2014年7月2日 6月定例県議会・本会議
議案に対する質疑(大要)
・県公会堂の施設整備について
【斉藤議員】
日本共産党の斉藤信でございます。議案に対する質疑を行います。
議案第2号は、2014年度岩手県一般会計補正予算(第2号)であります。28億2700万円余の補正予算であります。
第一に、県公会堂費として、新規に施設整備費が7409万円余計上されています。その具体的な内容を示してください。また、この間の利用実績はどうなっているでしょうか。今回の施設整備によって利用者が増える見込みでしょうか。
県公会堂は「高い歴史的・文化的価値を有する建物である」として全面保存されているのでありますが、今後の公会堂の施設改修計画はどうなっているでしょうか。外壁等のひび割れや雨もりの対策とともに、クリーニング等でもっと見栄えの良い施設にすべきではないでしょうか。
【総務部長】
具体的な内容だが、利用者の利便性向上と利用促進を図るため、新たに16室ある会議室への冷房設備の設置と、地下の厨房から2階会議室へ通じる配膳用エレベーターを設置するものである。
利用実績だが、昨年度は会議室の利用率が53.6%、大ホールは22.9%、全体の利用率は54.5%となっている。
今後の利用見込みだが、現在会議室には冷房設備がないため、夏場の利用率が冬場に比べ10ポイント程度落ち込んでいることから、今回の整備により夏場の落ち込み分の改善を見込んでいる。また配膳用エレベーターについては、最近創建時に大食堂として使われていた2階会議室を活用し、結婚披露宴や懇談会として利用する例が増えており、今回の整備によりさらなる利用率の向上に努めていく。
施設改修計画だが、公会堂は歴史的建造物であり、外壁のひび割れや雨漏りなど、老朽化が年々顕著となっており、今後は施設の状態を見ながら大規模改修などについて検討していく。
見栄えの良い施設にすべきというご指摘だが、公会堂は登録有形文化財に登録され、盛岡らしい都市景観を形成する歴史ある建造物であることも踏まえ、建物の清掃や桂園管理業務をきめ細やかに行うなど、指定管理者と連携しながら日々の維持管理の中で対応していきたい。
・被災者台帳システムについて
【斉藤議員】
第二に、被災者台帳システム更新整備費が新規で3億1736万円余計上されています。これによって被災者支援が具体的に、どう改善されるのでしょうか。年間の維持管理費とその財源はどうなるのでしょうか。
【総務部長】
被災者支援の具体的改善内容だが、このシステム更新による全県的なネットワークの構築により、被災市町村、避難先市町村、県が同一台帳の中で、被災者情報や被災者の生活再建にかかる意向等さまざまな被災者情報を蓄積し共有することが可能となることから、被災者支援の抜け漏れ等の防止や、集計データ等の今後の支援策への活用など、きめ細やかな被災者支援につながるものと考えている。
年間維持管理経費は、システム管理委託費として約1250万円程度を見込んでいる。その負担については、県と市町村が2分の1ずつを一般財源により負担することとしているが、市町村負担分については人口割の考え方も取り入れるなど、小規模市町村の財政負担にも配慮したところである。
・国連防災世界会議関連会合費等開催費について
【斉藤議員】
第三に、国連防災世界会議関連会合費等開催費として3815万円余が計上されています。今日の新聞では、陸前高田市で防災シンポジウムが来年3月16日に開催されると報道されていますが、岩手県として、具体的にどういう取り組みを行うのでしょうか。
【環境生活部長】
来年3月に仙台市で開催される国連防災世界会議に合わせ、本県の防災や復興に関する先進的な事例など、東日本大震災津波の経験や教訓を踏まえた提言をとりまとめ、パンフレット等を作成し、世界に向けて発信するとともに、仙台市で開催される展示会等への出店、県内でのシンポジウムの開催、被災地におけるスタディツアーなどを行おうとするものである。
・特養ホームの整備について
【斉藤議員】
第四に、老人福祉費として、施設開設準備経費特別対策事業費補助として5400万円が計上されています。特養ホームの整備と聞いていますが何床規模でしょうか。当初予算と含めると1億2120万円となります。どれだけの施設が新たに何床整備されるのでしょうか。3月末の特養待機者とその解消の見込みはどうなっているでしょうか。
【保健福祉部長】
この補助は、介護施設の開設に必要な備品等にかかる経費に対して行うもので、今回の対象施設は、広域型特養ホーム1施設90床となっている。この補助金では、当初予算と合わせ7市町において、特養ホーム4施設166床、グループホーム4施設36床に対して補助が行われる予定である。
