2014年8月5日 商工文教委員会
平成27年度県立学校の編制に関する質疑(大要)


・花泉高校の学級減の問題について

【斉藤委員】
 教育長は、平成26年度の入学生が急変したと認め、急変したことには何らかの原因があるはずだと。今までは2クラス確保していた。今年の入学生が急に30人に減った。30人になったから後は見通しが持てず学級減だと。このやり方は正確、緻密ではないと思うが、急変だという認識であれば、その要因が何なのか、はっきり示さないまま学級減を強行すべきではないと思うがいかがか。

【教育長】
 入学定員に対する欠員が大幅に落ち込んだということは事実である。その前提として、学校選択にあたって、要因はそれぞれの生徒や保護者等のさまざまな思いがあろうかと思う。はっきりした原因というのはなかなか、進路選択もあればクラブ活動等もあると思う。それから、友達関係とかさまざまなことがあろうかと思う。そういう中で、結果としてこういう状況になっているということについては、その事実としては重く受け止めなければならないということで、先ほどそのような発言をさせていただいた。

【斉藤委員】
 今年の入学生が急変したというのだったら様子を見るというのが常識的な対応だと思う。
 今年急に減ったわけだが、いま高校再編で、岩手の県立高校がどうあるべきか議論している最中である。その中に、花泉高校のあり方というのも当然加わると思う。第二回の検討委員会も傍聴したが、1回目も2回目も小規模校のあり方というのは中心的論点の1つである。だからそういう意味では、今の2学級を1学級にしてしまって議論するのではなく、今の花泉高校は現状のまま残したうえで、小規模校のあり方というのを検討すべきではないか。今年対象になるところがないから無理やり花泉を1学級減というやり方は正しくないと思う。葛巻はやらずに花泉だけやるというのも公平ではないと思うがいかがか。

【教育長】
 今年度の入学時点でそういう状況だったが、回復の状況が見込めなかったということである。そして改めて、市町村教委を通じて生徒の意向等も踏まえ、現在の3年生の状況の中で、どうしても花泉高校を選択する生徒数の増大が見込まれないということであり、やむを得ない判断をさせていただきたいと思っている。
 一方、葛巻高校については、中高連携型の一貫校ということで、1学級の定員を上回る生徒確保が可能というような見通しがたっているので、そこで結果的に対応の違いが出たと。
 委員から、どこも対象ないからどこかの学校を減にしようというようなことでは毛頭ないので、事実に即して検討した結果であるので、申し上げておきたい。

【斉藤委員】
 48名で、去年までは2学級だったということか。

【高校改革課長】
 現在も2学級であり、それを1学級にするということで今回提案しているものである。

【斉藤委員】
 今年の入学生が30名だが2学級にしているということか。

【高校改革課長】
 その通りである。

【斉藤委員】
 去年までは1学級を超える入学者があったと。大事な事実である。
 各委員からも発言があったが、葛巻は学級減にしなくてよかったと思う。そして中高連携もうまくいっている。逆にいくと、花泉は中高の連携がうまくいっていないのだと思う。人口の規模から見ても、中学校の卒業生の規模から見ても、2学級を十分維持できる高校だと思う。そうなっていないところに、今の高校のあり方が問われているのではないか。まさに、高校再編で議論すべき大事な問題だと思う。これを放置していたら、本当に地域の小規模校は存立しないと思う。
 大震災での教訓をどう受け止めるのかというのが今度の高校再編の大事な論点の1つである。地域に支えられ、地域と結びつき、地域に貢献できる高校というのが今度の震災の大変重要な教訓だったし、生徒たちは立派な役割を果たしたと思っている。地域に支えられ、地域と結びつき、地域に貢献できる高校といったときに、花泉高校はどうあるべきか。その検討こそ学級減の前にやるべきである。人口規模からいっても、中学校の卒業生の数からいっても、十分維持できる学校がなぜ維持できないのか。たしかに、隣の一関にたくさんの高校があるということが条件としてあるかもしれないが。
 いま子どもの貧困化が16.7%である。6人に1人が貧困。学校長に聞いたが、経済的に困っている生徒は少なくないと。そういう家庭が6人に1人あるというのに、なぜ無理して一関まで通学しなければならないのか。それは生徒の希望があるかもしれないが、それに応えられていないという、そこの高校の改革こそ求められているのではないか。

