2014年3月18日 予算特別委員会
農林水産部(水産関係)に対する質疑(大要)
・大震災からの水産業の復旧状況について
【斉藤委員】
漁船の確保については、補助事業、新規登録、稼働可能漁船はどうなっているか、震災前と比べどういう水準にあるか。
養殖施設に17139台となっているが、震災前と比べるとどういう復旧状況か。
水産物の生産量・生産額、主要水産物ではどうなっているか。
【漁業調整課長】
補助事業で整備した漁船数と被災を免れた漁船数は、稼働数10215隻のうち、被災を免れたもの1740、補助事業分6250、その他(自力復旧等)2225となっている。
養殖施設は17000台が復旧しているが、震災前と比べ65%の復旧になっている。
平成22年度の生産状況だが、震災前の3カ年と比べ、魚市場の水揚げ量は11万6000トン・65%で水揚げ金額は202億円・86%。主要水産物のうちアワビについては、生産量が297トン・87%で金額は27億円・118%、養殖物については、ワカメが16000トン・73%で金額が20億円・47%となっている。
【斉藤委員】
漁船は自力復旧、新規登録を含め10215隻ということで、震災前の71.4%。
漁業経営体の再開状況はどうか。
【漁業調整課長】
県では約8割が再開していると認識している。
種目別では詳細を把握していない。
【斉藤委員】
あなた方から漁業センサスの資料をもらっている。例えば、全体は72%、カキは74%、ワカメ類は78%というのが漁業センサスの数字ではないか。
【漁業調整課長】
養殖経営体については72.1%再開している。
【斉藤委員】
養殖は65%が台数では復旧しているが、70歳を超えていると、これから借金してはやっていけないと、2割3割辞めていると。この間業業者の懇談会でも聞いた。
そこで漁協では大変危機感をもち、担い手の育成に取り組んでいる。新聞報道でも紹介されているが、綾里漁協では3人の研修生で、漁船漁業の乗組員不足を確保していると。田老漁協では、真崎わかめを新規経営者集団の育成ということで研修をしながら準組合員になってやっている。その他のところでも、養殖台数が減っているので、減ったところを漁協が自営で経営し、若手をそこで採用するという取り組みが出ていると思うが、そういう取り組みの状況、担い手確保の対策はどうなっているか。
【漁業調整課長】
現在、漁協ごとに策定を進めている地域再生営漁計画の中で、漁協が自営する定置網や養殖に若者を雇用して定着させる取り組みなど、新規就業者の確保に向けた取り組みを検討している。
【斉藤委員】
私の紹介より抽象的である。市町村独自に漁業の担い手の補助事業をやっているところが陸前高田とか宮古などである。そういう担い手の対策がどうなっていて、さらにどう強化するのか。本格復興の時期にきわめて重要である。
【漁業調整課長】
県が地域再生営漁計画の取り組みを担い手対策の中心として取り組んでいるが、その中で担い手対策、例えば漁場利用、水産物の付加価値向上等を漁協にそれぞれの地域の事情を考えていただきながら取り組んでいただくと。それをまた補助事業等で取り組みを支援していくということを考えている。
それに加え、陸前高田市や宮古市で、研修費を支払って育成する取り組みがあるので、そのようなものを県としても支援していきたい。
【斉藤委員】
ぜひその取り組みを強力に推進していただきたい。やはり担い手確保は決定的である。
・秋サケの状況について
【斉藤委員】
今年度の漁獲状況、震災前との比較、3年後〜5年後の回帰数・率が分かれば示していただきたい。
【水産振興課総括課長】
沿岸の漁獲実数476万尾で前年比169%、震災前の3カ年平均と比較すると70%となっている。漁獲量全体では14000トンで前年比189%、震災前と対比すると64%、金額では57億円で対前年比131%、震災前と比べ70%、平均単価は1キロ401円で、前年では69%、震災前と比べ106%となっている。
