2014年3月19日 予算特別委員会
県土整備部に対する質疑(大要)
・持ち家再建の課題について
【斉藤委員】
防集、区画整理、漁集など、まちづくり事業による民間住宅用用地確保の年度ごとの見通しはどうなっているか。
復興の遅れで、この1年間かなり計画が減少した。どのぐらい減少したか。今後も減少しかねないのではないか。
用地確保の見通しはどうなっているか。
【まちづくり課長】
宅地確保の見通しだが、市町村において宅地を造成する復興事業としては、土地区画整理、防集、漁集により整備する宅地の総数は、昨年12月に公表された社会資本復旧復興ロードマップによると、3事業合わせて約8500戸を予定している。年度別の完成戸数は、平成25年度までに約180戸、26年度までに1100戸、27年度までに4900戸、28年度までに約5600戸、30年度までに約6400戸の宅地が完成予定である。この他、完成時期が具体的になっていないものが約2100戸ある。
今後の見通しだが、土地区画整理事業などにより整備する宅地については、24年12月から25年12月の間に約1600戸あまりの計画数の変更や減少があった。変化の原因としては、この間に制度化された震災復興特別交付税を財源とした、各市町村の独自支援策により、自ら宅地を購入し自力再建を選択された方や、被災者自身の仕事や家族の状況の変化等により災害公営住宅への入居を選択された方もいるものと聞いている。また市町村では、事業を進める上で、アンケート調査や個別面談を行い、必要に応じて事業計画の変更を行っており、これによる被災者の意向把握の精度が上がったことも、宅地数の変化の要因の1つと考えている。
今後の見通しだが、被災者の住宅再建の意向については、社会情勢の変化や復興の進捗状況等により変化することが考えられるので、今後とも被災者の意向に対応した計画変更を進めるなど、柔軟に対応していく必要があるものと考えている。
用地確保の見通しだが、防集は、県内において52地区で進められているが、この事業による団地の整備に要する土地の取得率は、2月末現在で面積ベースで61%となっている。用地買収が完了していない地区では、用地境界の確認や相続関係の調査等に時間を要したことや、住宅移転に関する意向調査により、団地の位置や規模を見直して用地買収への着手が遅れたことなどが原因と聞いている。今後の見通しは、おおむね用地境界の確認や権利関係の調査は終了しており、団地移転の希望者数の変化にともなう設計変更を行っている地区では、計画が確定すればすぐに用地買収に着手できる状況となっているが、相続関係の調整や地権者との交渉の状況により時間を要する地区もあると考えている。
【斉藤委員】
住宅用の用地確保は来年度末で1100戸で13.6%である。再来年度はかなり進んで4900戸までいき58.4%と。3年目で66.4%で、2100戸は調整中で未定だと。そうすると、今仮設住宅にいる人たちは、3年から5年も待たなくてはいけなくなってしまう。残念ながら今の計画では。この1年間で、区画整理で1600戸の人たちが待ち切れずに自立再建や公営住宅に移ってしまった。あと2年3年以上待ちとなったら、本当に8500戸の宅地造成というのは、あまりにも遅すぎるのではないか。本当にこれは頑張っていかないと大変なことになるのではないか。本当に前倒しが可能なのか。もっと遅れる可能性が大きいのか。
【県土整備部長】
今回の津波災害に対する復旧の困難さは、現位置での再建ができないということである。そのため、山を削る、盛土をするということがどうしても必要になる。それらをやっていくためには、このぐらいの時間が結果としてかかってしまう。そのことについては、我々土木技術者としては本当にじくじたる思いがあるが、この部分について、さらに早めるということについては、なかなか技術的に難しいと思っている。
現場はさまざま課題があるが、関係者間でかなり密に情報共有を図りながら取り組んでいるところだが、課題がより具体的になってきているので、そういうことについてしっかり取り組みながら遅れがないように取り組んでいくということを一生懸命やっていく。
【斉藤委員】
震災から3年が経って、被災者の方々は限界だと。だから待ち切れずに、条件のある方は別なところに家を建てる。さらにこれから2年3年以上またなければならないときに、例えば、高台移転にしても区画整理にしても、そこに移ろうという人たちがみんなで集まって知恵を出して、こういう街をつくろうと、そういう取り組みなしでは大変だと思う。そのために専門アドバイザーを派遣する事業があったと思うが、今年の実績は1ヶ所か2ヶ所だと。そういう住民主体で、まちづくりを一緒に進めると、こういう取り組みを強力に進める必要があると思うがいかがか。
