については、文科省では、平成26年度調査より市町村教委の判断に基づき、公表を可能としたもので、その際、序列化や過度な競争が生じないようにするなど教育上の効果や影響等に配慮すべき点について示している。調査結果の取り扱いに関する部分に変更があっても、本来の調査の目的が変更されるものではないと認識している。
 教育委員会制度について。現在、政府・与党において、首長が主宰する(仮称)総合教育施策会議を設置する、同会議において教育行政の大綱的な方針を定める、教育長と教育委員長を一本化した新たな責任者を置き、首長が議会の同意を得て直接任命・罷免する、地方の法令違反等に対する国の関与の強化を図るなどの改革案が検討されていると承知している。今後、国会において関連法案が審議される見込みだが、この過程において、学校や児童生徒への影響を第一に考え、教育現場の実情や意見を十分に踏まえた議論がなされることを期待している。また、県教委は、現行制度においても、知事との意見交換等を通じ、同じ思いを持って取り組んできたところであり、制度がいかようになろうとも、「いわて県民計画」に基づき、今後とも知事と十分連携して本県教育行政を推進していく。
【教育長】
 全国学力学習状況調査結果の公表にかかる市町村教委の動向についてだが、現段階においては、これまでの方針を変更する市町村があるということは聞いていない。
 教員の多忙化について。本県の多忙化解消の取り組みについては、平成21年3月の多忙化解消検討ワーキンググループの提言を踏まえて、これまで県教委では、調査・照会文書や会議・研修の精選などに取り組んできているところであり、各学校では、行事等の見直しや職員会議の時間短縮、開催回数の縮減などが行われてきている。また、提言項目の1つである「部活動のあり方」については、昨年度実施した調査によると、高校で7割以上の学校で部活動休養日が徹底されるなど、取り組みが進められている状況が確認されているところである。さらに今年度の取り組みとして、学校訪問等を通じて、現場の教職員から直接各学校の業務多忙の状況や勤務負担軽減の取り組み状況などの聞き取りを行ったところである。今後、聞き取りの結果等を踏まえ、特に事務的業務の効率化を図ること、優良取り組み事例の共有化などにより学校における業務の改善を促進すること等により、教員の負担軽減に向け一層努めていきたい。


14、警察本部における不祥事の根絶、山田NPO問題の強制捜査について

【斉藤議員】
 東日本大震災の救援復興の取り組みでは、岩手県警察は人命救助や遺体捜索など全国の警察の支援を受けて重要な役割を果たし、県民の信頼も広がりました。ところが、昨年1年間の県警察本部における不祥事・懲戒処分の件数は「酒気帯び運転」や「所属長によるパワー・ハラスメント」など10件にも及び、全国最悪と指摘されるような事態となりました。公安委員会委員長として、こうした事態をどう受け止め対策を講じてきたのでしょうか。なぜ、こうした不祥事が続出しているのでしょうか。その構造的問題に踏み込んで対策を講じることが必要と考えますがいかがでしょうか。
 6億7千万円余の不正支出が明らかとなったNPO法人「大雪りばぁねっと。」に委託した山田町の緊急雇用創出事業は、復興事業を食い物にした悪質極まる重大な事件であります。県警察本部が強制捜査に乗り出したことを評価するものですが、6億7千万円に及ぶ不正支出の全貌が明らかになるよう徹底した捜査を求めるものですが、どういう構えで取り組んでいるでしょうか。