【教育長】
 今般の高校再編の検討においては、大震災を経た中で、これからの岩手を育む人材をどう育てていくような環境をつくっていくかということはきわめて大事な視点だと思っている。そういう中で、検討委員会に諮問させていただいた、岩手県の高校教育の今後の基本的な方向の見直しにあたっては、そういう視点も含めつつ、将来的なあり方がどうあるべきか幅広く協議いただきたいということで検討をお願いしているところであり、ご指摘のあったようなことを含め具体的な検討がなされ、また方向性を示していただいた中で、県教委として具体的な検討をしていきたい。

【斉藤委員】
 大変重要な答弁だった。そういう花泉高校も含めて高校のあり方が検討されると。検討される前に2学級から1学級に減らしてしまったら、花泉高校が選択できなくなる。1学級になったら、クラブ活動にも弊害がある。いろんな意味で弊害が起きる。今回の高校野球でも連合を組んで参加したが、これはこれで1つの努力の方向だが、客観的に努力すれば維持できる高校を1学級にしたら、改革の道を閉ざしてしまう。慌てる必要はまったくなく、根本的に県立高校のあるべき姿、グランドデザインを議論しているときに、その選択、改革の道を閉ざしてしまったらどうするのか。
 例えば、大東高校や千厩高校はきちんと維持されているが、その違いは何か。

【高校改革課長】
 千厩高校においては、普通科と専門学科を併置するということで、普通科・農業・工業という形での併置がされており、大東でも、普通科と商業ということで、専門学科と併置するという形で、学校の規模も工夫しながら、学業においてもクラブ活動においても活発な活動をするような形での取り組みがなされている。

【斉藤委員】
 データを見るとそんな単純な話ではない。普通科だけ比較すると、大東は120人定数で115人である。千厩は120人定数で118人である。普通科でこれだけ確保されている。統廃合の関係で専門学科もあるが、専門学科があるから確保されているというのではなく、普通科自身がきちんと定数確保されている。いまのは答弁にならない。大東・千厩と花泉の違いは何なのか、そこに今あるべき高校の姿も問われているのではないか。
 そして中学校の進路指導のあり方も問われている。住田でもそうである。成績主義で、名のある高校にどれだけ就職させるかということが校長の評価につながると思っている先生が多い。やはり地元の高校をしっかり育てて、進学にも就職にもしっかり応えられるような、現場の高校の先生はみんな頑張っている。住田にも花泉の校長先生の話も聞いたが、4年生大学を志望する生徒がいたら全力で応援して、達成させるために頑張っている。そういうところにギャップがあるのではないか。中高連携というのは、一緒になることではなく、中学校と高校との連携というのが今回問われていることではないか。

【高校改革課長】
 千厩・大東の普通科も含めた進路の状況でいうと、花泉の方は就職7割、専門学校進学2割、短大等が約1割という形になっている。千厩高校は、国公立をはじめとする大学・短大等への進学が約5割、就職が約4割強という形になっている。千厩の場合であれば、コンスタントに国公立にも進学というものも見られ、大東もおおむねそのような形での傾向ということがあるので、普通科であるがゆえに、進学の方の対応が十分なされているということもあり、進学したい方への対応という部分で取り組んでいると思う。

【斉藤委員】
 進学の実績も大きいのだと思うが、ただ去年は4年生大学の希望者がそもそもいなかったと。今年はいると。それは必ず達成させたいということなので、進学にも就職にも対応できる高校だというアピールと、中学校を含めた取り組みが必要だと思う。
 高校再編を検討するにあたり、いま検証しなくてはいけない問題は、生徒が増えたときに、岩手の県教委がどう対応したか。高校の多様化である。高校間格差を拡大してきた。いま生徒急減の中で、この路線が完全に破たんした。高校をたくさんつくって、格差も千差万別になり、いまそういう高校多様化路線というのは生徒減少の中で完全に破たんした。だから、地域で結びついた、進学にも就職にも対応できるというのは、戦後の高校教育の民主的原則の1つだった。それが生徒が増えたときに新しい学校をどんどんつくっていった。今は逆で60年代以下の生徒数になっているので、多様化された高校だけでは維持できない。そういう意味で、本当に地域で進学にも就職にも対応できる高校をしっかり育てていく、守っていくということがとても大事である。それは、今度の高校再編でぜひ深く検討してほしい問題だが、そういう問題意識は持っているか。

【教育長】
 大東高校と千厩高校、花泉高校、それぞれ旧町の規模としては同程度の地域であり、本来同じような地理的な条件であれば、独立した高校が将来的にも存続する可能性はどこの地域もあるのだろうと思う。ただそういう中で、花泉の場合は、経済的にも一関との関係が歴史的にも密接な関係にある、地理的にも東北線沿いと大船渡線沿いという違いもある。という中で、どうしても一関に行く環境という点で、大東・千厩は多くない。
 本来的な高校のあり方を根本的に検証すべき時期ではないかということだが、まさに今回の検討委員会の中において、学校の規模のみならず、学科のあり方とか、新しいタイプの学校の検証等も含めて、現在検討委員会の中で議論いただいているところである。そういうことも当然議論の対象になると思っている。