岩手型地域復興住宅について、例えば、来年度は975戸新たに宅地造成される。再来年度は3815戸である。来年度・再来年度に住宅供給の希望が急速に高まるときに、その供給体制をしっかりつくらないと、造成したが1年2年以上またなければならないとなったらまた大変なことになる。持ち家住宅の供給体制を本当に県が主導して構築する必要があると思うが、岩手型地域復興住宅の実績を含めて答えていただきたい。
【まちづくり課長】
住民参加の計画策定だが、専門家派遣の取り組みと合わせ、「笑顔と希望あふれるふるさと再生事業」というものを今年度行い、野田村の城内で住民の皆さんを対象に団地の将来のあり方を議論した経緯がある。来年度も引き続き、1ヶ所だがやる予定である。
【建築住宅課総括課長】
岩手県地域型復興住宅推進協議会に属する生産者グループは、現在138グループある。今年1月末までに710戸の地域型復興住宅が受注されている。
住宅の供給体制については、住宅着工統計によると、25年度の沿岸12市町村の住宅着工数は、約4000戸を超える見込みとなっている。発災前の水準の4〜5倍となっている。少なくとも現時点では、それだけの住宅着工できるだけの供給体制があると認識している。また、岩手・宮城・福島の地域型復興住宅推進協議会が行った被災3県の住宅復興に関する実態把握調査(第2回)によると、沿岸市町村の工務店の61.1%が工事の受注に対して「余裕がない」と答えている一方、36.1%の工務店が「余裕がある」または「どちらでもない」と答えている状況がある。供給のさらなる増加にも対応できる余地も若干あるのではないかと認識している。さらに、岩手県地域型復興住宅推進協議会において、建設労働者を公務店間で融通しあったり、普段は付き合いのない資材供給者から資材を融通したりするための連絡体制を来年度より整えることとしており、住宅需要のさらなる増加にもできるだけ対応できるよう準備を進めていきたい。
【斉藤委員】
今どんな取り組みが行われているか。高台移転で、集落ごとに共同発注しようと。1年前からそういう取り組みをしている。これからつくろうというときに頼んだらとんでもない話になる。今からそういう共同発注で準備もしてと。そういう取り組みを、被災者も、建設業者のところでもやっていかないと、遅れたところにさらに遅れるということをやってはいけないと思う。
住宅着工戸数は公営住宅も入っている。持ち家が問題なので、持ち家再建の希望にこたえる体制をぜひ万全をつくしてやっていただきたい。
・災害公営住宅の建設計画について
【斉藤委員】
年度別の完成戸数はどうか。先ほど木造災害公営住宅の話もあったが、正確に、いま何団地・何戸の計画になっているか。
【建築住宅課総括課長】
平成25年12月に発表した復旧復興ロードマップにおいては、今年度末までに587戸が完成する見込みであるとともに、26年度に1541戸、27年度に2843戸、28年度に979戸、29年度に88戸が完成する予定となっている。
木造の災害公営住宅については、県が野田村で建設した2団地26戸を含め、全体で43団地583戸が計画されている。
【斉藤委員】
来年度・再来年度がピークになると思う。残念ながら来年度の到達点は35.2%、だから災害公営住宅も、あと2年3年またなければならない状況である。この計画は絶対に遅らせないでやっていただきたい。
いま市町村では意向調査をやっている。陸前高田や大船渡、釜石などで。この特徴は、中心部の利便性のいいところに希望が集中すると。周辺は残念ながら計画戸数を下回ると。特に県が整備する住宅を大幅に下回るというのが大船渡で出ている。釜石市は、周辺部を減らして中心部を増やそうという見直しをしているが、最大限被災者の希望に沿った公営住宅をつくるというので、そういう見直しを図っていく必要があるのではないか。
【建築住宅課総括課長】
すでに工事に着手した災害公営住宅あるいは完成したものについては戸数変更はできないが、そういったものについては他の団地からの誘導、団地間の調整により空き室が発生しないように努めていきたい。
工事着手前の団地は、市町村の最新の意向調査の結果に沿い、柔軟に整備計画を見直していきたい。
【斉藤委員】
全体とすれば、災害公営住宅の希望は減っていない。ただ、どこに入りたいかということになると、アンバランスが出てくる。大船渡の場合は、市が整備するものは472戸にたいし希望が549戸と。県が整備するものは262戸にたいし164戸である。そういう意味では簡単ではないが、最大限被災者の希望に沿ったことを検討していただきたい。
・建設労働者の実態と育成について
【斉藤委員】
いまの計画を着実に進められるかどうか1つのカギは、職人不足への対応である。
県内の建設労働者の実態はどうなっているか。この間、設計労務単価は引きあがっているが、建設労働者の賃金に十分反映されていないという声も出されているが、実態を把握しているか。
