2014年3月14日 予算特別委員会
復興局に対する質疑(大要)
・国・他県に先かげて取り組んできた事業と復興基金について
【斉藤委員】
大震災から3年が経過し、これから復興計画で、第二期復興実施計画もつくり本格復興に取り組むという時期なので、3年間の間、岩手県が国や他県に先駆けて取り組んできた県単事業はどういうものがあるか。
復興基金事業で具体化した事業と今後の財源の見通しはどうなっているか。
【総務企画課総括課長】
地域の被災状況に応じた復旧や復興を急ぐために、本県においては、国の予算措置を待たずに補正予算を認めていただき、これまで対応してきた。
平成23年度においては、12回の補正をお願いしたところである。主な例としては、23年4月の段階で、中小企業の方々の事業再建のために、修繕費の半額を補助させていただくと、6月には水産業の経営基盤復旧事業ということでは、ワカメやコンブといった養殖施設等の共同利用施設の復旧支援を行わせていただいた。12月には、被災者住宅再建支援事業費補助ということで、さまざまな制度のすき間にあって応急処理の適用を受けない方々の住宅の修繕を支援させていただいた。24年度からは、いわゆる100万円補助ということでさらに住宅の再建を支援してきた。
復興基金の関係だが、これまで725億円積み立てている。うち425億円については市町村に交付させていただいているので、残り300億円が県の分ということになる。
具体的には、これまで既存の制度では手の届かない部分、例えば住宅再建費用の一部助成などに約70億円、中小企業の被災資産復旧等に12億円、三鉄の再建支援に20億円をはじめとして、国保・後期高齢者医療における一部負担金の免除に関する経費だとか、市立学校の災害復旧支援などを行わせていただいた。
今年度末の残高は約180億円と見込んでいるが、現在実施している各事業を維持するだけでも30年度には枯渇する見込みである。
第二計画に入り、本格的な復興が進んでくると、産業も生活もさまざまな新たなニーズが出てくると思うが、それに対応するところはなかなか厳しいものがあるので、こういう点についても引き続き国に要望していきたい。
【斉藤委員】
震災の年の4月に、中小企業被災資産修繕費補助をいち早く、中小企業に対しては今まで融資しかなかったが、岩手県が全国に先駆けてこういう取り組みをしてきた。6月には養殖施設への支援。漁船の確保も、国庫補助が決まらない段階で、補助を獲得できるものという形で6月に措置している。生活再建の住宅支援、100万円の補助、医療費・介護利用料等の支援など、3年間は岩手県の復興の取り組みは基本的に、被災者・被災地に寄り添った前向きな取り組みだったと思う。
その最大の財源になったのが復興基金である。300億円、どんどん取り組んでいるので30年度には財源がなくなると。今の取り組みを維持するためにも、やはり自治体が自由に使える財源確保は緊急の課題なので、国がやらないというなら県や市町村が被災者に寄り添った取り組みができるような財源の要求を強くやっていただきたい。
基金の状況で、安全の確保、暮らしの再建、生業の再生にどれだけ基金が具体化されたか。今後の財源確保の決意も含めてお聞きしたい。
【総務企画課総括課長】
分野ごとの基金の使用状況だが、一番多いのが生活再建・暮らし、住宅も含めた部分であり78%である。次には、中小企業を中心とした生業の再生の分野に14%弱。あとは交通の関係で安全の分野に1割弱となっている。
このままの状況が続けていくだけでもなくなると。第二計画の策定作業を進めているわけだが、この中にもさまざま被災地の方から新たなニーズ・要望等がきている。そういうものに今後、毎年度ローリングしていく中で対応していくためには、基金を十分に国から手当されないと都道府県の計画も進まないということで、どのぐらい必要になるのかという全体の財源もあわせ、他県と連携し要求していきたい。
・持ち家再建に対する支援について
【斉藤委員】
防集や区画整理・漁集など、1年間で10087戸の計画が8405戸に持ち家の宅地造成の計画が1682区画・16.6%減少している。減少した主な要因を県はどのように分析しているか。
持ち家再建を支援するために、どういうことが必要か。
【まちづくり再生課総括課長】