なお、今年度の特養ホームの新規整備は、昨年度からの繰越分を含め17施設で544床の増床が予定されている。
特養の待機者と解消の見込みだが、平成26年3月末時点での待機者数は現在とりまとめ中である。平成25年3月末時点では、早期入所が必要な在宅待機者が1233人となっている。25年度から26年度までの2カ年間で特養ホーム852床のほか、グループホーム279床の計1131床の整備が計画されており、一定の対応が可能となっていると考えている。
・保育所等施設整備費について
【斉藤議員】
第五に、保育所等施設整備費補助が1億2755万円余計上されています。今回の整備による保育所の定員増はどうなるでしょうか。当初予算と合わせると7億2100万円余となります。今年度の対象施設数と定員増はどうなるでしょうか。すでに4月1日現在の保育所待機児童は8市町村193人となっています。昨年10月1日の待機児童は14市町村583人でした。これでは、待機児童の解消にならないのではないでしょうか。今後の対策をどう考えているのでしょうか。
【保健福祉部長】
今回の補正により71人の定員増となる見込みであり、当初予算と合わせると、今年度の対象施設は6ヶ所、定員増は245人となる見込みである。昨年度からの繰越分の7ヶ所250人を加えると、対象施設は13ヶ所、定員増495人となる見込みである。
待機児童の解消については、保育所の整備のほか、人的体制の整備も必要となることから、保育士確保対策として、保育士の資格取得に対する支援や潜在保育士の就職支援、保育士の賃金等の改善に対する支援等、保育士の確保にかかるさまざまな施策に取り組んでいる。今後もこれらの取り組みに加え、市町村と連携を図りながら、子ども子育て支援新制度の活用も図り、保育所定員の拡大、幼稚園での一時預かりの促進、認定子ども園の意向、事業所内保育や小規模保育の活用等、さまざまな保育サービスを総合的に提供することにより、待機児童の解消をはじめとする子どもや子育ての一層の支援に努めていく。
・地域少子化対策推進事業費について
【斉藤議員】
第六に、地域少子化対策推進事業費が新規で946万円余計上されています。結婚・妊娠・出産・育児の「切れ目のない支援」を行い、もって地域における少子化対策の強化をはかることを目的とした事業ですが、その内容はどうなっているでしょうか。岩手における少子化の要因、岩手の男性の生涯未婚率が22.71%と全国3番目に高い理由をどうのように受け止めているでしょうか。
【保健福祉部長】
この事業は、今般国が創設した地域少子化対策強化交付金を活用し、テレビ番組の政策により、結婚・妊娠・出産にかかる啓発・情報提供を行う事業、育児を積極的に行う男性を「育メン」として募集し、その人材を活用したハンドブックの作成や企業での説明会等の開催事業、若者と親世代の結婚観についての意見交換会の開催等、リーフレットの発行による相互理解の推進を図る事業、各市町村で活用する結婚相談員等を対象とした縁結びボランティア交流研修事業により、少子化対策の強化を図ろうとするものである。
本県の少子化の要因と男性生涯未婚率が高い理由については、本県における少子化の要因としては、平均初婚年齢や未婚率の上昇など、晩婚化・非婚化が進み、それに伴い出生年齢が上がっていること等が考えられる。男性の生涯未婚率が高い理由については明らかではないが、昨年度実施した結婚支援に関する市町村とのネットワーク会議では、婚活イベントの参加などでのコミュニケーションの能力が低いのではないかとか、そもそも出会いの場がないのではないかといった意見があり、このような声を踏まえ、今般少子化対策の一環として、結婚支援を主たる目的とした地域少子化対策推進事業を立ち上げた。
・医療従事者等養成施設整備について
【斉藤議員】
第七に、医療従事者等養成施設整備補助として、新規で3402万円余計上されています。岩手医科大学医療専門学校歯科技工学科の移転に関し、校舎の改修に必要な経費を補助しようとするものですが、その理由は何でしょうか。歯科衛生学科を含め岩手医科大学医療専門学校には、旧県立衛生学院の用地と施設を無償貸与していますが、その理由は何でしょうか。こういう例はほかにあるのでしょうか。歯科技工士、歯科衛生士の養成と県内就職の状況はどうなっているでしょうか。
【保健福祉部長】