来年度、建設業技術者育成支援事業費6700万円が計上されているが、この実績と来年度の中身はどうか。
【建設技術振興課総括課長】
県が実施いている平成24年毎月勤労統計調査地方調査によると、建設業の現金給与総額は、22年度までは下降傾向だったが、22年の24万2000円を境に上昇傾向に転じており、23年は6%増の25万6000円、24年は24%増の30万1000円となっている。
建設業技術者育成支援事業については、建設業の経験のある技術者や新規卒業者等を雇用し、建設関係の各種資格を取得させることにより、本県の建設技術者の育成と確保を図るものであり、内訳としては、新規雇用者の人件費として約4300万円、研修費用として約1800万円、その他の経費として約500万円となっている。実績等だが、25年度も26年度も、人数としては20人を見込んでいるが、25年度については11人という実績である。
【斉藤委員】
先日、建設労働組合の賃上げの決起集会があった。設計労務単価は、大工で直近20800円、実に大震災の年の23年は14400円で、一番落ち込んだときに震災があった。それからここまで戻ってきたが、実際に現場で働いている技能労働者の実態賃金は13000円という訴えである。かい離があるのではないか。設計労務単価がそこまで改善されているのに、現場の労働者への賃金に反映されていない。昨年3月に国交省が「技能労働者への適切な賃金水準の確保について」という通知を建設業界にやっている。この点で、設計労務単価はまだまだ不十分だと思うが、この間引きあがった単価は、現場の労働者にしっかり反映されるべきだと思うがいかがか。その手立ても含めて。
【建設技術振興課総括課長】
実際、末端の労働者にどのくらいの賃金が払われているかというのはなかなか難しく、現状でもそこをきちんと把握しているわけではない。ただ、傾向として上がっているというのを見れば、労務単価が上がれば、ある程度上がってきているという傾向は見てとれると思う。国交省でも、今までは原則年1回上げていたものは、我々の要望に応えて今年は前倒しして2月に上げており、今後も年1回ではなく、何回か調査し状況を見て随時上げていくということを聞いている。そういうことを踏まえ、機会あるごとに関係団体や建設業者にそういうものをきちんと払っていただきたいというアピールをしていきたい。
【斉藤委員】
国交大臣は、昨年4月に建設業4団体と会合し、10月23日には建設業団体トップへの直接の要請、フォローアップ会合をやっている。
せっかく設計労務単価が上がってきているのだから、現場の労働者にきちんと反映するように、国交大臣に負けないようにやらなければいけないのではないか。
【県土整備部長】
実際の現場における賃金だが、企業の経営状況や職人の経験年数等ばらつきが出てくる。そういう意味では、一概にこうだとは言えないが、建設業協会との懇談会等の場では、口頭ではあるが、適切な賃金支払い等をこれまでもお願いしてきている。今後もさまざまな場を通じて業界団体に働きかけをしていく。
【斉藤委員】
熟練の大工職人の皆さんが13000円だという実態を指摘したので、これは聞き取りすれば分かることなので、ぜひ対応していただきたい。
・復興支援にかかる道路整備について
【斉藤委員】
地域で切実な要望だった陸前高田市の高田―米崎間道路、大槌町の三枚堂―大ヶ口トンネル道路、これは社会資本整備交付金で取り組むということで申請しているようだが、その見通しはどうか。
復興支援道路の重茂半島線、この間のシンポジウムでも報告されていたが、このルート、事業費、完成の見込み、来年度の中身はどうか。
【道路環境課総括課長】
陸前高田市・大槌町の2路線については、市・町が社会資本整備総合交付金復興枠により、26年度に新規事業化となるよう国に要望している。26年度予算については、復興庁において、実施に関する計画の策定を行い、その後国交省において整備計画の内容や配分額を財務省と調整の上決定されるとうかがっている。
新規事業化となった場合は、国の平成26年度予算の成立後、国から内示があるものと考えている。
【道路建設課総括課長】
重茂半島線については、今回の震災で5日を超えるような長い時間の孤立が発生したりしている。そのため、高台移転のまちづくりと一体となったもの、また孤立解消のための道路整備として、復興交付金事業により7工区計画している。全体で約170億円を予定している。
ルートは、津波の浸水エリアを避ける山側ルートを主に選択している。
26年度の事業費は25億円余を予定している。26年度の予定としては、現在設計と用地測量を行っており、来年度は用地買収が進んだら後半からは一部工事にも入っていきたい。完成の見込みとしては、平成30年度までには完成するよう努めていきたい。