【斉藤委員】
 私以外の委員も含め、今度の花泉高校の学級減というのは、急すぎると。ましてや本格的に高校再編のあり方を検討しているときに、それを待たずに強行すべきでないというのが全体の意向だったと思う。
 今年急に30人に減ったというだけで学級減はやるべきではない。本格的な議論を踏まえてやることが必要だし、まだまだ花泉高校については努力や工夫の余地があると。これは中学校も含めて。ましてや、子どもたちの貧困化が進行する中で、地域の学校をしっかり守り育てるということで対応すべきではないか。
 商工文教委員会は提案を議決する場ではないのだが、学科再編についてこれだけ意見が出たということは今までなかった。そういう意味では時期尚早。高校再編の全体の議論の中で検討すべき課題ではないか。

【教育長】
 花泉高校の学級数の調整の方向性については、理由についてはこれまで再三述べさせていただいたが、本日の委員会の中で、委員各位からさまざまなご意見をいただいた。それらを踏まえ、教育委員会として、今回の基本的な方向についてはこの方向でやらさせていただきたいということについても述べさせていただいているが、いただいた意見も含め今後の検討の材料にさせていただきたい。

【斉藤委員】
 これだけの議論があったので、ぜひ正確に教育委員会議には報告してやっていただきたい。
 明日からブロック別の懇談会が開催される。第二回を傍聴をして第一回は議事録も読んだ。それぞれの委員がそれぞれの問題意識を発言しているが、議論が深まっているという感じではない。ブロック別懇談会では何をテーマに、どういう議論、意見を聴取しようとしているのか。どのように案内しているのか。

【高校改革課長】
 21年の9月には、今後の高等学校教育のあり方についてというものを取りまとめた後に、22年度の3月に県教委としての今後の高校教育の基本的方向ということを取りまとめ、そして地域検討会議を22年のところで3回ほどやりながら意見をうかがってきたところではあるが、今回はそういう震災等からの影響等もふまえて、22年の基本的方向という部分については、方向性の部分では有効であるものの、震災の影響等を踏まえ、将来を担う子どもたちの生き方が確かな成長を支えているという視点に立ち、見直しに向けた検討をいただくということで、見直しが必要と考えられるようなところについてご意見をうかがい、それを検討委員会の中での検討を深めていくために行うと考えている。

【斉藤委員】
 高校再編の検討にあたり、ブロック別懇談会もこれから開かれるが、こういう点をしっかり深めていただきたい。
 1つは、震災の教訓を深めるということをやっていただきたい。先ほど、地域と結びつき、地域に支えられ、地域に貢献できる高校と述べたが、そういう意味では花泉のあり方はまさにそこで問われているのではないか。
 そことの関わりで、高校の多様化、高校間格差がこの間拡大してきた。この検証が絶対必要である。生徒がこれだけ減少しているときに、同じ学校はもたないわけだから、今までの多様化政策、高校間格差の拡大ということをしっかり検証すべきである。その点では、新しいタイプの高校の評価ということも検討委員会に出されたが、きわめて甘く主観的。客観的ものが何もないと思う。総合学科というのは矛盾の集中点で、生徒の希望より多く、総合学科が学級減の中でもたなくなっている。根本的に見直すべきである。進学型と就職型があるが、どちらにも十分対応できない。
 それから、この間一関一高の中高一貫校を見てきたが、あれだけ施設・設備が不十分な中学校をつくったということは失敗だったと思う。それも検証すべきである。新しい立派な中高一貫校をつくるならまだしも、ああいう形で何も施設・設備がない中で形だけつくってしまった。そことの関わりで、一関附属中学校の倍率も下がっていると思う。そして一関管内の入学者が増えているので、元に戻ってきている。高校に入れば混合のクラスになるので、形だけのものになってしまったのではないか。新しいタイプの高校は客観的にきちんと評価すべきだと指摘しておきたい。

【高校改革課長】
 当然見直しの論点のところでも復興という部分についての論点は入れている。東日本大震災津波の教訓というもので普通教育というところでは、困難に直面しても諦めることなく、自ら考え行動していく力の大切さ、つながりの重要性という部分の教訓も根底に据えながら、郷土を愛し、復興と発展を支える人材を育成するために、生きる、関わる、備えるというような教育的価値を設定して取り組んでいるということで、そういった視点は十分検討していきたい。
 新しいタイプの高校の評価だが、その部分についても、総合学科のあり方という形であれ、これまで導入した新しいタイプの学校の部分という形での論点にはなっているので、そこも踏まえて検討していただきたいと考えている。

