2014年3月17日 予算特別委員会
教育委員会に対する質疑(大要)
・学力テストの弊害と公表の問題点について
【斉藤委員】
学力テストの結果が示す課題は何か。成績低階層の増加と世界トップクラスの勉強嫌いの増加ではないか。
学力テストによって、学力という見方が歪み、点数を上げるための「学力向上」が最大の目標に学校の現場ではなっているのではないか。小学校でも、朝学習で学力テストに向けたことが行われるとか6時間事業も行われるなど、この実態も指摘したが、こういう状況について教育委員長はどう受け止めているか。
【教育委員長】
学力テストの目的は、義務教育の機会均等とその水準の維持・向上の観点から、調査結果をもとに、教育施策の成果と課題を検証し、その改善に役立てるとともに、学校に来る児童生徒への教育指導の充実や学習状況の改善に役立っていることとされている。この調査を効果的に活用することで、子どもたちの学力向上につなげていくことができると考えている。
点数を上げるための学力向上ではないかということだが、国は、調査により測定できるのは学力の特定の一部分であるということを明確にしており、本県においても同様の考えに立っている。本県における学力向上の取り組みは、基礎的・基本的な知識・技能や、思考力・判断力・表現力および学習意欲を子どもたちに保障する取り組みであり、各学校における取り組みをすべての子どもたちにこうした基礎的な学力を保障するために実施されていると認識している。
調査はあくまでも、明らかになった課題をもとに指導改善を行い、児童生徒の学力保障につなげるために実施するものであり、もし一部の学校にご指摘のテスト対策のような、このことについては多忙化につながるという指摘もあるので調査していない。ただ、何人かの校長から聞いた範囲では、「そのためにやっているのではない」という意見は聞いている。もしテスト対策を主眼とした取り組みに偏重しているとすれば、これを是正するように指導していきたい。
【斉藤委員】
学力テストが毎年やられることによりどういうことが起きているか。テスト対策で、たしかにPISAの結果は世界トップクラスに良くなった。一方で、勉強嫌いも世界トップである。例えば、数学嫌いが日本は61%、国際平均は35%である。理科嫌いは41%、国際平均がOECDで23%と。そして日本の子どもの3分の1が孤独感を訴えている。OECDの場合は8%である。そういう点数主義、点数のための教育によりこういう歪みが生まれているのではないか。
本物の学力を保障するための課題は何か。すべての子どもたちに基礎学力を保障すること―これを基本にしなければならない。そうした場合に、点数主義の学力向上ではなく、30人学級の実施だとか教員の多忙化解消などの教育条件を整備することが最大の課題ではないか。学力テストの点数だけに短絡させる風潮を解きほぐす国民的な議論も必要だし、学習指導要領も一部の文科省の官僚が勝手に作るのではなく、本当に今必要な学力は何かという、国民的な専門家を結集したものにしなければならない。
学力テストの結果の公表というのは、学校間競争、市町村間・都道府県間競争を激化させるだけではないかと思うが、60年代に実施してなぜ中止になったか。おそらく教育委員長はその体験者でもあると思うが、その教訓も踏まえてお答えいただきたい。
【教育委員長】
公表については、ご指摘のように、過去の全国学力テストの実施については、さまざまな課題があったことは承知している。私が学生時代だったと思うが、現場でいろんな混乱があった。テスト問題を事前に練習するとかトップになってお祝いをしたとか、さまざま非教育的なことがあったのは承知している。子どものための学力向上ではなく、大人のいがみ合いのようなこともあったように記憶しているが、そのような反省から、順位付けとかそういうことは今回しないようにということで、序列化・過度の競争にいかないようにということで、国からもそういう指示が出されたのであり、目的に沿って各市町村教委が活用するように私も願っている。
今回の国による実施要領の改定、こうした配慮事項を踏まえて、一方で保護者や地域住民に対し説明責任も果たさなければならないということもあるので、そういうことが重要だと判断した結果、教育委員会および学校のそれぞれの判断において、調査結果の公表を行うことが可能であるとしたものであり、間違っても序列や過度の競争が生じないようにということは、くれぐれも守っていただきたいと思っている。
私としては、今回国が示した調査の実施要領を受けて、それぞれの市町村において、学校や地域の実情を踏まえた上で適切に運用されるものと願っており、やってくれると期待している。
指導要領の改定については、これは学校教育法等の法に基づき国がやるものであり、おおむね10年に1回ぐらいされており、いろいろな教育団体等からもヒアリングを受けながら、今の教育の課題を踏まえながら改定している状況なので、今後とも国の動向を注視していきたい。
【斉藤委員】
60年代の学力テストがなぜ中止になったのかと。それは、カンニングを含めた過度の競争が起きたからである。だから今回学力テストをやるときも、公表しないということを前提にやった。ところが、やっている間にこれが公表できるようになると。これは学力テストの変質だと思う。幸い、今の段階で市町村で公表するというところはないという教育長の答弁があったので、この立場を岩手県は貫くべきである。
・国連子どもの権利委員会の勧告について
【斉藤委員】
日本の教育の異常性は、国連子どもの権利委員会の3度にわたる勧告で提起されている。91項目にわたる大変具体的な勧告で、例えば70項目には、「高度に競争主義的な学校環境が就学年齢にある子どもの間のいじめ、精神的障害、不登校、登校拒否、中退および自殺に寄与することを懸念する」と指摘している。60項目では、「本委員会は、驚くべき数の子どもは情緒的幸福度の低さを訴えていることを示すデータ、ならびにその決定的要因が、子どもと親および子どもと教師との間の関係の貧困さにあることを示すデータに留意する」と。これは、政府文科省の報告書、NGO等の報告書を踏まえてこういう勧告が出されている。
県教委が、国内法の上位の法律に基づく勧告なので、県の教育委員会議として、こういう子どもの権利委員会の勧告をしっかり議論して、岩手の教育に生かすべきだと思うが、そういう議論をされたことがあるのか。されたとすればどういう議論があったか。
【教育委員長】
勧告については、これまでも委員から幾度もご指摘があり、私もそれなりの勉強をしている。我々は、国の見解などは尊重しなければならないと。学習指導要領やさまざまなことの下で教育しているので、ただ、私1人が勉強してはいけないので、県の教育委員メンバーともしっかり情報を共有していきたい。はっきり言えばやっていないが、5人での協議はしていないが、ただ子どもの権利条約ということではないが、いじめや不登校などの個々の問題については十分に協議しているので、今後とも情報を共有しながら勉強していく。