歯科技工士は、歯科医療を担う重要な職種だが、県内で歯科技工士を養成する施設は、岩手医大医療専門学校のみであり、県民の歯科医療の確保を図る上で必要不可欠な施設と認識している。同校ではこれまで1000人以上の卒業生を排出し、多くの歯科技工士が県内で地域の歯科医療に従事してきたものであり、県民の歯科医療の確保の観点から、歯科医療政策として県の支援が必要と判断したものである。
旧県立衛生学院の用地と施設の無償貸与の理由等については、旧県立衛生学院歯科衛生学科は、平成16年4月に岩手医大に移管したものだが、この移管に関しては、当時すでに歯学部、歯学部付属病院および歯科技工士養成機関を有していた岩手医大に移管することが効果的・効率的な学校運営が行われることや、歯科医療従事者全体の資質向上につながると判断し県の支援策として盛り込んだ。なお、県の公有財産の無償貸与については、岩手医大にたいする高度救命救急センターの貸付や、社会福祉事業団に対する社会福祉施設の貸付など、高い公益性が求められるものに限定している。
歯科技工士・歯科衛生士の養成等県内就職状況は、歯科技工士については、最近5年間の卒業生は102名、うち県内就職者は54名で52.9%、歯科衛生士は199名で県内就職者は131名で65.8%となっている。
・法人住民税の一部国税化について
【斉藤議員】
議案第4号は、岩手県県税条例等の一部を改正する条例案であります。法人住民税の一部を国税化し、地方法人税として地方交付税化するのがその内容の一部ですが、県税収入にどういう具体的な影響と効果があるのでしょうか。
【総務部長】
法人住民税の一部国税化にかかる税制改正については、国税化により減収となる分の全額を地方交付税の原資とすることで、地域間の税源の偏在性を是正するものと理解している。
今回の改正により、交付団体の法人住民税は減収となるが、一方で東京都の税収のうち、平年度ベースで1700億円程度が新たに全国の地方交付税の原資となることから、法人住民税の減収分以上に地方交付税の税源は増加する傾向となる。
本県への影響額については、平年度ベースの粗い試算で、法人住民税は14億円程度減収となるものの、それを上回る地方交付税の増額により、歳入全体としてはプラスになると想定している。
・災害公営住宅の状況について
【斉藤議員】
議案第17号、第29号から第32号は、災害公営住宅の新築工事の請負契約に関し議決を求めるものであります。被災者にとって新たなコミュニティを確立することは極めて重要な課題ですが、建築上、県産材の活用や集会場の整備など、どのような配慮がなされているでしょうか。1戸当たりの経費はどうなっているでしょうか。すでに入居が可能な災害公営住宅で空き戸数が628戸中81戸あるとのことですが、その理由・問題点は何でしょうか。
【県土整備部長】
県産材の活用だが、請負契約書において、建設資材は岩手県産とするよう努めることとしており、内装等に用いる木材は、原則として県産木材としている。また、集会所を別棟で整備可能な場合は、鉄筋コンクリート造りの住棟とは別に、木造の集会所を整備するなど県産木材の活用に努めている。
新たなコミュニティの確立への配慮についてだが、災害公営住宅の各団地には、集会所を原則として設置することとしており、また高齢者等が外出しやすいように廊下等の共用部分をバリアフリー化し、建築計画上もコミュニティの確立に配慮して進めている。
1戸あたりの経費は、これまで発注済みの災害公営住宅1戸あたり平均工事費は約1937万円となっている。
空き住戸については、災害公営住宅の建設にあたっては、被災者の意向も踏まえ、市町村とも十分に協議しながら建設する地域や戸数等を決めてきたが、災害公営住宅の入居か持ち家再建か、現在も検討している方がいること、利便性が高いなどより自分の希望に近い災害公営住宅の完成を待っている方がいること、応急仮設住宅から災害公営住宅に入居することにより、新たに家賃負担が発生することなどにより空き室が生じているものと考えている。
・閉伊川水門整備計画について
【斉藤議員】
議案第21号は、閉伊川筋藤原地区水門災害復旧工事の請負契約に関するものであります。閉伊川の水門工事は、宮古市議会が6月議会で「閉伊川水門整備計画の詳細な説明を求める決議」を採択しています。市議会の納得が得られていないのではないかと思いますが、説明が求められている課題と県の見解について説明していただきたい。今後説明する予定はどうなっているでしょうか。
【県土整備部長】
宮古市議会から県にたいし、6月23日付で決議の提出があった。その内容は、閉伊川水門の整備にあたり、設計変更や工期延伸の内容、水門建設による生態系への影響、船舶等の水門の捜査方法などについて、県と宮古市が宮古市民に対し詳細な説明を行うことを求める内容となっている。県はこれまでも水門工事にたいしては、宮古市議会全員協議会での4回の説明のほか、住民説明会を3回実施してきており、今回示された課題についてもその中で一定の説明はさせてきていただいている。