【公安委員会委員長】
 不祥事の根絶について。昨年3月の県議会において、公安委員会として「再発防止のため、より厳格な組織管理をして参る」と答弁したにもかかわらず、その後も飲酒運転等の非違事案が続発したことは、県警察を管理する公安委員会として誠に遺憾であり、重く受け止めている。
 公安委員会では、都度、事案発生の背景・要因等について報告を受け、発生要因等を踏まえながら議論を行っているところであり、県警察に対しては、公安委員会の総意として「県民からの信頼を喪失せしめかねない状況であることを強い危機感を持って受け止めること。非違事案の発生は、職員の倫理観の欠如の現れであり、警察は国民の奉仕者であるという原点に立ち返り、綱紀粛正の徹底を図ること」を強く要請し、再発防止策の徹底について、全力をあげて取り組むよう指示してきたところである。
 昨年の懲戒事案は、飲酒運転等の重大な法令違反が6件と半分以上を占めており、その背景・要因は、「法令順守の模範となるべき立場の警察職員としての職務倫理意識、自覚の欠如」にあり、また、「幹部による身上監督、指導が十分ではなかったこと」にあると考えている。
 公安委員会としては、非違事案の発生要因を踏まえた再発防止策の徹底について、機会あるごとに指示しているが、具体的には、非違事案の再発防止重点を置いた警察署長会議における指示、警察職員の誇りと使命感を醸成させるため公安委員が直接警察署や警察学校等に出向いての「職務倫理講話」の実施、各警察署総合観察における警察署長に対する取組状況の確認と督励および幹部との非違事案防止座談会陪席による助言・指導、警察署長に意見を述べる機関である各警察署協議会・同連絡会に対する非違事案防止に関する助言等の協力依頼―などを実施して再発防止に取り組んでいる。
【警察本部長】
 NPO法人「大雪りばぁねっと。」代表理事らによる業務上横領事件に関しては2月4日、被疑者5名を通常逮捕し、さらに2月25日に被疑者4名を再逮捕している。
 この事件は、被災地における復興事業に絡む不正であり、被災された方をはじめ、広く県民の関心が高い事件であり、事件の全容解明に向けて捜査を推進していく。


15、消費税大増税、集団的自衛権の容認問題など国政上の重要な課題について

【斉藤議員】
 最後に、国民のくらしと平和・民主主義に関わる国政上の重要な課題について知事に質問します。
 消費税が4月から8%に大増税される予定です。国民には年間8兆円の大増税を押し付ける一方で、内部留保を300兆円もため込んでいる大企業には復興特別法人税の廃止で年間8000億円の減税、25年間で20兆円の減税とはあまりにも逆立ちしているのではないでしょうか。1人当たりの県民雇用者報酬は、この10年間で435万円から385万円に50万円も減少しています。労働者の所定内賃金も最低を記録しています。こんなときに大増税を押し付けたら、県民のくらしも地域経済も、そして税収もますます悪化するのは明らかではないでしょうか。消費税大増税の県民のくらしと地域経済、県の税収に与える影響をどう見通しているでしょうか。
 安倍首相は、これまで憲法上許されないとしていた集団的自衛権の容認を閣議決定で覆そうとしています。これは事実上憲法9条を踏みにじるものであり、立憲主義を乱暴に踏みにじるものではないでしょうか。2月24日に報道された全国世論調査でも51%が憲法解釈による集団的自衛権の容認に反対と答えています。こうした安倍内閣の暴走は許せないものと考えますが知事の見解を求めます。
 東京電力福島原発事故による放射能汚染の被害は、今でも県内にも及び、深い傷跡を残しています。汚染水は増え続けるとともに、高濃度汚染水漏れの事故が相次いでいます。原発の再稼働や輸出の条件は全くないというべきと考えますが知事の見解を求めます。今稼働している原発はゼロであります。このまま原発ゼロをめざすことが最も現実的な方向ではないでしょうか。高レベル放射性廃棄物の最終処分の方法も場所も明らかにならない中で、自民党の資源・エネルギー戦略調査会の原発から出る「核のゴミ」の最終処分を議論する小委員会の会合で、東北地方の「北上山地海岸地域」も最終処分場の候補地という専門家の意見も出されたと報道(1月29日、岩手日報)がありました。岩手県が放射性廃棄物の最終処分場にさせては絶対にならないし、ILC誘致にも水を差す問題だと考えます。知事としてきっぱりと最終処分場には絶対にしないと意思表示すべきではないでしょうか。