まちづくりにかかる持ち家再建の減少について、委員からご指摘のあったものは、国が公表している住まいの復興工程表において市町村が供給を予定する宅地の区画数である。たしかに24年12月時点で10087区画、昨年12月末で8405区画となっている。この数値の変動は、市町村における意向調査の精度が高まったことに加え、当初の調査では、高台移転等を希望していたものの、住宅用地の確保時期を考慮されながら、震災復興特別交付税を財源とした市町村における支援策などもあり、自ら土地を探し求めての住宅再建や民間賃貸住宅への入居、あるいは被災地を離れた場所での再建など、意向が変化した方がいるなどが主な要因ではないかと考えている。
【生活再建課総括課長】
持ち家再建にかかる課題だが、やはり用地取得の問題などから、面的整備がなかなか進まないということで、住宅用地の確保が遅れている。この用地の確保とあわせて、災害公営住宅の建設の遅れなどもあり、被災されている方々がどういった形で再建するかという再建方法の意向が揺れているということがある。
県としては、第二期実施計画期間において、面的整備を加速していくことが重要、あわせて被災者住宅再建支援事業を実施していくが、いずれ支援額の増額と震災復興特別交付税など、地方財政措置による支援の拡大を引き続き国に対して強く要望していく必要があると考えている。
【斉藤委員】
わずか1年間で1682区画・16.6%も持ち家再建しようとしていたのが減った。それは、待ち切れずに自ら土地を確保し再建した人、民間賃貸住宅に移った人、さらには被災地から離れた人―。このまま放置したらこの傾向は続くと思う。
そして今年中にまちづくりが全て整備されるどころか、まちづくりで宅地が完成するのは来年再来年にピークを迎える。あと1年2年、下手すれば3年以上待たなくてはいけない。そういう中で被災者の方々は、限界にきて、迷っている。だから希望がほしい。
答弁で足らなかったのは、用地取得の困難と公営住宅にするかどうかという迷いと、資金不足である。平均して2000万円かかる、500〜700万円の支援策はかなり頑張ってつくったが、それでも足りない。だから国がこの一大事で支援金を増額しないことは許されないことである。これは何としても500万円以上に引き上げるということを求めていってほしいが、「待っていられない」というのが被災者の状況である。県や市町村がさらに100万円200万円上乗せして、被災者に希望を与えるということが本当に今の局面で求められているのではないか。
【理事兼副局長】
財源に限りなくあれば、もちろん上乗せすべきものだが、予算の限界と、国に寄り添うわけではないが、今後予想される大災害のことを考えると、無尽蔵に国としても300万円にかさ上げすることについては、相当覚悟がいる措置だとは思っている。
【斉藤委員】
国の被災者生活再建支援金についていえば、4年後に見直すということになっていて、その見直しの時期を過ぎている。そして震災直後に、民主党も自民党も500万円に引き上げという提言をした。ある意味では、そういう合意が震災直後にあったが、それが財務省の圧力で冷えてしまった、これが真相だと思う。これだけの戦後最大の大災害のときに引き上げなかったらいつ引き上げるのか。ぜひそれをやるべきだし、必要な財源を確保しながら、これは時間との勝負なので。持ち家再建が進まなかったら高台移転も見直しである。区画整理も穴だらけになってしまう。そういう深刻さをもって、持ち家再建を思い切って支援すべきである。
・住宅の二重ローン問題について
【斉藤委員】
直近で、住宅二重ローン解消の申請はどうなっているか。うち債務整理の見通しが立った者はどうなっているか。
【生活再建課総括課長】
平成26年3月7日現在、個別の相談件数が998件、債務整理開始の申し出件数が112件、債務整理成立が216件となっており、時間の経過とともに一定程度の伸びが見られる。ちなみに、昨年同時期の成立件数は68件であり3倍になっている。
【斉藤委員】
998件の申請そのものが少ないと思う。そして、998件のうち328件しか債務整理の見通しが立たないと。たった3分の1である。申請が少ないのはなぜか。そして申請したにも関わらず3分の2が認められない、排除されている理由は何か。
【生活再建課総括課長】
なかなか申請に至っている部分が少ないことについては、我々やガイドライン運営委員会も連携しながら周知に努めているとはいえ、被災者の方々に制度の内容が十分に伝わってはいない状況があるかと思う。
そしてなかなか債務整理までいかないという部分については、一定額の収入や資産がある、あるいはそういうことで返済が可能ではないかと判断されるケース、そして震災前から滞納があったということで、震災に起因する返済困難ではないということで制度利用の対象外と判断されるケースがあり、利用の要件が厳しいということを聞いている。
【斉藤委員】
