2014年3月13日 予算特別委員会
保健福祉部に対する質疑(大要)
・岩手県総合計画審議会の提言について
【斉藤委員】
「日本一子育てしやすい地域をつくる」という提言を2月13日に出したが、部長としてどう受け止め、具体化しようとしているか。
【保健福祉部長】
出生数の減少が続くなど、少子化が進んでいる本県においては、岩手の未来を担う子どもたちが健やかに育つ環境の整備を進める必要があると考えており、これまで、いわて子どもプランに基づき、若者・子育て家庭・子どもの健全育成の支援を施策の基本方向とし、県民のライフステージに沿って切れ目のない支援を総合的に推進している。
提言に触れられている、若者と女性の活躍、少子化対策などは、地域の力を最大限発揮し、地域の持続可能性を高める上で重要な視点であり、今後提言の趣旨も参考にしながら取り組んでいきたい。
来年度、岩手県子ども子育て支援事業計画を策定することにしているので、策定過程での岩手県子ども子育て会議での関係者のさまざまな意見や、若者・女性の視点も取り入れて、結婚・妊娠・出産・育児の切れ目のない総合的な少子化対策を推進していきたい。
【斉藤委員】
残念ながら部長の答弁には具体的に提言されている、子育て期間中の継続的経済支援の充実について一言も触れなかった。義務教育終了まで学費・医療費を無料化、子育て期間中子育て経費の一定額助成を継続と具体的に提言している。
・子どもの医療費助成拡充について
【斉藤委員】
小学生以上に医療費助成を拡充している都道府県の状況はどうなっているか。
現物給付となっている都道府県の状況は併用を含めてどうなっているか。
県内市町村の医療費拡充の実施状況は、高校卒、中学校卒、小学校卒までどうなっているか。
【健康国保課総括課長】
平成25年4月1日現在、小学校以上に拡充している都道府県の状況だが、入院医療費のみを対象としているのが9道県、入院・通院医療費とも対象が14都府県となっている。
平成25年4月1日現在の現物給付を採用しているのが23都県、対象年齢や入院・通院の別などにより現物給付と償還払いを分ける併用方式を採用しているのが14府県となっている。
県内市町村の1月1日現在の子どもの医療費助成の対象年齢を拡大しているのは25市町村である。高校卒までが3町村、中学校卒までが11市町村、小学校卒までが9市、小学校3年生までが1市、小学校1年生までが1町ある。
【斉藤委員】
日本一子育てしやすい岩手を目指そうという提言が出されているときに、子どもの医療費助成は、岩手県の停滞した遅れた分野になっている。全国的に医療費助成を拡充しているのは、入院でみれば小3も含めれば23都道府県である。現物給付は37都道府県が行っている。
ある小児科医が2月25日の岩手日報の論壇で、「償還払いのため病院受診時はかかった医療費の2〜3割を一度支払わなければならない」と。「この助成は、月単位で一医療機関あたりの助成額なので、子どもが小児科だけでなく耳鼻科や皮膚科、または薬局で薬をもらえばそれぞれ医療費がかかる」と。そして若いお母さん方の声も紹介しており、「子どもの医療費が高く、病院での窓口が大変。子どもを病院に連れていくときはまず財布の中身を確かめる。1人親には子どもの医療費はとてもきつい」と。
一般質問でも取り上げたが、他県から岩手、盛岡に来た人が一様に驚くのが窓口負担である。医療費助成の対象年齢も拡充すべきだし、せめて全国並みに現物給付に見直すというのは全国の流れなのではないか。この改革なくして、日本一の子育てなんて恥ずかしくて言えないと思うがいかがか。
【健康国保課総括課長】
現在、就学前までの対象を拡充するためには、多額の県費負担が見込まれるところだが、県単独政策において県立病院等事業会計負担金が多額となっていることなどから、ただちに実施することは難しいと考えている。
また、現物給付とした場合、市町村の国保に対する国庫支出金が減額されることから、市町村等と協議した上で償還払いとしており、県としては引き続き国に対してこの減額措置の撤廃を要望していく。
【斉藤委員】
日本一子育てしやすい県を目指すのである。そのときに、全国からは遅れている、若いお母さん方は一番これを苦にしているというときに、これを改革しないでどうするのか。
小学校卒業まで医療費助成を拡充した場合の必要な経費、償還払いをやめて現物給付にした場合に国から不当に行われるペナルティの額を示していただきたい。
【健康国保課総括課長】
仮に小学校卒業まで対象を拡充した場合の県費負担額は、粗い試算だが約4億円と見込んでいる。
