2014年3月20日 商工文教委員会
教育委員会に対する質疑(大要)
・高校再編の問題について
【斉藤委員】
来年度から進めようとしているが、どういう考えで、どういうスケジュールで進めようとしているか。
【特命課長】
来年度から立ち上げる検討委員会の考え方だが、東日本大震災津波の影響、少子化といった中で、現場では、地域の人材、生徒や学校を取り巻く環境等が大きく変化していると思っている。それを踏まえ、まず今後の岩手の高校教育のあり方がどうあればいいのかということについて議論していきたい。
スケジュールについては、来年度1年かけてじっくりと議論していきたいと思っている。
【斉藤委員】
大震災の直前に報告書が出て、この間中断してきたのは当然だと思う。
この間大きな変化が2つあったと思う。1つは大震災津波、もう1つは、来年度から崩されるが高校授業料の無償化である。これは高校教育にとって大変大きな影響を与えるものだと思う。大震災津波の教訓を踏まえて高校再編は考えるべきだと思うが、例えば、あの大震災津波で避難所で一番頑張ったのは高校生だった。大槌も山田もそうだった。高田高校は校舎が全壊したが、上のグラウンドで避難者の面倒をみたのは高校生だった。ああいう一番命が脅かされている状況の中で、高校生が素晴らしい力を発揮した。これをどのように生かすのかが大事だと思う。
そして今高校生の中には、地元に貢献したい、復興に貢献したいという強い思いがある。どういうことかというと、地域に結び付いた高校、地域に貢献できる高校だと思う。だから、これからの高校再編を考えるときに、地域に結び付き地域に貢献できる高校というのが大震災津波の1つの教訓だったのではないか。
3月16日付の新聞で、大槌高校生の提言が町の14年度予算に反映されたと。B級グルメの開発事業、大槌町探検隊、公園づくり、大槌大運動会の開催、道の駅をつくる、大槌復興塾など。高校生が、自分たちの町をどうしようかと提案し、町もそれを受け止めている。本当にこれが新しい1つの生きた姿ではないか。
高校授業料の無償化というのは、高校生を社会で育てるということでやった。高校生を社会全体が支える・育てる理念で取り組まれた。どういうことかというと、いま高校進学率が97%98%で、社会全体で支えるということは準義務教育、そういう考えの飛躍が高校授業料の無償化制度に、国連人権規約のA項も批准した。だとするなら、高校全入というのがやはり準義務教育化として考えられなければならないのか。
実は、戦後は高校全入だった、それをめざすと。ところが60年代に生徒が激増し、高校の増設が追い付かず、適格化主義というのが63年に導入された。それから高校受験が当たり前になった。本来は高校全入だった。
いま高校生も減少している中で、そういう新しい状況が生まれているのではないか。
【教育長】
高校を取り巻く環境、まさしくその通りだと思う。やはり地域と一緒になり、どう子どもたちを育てていくのか、どういう環境で育てたらよいか、子どもたちも目指すものをいろいろ持っている。地域で貢献したい子ども、世界に羽ばたきたいという子ども、それぞれ一人一人の思いに応えていくために、どういった環境でどのように皆で育てていったらいいのかということを、1年間かけでじっくり議論する必要があると思っており、そういう視点で我々も取り組んでいきたい。
【斉藤委員】
あと2つ提起したいのは、生徒が減少するということは、教育条件を抜本的に改善するチャンスである。残念ながら予算委員会の議論でも、この時期にこそ35人・30人学級にしようではないかと。世界レベルではもっと少ないが。先生を減らさずとも35人学級が可能になる。そういう教育条件を画期的に改善・強化するチャンスにすべきではないか。少なくとも10年後を目指してやる。10年後も40人学級で発想する貧困なことはないと思う。
もう1つは、今の高校教育の問題として、高校間格差が限界まで拡大した。生徒が増えたときにどういうことをやったか、高校多様化政策である。専門学校や新しいタイプの学校をつくるといった形で高校間格差をつくってきた。それが今限界に来ている。この格差を解消すると。例えば、どの地域にいても進学できる就職できるという学校をつくっていくことが必要だと思う。内陸の遠い学校まで行かなければ希望する進学ができないということではいけないと思う。そういう形で、沿岸でも県北でも、きちんと子どもたちの希望や家族の進学の期待にも就職の期待にも応えられる、そういう高校を考えていく必要があるのではないか。