金融庁が2月に資料を出しているが、現段階で、返済を一時停止している債務者、すでに払い続けている債務者、東北3県のデータが出ていると思うがどうなっているか。岩手県はどれだけと推計できるか。
【生活再建課総括課長】
被災三県の合計では、約定返済を一時停止している債務者が361件、うち住宅ローンにかかる部分が160件と公表されている。
条件変更契約、いわゆるリスケジューリングを行っている契約を締結した債務者数は28169件、うち住宅ローンについては8867件となっている。
これは三県全体の数字であり、被災者にかかる部分、本県のみの部分の件数も把握できない。
【斉藤委員】
いま被災三県の数字で被災者に限らないが、約定返済一時停止がたった160件、岩手県の比率4分の1だとすると40件。8867件が返済し続けていると。4分の1で換算すると2200件である。圧倒的に被災者は、流された住宅のローンの返済をさせられている実態である。
金融庁や東北財務局、盛岡財務事務所は去年の12月10日に、被災者に制度の徹底をするよう通知している。ぜひ県内の金融機関に聞き取りをやっていただきたい。被災者のローンでどのぐらい扱いがあるのか。金融庁の通知は徹底されているのか。
1000万円2000円の流失した家のローンを払い続けさせるやり方は、被災地の金融機関としては問題だと思う。金融庁の通知で、ガイドラインの徹底を求めるべきだと思うがいかがか。
【生活再建課総括課長】
県としては、昨年11月25日に県主催で開催した岩手県中小企業金融連絡会議、こちらに参加したほぼ全ての金融機関にたいし、ガイドラインの利用を積極的に進めていただくよう要請している。また岩手弁護士会や東北財務局とも連携し、沿岸・内陸各地で延べ13回にわたり開催してきた無料相談会においても、金融機関から直接債務者個々にたいし周知を行っていただくなどの協力をいただいている。
今後とも県として、関係機関との緊密な連携のもとに、ガイドラインの利用促進に向けて、周知とあわせ、国に対してもあらゆる機会をとらえ、個人の二重ローン解消に向けた支援を要望していく。
【斉藤委員】
二重ローンの解消が進まない原因は、個人版私的整理ガイドライン運用基準、これが10月30日に初めて成文化された。そこには、「事業性債務を負担する場合を除いて、震災後の年収が730万円以上の債務者については、特段の事情がない限り支払い不能要件を満たさないものとする」と。要件に満たなければ、2000万円借金があっても除外される。申請さえ閉ざされている。成文化されたのはいいが、共稼ぎで40代50代の方が頑張っていれば730万円は超える。いま月8万円返している。新しい家を建てようと思ったら月8万円のローンを組まなくてはいけない。できるわけがない。そしてこの年収というのは、直近1年間の年収額で、例えば58歳で被災したら、定年まで2年間、そうすると3年後には再雇用になったとしても収入が半分に下がる。そういうのは考慮されないと。もっと柔軟に、流された住宅ローンは救済しないと、復興の主力になる40代50代の働き手が、被災地で家も建てられない、生活できないということになってしまうのではないか。そういう点で抜本的な改善・見直しを求めるべきだと思うがいかがか。
【生活再建課総括課長】
ご指摘の基準については、内規で定めたということは聞いている。我々には開示していただいていない。弁護士会等との打ち合わせの中で、そういったものがあるとお聞きしている。
やはり被災者の債務整理を確実に進めるためには、ご指摘の通り、制度の弾力的な運用だけでは限界があろうと思う。制度の運用の見直しにとどまらず、法整備をも含む新たな仕組みを構築していくことが必要だということであるので、昨年11月にも、復興庁・金融庁への要望を含め、繰り返し要望してきた。今後ともあらゆる機会をとらえて国に対し、制度の改善に向けて要望していきたい。
【斉藤委員】
被災者の二重ローンというのは、住宅再建の1つの大きな障害なので、これを突破するような取り組みを強めていただきたい。
・事業所の再建、雇用確保について
【斉藤委員】
8割が再建と復興局は言うが、経営支援課が2月1日現在で、被災市町村における商工団体会員事業所の被害状況ということで、4341事業所が被災し、営業継続・再開が3229・74.4%と。こういうデータが出ているので、トレンド調査で回収率6割の復興局の調査での表現の仕方は見直した方がいいと思う。
地場産業の再建というのが安定した雇用の確保で一番大事だと思うが、水産加工を含めた地場産業の再建にどう取り組んできたか、これからどう取り組むのか。雇用はどこまで回復したか。
