2014年3月24日 復興特別委員会
第二期復興実施計画に対する質疑(大要)


・生業の再生における実態について

【斉藤委員】
 第一次案については前回の復興特別委員会でも議論した。私が提起した問題で取り上げられたところとそうでないところがあるので、全体とすれば3年間の計画なので、県民の声を聞いて充実させるというのは大変大事な手法だと。一定の改善・充実が図られているという評価を前提にお聞きしたい。
 全体の概要で補足されたところ、安全の確保、くらしの再建、生業の再生と。特に生業の再生のところで、「水揚げ量が平年の約7割まで回復し」と、「被災事業所も一部再開を含め約8割が事業再開」とあるが、これは正確ではないと思う。例えば、指標の問題のところで、産地魚市場の水揚げ量は震災前と比べ37.3%減っている。そうすると、正確には6割強である。
 それと、事業の再開も約8割と言っているが、商工会議所・商工会の2月1日現在の指標で、4341事業所が被災し再開が3229で74.4%、廃業が847ある。被災事業所復興状況調査第2回結果報告を見たが、2419事業所調査し回答が1479事業所で61.1%の調査である。これは、被災した事業所がどのように変化しているかというトレンド調査としては意義をもつが、事業所の再開という点では正確でないと繰り返し指摘している。残念ながら約8割再開という数字にこだわってしまっている。商工会議所・商工会も全ての事業所を包括していない。宮古市などは、会員以外の被災業者も含めて全体を把握している。本当は被災事業者はもっと増えるはずである。ここは正確を期したものにしていただきたい。

【総務企画課総括課長】
 ここの取りまとめの部分については、各調査により調査対象も違っており、時点も違う。さまざまな数字があるところだが、今まで県が用いていたおおむねの数字に基づいてまとめさせていただいている。この点についてうかがわせていただき、今後も検討していきたい。

【斉藤委員】
 産地魚市場の水揚げ量は、あなた方の指標を指摘した。それとも違っていると。
 そして被災事業所の再開率となると、これは全体の評価である。再開した事業所の売り上げがどうなっているかとかそういうのはトレンド調査でいいと思うが。やはり第二期実施計画で、全体の状況を総括している。そういうところで正確を期すべきである。


・住宅再建の見通し、支援について

【斉藤委員】
 「くらしの再建」については、「災害公営住宅6038戸のうち、3594戸59.5%は用地を取得して事業を進めている」と。用地の取得だけが暮らしの再建の主要な評価でいいのか。これだけの評価で進んでいるのかどうかが分からない。もっと分かりやすい指標自身を吟味して提起すべきである。用地の取得だけでは、被災者の目線から見たら変わっていないのではないかということにしかならない。
 また、「恒久的住宅や宅地の確保、住宅ローン等の二重債務への対応」とあるが、これは具体的な指標のところにもこの二重債務への対応を載せるべきである。この住宅の二重ローンの解消をどこまでやるかと。相談件数、債務整理件数などしっかり目標をもつべきではないか。

【生活再建課総括課長】
 指標としてどういったものを用いるべきかという部分もある。そもそも、被災地における住宅ローンの実態の把握が県においてなかなか困難だという部分があり、今回こういった部分で指標には掲げることはできなかった。

【斉藤委員】
 これから住宅を再建するというときに、実態が分からないことを放置してはならない。実態は、被災ローンを返済させられている。いわば債務整理の対象になっていない。県内の金融機関から聞き取りすればいいと思う。これから家を建てようというときに、返済させられている。2000万円のローンを抱えている人は月8万円返済している。せっかく私的整理ガイドラインという、不十分だが新しい制度があると。その活用が不十分だと繰り返し指摘してきたが、これから家を建てようとしている人たちにとっては死活問題である。その制度、当初国は1万件程度活用するという発想でつくられた。それが全国的には1200件程度しか成立していない。全国で1万件というのなら、岩手県も少なくとも2000件とか、そういう規模の活用が本来求められているのではないか。分からなかったら実態を把握する、そして当初の目標にふさわしい制度に改善、活用させるようにすべきではないか。
 住宅の再建のところで、市町村と共同して100万円の補助、これは素晴らしい制度で、平成30年度まで延長するということも評価したい。補助金の支給世帯数が3939世帯となっている。この根拠は何か。まちづくりの面的整備で、宅地造成するのは8500戸である。そのうち3年間で整備されるのがいくらか。なぜ3939世帯となったのか。

【生活再建課総括課長】
 復興計画の目標として、支給世帯数を9518世帯と見込んでスタートしている。その中で、今般30年度まで延長したことにより、26〜28年度は、第1期分の実績をもとに、残りが5年間に延びるという形で推計し直して、結果として3939世帯となった。
【まちづくり再生課総括課長】
 市町村が行っているまちづくり事業で、宅地供給を予定している数字だが、26年度末では、累計で1162区画であるが、27年度末として4974区画58%を累計として見込んでいる。ただ、まちづくり事業、28年度以降、年度の分類が不明というものがあり、それが現段階で供給時期を確定しないものが295区画、28年度以降供給を予定しているものが3244区画となっているので、3年間の数字ではまだ整理ができていない区画数がある。