3年漁・4年漁・5年漁の回帰率については、詳しくは技術センターで調査中だが、県内の3つの河川で調べた状況の速報を出しており、3年漁は非常に少なく、4年漁ではある程度好調に遡上があったということ、5年漁は平年並だったという結果になっている。
【斉藤委員】
通常は3年漁が1割、4年漁が6割、5年漁が3割と言われている。3年漁が大変少なかったと。3河川の部分的なものだが、通常の1割と比べてどの程度少なかったか。
【水産振興課総括課長】
今までもっとも悪かったときの半分以下という状況である。
【斉藤委員】
今後のことを考えれば、採卵数の確保が重要だが、この間の採卵数・放流数の推移、ふ化場の復旧状況は9割と聞いているがどうなっているか。
【水産振興課総括課長】
13年度に沿岸の河川において、採卵量は4億4600万粒である。これを飼育し、3億8000万尾の稚魚放流を見込んでいる。
ふ化場の復旧状況については、現在一部の部分復旧をしている1つのふ化場を含め、50のふ化場が復旧して稼働している。
【斉藤委員】
2014年問題ということで、放流していない今年、来年が大変心配される。
漁民から聞くと、トロールなどが秋サケを混獲し、雑漁として水揚げしているのではないかという訴えがある。1回の水揚げで1トンは出しているという告発もいただいたが、その実態を県は把握しているか。
【水産振興課総括課長】
沖合底引き網漁業の実績報告を見ると、震災前で総漁獲量に占める「その他の魚」、雑漁ということだが、割合は0.75%であり、この中に含まれるサケの量は把握していない。
【斉藤委員】
これは本当によく言われることで、定置しか獲れないという状況になっているが、トロールは根こそぎ持っていって、雑漁で小さい魚よりも大きいサケを水揚げしていると。ぜひ実態を把握していただきたい。
今年は定置漁業権の更新の時期だが、生産組合など実質個人の定置は、漁協優先の立場で見直すべきではないか。
【水産振興課総括課長】
定置漁業権については、漁業法の規定に基づき免許しているものである。その内容としては、申請した者が適格性を有するかどうかというところで審査した上で、適格な者に対して免許している。
【斉藤委員】
例えば山田湾の場合、いわゆる生産組合法人が良い場所に定置を持って、漁協があまり良いところに持っていない。だから漁協は赤字で生産組合はしっかり利益をあげていると。これはおかしいのではないか。漁協経営を見ても、これは違うのではないか。
【水産振興課総括課長】
山田町の定置漁業権については、地元の調整や申請する方々の意思で申請してくるものであるので、その申請の内容を適正に判断して免許している。
・風評被害の状況について
【斉藤委員】
農林水でお答えいただきたいが、具体的な状況、損害賠償請求と支払いの状況はどうか。
そして今大問題になっているのは、関西以南では「東北の物を買うな食べるな」と。全然売れないと。関西以南の具体的な風評被害対策にどう取り組むか。
【流通課総括課長】
県産農林水産物に対する風評被害については、品目や取引の形態によってさまざまである。例えば、牛肉や生シイタケについては、価格が震災前の水準まで回復してきているが、干しシイタケの価格は依然低迷したままとなっている。またご指摘の通り、関西圏ではワカメ等の海藻類で買い控えなどの風評被害があると聞いている。
損害賠償請求と支払いの状況だが、いわゆる全体を把握するということは難しいが、これまでJA等でルートを通じて東電に損害賠償を請求した額では、全体で約298億円となっているが、うち風評被害にかかる金額は約23億円となっており、賠償金が確定した請求に対する支払いは約22億円・95%となっている。
関西以南での風評被害対策だが、関西圏においては、一部ワカメ等の風評被害が続いていることから、これまで首都圏を中心に取り組んできた消費者向けの鉄道広告の掲出や、シェフなど受注者を対象とした産地見学会の開催を関西圏においても充実させ、消費者の信頼回復と県産農林水産物の販路回復・拡大を図っていきたい。
【斉藤委員】
関西以南の問題は、ぜひ思い切って、日本人の絆が問われていると思うので、適切で説得力のある取り組みをやっていただきたい。
