2014年3月13日 予算特別委員会
医療局に対する質疑(大要)
・岩手県立病院等経営計画について
【斉藤委員】
新しい経営計画の主な内容、新しい特徴は何か。
【経営管理課総括課長】
20病院、6地域診療センターでの現行体制を基本とし、県立病院間のみならず、福祉・介護施設等の役割分担と連携を一層進めながら、県民に良質な医療を持続的に提供することとしている。
また、医師不足解消に向けた取り組みを進めることはもとより、基幹病院に医師等を重点的に配置しながら、圏域内の地域病院への応援態勢を強化するなど、県立病院間のネットワークを活用した円滑な医療提供体制を構築するほか、医師をはじめとした医療従事者の負担を軽減し、医療の質や患者サービスの向上を図るため、医療提供に必要な職種の人員増を行うとともに、職種間の連携を強化するなど、チーム医療を推進することとしている。
こうした取り組みを進めるためには、安定した経営基盤の構築が必要であり、収益の確保や効率的な費用の執行など、経営の効率化に積極的に取り組むほか、診療報酬改定等の経営を取り巻く環境の変化に迅速に対応することとしている。
【斉藤委員】
今回の経営計画を読んで、20病院6診療センター体制を維持すると。前回は、あまりにも乱暴な、住民の合意を経ない診療所化が行われ、花泉診療センターのああいう不祥事まで起きてしまった。そういうことを見直して、そして今回は、不十分だとは思うが、医師・看護師等の322人の人員増を打ち出したということは、基本的には評価したい。
職員配置計画では、322人の増となっているが、今回議会に提案されている定数条例では、5209名、今の定数より207名増ということである。この程度の増員で間に合うのか。皆さんの定数計画だと、平成30年には、正規と常勤・臨時職員を含めると6282人になる。この整合性はどういうことになるのか。この程度の定数増でいいのか。
【職員課総括課長】
職員配置計画と定数条例の改正についてだが、職員配置計画の職員数は、正規職員と常勤臨時職員の合計数とり、一方定数条例に規定する定数には、臨時的任用職員は含まないものである。職員配置計画では、25年5月現在の現員数5960人から322増員し6282人とすることとしているが、うち正規職員については4882人から327人増員し5209人とする計画としている。現在の条例定数5002人にたいし、実際に不足する207人について、今回の条例改正により増員しようとするものである。
【斉藤委員】
正規職員は327人増やして5209人だと。これ以上増やせないということになる。定数条例というのであれば、これ以上増やせないという条例になってしまうので、もっと余裕をもった定数条例の改正にすべきではなかったか。
そうすると、25年度の現員5960人、うち正規が4882人ということでいいか。そして6282人が平成30年度の目標だと。そうすると、5209人というのが正規で、その差が約1000人、これが常勤臨時職員ということでいいか。
【職員課総括課長】
見込みの通りである。
【斉藤委員】
看護部門の増員について、130人5年間で増員すると。しかし内訳を見ると、被災病院の再建で72人。医療の質の向上はわずか68人。これも20病院ある中で68人の増員だったら、病棟に1人も増えないということになるのではないか。68人で、医療の質の向上でどういう改善が図られるのか。
【職員課総括課長】
職員の増員については、今後の病院等の機能のあり方を踏まえ、収支計画の推移等も勘案しながら、可能な限り職員体制の充実を図ることとした計画である。
その中で看護師については、被災病院の再建にともなう看護体制の構築のほか、医療の質の向上に向け、地域医療福祉連携の体制強化のための他院調整に関わる看護師の配置や、人材育成のための教育担当看護師の配置、救急・がん・周産期医療の充実など、看護師の増員を行い、県立病院に求められる課題に対応するため、計画的に体制強化を図っていくということにしたところである。
【斉藤委員】
計画の中で大東病院については、来年度25人の看護師を配置すると。大東病院の今の医師体制、今日の新聞報道では新しい院長の名前も紹介されているが、どういう体制で40床を維持するのか。
【医師支援推進監】
現在最終調整の段階であり、現時点では明言できない状況だが、必要な人員配置や診療体制の整備を行っていく考えである。
【斉藤委員】
大槌病院の院長先生にお聞きし、病棟を確保した場合どのぐらい必要かと聞いたら、今の5人は必要だと。いま大東病院は2人である。どのぐらいだと思って調整しているか。
【医師支援推進監】
病棟再開にあたり3〜4人は必要だと考え、それを目標に取り組んでいる。
【斉藤委員】
それだけでは不足だとは思うが、新しい院長先生を県外から呼ぶということなので、きちんと医師・看護師の体制を確保してやっていただきたい。
被災病院の再建で、来年度は25人だが、27年度は21人看護師を増員するとなっている。これは大槌病院のことか。
【職員課総括課長】
大槌病院を想定したものである。