【斉藤委員】
 そうすると、少なくとも平成27年度までは今の計画で4974区画造成される、住宅再建が可能だと。だったらここを対象にしないと、整合性が出ないのではないか。せっかくまちづくりでこれから住宅再建が不十分だが4974区画まで整備されると。であれば、ここに家を建ててもらったら県の100万円の補助の対象になるということではないか。県のまちづくり事業との整合性をきちんとやるべきである。もちろん、まちづくりだけでなく別に家を建てる人もいるので、実際にはプラスアルファだと思う。そういう点で、最初から少ない目標になれば、これはまちづくり計画との整合性がなくなるのではないか。

【生活再建課総括課長】
 第二期実施計画における計上の考え方は先ほどご説明申し上げた通りだが、実行にあたり、目標にここに掲げたより申請が多いから目標に達したから打ち切るということをするつもりはないので、時点時点で必要に応じて支給していきたい。

【斉藤委員】
 まちづくりで3年間で約5000区画が造成される。だったらそれを見込んでやらなかったら、計画と整合しないのではないかと。
 これは計画の整合性の問題である。せっかく良い制度なのだから、住宅再建したら補助の対象になると。最初から少ない計画ということでは整合性がないのではないか。

【岩間副局長】
 それぞれのまちづくり計画くと住宅再建への支給の関係を整合をとらせることは非常に意味のあることだろうと考えている。いずれご指摘を踏まえ、中身の精査をしてできるだけ整合性を図るようにさせていただきたい。

【斉藤委員】
 バリアフリー対応工事、県産材使用工事で、バリアフリーは1300戸、県産材使用は600戸ということで、最大130万円の補助になる県単補助で、これも大変積極的な事業だと思うが、この数字の根拠は何か。この間の実績も含めて。

【建築住宅課総括課長】
 戸数の考え方だが、基本的にはこれまでの実績等を踏まえて、また今後8500戸程度の住宅が建設されるものだと想定し、その中で、件数が伸びたりしてあまり正確ではないが、これまでの利用率がだいたい3割ぐらいと踏まえている。そういったことで算定している。
 バリアフリーについては、平成24年度から開始し、24年度が312戸、25年が913戸という予定になっている。
 県産木材は、24年度が152戸、25年度が370戸となっている。

【斉藤委員】
 バリアフリーの対応工事は5000戸を想定し約3割ということで整合性がある。


・まちづくりへの住民参画について

【斉藤委員】
 「地域住民と行政、さらには地域の関係者等が相互に意見交換を行う場を積極的に設けながら進める」と。今回、第二期実施計画の1つの目玉が住民参画と。これは本当に大事である。なぜか、すぐに家を建てられない、災害公営住宅も入れない、そういう中でまちづくりを進めなければならない。ただ待っているだけではもたない。だから被災者の方々が本当に自分たちが主人公になって、どういう高台移転の町をつくるのか、区画整理の町をつくるのか、ふるさとをどう再生するのかという、この住民参画がなかったら、本当に第二期の3年間というのは被災者はもたないと思う。そういう点で、具体的にどういう施策を考えているのか。

【総務企画課総括課長】
 第二期実施計画における住民参画だが、何より今後本格復興を進めていく上で、地域の方々のご意見を反映することが重要と考えている。第二期実施計画自体についても、これまでパブコメや地域説明会等を実施させていただいたところだが、計画策定後においても、各地域における説明会、従前から出前説明会という形で各地域からご要望があれば出向いて計画の内容を説明するということをやってきたところである。また、個別の各事業についても、地域の方々との意見交換会等の実施を各部局とともに取り組んでいきたい。
 その他、現地の復興本部委員会議を開始し、現地の関係者も参加いただいた形で、地域の方に即応できる体制ということで取り組みを進めることとしている。