・小型漁船漁業の復興について
【斉藤委員】
小型漁船漁業者の復旧状況、経営の実態を把握しているか。
【漁業調整課長】
平成24年12月末現在で、ほぼ小型漁船漁業者が使用しているであろうという5トン以上20トン未満の漁船の登録数の回復は、震災前の74%に回復している。
漁船漁業者個々の実態については把握していないが、国の調査では、24年の漁業所得は震災前と比べ67%になっている。
【斉藤委員】
1月28日に、沿岸12市町村の漁民の方々約60人が集まって、県の方々に要望した。その中には、後継者の若い漁民の方々も少なくなく参加しており大変驚いた。
震災で漁船を確保したが、道具・資材が買えなかったと。そして震災前の借金が返せない、保険料や船の借金、燃油高騰で支払いができない、経営ができないと。せっかく船を確保しても、自己破産になっているような状況だと、大変切実な実態も出された。そういう状況をどう受け止めたか。
【水産振興課総括課長】
経営の状況そのものについては、漁業者の方々が切実に感じていることであろうと思う。ただあの場で感じたのは、漁業者は漁業者で大変だということもあると思うが、ちょっと言い過ぎかもしれないが、やはり経営体であるので、個々の経営者の方々の経営努力ということも考えていただくべきものではないかと思った。
いずれ、私たちもできることはやっていきたい。
【斉藤委員】
言いすぎな挑発的な回答であった。そういう状況ではないと思う。後継者の若手がどういうことを言ったか、「船を確保したが借金の塊。若い人が生活できる漁業にしてほしい」と。そして漁船漁業者は働きたくとも9月から11月にかけて漁がないと。9月から11月、どうやって漁業者は食っていけばいいのか。そういう対策は県にあるのか。獲れる量があるのだったら頑張りようがある。漁ができなかったらどうするのか。
【水産振興課総括課長】
お盆から12月にまでの状況だが、やはり漁業種類によってそれぞれ獲る魚種も違ってくる。ちょうどこの頃は、例えばイカ・サンマ・タラというものも周年漁獲できるものである。そういう魚種もあるので、それぞれそれなりの工夫なりもしていただかなければならないものと考えている。
【斉藤委員】
タラの話をされたが、いま福島で獲れないものだから、こちらでたくさん獲れると。だからタラを水揚げしないでほしいと漁民は言っている。
秋サケを9月10月の早い時期に、刺し網で獲れないのかと。底魚だから、遡上するサケではない。銀サケの良いものが獲れる、付加価値も高い、だまっていれば宮城に行ってしまうと。こういうサケは獲っても影響はないのではないか。せめて試験操業ぐらいはやって、対応を検討すべきではないか。
【漁業調整課長】
現在、サケを刺し網で獲ることは、漁業者間で合意がなされていない。また漁業許可の制限または条件というのが許可証の裏にあるが、そこでも禁止されている。
サケは沿岸を回遊し、いずれ河川に戻ってくるので、定置の競合はあると考えている。試験操業を実施するにも、県内の漁業者間の合意形成が必要なので、その状況がない下では難しいと認識している。
【斉藤委員】
実際に9月から11月の時期は、獲りたくても漁に出られない。そういう中で、せっかく船を確保して漁業の再建に取り組んでいる、後継者もいる、こういう方々に岩手県が責任をもって、対策を示す責任があると思う。
試験操業の問題でも、漁業者間の調整は分かる。議論して調整したらいい。調整もせずに理解が得られないというやり方では、本当に食っていけないので、ぜひ具体的な手立てを岩手県は示すべきである。
【水産振興課総括課長】
現状をさまざま申し上げたが、たしかに調整そのものはしていかなければならないことであり、漁業者あるいは漁業関係団体の皆さんとの話し合いも必要になってくる。
いずれ、サケの刺し網のみに関わらず、漁業の振興、漁船漁業の振興ということは図っていかなければならないという気持ちは十二分にある。さまざまな漁業種類はあるが、漁船漁業を進めていくということについては、漁業関係団体あるいは漁業者と一緒になってこれからも考えていきたい。