【斉藤委員】
そうすると、大槌病院の場合は来年度から建設に着手できるという話だった。おそらく1年ぐらいの建設工事で、27年度中にはできるので、28年度オープンとなっているが、おそらく27年度から体制をとり、全面的には28年度からと。27年度から病棟を前提にした体制をつくるということか。
【職員課総括課長】
病院建築の進み具合との関係について、職員体制の配置時期が変わってくるわけだが、その辺については建築の進み具合等を勘案しながら詰めていくということになる。
【斉藤委員】
27年度中には病院再開できると。助走しながら28年度の全面的なオープンに向けることができるのではないか。少しでも前倒しされれば大歓迎されるので。あなた方の計画は、27年度からそれを前提にした看護師の増員計画を立てているので、良いことはしっかりやっていただきたい。
経営計画の中で、パブコメの中身を見ると、調理業務の全面委託というものがあり、これは問題ではないかという意見も寄せられた。医療局の回答は「対応困難」ということだが、病院というのは、やはりチームワークである。調理業務含めて、患者のために意思疎通してやるべきではないのか。この調理業務の委託は見直すべきではないか。そしてどこの病院を業務委託しようとしているのか。
【業務支援課総括課長】
来年度からの5年間の計画の中に、委員の方々にも配布している計画の中にも入っているところである。病院名は入っていないが、計画5年の中には、地域病院で導入するということで計画している。
委託をすることによりチーム医療が崩れるのではないか、質の低下等も懸念されるということだが、私たちもそこは懸念しているところである。懸念と申しますか、現在でも2つの病院が調理業務委託入っている。これまでの契約形態というのは、指名競争入札、価格を一定程度基準にしながら、安い業者ということで決めていたが、来年度からの導入については、プロポーザル方式(業者からの提案による方式)に改めたところである。価格だけではなく、質も担保しながら今までよりも低下しないよう、むしろ上がるように、そしてその他の医療スタッフとの連携も深めながら進めていきたい。
【斉藤委員】
言葉はいいが、目的は経費削減である。どこにしわ寄せがいくかというと、そこで働く人たちの賃金が安くなるだけである。そういうやり方は見直すべきである。低賃金社会をつくってはいけない。
地域病院、計画では10病院まで業務委託するとなっているが、地域病院以外はやるつもりはないということか。次は大きい病院もということか。
【業務支援課総括課長】
30年度までは地域病院ということで、それ以外の基幹病院については、改めて検討するとしている。導入する・しないという考え方については現在ない。
【斉藤委員】
いずれ、全体として今回の経営計画は前向きだと思っている。しかし業務委託というのは従来型の発想である。民間委託で安くすると。それで結局質は良くならない。そういう点ではこの点は問題だと思う。
・看護師確保対策について
【斉藤委員】
日本医労連が、全国の看護師3万2000人の調査をした。大変深刻な実態が示されているが、これは把握しているか。
【医療局長】
岩手県医療局労働組合から、その調査報告書の提供を受けている。
全部で84ページの資料だが、調査実施の概要だとか調査結果の特徴、自由記載欄の章を中心に目を通した。
感想としては、全国的にやはり看護職員の勤務実態が非常に厳しい状況に置かれているということを改めて認識した。そうした中で、集計結果が、全国の数字しかないため、その点比較して岩手県の県立病院の看護師の状況が、より厳しいのか全国ほどではないのかといった比較ができないということだが、いずれ今後の看護師の勤務環境の改善あるいは看護師確保の施策を考えていく上でも参考にしたい。
【斉藤委員】
32000人の調査、岩手県から2100人のアンケートが集約されている。
全体的特徴は、慢性疲労74%、健康問題60%、強いストレス67%、危ぶまれる母性、3人に1人が切迫流産、流産も約1割と。本当に看護師の健康が危ぶまれているのが全国的な調査だが、2100人の岩手県内の病院の看護師、これはほとんど県立病院と医大が8〜9割占めるので、県立病院の実態とみてもいいと思う。
1年前と比べた仕事量の変化について、大幅に増えた30.6%、若干増えた38%、計68.6%が増えたと。
最近3年間のミスやニアミスの経験「ある」が88.5%、医療看護事故が起きる大きな原因は何か、「慢性的な人手不足による医療の現場の忙しさ」が84.1%、「交代制勤務による疲労の蓄積」30.8%と。
最近出ている健康状況の症状、「全身がだるい」59.9%、「目が疲れる」47.6%、「いつも眠い」45.9%。
患者への十分な看護の提供はどうか。「できていない」62.5%。主な理由として、「人員が少なく業務が過密」78.3%、「看護業務以外のその他の業務が多すぎる(研修・会議を除いて)」46.2%。
圧倒的に人員不足の中で、看護師が命を削りながら仕事をしているという実態になるのではないか。