現物給付化した場合の国のペナルティの試算だが、県単医療費全体で試算すると、6億3000万円国庫支出金の減額措置があると試算している。
【斉藤委員】
県内の市町村では、対象年齢は23の市町村が小学校卒・中学校卒・高校卒までやっている。一番大変な被災地でもほとんどやっている。なぜかというと、そういう一番厳しいときこそ子どもを大切にする、子育てしやすい地域をつくりたいという思いである。これをしっかり県政が受け止めるべきではないか。
現物給付にすればペナルティというのは、ぜひこれは国政のレベルでなくしていただきたい。群馬県は、中学校卒まで現物給付で所得制限なしでやっており、それで医療費が増えているかといえばそうではない。アレルギーなどの子どもたちが気軽に病院にかかり、救急患者が減ったともいわれている。そういう意味で全国の先進例からしっかり学んでいただきたい。
償還払いについても、ぜひ市町村と協議していただきたい。全国でたった10県しかないのだから。
【保健福祉部長】
いずれ今後いろいろ個別の事情を判断しながら、他の施策の優先順位など総合的に勘案しながら、提言については県政への反映を検討していくものだと考えている。
【斉藤委員】
県内市町村は対象年齢を拡充しているので、償還払いも個別の市議会で聞くと「検討したい」と。県と協議すると「償還払いでいい」ということになる。全体でよく議論していただきたい。
・国保税の課題について
【斉藤委員】
滞納による資格証明書の発行、短期保険証の発行と未交付の状況はどうなっているか。前年からどう改善されているか。
国保滞納処分の状況、先日の朝日新聞の1面では、この10年間で国保滞納者に対する差し押さえが倍に増えたという大変ショッキングな記事があったが、岩手の場合はどうか。
【健康国保課総括課長】
資格証・短期保険証の発行状況だが、平成26年2月1日現在で資格証発行世帯が247世帯、うち本人と連絡がとれないなどの理由で未交付となっているのが3世帯、短期保険証世帯が9443世帯、うち未交付が1949世帯、25年2月に比べて資格証発行世帯数は144世帯減、未交付は10世帯減となっている。短期保険証は、発行世帯が520世帯減、未交付は185世帯増となっている。
滞納処分の状況は、平成20年度から24年度までの5年間で、差し押さえ件数・金額とも減少傾向にあったが、24年度については件数が5983件・約9億6000万円の増加となっている。
【斉藤委員】
資格証の発行というのは、窓口全額払いである。これはやるべきではない。短期保険証については9443世帯と、3ヶ月とか6ヶ月とか、大変なことである。もっと重大なのは、未交付世帯が1949・2847人もいる。保険証が届いていないと。保険証取り上げなどということは、命に関わる問題で、あってはならない。こういうことを放置していていいのか。
【健康国保課総括課長】
短期保険証の未交付の理由ということで市町村に聞くと、例えば本人が不在だとか住所が不明ということで、本人と連絡がとれず交付ができない、連絡してもなかなか受け取りに来てもらえないという理由である。
県としては、市町村にたいし電話連絡とか家庭訪問等による接触を試みていただき、速やかに手元に届けるよう、そのような対応をするよう要請している。
【斉藤委員】
資格証や短期保険証が未交付というのは保険証の取り上げで命に関わる問題なので。そして相談に来ないから未交付ということは許されない。滞納している人たちは、それだけでも役場に行くのが気が重く敷居が高い。命綱である保険証を、役場に来ないからということで未交付にしていいのか。そういうことは直ちに改善すべきだと思うがいかがか。
【健康国保課総括課長】
短期保険証の交付の1つの意義だが、本人と会い、納税に関する相談等の対応をきめ細かに行うために、その面接する機会を設けるということは大きな目的で、それを十分果たすように今後とも会議等を通じて市町村に助言していきたい。
【斉藤委員】
連絡がとれないなどと言うが、盛岡市は未交付はたった4世帯である。ほとんど盛岡市の場合には資格証の発行も短期保険証もやめてきて何の弊害もないと言っている。保険証を交付して協議すればよい。来ないから保険証を取り上げるというやり方はやめるべきである。
さらに、こういう滞納者から財産を差し押さえする、これが5983件9億6000万円と。こんな冷たいことはない。朝日新聞でも指摘しているが、給与の差し押さえまでやっているところがいくつあるか。
【健康国保課総括課長】
平成24年度、給与の差し押さえを行ったのが23市町村となっている。
【斉藤委員】