【達増知事】
 消費税増税の影響について。消費税増税が実施される4月は、本県の本格復興のスタートの時期でもあり、税負担が増えると被災者の生活再建や、被災地の経済再生などの阻害要因となるおそれがある。また、駆け込み需要やその反動も見込まれるところであり、地域経済への影響を見通すことは困難である。県の地方消費税実収入額については、平成26年度当初予算において294億円余を見込んでおり、25年度当初予算に比較し36億円余の増となっている。県としては、消費税増税により経済的に弱い立場にある方々が困窮することがないように、また地方経済の落ち込みや復興の遅れを招くことのないように、今後ともしっかりとした対応を国に対して求めていく。
 集団的自衛権について。現在国会において集団的自衛権の行使を可能にする憲法解釈の見直しについて様々な議論がなされているところだが、これだけ反対論や慎重論が多いことから、閣議決定をしてから議論するのではなく、まずは国民的な議論を十分に行うことが必要と認識している。
 原発再稼働と輸出について。原発事故以降、国民の間で原子力の安全性に対する信頼が大きく揺らぎ、昨年度のエネルギー政策をめぐる国民的議論においても、エネルギーに対する国民の問題意識や再生可能エネルギーへの新たな意欲の高まりが表れており、こうした意識の変化を踏まえたエネルギー政策が求められているものと考えている。岩手県としては、再生可能エネルギーは地産地消のエネルギー自給率の向上はもとより、地球温暖化防止や防災のまちづくり、地域振興など多面的な効果をもたらすものと認識しており、再生可能エネルギーによる電力自給率を倍増する目標の達成に向けて力強く導入を推進している。
 放射性廃棄物の最終処分場について。先に開催された自民党の資源・エネルギー戦略調査会における講演において、本県の北上山地海岸地域を含む数カ所が、放射性廃棄物の最終処分場の適地として挙げられたことが報道されたと承知している。高レベル放射性廃棄物の最終処分場については、従来から本県としては受け入れる考えはないことを表明している。


≪再質問≫

・震災関連死について

【斉藤議員】
 大震災から3年を迎えるというのは、被災者にとってもっとも厳しい時期、そしてなおさら住宅再建の見通しがまだ立たないということで、これからも長引く避難生活の中で、震災関連死が引き続き出かねないのではないか。
 これまで434名の震災関連死が認定されている。震災から6ヶ月以内、6ヶ月以降でどういう認定状況になっているか。
 さらに1年2年以上、仮設などでの避難生活が続くとなれば、震災関連死はこれからも出かねない状況なので、こういう制度があるということを引き続き周知徹底を図る必要があるのではないか。
 残念ながら、いま陸前高田市と釜石市で2件裁判闘争になっている。震災関連死というのは、災害弔慰金というのは損害賠償ではない。本当に被災者に寄り添って、大震災がなければ失うことはなかったという、そういう判定の考え方で対応すべきではないか。山田町は独自に審査をしているが、山田町の審査はやはり認定率が高い。6ヶ月以降の認定率も高い。被災者に寄り添ってぜひ今後も対応していただきたい。

【復興局副局長】
 岩手県では、6ヶ月を経過しても災害関連死の申請を受け付けるということで、6ヶ月を経過して死亡された方について、52名を災害関連死として認定している。
 審査会については、いつ閉めるということにはなっていないので、いずれこれから先も申請の都度適正な審査に努めていきたい。

・持ち家再建への支援について

【斉藤議員】
 だいたい岩手県で平均2000万円ぐらい建てるのにかかる。今まで県や市町村の支援策が拡充されているといっても、頑張って500〜600万円である。これでは家が建たない。
 例えば、持ち家再建、まちづくり、面整備の事業で、1年前10087区画の計画が1年後は8405区画に減っている。面整備による宅地の整備は1682区画・16.6%減少している。この減少の要因をどのように分析されているか。
 災害公営住宅は1年前と比べ、5639戸の計画から6038戸、これは399戸・7%増えている。やはり持ち家再建の希望を最大限支援する、実現させるということを復興の最大の課題にすべきではないか。
 実は民主党が政権をとっていた2011年3月29日、民主党は500万円に引き上げるという提案をしている。自民党も野党時代の2011年4月15日、第二次復興提案で500万円引き上げるという提案をしていた。政権とったらやらないと。これは全く道理がないことで、やはり1000年に1回と言われる大震災の中では、やはり本当に住宅再建を支援するためには、300万円から500万円以上、東北弁護士会も昨年7月に決議を上げているが、その取り組みをさらに強力に進めるとともに、県や市町村もさらなる支援策を示すべきではないか。3年目を迎えて被災者に新たな希望を与えることが本当に大事になっている。今までの継続ではなく、さらなる支援で希望を被災者に与える対策が必要ではないか。