【斉藤委員】
 見直しを真剣にやろうという提起は大事な提起だと思う。ただ、あなた方が基本的な準備をするわけだから、それで立ち入って聞いているので、そこを踏まえてやっていただきたいし、検討委員会でもやっていただきたい。2回の議論を聞く限りでは、それぞれの委員がそれぞれの問題意識を話している。議論にはまだなっていない。あと3回でまとめようというのは無理な話だと感じたので、しっかりやっていただきたい。


・高校授業料の無償化、入試制度について

【斉藤委員】
 この間の大きな変化は、高校授業料が無償化になったことである。これは、高校進学率が県内99%という中で、高校全入を踏まえた1つの制度的な改革だったと。安倍内閣になり一部所得制限が導入されて逆流があるが、しかし高校全入という戦後の高校改革の民主的原則に一歩近づいたと。その時に問われるのは入試のあり方である。みんなが入れるのに厳しい入試制度がなぜ必要なのか。中高一貫で入試がなくなることがいいというのなら、全体的にやればいい。いわば、ほとんどの中学生が入れるのに、厳しい入試制度をなぜ継続しなければならないのかということは検討すべき課題になっているのではないか。
 もう1つは、高校に入ると、中退、不登校が増える。中退が一時500人と言われ最近は300人ぐらい。それでも高校の1〜2校分、不登校も500人。義務教育ではないから、その高校にふさわしくないと認めれば、退学させてしまう。高校全入というのなら、入学したすべての高校生が就職し進学できるような高校にしなくてはならない。例えば、中退した場合どうなるか。まともな職につけない。非正規になってしまう。やはり全ての入学者がしっかり成長し就職・進学できる高校を新たにめざすべきだと。

【高校教育課長】
 入試制度の第一の目的は、生徒の選抜というところにある。実態としては、一倍を超える高校、超えない高校、少子化の進行の中で1倍を超えない学校が出てくるので、そういった学校では、ほとんどの受験者が合格するという状況はあるが、選抜の機能のほかに、高校入学後の学力の状況を把握して、高校での指導に生かすという面もあるので、そういった面では今の入試制度は機能していると考えている。1倍を超えるところでは厳しいところは厳しいが、生徒の学習のモチベーションにもなっており、そういった意味では平成28年度から新入試制度が実施されるが、そういった社会の状況に応じながら入試制度の改善も図っていくことが必要かと思う。

【斉藤委員】
 高校授業料の無償化というのは、実質高校全入に匹敵するものである。そして今入学定員を割っているときに、本当に厳しい入試制度は必要なのかという根本的な問題提起をした。
 60年代、高校全入が戦後の基本方針だった。それが、高校生が急増した中で、適格化主義を導入した。戦後の高校の三原則は、高校全入、総合性、男女共学である。そういう形で新しい民主的な高校のあり方が提起され、それがだんだん形骸化されてくる。競争主義、高校多様化と。それを生徒減少の中で、しっかり原点に立ち返った真剣な議論をすべきではないのか。しっかり受け止めてやっていただきたい。


・特別支援教育について

【斉藤委員】
 これは検討委員会でも議論されているが、特別に支援が必要な生徒が増えていると。3.2%800人と。これも大きな数字である。そういう高校生をよく見れるようになったのは前進かもしれないが、そこへの支援の体制はまったくないと言ってもいい。2つの点でこれは改善に取り組むべきだと。1つは、今の高校でどう対応するか。そのためには、専門的な能力をもった教師を配置する。もう1つは、特別支援学校の抜本的な拡充である。特別支援学校は、これ自身は生徒減少の中で入学者は増えている。教室不足などというあってはならない事態が今でも解消されない。
 例えば、花巻清風の話を最近聞いたが、北上市内から通っている生徒の方が多いと。だとしたら北上に特別支援学校をつくるということも考える必要があるのではないか。幸いにも県立病院跡地の県有地がある。そういうことも含めて、2つの方向で、特別支援教育というのは、岩手の教育のもっとも深刻な矛盾の集中点の1つだと思っている。そういう打開も今度の高校再編で検討していくべきではないか。

【高校改革課長】
 いま検討している段階では、現状のところを示して、これからの対応というところを検討している状況であるので、そういう特別支援学校と高校教育のあり方という相関関係の部分もあるので、そういうところも踏まえて将来的に検討していく必要はあると考えている。