今回の宮古市議会の決議を踏まえ、宮古市と調整しながら、来月にも住民説明会を開催することとしている。今後も事業の進捗に応じて情報提供するなどの取り組みを通じて、さらに理解を深めていただけるよう努めていく。
≪再質問≫
・地域少子化対策事業について
【斉藤議員】
部長の答弁は、答弁になっていない。少子化の原因、生涯未婚率がなぜ高いのか。初婚年齢の高齢化や晩婚化というのは結果論である。なぜそうなっているのか。今年3月の内閣府の家庭と地域における子育てに関する意識調査があるが、結婚を決心する状況として、「経済的に余裕ができること」というのが46.3%で第1位だった。6月30日付の岩手日報にも、人口1億人目標の問題について論説があるが、今年の政府の意識調査では必要な結婚支援を聞くと、「給料を上げて安定した家庭を営める」が未婚の20代30代で男女ともトップだったと。「対策として子育て世代が安定雇用で働き所得を上げることが不可欠」だと指摘している。
結婚・妊娠・出産のライフステージに対応するというが、まず第一関門でとどまっていると思う。その大きな理由がまさに不安定雇用で、結婚できる経済力がないと。この問題について、ぜひ本格的に県として取り組む必要があるのではないか。
【達増知事】
雇用や所得が結婚や出産に影響を及ぼしているということは私も承知しており、雇用や所得というのは、人口の社会増減に大きく影響するところでもあるので、岩手県としては、雇用や所得ということ、私が知事に就任したときに、岩手が直面する雇用の低迷、所得の低迷ということをまさに人口減少・人口流出ということとも関連付けながら、その危機を希望にということで、ずっと取り組んできたところでもある。
現在、設置した県の人口問題対策本部において、改めてさまざまなデータの検証、施策の整備をする中でも力を入れて進めていくことになると思う。
・保育所の整備、待機児童の解消について
【斉藤議員】
保育所の整備に関わって、これは児童福祉法で「保育にかける児童を保育しなければならない」と。市町村の義務である。待機児童というのは法律に反する事態だと思う。4月1日段階で180人も待機児童がいることが異常である。小学校に待機児童はない。そういう立場で保育所の整備をしなければいけない。保育所だったら待機児童があっても放置されていいという考え方を改めて、待機児童の解消が当たり前という立場の対策をとるべきではないか。
【保健福祉部長】
待機児童がないのは当たり前と、私もそういう方向で進めるべきだと考えている。
答弁の中で、昨年度からの繰越分を含めて今年度495名の定員増ということだった。ただやはりこれは地域的なバランスがあるので、必ずしもこれが全てにつながるとは思わないが、いずれ新制度に向け市町村でニーズを踏まえながら計画を立てているが、その中で先ほど申し上げた保育所の定員整備ももちろんだが、それ以外のさまざまな保育サービスを組み合わせながら、待機児童の解消に向けて市町村にも支援していきたい。
・災害公営住宅について
【斉藤議員】
コミュニティの確立だが、これからどんどん災害公営住宅が整備されて入居者が増えていく。応急仮設団地でのコミュニティの確立に2年3年かかっている。その方々が今回災害公営住宅に入居される。そこでのコミュニティの確立は仮設団地でのコミュニティの確立と同じような構えで取り組む必要があるのではないか。そういう点で、復興住宅サポート支援事業というのもあるが、どのように取り組まれているのか。
今回追加で提案された災害公営住宅の請負案件を見ると、大船渡市で2工区あるが、それぞれ建設戸数に対して1.5倍から2倍近い駐車場の整備がされている。これは大変積極的だと。ぜひ今後こういう方向で条件のあるところは駐車場の整備をすべきと思うが、今まではどうだったのか。今後こういう方向で進められるのかどうか。
【県土整備部長】
コミュニティの確立だが、集会所の施設整備、入居者のコミュニティに配慮した選定・募集をしていくこと、さらには入居後の自治会の設立の働きかけなど、各段階でさまざまな取り組みが必要になると思う。市町村と一緒にコミュニティの確立に向けて取り組んでいく。
駐車場の整備だが、敷地によっては1世帯1台ぐらいしかとれないところもある。災害公営住宅の整備にあたっては、敷地がとれる限り多めにとるという形で進めており、今後ともそういう方向で進めていきたい。