【復興局副局長】
 議員おっしゃる通りこれが一番の復興の力になるということで、この額の増額については、かねてより国には最大限要望してきた。これは各県とも事情が同じだが、非常に被災件数が多いということと、これは推測だが、政府でも今度の大震災があった場合に、相当青天井の予算措置が必要になるというような判断があるのではないかと感じているが、引き続き引き上げの要請はしていきたい。

・二重ローン対策について

【斉藤議員】
 大震災で流失・解体となり住宅ローンだけが残った被災者の数をどう把握しているか。現在もその住宅ローンを払い続けている被災者の数はどうなっているのか。
 12月10日、金融庁東北財務局盛岡財務事務所が金融機関に対する通知を出した。この中身は、「元本返済猶予等の返済条件の変更を行っている債務者を含め、ガイドラインの利用を積極的に進めること」。これから住宅再建が本格的になり、二重ローンが顕在化、増えてくる。この通知を徹底すると、その取り組みはどうなっているか。
 そして相談件数が少ない。991件にとどまっている。もう1つは3分の2以上が申請しても排除されると。これは収入基準の問題があると思うが。この打開を緊急に図っていかないと、とりわけ共稼ぎ世代の40・50代の人たちが二重ローンの解消から排除されれば、被災地で頑張ることができなくなってしまう。文字通り緊急課題としてこれに対応していただきたい。

【復興局副局長】
 第一義的には、やはり被災者に対する周知が不足している部分はあり、金融機関にこれをお願いしても、利害が相反する部分もあり、なかなか金融機関も一生懸命に地域の債務者のために働きかけや周知をしていただけないという事情等もあるので、県としてはできる限りこういう制度を活用していただきたいということで、周知に努めていきたい。

・仮設住宅の目的外使用について

【斉藤議員】
 市町村議会で対応できるようにという回答があった。3月中に入居できるように、そして3月中に被災地で仕事を探さなければならない。大槌では、民間アパートの問い合わせが100件以上ある。応急仮設住宅の利用が可能となったときに、釜石市には数十件の問い合わせがあったと。本当にこれは切実なので、働き手がない中で、被災地で働きたいという希望を持っている方が少なくないと思うので、これはできるだけ早く活用方法を示していただきたい。

【復興局副局長】
 これも相当前から大槌町や県で国に求めてきたところだが、ようやく国が認めると通知があった。できる限り早く施行したいが、予算措置、使用料をとるという公金の扱いになり、お金が歳入として市町村もくぐるので予算措置も必要だと。さまざまな制度的な部分もしっかり詰めないと扱えないという部分があるので、できる限り早く、現在準備中なので、そういうことで取り組んでいきたい。

・被災地での雇用確保について

【斉藤議員】
 事業復興型雇用創出助成金、これは3522事業所・13827人の方々に適用されている。沿岸被災地にはどれだけ活用されているか。水産加工業にはどれだけ活用されているか。

【商工労働観光部長】
 ご指摘の通り、この制度は平成23年度から開始しており、これまで3522事業所で13827名の申請状況になっている。うち、沿岸部における申請状況は、1273事業所・5590名ということで、40.4%となっており、事業の再開後の経営部分を支える力となり、また安定的雇用の創出につながっているものと認識している。そのうち水産加工業でのデータについては持ち合わせていないのでご了承いただきたい。

・JR山田線・大船渡線の早期復旧について

【斉藤議員】
 震災から3年経って、山田線については三鉄への経営移管と。今まで全然考えていない、考えられないような提案をすると。
 大船渡線については無理難題である。3年経ってからルート変更とか、その事業費に400億円かかるとか、「やれないでしょう」というような提案である。
 これは、県・市町村が本当に一体となり、こういう理不尽な対応を打ち破っていかなくてはならない。被災地の首長から話を聞いてきたが、まちづくりが進んでいる中で、もうこれ以上遅らせられないという切実な思いを持っている。しかし、大震災で被害を受けたら赤字路線は切り捨てるということを、絶対この大震災で前例にしてはならない。本当に岩手県が一丸となり、行政が対応するだけではない、本当に県民運動で被災地の鉄路を守るということが必要ではないか。