【産業再生課総括課長】
当局でまとめている被災事業所調査のデータだが、委員ご指摘の通り、商工関係者を対象に当局から調査票を配り、アンケート形式でまとめたものを使っている。したがい、事業所の再開状況以外にも、業績の状況や調査時点における課題も含めて、事業者の方からアンケート形式でいただいている。一方、商工労働観光部経営支援課が所管するものについては、商工会議所・商工会など組織のラインを通じて対象にしているので、一部対象は重なっているが、組織ラインで集約するか、事業者それぞれの意見で集約するか、方法論の違いがある。また1つの基準としては、当方でも対象は250ほどの事業所を対象にし、昨年8月に実施した調査では、1479の回答を得ているので、全体の状況を把握する数値としては、統計情大きな問題はないものと考える。いずれ事業の再開状況をこのような調査で把握し、県の施策の中で情報共有しながら参考にしていくという形でモニタリングしているという状況である。
地場産業の再開については、現在、商工関係・小売関係で遅れている状況がある。これはまちづくりの関係の事業用地の確保や、資金繰りの問題が課題となっていると考える。当局としては、商工労働観光部とも連携し、被災事業所が再建に必要な支援制度、二重ローンの対策など含め周知・徹底して、事業所それぞれの再建を支援していきたい。
・用地確保の問題について
【斉藤委員】
市町村では約6000件が権利者調整が進んでいないと指摘されているが、防集や区画整理・災害公営住宅等の内訳はどうなっているか。
用途確保の特例制度について、県は、憲法上の懸念への補足説明、用地取得困難事例、学識者からの意見聴取を行っていると。具体的に今の時点でどうなっているか。
【まちづくり再生課総括課長】
市町村に昨年9月に調査した段階で、土地所有者の多数共有があるかといった形調査したものである。そのため、各事業ごとの区分けでは調べておらず、内訳はもっていない。
【復興担当技監】
特例制度について、憲法上の懸念だが、昨年11月に制度を国に要望した際に、復興大臣から「憲法上の財産権、適正手続きの規定に抵触する恐れがある」といった懸念を示されている。「告示をするだけで土地を取り上げようとする制度のようであり、憲法に抵触するとの懸念であったもの」だが、具体的に岩手県の提案は、土地所有者などの早期の手続き参加の保障、意見・申し入れの機会の確保など、憲法上の財産権の保障および適正手続きの保障に関し、岩手弁護士会との共同研究により、その点について特に留意をした制度設計となっているものである。この制度については、現行の土地収用法では対象外となっている、市町村が施工する防集・漁集についても、同様に取り扱おうとしているものであるので、そういった観点もあり、国に対し特例制度の内容を丁寧にこれからも説明し、懸念の解消に努めていきたい。
困難事例の具体的なものとして、相続手続きの未処理や多数共有地が県・市町村事業あわせて約1900件ある。現行制度内でこれらの用地を取得するには、膨大な時間と労力を要するので、復興事業推進上の大きな障害になっているという状況である。事例としては、土地登記簿名義人が明治になる前の文久年間の生まれの方のままになっており、相続人が50人近くに及んでいるというもの。昭和の1ケタの時代に20人以上の共有地として登記された後に、ほとんど相続手続きが放置されたままで、現時点で相続人が270人以上に及んでいるといった事例もある。
学識者からの意見聴取については、制度を設計する途中においても、意見を学識者から聴取している。制度設計後においても、国の復興推進委員会の委員をはじめとする大学教授など、今まで8人から意見を聴取している。ご意見はさまざまあるが、南海トラフ地震にともなう津波や首都直下型地震の懸念される状況にもあることから、総じて学識者からは、県が提案する特例制度を支持する意見を多くいただいている。
・仮設住宅の目的外使用について
【斉藤委員】
先ほど、最後の詰めだと。本会議でも指摘したが、年度末は特別に大事な時期である。3月に希望する人たちが入居できるように、今週中にでもやらないと間に合わないのではないか。良いことは早くやるべきである。
市町村にはどのぐらい希望が出ているか。
【生活再建課総括課長】
具体の詰めをしており、最終の詰めをしている。
大槌町長が新聞のインタビューで「3月中にも」という発言があったので、できる限り急ぎたい。
具体的にどういった方、どれだけの人数が希望されるかについては、現在市町村でまとめている段階である。