・安全の確保について

【斉藤委員】
 「安全の確保の取り組み方向」というところで、「震災の記憶の風化防止のための防災文化の醸成と継承」とある。これはとても大事だが、いま市町村が検証作業をやっている。実際に被災者からのアンケート調査をやって、陸前高田市は300ページ近い中間報告を出しているが、どこでも出ているのは、やはり避難の遅れ、避難しなかったことである。痛切な教訓である。「安全の確保」といったら、最大の教訓は「避難」だった。一般的な防災文化としないで、最大の教訓は、こういう大きな地震津波のときには、ただちに避難すると。そういう避難するための訓練や避難場所、避難道の整備こそ本来最優先されるべきで、そのことをもう少し明記する必要があるのではないか。
 防潮堤の問題で議論があったが、いま決めた計画を直すことはなかなか難しいが、懸念しているのは、ゼネコンの関係者も「いま造ろうとしている防潮堤は、前の防潮堤とまったく違うものだ」と新聞紙上で言っている。例えば、6〜7mの防潮堤が12〜13mになる。体積で言ったら10倍である。だから災害復旧といっても同じものを造るのではない。まったく別次元の巨大な防潮堤を造るというのが今回の防潮堤建設で、一番心配しているのは、そのことにより海の環境・資源・砂浜といったものに本当に影響がないのかと。本来ならこれだけの事業というのは環境アセスが必要だが、災害復旧でどんどん進められている。ゼネコンの関係者も危惧を表明しているが、その点はどうなのか。実際に根浜海岸などは、砂浜を守るために防潮堤の高さは以前と同じにすると。吉里吉里や浪板もそうである。広田湾の埋め立て地も、防潮堤を100m下げて干潟が再生したと。これは素晴らしいことだったと思うが、だいたい基本的に現在地に今までと違った巨大な防潮堤を造った場合に、砂浜や海の資源、そういう形での影響はないのかということは慎重にやるべきだと思うが、その点の検討はどうか。
 「JR山田線・大船渡線の復旧に向けて」ということで、3年経っているので、「早期復旧」と明記すべきではないか。

【総務企画課総括課長】
 何よりも今回の大震災津波において、基本計画でも述べているが、今後このようなことがあっても人命だけは必ず守るという考え方で進めてきたところである。
 防災の施策についても、何も忘れて逃げるという防災文化、この伝承が第一、それから、まちづくり・ハードとあわせて人づくりにも傾注するということで、三陸創造プロジェクトの1つに、防災の伝承ということで、プロジェクトをつくって各種事業を構築している。こういうことで、今後このような大災害があったとしても、ふるさとにいつまでも永続できる地域として再生できるような形で、社会づくり、防災づくり、文化の継承について取り組んでいきたい。
【河川課総括課長】
 防潮堤の災害復旧等にかかる環境影響について。災害復旧事業ということで、アセス法・条例による検討ということではないが、すべての箇所においては、環境影響の実態的な調査は行っており、県で景観環境検討委員会という専門家による委員会をもっており、そちらへの報告・相談等は逐次行っている。
【交通課長】
 JR山田線・大船渡線の復旧について。委員ご指摘の通り被災から3年過ぎている。まさしく我々としても「早期復旧」というのをしっかり入れていかなければならないと思っている。こちらについては、「早期」という文言を加えるということと、実際の取り組みについてもしっかりやっていきたい。

【斉藤委員】
 防潮堤については、ゼネコンの関係者でさえそういう危惧を表明している。ここは丁寧に慎重に、それを真剣に考えているところは防潮堤を低くするとか無しにするとか100m下げるということをやっている。これも1つの現実なので、造ってから海がダメになったということだけは回避しなければならない。土木だけでなく関係部局が連携しやっていただきたい。


・海水浴場の砂浜および関連施設の復旧整備について

【斉藤委員】
 「津波により流出した海水浴場の砂浜および関連施設の復旧整備」とある。陸前高田市と山田町が対象だが、事業を見ると、陸前高田市の事業は新規でなったが、山田町の事業は書いていないのではないか。

【まちづくり再生課総括課長】
 山田の浦浜海岸については第一次案から記載させていただき、今回陸前高田市については復興交付金等の手続きを進めながら追加記載させていただいた。


・公立の保育所等の整備について

【斉藤委員】
 「児童福祉施設災害復旧事業」で、「保育所・児童館等の復旧」が10カ所となっているが、民間保育所はほとんど再建されている。公立の再建が遅れており、この10ヶ所ですべて被災した保育所・保育園が再開するのか。公立はどうなるのか。

【保健福祉企画室企画課長】
 児童福祉施設の復旧だが、全体で17施設を復旧させる予定となっており、うち10の
施設を復旧を進めることとしている。このうち9施設が公立施設となっている。
 今後、移転先等決まり次第、残りの施設についても復旧を図っていきたい。


・岩手県立大学の授業料減免継続について

【斉藤委員】
 「県立大学被災学生修学支援事業」で、これは授業料免除の支援だが、これが26年度で終わる。これからも被災した学生が出てくると思う。学びの希望基金はあるが、県立大学の授業料減免が26年度で終わっていいのか。継続して実施すべきではないか。

【総務企画課総括課長】
 延長も含めて関係部局と調整させていただきたい。


・スポーツレクリエーション拠点施設整備事業について

【斉藤委員】
 「海洋型スポーツレクリエーション拠点施設整備事業」で、これは陸前高田市の高田松原野外活動センターの代替施設で、広田水産高の跡地に検討しているとは聞いているが、そういう形で進められるのか。

【教育企画室企画課長】
 平成29年4月の開始を目標に整備を進めていたが、陸前高田市における復興の進捗状況により、第1回検討委員会を開催した以降延期となっている。
 今後は、陸前高田市と連携をとりながら進めることとしており、現在まだ具体的な内容等については未定である。