【達増知事】
 JRの提案についてだが、JRは山田線の復旧について、復旧後の利用者の確保に懸念を示し、自社のみの運行という形では持続的な鉄道の運行が困難としており、南北リアス線との一体運営や、経営の効率化といった観点から、三鉄による運営を提案してきた。先日開催された山田線沿線首長会議において、沿線首長は、JR東日本に引き続き運行を求めていくということとあわせ、JR東日本の提案についても検討・協議する意向を示している。県としてはこの意向を踏まえて、沿線市町および三鉄と協議を行い、三鉄が運営をするとした場合には、鉄道施設をJR東日本が引き続き所有することなどを求めた。今後ともJR東日本に復旧後の運行を求める姿勢は維持しながら、今回の提案に対しては、自治体の負担増を回避する観点から沿岸市町村および三鉄と検討・協議し対応していきたい。
 大船渡線については、沿線各市では、復興に向け鉄道を前提としたまちづくりを進めているが、震災から3年が経とうとするこの時期に、JR東日本は津波からの安全性の確保のためには山側に大きく路線を移設する新ルートでなければ復旧できないとの意向を示してきた。これまで、現行ルートを前提に検討を重ね、課題もおおむね解決した中、今回の提案がなされたところであり、また具体的にどの個所が危険で、他に回避策がないという根拠などが示されていないことから、沿線市も困惑している。沿線市は、BRT仮復旧は鉄道復旧までの当面の交通の確保と位置付けており、県としてはその意向を踏まえ、沿線市と連携しながら、JR東日本に現行ルートで復旧できないとする根拠等を丁寧に説明するよう引き続き求めていく。


≪再々質問≫

・子どもの医療費助成の拡充について

【斉藤議員】
 岩手県の総合計画審議会が「日本一子育てしやすい地域」という提案をして、学費や医療費は無償化という提案をしている。素晴らしい提案だと思う。
 実は、この間沿岸被災地で、一番困ったところで子どもを大切にする医療費助成の拡充が広がっている。ほとんど中学校卒業まで、遅れているところでも小学校卒業まで、震災後にやっている。この厳しい状況の中だからこそ、岩手の子どもたちを大切にするということが必要ではないのか。
 そして県外から転勤してきた方々は、盛岡は子どもの医療費がかかると。これでは日本一にならない。いま県レベルでも、小学校卒業・中学校卒業までというのはかなりの県で広がっている。そして償還払い、病院の窓口で払わなければならないのはたった10県、東北では岩手だけである。たしかに国の不当なペナルティはあるが、そういう中でも全国は現物給付にしている。いま若い母親は、財布と相談しながら病院に行く。不安なままで。残念ながら医療費助成の制度があっても償還払いだとそうなってしまう。
 岩手県総合計画審議会が、せっかく日本一子育てしやすい岩手を目指そうという提言をしたときに、それに受けて立つ対策が必要ではないか。
 盛岡市も、来年度から小学校卒業まで、入院は医療費助成の対象とすると。ついに県ともそこまで踏み込むという状況になってきた。

【達増知事】
 提言だが、個々の意見については、現時点での実現可能性や他の施策との優先順位など総合的に勘案して県政への反映を検討していくわけだが、日本一子育てしやすい地域をつくるための施策の方向性ということは、大変良い方向性だと思っており、若者と女性の活躍、少子化対策といったところについては、地域の力を最大限へ発揮し、地域の続く可能性を高める上でも県の取り組みをさらに前に進めていきたい。
 現物給付すべきということで、償還払いの問題について。これについては、市町村等と協議をした上で償還払いとしているところであり、他方、国に対してはこの減額措置の撤廃、償還払い、現物給付が困難である理由になっている減額措置の撤廃について国に対して要望していく。