【教育長】
現在においても、それぞれの学校においては子どもたち一人一人の希望をかなえたいということで、県内すべての学校において、進学を目指す子どもに対してはそういう指導、就職を目指す子どもに対しても何とか希望を叶えてあげたいということでやっている。こういうことは引き続き努力していきたいと思っている。
また、いわゆる定数の問題、現実的には特に今回の場合は、小規模校においてはかなりの小規模の学級編成になっているので、実質的な少人数学級になっている学校もあるが、ただ制度としてはそうなっていない。これは国の標準法がそういう状況なので、県で単独で行うとすると、当然国からの財務措置がないところで教職員定数を増やさなければならないということであるので、その辺については、県民の方々と是非とも、その分をどう負担していくのかというところも含めて議論していかなければならない大きな課題であるので、そういった点も含めて議論できればいいのではないかと思う。
【斉藤委員】
高校教育のもう1つの問題点として、例えば、平成24年度でも中退が305人いる。たしかにこの間減ってはきているが、300人というのは大変な数である。義務教育だったら考えられない。義務教育ではないから、こういう退学が起こる。そういう意味でいくと、高校に入った一人一人をしっかり卒業するまで面倒を見るという風に、高校教育のあり方も考えなくてはならない。
高校を中退するとどういうことになるか。まともな仕事に就けない。これがまた若者の貧困を拡大している問題でもあるので、先ほど高校全入という話もしたが、やはり98%が進学する時代、小中と同じように一人一人最後まで面倒を見る高校教育にしなくてはならない。
・臨時教員の社会保険料・厚生年金保険料の対応について
【斉藤委員】
本年度から対応するということだった。いま臨時教員の、例えば年度を越えて採用する場合に、1日とか3日とか、青森県は1ヶ月以内なら間が空いた場合でも保険料は対応すると。岩手の臨時教員の採用状況、どういうところまで対応するのか。2月補正はどのぐらいだったか。
【教職員課総括課長】
厚労省が通知したのは、事実上中断することなく存続していると就労の実態に照らして判断される場合という通知であり、当方の実態からすれば、やはり3日空けると…という取り扱いを行ってきており、これについて通知の趣旨に沿い、取り扱いをすると考えており、予算的には、2月補正で3500万円ほどである。
【斉藤委員】
そうすると、岩手県の場合は3日空けると。今までは、3日空けて、3月31日が基準日なので、ここで切れていれば企業主の負担がないということになる。
実態として、3日空けるという、例えばそれ以上1ヶ月以内で空けると切られるケースはないのか。青森県は1ヶ月以内は対象にしている。3日だけで本当にいいのか。3月中に切られる人たちもしっかり対象にすべきだと思うがいかがか。
【教職員課総括課長】
基本的に今回の補正では、3日空けているという実態が基本的にはあったので、それについて措置した。ただ、それ以上空いているなどいろんなケースがもしかしたらあるかもしれないので、それはいずれ労働局にも確認しながら、引き継がせていいという取り扱いであればそのように対応をしていきたい。
【斉藤委員】
青森ではそういう対応をしているので、実態をよく調べて柔軟に対応していただきたい。
予算書を改めて見てもないので、良いことはきちんと知らせていただきたい。
・教員の多忙化の問題について
【斉藤委員】
県立高校で7.1%が年間100時間の超過勤務、80時間を超えるのが6%と。これはただちに改善が求められているものではないのか。改善されたのか、どういう取り組みをしているか。
【教職員課総括課長】
ただ今の数字は平成24年度のもので、今年度のものはまだまとまっていないのでご容赦いただきたい。
今年度については、学校現場の教職員から直接ご意見を聞くなどの機会を設けて、どういう対応をしていけばいいかいろいろ考えているところだが、教職員からは、どうしても部活が長時間の超過勤務につながっているという話は聞いており、そこについてどういう対処がいいのか、いわゆる休養日等を設ける扱いについては過去に通知しているが、やはり大会等のことを考え、守られないというかやりたくなるということもあるので、今後実際現場の先生方とじっくり議論していかないといけないと思っている。
