2014年3月10日 予算特別委員会
政策地域部に対する質疑(大要)
・JR山田線の早期復旧について
【斉藤委員】
JR東日本の三陸鉄道への経営移管の提案について、その主な理由は何か。
【交通課長】
JR東日本は、JR山田線復旧後の利用者の確保への懸念を示しており、「被災前と同じ自社のみによる運行という形では持続的な鉄道の運行が困難」としている。
南北リアス線との一体運営だとか、経営の効率化が図られるのではないかといった観点から、三鉄による運営を提案してきたものと理解している。
【斉藤委員】
JRで経営の持続性が難しいので三陸鉄道ならできるというのは、何の根拠もないと思う。
三陸鉄道への経営移管の課題と問題点は何か。
【交通課長】
JRから提案された三鉄への経営移管についての問題点だが、第一に、JRが鉄道設備や用地の自治体所有を求めている点が大きな問題だと認識している。仮に自治体所有ということになれば、設備の維持修繕だとか、将来の設備更新等の負担が生じることが明らかである。それを誰が負担するのかという議論になる。
また沿線市町では、これまでJRから得られてきた固定資産税収入がなくなるということも問題と考えている。
赤字補てんについても、現在の三陸鉄道の運営が、沿線市町村と県が国庫補助の裏負担だとか単独補助といった形で、設備更新や維持修繕費を負担し何とか支えているという状況にある。したがい山田線については、JR東日本からの提案の赤字補てんの内容と期間が重要と考えており、そのような自治体への負担が可能な限り生じないようにするということが課題と考えている。
【斉藤委員】
固定資産税の収入というのはどのぐらいか。
【交通課長】
固定資産税収入については市町村の収入になるものであり、私もそのあたりを確認したいということで沿線市町に照会したところだが、企業の資産の情報に関わるということで公開できないとの回答だった。
【斉藤委員】
JRは公共交通機関を担っているので、単純な民間ではないと思う。そういうものは明らかにしてやる必要があると思う。
3年が明日で経過するが、そもそも3年間復旧のあり方を議論してきて、利用促進策の提言も3月半ばだと。あとは復旧するしかないという段階になって、突然三陸鉄道への経営移管の提案をするというのはルール違反であり無責任だと思うがいかがか。
【交通課長】
おっしゃる通り、県や沿線市町とすれば、これまでJRの方で示されてきた課題、最初は3つの課題ということで、@津波からの安全性の確保Aまちづくりの整合性B財源―の問題ということで投げかけられた。それを一生懸命に解決を図ってきた。その過程の中で、BRTの提案だとか地元での利用促進が必要だという話もあったということで、JRから投げられた課題については、BRTはお断りしたわけだが、それ以外の示された課題については、きちんと誠実に精一杯頑張ってきたという経緯があるので、それからすれば非常にじくじたる思いがある。
【斉藤委員】
JR東日本の提案の本質というのは、一般質問でもお聞きしたが、大震災に乗じて赤字路線を切り捨てるものだと、ここにあると思う。自分ではやっていけないから地方、三陸鉄道へ移管すると。では三陸鉄道でやっていけるのか。そして山田線が切れたら、山田線は盛岡―宮古間はどうなるのか。釜石線も釜石で切れてしまう。そうなると次は山田線・釜石線をいつまで残すかという話にしかならない。もし山田線が切れたら、大船渡線はまったく見通しが立たなくなると思う。だから山田線をJRの責任で復旧させる、運行させると。沿線市町では早く復旧したいという強い思いがあるが、本当にこれはJRの責任でやらせなければいけない。
何しろJRというのは、昨年3月の経常利益で3174億円、内部留保で2兆4690億円ある。復旧しても余りある利益をあげていながら、大震災になったら切り捨ててしまうというやり方は絶対に許せないと思うがいかがか。
【政策地域部長】
本会議でも申し上げたが、委員のおっしゃる趣旨も十分我々も分かっており、それについてはJRにも何度もお話させていただいている。
沿線首長との協議の中では、引き続きJRに対しても運行は求めていくが、今回JRから提案のあった三陸鉄道への経営移管についても、それはそれで選択肢として検討する必要があるのではないかという話もあった。我々としては、現時点では両方の選択肢をしっかり視野に入れながらJRとの交渉を今後進めていくということで考えている。
【斉藤委員】
2つの選択肢、行政としては当然だと思う。しかし基本はJRの責任で復旧させるということで、JRの不当な提案・要求を打ち破っていくという協議が必要である。
山田線についてJR東日本は、「復旧はJRでやる」と。だったら復旧は早くやってもらう、復旧をやりながら協議を続けると。これは道理あることだと思う。すでに大槌・山田・宮古・釜石にしても、まちづくりの事業は始まっている。そしてもうルートも決まり駅の場所も決まっている。かさ上げ事業もやっている。これ以上まちづくりを遅らせられない。JRで復旧すると言っているので、復旧はただちにやると。それと合わせて協議するということが必要ではないか。
【交通課長】