・青年の雇用対策・ブラック企業対策について

【斉藤議員】
 日本民主青年同盟が昨年、生活実態調査というのを行った。社会人213人、平均年齢29.6歳だが、平均の手取り給料は14.6万円だった。「保育士の資格があるが正規で働くところがない」「正社員だが社会保険非加入」「社会保険非加入で月収12万円」「11時間労働で休日がほしい」「契約社員で月給13万円、社会保険非加入」「臨時職員で週40時間働いて月12万円」など、本当に多くの青年がこういう形で不安定な雇用の中で働いている。正規でも昔考えるような正社員ではない。社保非加入の正社員があるのかと思うが、実際にそういう実態が浮き彫りになってきた。岩手労働局の調査でも、89%が労基法違反である。この問題に本格的に岩手県としても取り組んでいく必要があるのではないか。ブラック企業は許されないという取り組みをぜひしていく必要があるのではないか。
 トヨタ自動車東日本岩手工場だが、リーマンショック前は、40人70人100人と期間工を正社員化した。これは知事も強く申し入れてそういう変化をつくった。ところがリーマンショックでそれが途切れて、いまフル生産体制で一番景気が良いときに、700数十人の期間工のうち10人程度しか正規にしていない。岩手を代表する誘致企業が、そういう働き手・青年を調整弁にするようなやり方は、重大な損失だと思う。やはり岩手で模範になるような働かせ方を、岩手工場でこそするべきではないか。

【達増知事】
 ブラック企業については、私もさまざま報道等から耳にしており、これは社会問題であり、あってはならないことだと考えている。一方、岩手労働局だが、先の調査に関し、法令違反がみられたことをもって、これらの事業場がブラック企業であるとはとらえていないと聞いているが、いずれ県としても、岩手労働局とこれまで以上に緊密な連携を図りながら、苛酷な労働実態を訴える声が県に寄せられた場合には、速やかにこれを岩手労働局に伝えて、改善へとつなげていくなどして、若者が安心して働ける環境づくりを進めていきたい。
 トヨタ自動車東日本岩手工場の雇用の関係だが、安定した雇用の確保は重要で、企業訪問などさまざまな機会をとらえて正規雇用の拡大について要請していきたい。

・学力テストについて

【斉藤議員】
 学力テストをいまやることによりどうなっているかというと、2月3月を学力向上月刊などといってやっている。小学校で朝学習、以前は読書の時間だった。いまは過去問試験をやっている。授業終わって6次元目から学力テストに向けた勉強をしている。
 高校生ならともかく、小学校の段階から学力テスト体制である。だからたしかに学力テストの結果は良くなるも知れないが、勉強嫌いが増える。
 文科省が言っているように、学力の一部でしかないのに、平均点が出るとそれが基準になり独り歩きしている。
 あの大震災のときに沿岸の子どもたちが素晴らしい力を発揮した、生きる力を発揮した。立派な学力がついていると思う。そういう子どもたちに朝から晩まで学力向上だという教育がいいのか。
 子どもの権利条約、3度にわたる権利委員会の勧告、教育委員会として本当に議論したことがあるのだろうか。その精神に立って、日本の教育の歪みを正す必要があると思うがいかがか。

【教育委員長】
 学力向上の考え方について。朝自習に取り組んでいるとか、放課後やっているということについては、私は完全に県内を全部把握しているわけではない。調査すると多忙化と言われるので調査していないが、数人の校長には聞いており、「そのためにやっているのではない」と。いわゆる順位を上げるためにやっているのではないと。子どもたちの読み書きの基礎をつけたい、学習習慣を身につけさせたいということでやっているということもあり、その結果として学力向上するならいいのではないかと思っている。
 子どもが本来学校に来るのはなぜかと、勉強したくて、できるようになりたいと、テストで100点をとりたいという子どもは大勢である。部活もやりたいというので来ている。それは親にも、力をつけてほしいと、もっとビシビシやってほしいという親もいる。そういういろんな人たちの考えを考えながら、子どもたちの夢を実現させるために、高校に行きたい子や大学に行きたい子がそれに見合うだけの力をつけてやらなければならないと私は考えているので、それが学力向上というのであれば、岩手県の課題は学力向上でいいのではないか。私どもは、学力保障という言葉を使っており、授業改善とも使っている。そういうことで、順位を上げるためだけの不純な考えをしている学校がいるとすれば、いろんな校長の研修機会に是正するように言っていく。
 それから、被災地での子どもたちがいろんな力を発揮したこと、これも斉藤議員とまったく同じであり、子どもの生きる力、本物の学力をつけていると高く評価している。引き続き頑張っていきたい。