給与の差し押さえの場合、生活費は手をつけてはならないと。1人10万円、配偶者を入れれば4万5千円、子どもがいれば+9万円である。国保税も払えない人が、19万円以上の所得があると思うか。そういうときに給与を差し押さえたら生活費がなくなる。そういう原則があるわけだから、給与の差し押さえは基本的にはやってはならない。生活費をしっかり確保すべきである。そういうことが徹底されているか。23市町村が給与の差し押さえまでやっているのは異常なことである。
【健康国保課総括課長】
給与の差し押さえについては、県としても国税徴収法の規定にのっとり、市町村にたいし、国保税の納税が困難な被保険者の方々の状況をきめ細やかに把握し、その相談に応じ、分割納付や徴収猶予、減免に適切に行うよう会議等を通じて要請を行っている。
【斉藤委員】
ぜひ改めて徹底していただきたい。実態がそうなっていないので。16万円だと8万円差し押さえられる。改めてそういう取り立てはやらないよう徹底していただきたい。
・後期高齢者医療制度の問題点について
【斉藤委員】
年金が減額されて、これから消費税が増税されるときに、後期高齢者の保険料を引き上げると。これは大問題ではないか。具体的理由を示していただきたい。
こういうときこそ、医療費の値上げを抑えるような対策を講じるべきではないか。
【健康国保課総括課長】
後期高齢者医療制度の保険料率については、2年ごとに改定の検討が行われているが、前回、24年度25年度の保険料率の改定にあたっては、東日本大震災津波の発生直後であったことを考慮し、保険料率を据え置いた影響、それから医療給付費の増加、現役世代の負担軽減のための後期高齢者負担率の引き上げ等から約33億円の財源不足が生じるという風に見込まれ、保険料率の引き上げは避けられなくなったと聞いている。
なお、県では後期高齢者医療財政安定化基金を交付し、急激な保険料率の引き上げによる被保険者の負担増の抑制を図ることとしている。
【斉藤委員】
秋田県では据え置きを決めたと。例えば、国保税だったら、今年度も10市町村が一般財源から投入してでも値上げを抑えるということをしている。後期高齢者医療制度でも、震災から3年目で、一番生活が厳しい時期である。そういうときの手立て・対策を知恵もお金も出してやるべきではないか。
・被災者のいのちと健康を守る取り組みについて
【斉藤委員】
被災地に行って聞くが「もう限界だ」という声が強い。仮設でのストレス、生活苦、さらには住宅再建の見通しが立たない。被災者のいのちと健康を守る取り組みは特別に重要だと思うが、被災者の健康状態をどのように把握しているか。
保健師の訪問などによる要見守り、医療的対応、専門的心のケアが必要な状況をどのように把握しているか。
来年度、被災者のいのちと健康を守る具体的な対策はどうなっているか。
【健康国保課総括課長】
被災者の健康状態について。岩手医大が沿岸4市町村で実施している被災者の健康状態等に関する調査研究によると、平成24年において、「健康状態が良くない」が前年比で減少しているが、仮設住宅の住民はそれ以外の住民と比較し割合が高い。心の健康に関しても、仮設住宅の住民の方は、それ以外の方と比較し、睡眠障害のある方、心の健康に問題のある方の割合が高いという結果が出ている。
保健師の訪問による状況は、これは全戸訪問等の集計がまとまっている沿岸3市町村からの聞き取りでは、仮設住宅入居者の約3%が心のケアや生活習慣病等により保健師の個別訪問などによる継続的な支援を必要としている。
県では、市町村が実施する仮設住宅入居者等の健康調査や、要支援者への保健指導・栄養指導を行う保健師・栄養士等の派遣、被災者の健康維持・増進のために市町村が実施する健康づくりサポート事業に要する経費の補助など、引き続き実施することとしている。
【障がい保健福祉課総括課長】
地域心のケアセンターに保健師など専門職を配置し、あるいは精神科医師が相談を行うことができるように、震災心の相談室の運営を行ってきているわけだが、そういった場で受けている相談の中身として、身体症状や不眠等を訴える方が多いわけだが、避難生活の長期化や今後の生活に対する不安、大切な方を失った深い悲しみなどから、鬱等の症状を訴える方も多くなってきている。
そうしたことから、専門的な支援が必要な方には、専門職による個別支援を丁寧に行っていくことと合わせ、被災地の状況の変化に応じた適切な対応を行えるように地域の関係者と協議しながら連携体制を強化していきたい。
また、長期的に被災者への支援を継続するためには、地域全体の健康力の向上を図ることも必要なことから、住民への健康教育やゲートキーパー研修をはじめとした人材育成をきめ細かく実施していきたい。