2014年8月5日 商工文教委員会
滝沢市の中学生の自殺問題に関する質疑(大要)


【斉藤委員】
 学校側の調査結果はどうだったのか。その後、保護者説明会が開催されているが、その内容はどうだったのか。そして滝沢市の教育委員会で、第三者委員会の設置が決められたと。それぞれ経過に沿って、状況を報告していただきたい。

【生徒指導課長】
 調査結果については、当初の予定では7月上旬に遺族に説明し、その後保護者説明会という予定だったが、生徒・保護者に対するアンケート等の集計・聞き取り等に時間がかかり、最終的に調査結果が発表されたのは7月17日で、遺族へ報告を行った。
 保護者会については、7月18日午後7時から始まり、約3時間45分ほどかかったと聞いている。先ほどの保護者用資料を全参加者に渡し、その中身について報告をした。それに関わり、保護者の方々からはさまざまなご意見が出たということで、調査の内容、報告に関わることについての指摘もたくさんあったと聞いている。
 中身については、さまざま聞き取りの結果、8項目ほどについて報告書に具体的に記載があった。例えば筆入れのいたずら―亡くなった生徒と同じクラスの男子生徒がお互いにふざけ合いの中で筆入れをひっくり返したという部分に同じクラスの女子生徒も関わっていたと。それが元で男子生徒がトイレで泣いていた。あとは、インターネットに関わるさまざまな悪口的なことについて調査をしていったという中身についてもあり、また、同じ部活動内での亡くなった生徒に対する女子生徒からのからかい的なもの等について調査があった。
 結論としては、その8項目の中に、いじめと疑われても致し方ない事案があったと。あとは、これは調査報告書にはないが、いじめと疑われても致し方ない事案についてと、自殺との関わりについては判断できないという話が校長からあったと聞いている。
 以上の調査結果を受け、滝沢市では、遺族にたいし第三者委員会の設置についての意向を確認し、遺族からは第三者委員会の設置を希望するということで確認がとれ、教育委員会として第三者委員会の設置を決定、要項を設置、あとは予算の関係等があるので、今週の木曜日(8/7)の議会で第三者委員会にかかる予算を決定し、今後委員の選考等をしていくというような流れになっている。
 
【斉藤委員】
 6月議会の委員会でもこの問題を取り上げた。残念ながら、学校の対応というのは、生徒・保護者の不信を広げる形になってしまった。
 7月18日の保護者説明会は3時間45分かかったと。いわば、学校の説明にたいして圧倒的に納得がいかなかったと。たしかに、結論のところには、「いじめと疑われても致し方ない事案であった」とあり、今までは「いじめは確認されていない」というだったので、それは若干変化したが、いじめと認定したのかと言われれば、そういう回答はなかった。あくまでも「いじめと疑われても致し方ない事案だった」ということを校長は繰り返した。それで学校の認識が問われた、保護者は納得がいかなかったというのが全体としての印象だったと。私も直接参加した父母からも聞いている。
 7月20日付の盛岡タイムスの報道で、母親の手紙が読まれた。「自身の思いを綴った手紙を他の保護者に代読してもらう形で思いを吐露した。男子生徒が特定の生徒との関係で悩んでいたことや、そのことで体調を崩しがちだったことを明らかにした上で、『わが子の死の原因をはっきりさせて』」と訴えた」と。
 その8項目の「いじめと疑われても致し方ない事例」、ところがその説明が全く調査に値しない、どのようにも受け取れるような表現だった。例えば自転車のタイヤのパンクについて―これは5月の連休明けと5月23日にA君は自転車のパンクを修理しているが、その原因については分からないと。トイレで泣いていたことについて―数人の女子がA君の筆箱を隠したりひっくり返したりした、それでもお互いじゃれ合っていた程度の表現である。トイレに行って泣くぐらいまで悩んでいる子どもの姿が浮かばないような説明である。特に7項目目の「カッターについて」―女子F さんと女子Gさんがカッターを出して、男子生徒にカッターを向けていた、そこにA君もいた。この事案については、大変な危険行為であると認識をもち、昨年10月頃に教諭が指導しているが、そういう厳しい中身はない。
 中学2年生の生徒が自ら命を絶っているときに、そういうところに子どもが追い込まれたにも関わらず、8つの事例を示しながら「いじめと疑われても致し方ない事案」でとどまり、そこから一歩も出ない。そこが学校の不信を広げていると思う。
 7月23日付の盛岡タイムスでは、「熊谷教育長は『いじめが疑われる行為があったにも関わらず、学校として気づけない部分があった。その点では学校長からも遺族に謝罪している』」と。気づけていなかったと教育長は述べたと。本当に思春期の子どもの気持ち、いじめによって追い詰められている。実は、この特定の生徒と一緒のクラスになったということをとても悩んでいたという証言はたくさんある。表現的にはじゃれ合いのような形だが、しっかり見れば、単なるじゃれ合いでない系統的長期的ないじめというべき内容だったと読み取るが、そういう点でいけば、保護者会の結果、学校の先生が信用できないということになってしまった。結局は第三者委員会を設置することになってしまった。このことについて教育長はどう考えているか。