【斉藤委員】
盛岡市の教育委員会の調査はよく分析されていると思うが、時間外勤務の業務別比率というものがある。中学校で紹介すると、部活動が35%、校務文書が24%、授業の準備が15%となっている。特に部活動・校務文書が大きなポイントではないかと思う。
部活動の休養日について、7割方やっているという答えだったが、よく聞いたら、部活動休養日の徹底について、「当てはまる」38.1%、「どちらかといえば当てはまる」34.2%と曖昧である。部活動のあり方、部活動を担当されている先生が熱心にやられているということは承知している。自分で車買って選手を乗せて練習試合に行ったりと。ただ、プロの世界でも毎日練習するということはしていない。そして、本当に強い学校というのは、休みなく練習している学校ではないと思う。そういう意味でいけば、科学的なトレーニング、集中力を高めるようなやり方を本格的に考えなければならない。その点では、ある意味でいけばそういう啓蒙活動、先生の中にはやはり経験主義があると思う。自分もそうやって鍛えられてきた、今までやってきた。だから今までのやり方を変えられない。だから、科学的なトレーニング・練習は何なのか、子どもたちの集中力を高める練習は何か、いま本格的にこの問題にメスを入れないと、ただ話を聞いてやるという程度では改善されない。だいたい週に1日休まないというのは、生理学的にも好ましいものではないと思う。そういう意味で、部活動のあり方、もちろん大会前に集中して練習するのは当たり前、しかし週1回休むということは、原則にした方が効率的だという全国の進んだ経験や専門家の指導・助言を受けて取り組む必要があるのではないか。
【教育長】
そういうこともあり、いまスポーツ医科学に力を入れているところであり、来年度はそういったアプローチを教員に加え、学校でお願いしている部外の指導者も対象に、我々の思いを伝えるような機会を設け、全体として効率的なスポーツ医科学に基づいた選手の強化、その両面から取り組んでいきたい。
【斉藤委員】
強化指定校になっている強豪校について、遠征遠征で年間40万円かかるという話も聞いた。家庭でそういう負担できない人はついていけない。そういうやり方でいいのかということも検討していただきたい。
盛岡工業の問題で以前も取り上げたが、春休みに寮が閉鎖になる。毎日一関から定期券で朝6時に出て毎日練習に来ていると。クラブがあるのに寮が閉鎖されたら、この矛盾も解消していただきたい。
・いじめ対策について
【斉藤委員】
いじめ防止基本方針の策定が大詰めだと思うが、県教委の方針を決めるときは、だいたい1次案や2次案などが提出されるが、いじめ基本方針案は議会に全然示されない。どこにも出ていない。こんな秘密裏な進め方でいいのか。もっとオープンにして知恵を結集してこういう対策は決められるべきではないか。今の取り組み状況を含めて示していただきたい。
【生徒指導課長】
策定にかかわって、まず国のスケジュールとしては、9月28日に「いじめ防止対策推進法」が施行になり、10月11日に国の「いじめ防止基本方針」が通知になった。国の会議としては、11月初旬に各県の担当者を集め説明会を開催、同じく今年1月末にも県の担当者を集めさまざまな策定にかかる質疑応答や情報交換等を行った。
県としても、何度か案をつくり、それを基にしながら学識経験者や臨床心理士・法律家等から助言をいただき、あとは教育委員会だけでこの案をつくるわけではなく、知事部局との協議ということも現在も繰り返し行っているというところで、今まさに大詰めの状況で、今月中に策定して4月1日の通知を目指して進めている最中である。
【斉藤委員】
県民の声も聞かない、議会の声も聞かない、こんな基本方針の作り方はないと思う。これだけ全国的な社会問題になっているときに、決まった方針だけ4月1日に通知されるやり方はないのではないか。こういう問題こそ議会の意見も県民の意見も知恵も結集するやり方が当たり前ではないか。
【教育長】
国から基準が示され、それを斟酌して県で定めるということになる。極端に言うと、斟酌基準なので、国の定めた方向性に基づいてやることになるが、ただ本県の実態からしてどうなのかというところを、専門家の方といろんな議論をしなければならないということで、ここに至っている。若干遅れ気味だということはお詫び申し上げなければならないと思うが、しっかり方針を示せるように引き続き努力していきたい。