県と沿線市町からは、これまでJRにたいし、協議について重要な事項について大枠の合意が行われれば、詳細な詰めは後でということで、早期に鉄道復旧工事に着手できないのかということを申し入れた。JRからは、「それについては最後まできちんと合意ができなければ復旧に着手できない」といった意向が示されている。
【斉藤委員】
JRの姿勢がなぜ問題かというと、現段階でも復旧を明言しないということは、例えば、中心部に持ち家再建や商店街を考えているときに、「JRが来ないのだったら止める」ということになる。まちづくりと復興にマイナスの影響を与える。まちづくり事業が成り立たないといってもいいぐらいの重大な問題である。これはJRの都合だけで考えてもらっては困る。一緒になり復興をやろう、駅を中心にまちづくりを進めようと。いま仮設住宅に住んでいる方々が中心部に戻って生活もして商売もする。3年経って、この欠点は遅らせられない課題である。このことをJRに強く訴えないと、ますます被災地から離れざるをえなくなる。JRの都合では復興は進まないと思うがいかがか。
【政策地域部長】
委員お話のあった点、我々もこれまでも何度もJRには伝えてきた。すでにそれぞれの市町においては、区画整理等のまちづくり事業が進みつつあるので、計画そのものが鉄路復旧を前提とした計画ということで動いているので、これを早期に決めていただきたいと我々としてもお話している。引き続きそこは粘り強くJRにたいして申し入れていきたい。
【斉藤委員】
ぜひ協議のテンポを速めて、1ヶ月から2ヶ月に1回ということでは間に合わないので、1ヶ月に2回も3回も協議して詰めるような取り組みをぜひやっていただきたい。
三陸鉄道への経営移管となった場合、運賃はどれだけ変わるのか。
【交通課長】
いま手元に資料がないが、2倍まではいかないレベルでの格差である。
・JR大船渡線について
【斉藤委員】
JR東日本の新たな提案は、山側にルート変更で、それでなければ復旧しないと。これは無理難題、時間稼ぎで、大船渡線切り捨てそのものではないか。この提案をどのように見ているか。
【交通課長】
大船渡線の脇ノ沢地区から小友地区について、山側に大きくルートを振るということで出てきた。JRは、山側に大きく移設するルートでなければ復旧が難しいという説明を2月19日の復興調整会議で行った。復旧を要する概算事業費についても、新ルートを前提として400億円、うち山側のルート変更だとか鉄道のかさ上げといった「かかり増し分」について地元に270億円の負担を求めるという非常に厳しい内容を示してきた。
9月の復興調整会議が前回だったが、このときには山側のルート変更というものも話としては出てきたが、その時は「案の1つだ」という言い方をしていた。それが2月の復興調整会議の場では、「これでなければ復旧はできない」と言い方が変わったことについて非常に違和感を覚えた。
【斉藤委員】
大震災から3年経って、現行ルートで陸前高田市も大船渡市もまちづくりを進めているときに、山側にルート変更しなければ復旧しないというJRの姿勢は本当に乱暴である。検討する余地もないのではないか。
沿線市の対応はどうなっているか。県はどのように受け止めているか。
【政策地域部長】
沿線両市においても、早期の復旧を望んでいる。現在は仮復旧ということでBRTの運行はなされているわけだが、まちづくり等においても鉄路復旧を前提とした計画を作っているので、両市ともに早期の鉄路復旧を望んでいると聞いている。それはこれまでのルートを前提としての復旧だと思うので、これについては引き続き我々としても、なぜ現ルートでの復旧ができないのかといったことをJRに強く求めていきたい。
【斉藤委員】
山田線も大船渡線も、JRの提案は公約違反である。
2011年4月5日、JR東日本の清野社長(当時)は、「責任をもって太平洋沿岸7路線について復旧させる。責任者として申し上げている。復旧に全力を傾ける」と明言している。本当に今回の提案は公約違反である。
それだけでなく、私が無理難題だと言っている理由は、JR八戸線は全面復旧した。海側のルートで。なぜ大船渡線だけ山側のルートでなければならないのか。まったく理由も道理もないのではないか。
【政策地域部長】
我々としても今回の大船渡線のルート変更の話、かつ変更後のルートでなければ復旧できないというJR側の説明は、いわゆるダブルスタンダード、他の路線では既に海側を復旧させて走っているという状況が現にあるので、そういったこともお伝えしながら話を進めてきたが、引き続きそこは今後の協議においてもJR側と交渉していきたい。
【斉藤委員】
JR社長の言明にも反し、八戸線の復旧の実績にも反する。3年経ってからのJRの無理難題で時間稼ぎとも思える提案、そして赤字路線の切り捨てというやり方は、前例にしては絶対ならない。これは岩手の課題だけでなく全国の課題だと思う。そういうことで、ぜひ知事も先頭に立ち、そういう無理難題には答えられない、復興はもう待てないと、目に見えるような対応が必要だし、そういう対応が協議を一歩でも二歩でも前に進める力になるのではないか。
【政策地域部長】