【教育長】
 今回の事案に関わり、これまで学校側、教育委員会、遺族の間でいろいろなやりとりがあったと。それについては情報をいただいており、また経過についても新聞等を通じて十分認識している。
 学校側として、できる限りの客観的な事実を把握したいということで、いろいろ保護者アンケート、生徒へのアンケート、個別のヒアリング等も行いながら、事実関係の精査を行ったということについても報告を受けており、できる限りの努力はしたと思っている。ただ、そこの中で、保護者全体での思いと共通の点に至ったかどうかというと、やはりそこにはいろんな情報も多岐にわたり、学校側の声も素直に伝わらないというような環境もあったのではないかと思っている。
 いずれそういう中で、十分な合意形成ができない中で、遺族の思いとして第三者委員会による調査を求めたということなので、近々設置することとなる第三者委員会での調査を中止しつつ、また構成メンバー等について、文科省で定めている指針の中では、県が窓口になってほしいということもあるので、我々も主体性を持ちながら関係団体に積極的に協力いただけるようにお願いしていきたい。

【斉藤委員】
 この調査結果を見て驚いたのだが、教職員の調査結果で、41人のうち「いじめのような状況を見た」というのが8人、「聞いた」が3人で計11人26.8%がそう答えている。教職員にもこれだけ「見た・聞いた」という人がいた。なぜそれが学校の中で共有され認識されないのか。ずっと学校はいじめとして確認していない。どういうことなのか。おかしいと思わないか。

【教育長】
 今回の調査において、最終的にまとめた「いじめと疑われても致し方ない事案があった」ということ、そういう行動があったということは、亡くなった子どもに対するいじめだけではなく、お互いに人間関係がある中で、そういうことがあったことについては記載の通りではないかと思っている。
 ただ一方で、今回死に至る直接的な原因が、いじめだったかどうかということが判断できなかったとも、1つの大きな調査結果のポイントだと思っている。全体的にいじめがなかったというようなことを市教委として学校として認識しているのではなく、亡くなったことの因果関係においてそのような表現をとっていると思っている。

【斉藤委員】
 このアンケートは、「亡くなった生徒について、直接見たり話をして知っている事実、聞いて知っている事実」を聞いたものである。教諭が11人そう答えた。一般的ないじめではない。そういうアンケートの結果である。しかし学校側からは最後まで「いじめがあった」という認識が表明されていない。「いじめと疑われても致し方ない事案があった」にとどまり、保護者会で一番もめたのはここだった。いじめとして認めていない。因果関係として認めていないのではない。それは次の問題。いじめはあったが、それが亡くなった子どもの主な原因だったのかという因果関係は、かなり専門的な総合的な判断が問われるので安易には言えないかもしれない。しかし学校側の調査報告の一番の問題は、最後までいじめを認めていなかった。ここに遺族や多くの父母が不安を広げた。
 私は、校長経験者、教育界では重鎮と言われる方々からも「これは学校の対応はまずい」という声も聞いている。皆さん方のOBもそういう認識である。
 残念ながら、不信を広げながらの第三者委員会の設置になった。大津の事件もそうだったが、第三者委員会が本当に子どもたちに寄り添い、真相の究明と、子どもたち自身がこういう問題を乗り越える契機になるようなしっかりした調査を第三者委員会に求めたい。
 県教委は、各種団体に対する要請の窓口となるようだが、大津の教訓やその他のさまざまな教訓があると思うが、どんな思いで第三者委員会の設置に関与していくのか。