そこで、年休が自由に取れる看護体制にすべきではないか。取得状況はどうなっているか。
月9日夜勤など今までなかった。今は月9日夜勤がやられている。県立病院の実態を示していただきたい。
【職員課総括課長】
平成25年の年次休暇の平均取得日数は8.1日となっており、平成23年と比較し0.2日の増、24年と比較し0.2日の減となっている。
今年度において、第三四半期までの実績で、13病院で延べ514回・2.7%の9回夜勤が発生している。その主な要因として、年度途中での看護師の退職、病気休暇等によるものと認識しており、夜勤が発生した場合においては、翌月以降に夜勤回数を調整するなど、可能な限り年間を通して月8回以内となるよう努めている。
【斉藤委員】
平均8.1日だが、中央病院が6.6日、胆沢病院が5.9日と、20日のうちこれしか取れていない。
看護師の一番切実な要望は、自由に年休を取りたいと。子どもの授業参観などに行きたいと。しかし病気になっても休めない。それどころか、月8日夜勤が原則だったが、これが崩れている。改善どころか、命をすり減らす状況になっている。
いま看護師確保競争の時代に入り、看護師が病院を選ぶ時代である。経営計画の中にも、「働きやすい環境をつくる」とある。本気になってこれをやらなかったら、県立病院は見放されてしまう。そういう点では、130人、医療の質の向上68人の増員では本当に微々たるものでしかない。
中央病院はもっとも苛酷な病院の1つだが、中央病院の看護師の増員は、今年はどうなって来年はどうなるのか。
【職員課総括課長】
26年度の体制については、他院調整に関わる看護師を1名増員する予定としている。
産前産後休暇や育児休業等の取得者が平成25年度と比較し、13名少なく見込まれていることから、その代替職員として配置を減員したことなどにより、定数配分上は9人の正規看護師の減員を行うこととしている。
なお、産休・育休取得者の代替職員の減員については、その見合いの職員が産休・育休から復帰するものであり、実働人員が減るものではない。
【斉藤委員】
9人減員という答弁だった。年休も取れない、9日夜勤が増えている中で、中央病院は減らすのか。
【医療局長】
答弁の通り、定数の配分上は、産休・育休の代替職員分の配置を減員するが、これは、その後休んでいた職員が職場に復帰するので、実働の人員として減るものではない。あくまで定数の配分上の問題、数字の問題である。
中央病院では、正規職員でみると、例えば平成23年度から24年度について、定数を9名増員した。24年度から25年度にかけては11名増員してきている。そういった中で、産休・育休を取得する職員の数に応じて、その代替職員は今正規で埋めるという方針なので、産休・育休をとる人数の見込み数の増減によっては、その配分上の定数というのは、定数によっては増減があり得るということである。
【斉藤委員】
途中で退職する看護師が多い。そしてほとんどそれが補充できない。中央病院は大変だということが伝わっているので。そこも踏まえて対応していただきたい。
・消費税増税の影響について
【斉藤委員】
これまでの消費税の負担額の累計額はどうなるか。
来年度の消費税負担額、収支の見通しはどうなるか。
【経営支援課総括課長】
消費税が導入された平成元年度から決算数値として確定している24年度までの間の消費税負担額ということで、総額が431億円余、過去の消費税に対応した診療報酬の引き上げ等により補てんされたと推定される額が約287億円であり、最終負担額は143億円余と試算している。
来年度の消費税負担額だが、24年度の決算数値で試算すると、税率改定により9億6000万円余の増加が見込まれる。こうした医療機関の負担については、国では診療報酬で手当するとし、先般診療報酬改定にかかる告示が発出されたところだが、当県立病院事業の入院収益のおよそ半数を占めるDPCにかかる増税分の詳細は不明である。したがい、税率改定にかかる診療報酬での措置額を正確に算定できない状況にある。このため、便宜上、国が示している診療報酬改定のうち、消費税改正にかかる改定率―すなわち医科分0.71%および薬価分0.73%を用いて大まかに算定すると、医科分が5億6000万円余、薬価分が5億8000万円余となり、今回の税率改正分に限ってみれば、所要の補てんがなされるという試算結果となっている。しかしながら、現行税率の消費税の最終負担額は、24年度決算で3億7000万円余と試算しているところであり、今回の措置がこの負担分をカバーするまでには至らず、実質的な持ち出しが生ずる構造には変わりがないものと認識している。
来年度の収支の見通しは、26年度当初予算においては、費用については、消費税率8%で積算し、収益については診療報酬改定の影響を見込まず積算している。これにより、会計制度の見直し等による特別損失を除いた経常収支では、21億円余の黒字を見込んでいるところであり、先ほどの試算を踏まえると、経常ベースでは一定程度の黒字が確保できるものと考えている。