委員のお話も踏まえ、さらに知事をはじめ県が総力をあげてJRとの交渉に取り組んでいきたい。
【斉藤委員】
山田線・大船渡線の問題は、本当に復興に成否がかかった、とりわけ中心市街地の復興がかかった問題なので、そういう思いで取り組み、そこもJRに分かってもらわなければならない。そういうことで頑張っていただきたい。
そして我々県議会としても、行政だけに任せず、議会としての独自の取り組み、県民的な運動、小○(こまる)の旗を掲げてJR本社に県議会議員全員が駆けつけるぐらいのことも必要だと思っている。
・合併市町村の現状と課題について
【斉藤委員】
これは本県議会でもかなり議論された。合併の矛盾・破たんが今表れているのではないか。
12市町村にたいする普通交付税総額1286億円のうち、193億円が合併算定替え(約15%)だが、今後終了する。自治体ごとの影響額はどうなっているか。
国は、支所単位で何か措置するという話もしているが、国の対応はどうなっているか。
【市町村課総括課長】
193億円のうち、盛岡市9億5700万円、宮古市20億4500万円、大船渡市4億7800万円、花巻市23億3000万円、久慈市6億6800万円、遠野市6億6300万円、一関市54億8300万円、二戸市6億7800万円、八幡平市14億7900万円、奥州市32億8100万円、西和賀町5億8600万円、洋野町6億1500万円となっている。平成28年度以降、順次縮減されることになる。なお、大船渡市については、すでに24年度から縮減が始まっており、本年度は2年目にあたるが、縮減前6億8200万円に縮減率の0.7を乗じた結果4億7800万円となっている。
国の対応について。ご指摘の通り、国の方で今回合併算定替えの終了を見込み、新たに算定方法を見直すこととされている。具体的には、旧市町村の支所に要する経費を算定するほか、合併により面積が拡大したことにともない増加している消防や保健福祉サービスに要する経費、公民館や消防出張所等の施設数の基準を見直すこととされている。こうした見直しは来年度に検討がなされ、27年度以降、順次交付税算定に反映されることになっているが、支所に要する経費については、先行して来年度から3カ年程度かけて実施されることとなっている。
【斉藤委員】
奥州市長選・市議選の大きな争点になったのは、財政危機である。これから先ほど出た32億円がなくなってしまうと。これでは立ち行かないというので、奥州市は300項目にわたり国や県の基準を超えている独自事業を切り捨てるというリストを出した。これでは独自の自治体がいらないということになってしまう。奥州市は合併して8年経つが、これが合併の結果かと。合併というのは、結果として新たな財政危機をもたらした、周辺はさびれた、これが主要な側面ではないか。
【市町村課総括課長】
たしかに合併市町村については、これから縮減が始まるにあたり、財政運営が非常に重要になってくる。現時点で合併市町村においては、合併算定替え終了を見込んで計画を立てて取り組んできたが、そういった取り組みもあり現時点で地方債残高のピークを過ぎているとか、比較的健全な状況にあるとは思っているが、ご指摘の通りこれからが大事になってくるので、そういった面を踏まえ引き続き健全な財政運営を保てるように市町村課としても助言していきたい。
また先ほどの国の算定の見直しについて、本県の実情が適切に反映されるように、引き続き国に強く求めていきたい。
・岩手の経済と雇用者報酬の推移について
【斉藤委員】
県民総生産と雇用者報酬の10年間の推移はどうなっているか。
なぜ地域経済は後退し、雇用者報酬は下がり続けているのか。その具体的な要因はどのように分析されているか。
55歳昇給停止という議案がかかっているが、聞くところでは市町村はほとんどが55歳昇給停止はやらないと聞いているが、市町村の動向はどうか。
【調査統計課総括課長】
平成13年度以降、県内総生産の名目値については、平成13年度の4兆7567億円から減少傾向で推移しており、平成23年度には4兆1797億円となっている。
県民雇用者報酬についても、平成13年度の2兆5161億円から減少傾向で推移しており、平成23年度には2兆314億円となっている。
減少の原因については、主に平成20年度の世界的な金融危機に端を発した経済情勢の悪化などの影響により、製造業を中心に県内総生産が落ち込んだほか、県民雇用者報酬については、雇用者数の減少や非正規雇用者の増加も要因の1つではないかと考えている。
【市町村課総括課長】
現時点で県内市町村で55歳昇給停止を実施を予定しているのは滝沢市のみと聞いている。
【斉藤委員】
県内総生産が10年間で5700億円後退した。岩手経済が落ち込んでいると。一方で雇用者報酬は4800億円、この雇用者報酬の落ち込みというのが主要な原因ではないか。それがまた消費を縮小させ経済が悪循環している。こんなときに賃下げは許されないと。
滝沢市だけが昇給停止をやると。市になって昇給停止やるというのは恥ずかしいことである。そして県内市町村がほとんどやらないときに岩手県だけがやるということも県民感情からいっておかしいのではないか。