【生徒指導課長】
 文科省の通知で、いじめ防止対策推進法にかかる組織を立ち上げる場合は、弁護士会や医師会等職能団体に依頼する場合は県教委が窓口になるということになるので、ご指摘のようなことも十分踏まえながら、職能団体と連絡をとりながら、委員の推薦に向けて取り組んでいきたい。

【斉藤委員】
 保護者会の中で言われたことが、かなり深刻だと思うので率直に紹介しておきたい。
 いじめを見た・聞いたという生徒が、その後の個別の聞き取りの中で、生徒1人に対して教員が2人以上という聞き取りで、父母の方は「父母を立ち会わせてほしかった」と言っている。10回以上呼ばれた生徒もいたと。「内申書にひびく」と言われた親もいたそうである。子どもに寄り添った調査ではなかったのではないかという感じを受けた。
 遺族の方の発言で、市の教育長に会った際に、「剣道をやっているような子なのに自殺するとは軟な子だ」というようなことを言われたと。さらに「自分は教育長を長くやって、自殺する子も年に何人かいるが、みんな遺書を残している。お宅の子はなかった。だから分からない」と。慎重な調査の最中に、こういうことがあったとすれば大変遺憾だし、それ自身が教育委員会と学校の姿勢が問われることではなかったのか。

【生徒指導課長】
 いじめに関わる生徒への聞き取りの部分で、ご指摘の内申書が悪くなるというようなやりとりについては、滝沢市教委に確認したところ、「そのような事実はなかった」と聞いている。

【斉藤委員】
 実はこの自殺の数日前に、中学校3年生の生徒が逮捕される事件があった。このおばあちゃんが説明会で訴えたそうだが、「なぜ自分の子どもが逮捕されることになったのか」と。たしかに、さまざまな問題行動はあったと思う。修学旅行に行きたかったが、「何か問題があったときに東京まで迎えに来れますか」と親は言われたと。しかし子どもは修学旅行に行きたかったので、染めていた髪も染め直したりいろいろして先生に相談したら「あなたの分はもうキャンセルした」と言われたと。本当にそういう意味で、子どもに寄り添っていたのか。校長先生や先生が傷害を受けて逮捕になったのか。被害届はどういう形で出てこういう逮捕になったのか。やはり今、本当の教育の力で子どもを成長させる、立ち直らせるという姿が見えなかったのではないかという感じを受けた。そこの事実経過と、今後こういうことを起こしてはならないという立場で、これを教訓にしてほしいという思いで聞いているので、教育長の見解もお聞きしたい。

【生徒指導課長】
 いわゆる対教師暴力で逮捕されたということになるが、個別の事案なので詳しいことは避けるが、いずれこの事案については、午後2時すぎに当該生徒が登校し、校庭で爆竹等を鳴らしたと。さらにロケット花火を鳴らそうとしたので、それを止めようとした複数の教員に対し暴力行為が繰り返されたという中身で、最終的に校長は、鎮静化をさせるために警察署に110番通報して、警察官が学校に到着し、該当生徒に確認した上で現行犯逮捕という状況になっている。
 被害届については、暴力行為を受けた教員4人が逮捕後に被害届を出している。
 なお、当該校の校長としては、これまでのさまざまな指導も踏まえて、暴力の根絶や職員の安全確保、正常な学校運営に向けて苦渋の決断であったのではないかととらえている。
【教育長】
 今回の自殺の事案の発生直前に、このような逮捕事案が同じ学校で起きていたことはきわめて残念なことである。
 生徒たちが学校生活を送る中で、生徒同士でのさまざまなトラブルや、対教師との間での人間的な付き合いの中で、さまざまな思いを抱きながらぶつかり合うという場面も多々あろうかと思う。そういう中で、多くの教員が生徒に正面から向かい合って、子どもの進路実現に向けて後押ししていこうというような懸命の努力をしているということは、岩手の学校の多くの実態だろうと認識している。また、それぞれの管理職等からいろいろな話を聞く機会があるが、頑張っていただいているという思いをもっている。
 そういう中でこういう事件が起きたということはきわめて残念だと思っている。これを、特定の学校の事案ということではなく、まさに教職員の不祥事もそうだが、その問題に対して正面から向き合い解決に導いていく、取り組んでいくということはきわめて大事だが、同等に、このような事案が起こらないような再発防止の取り組みということがまた重要だと思っており、今回の事案等を他山の石として、他の学校で同じような事案が起きないように努力していく姿勢が求められていると認識している。