2014年9月2日 商工文教委員会
中小企業振興条例の制定に関する質疑(大要)


【斉藤委員】
 6月議会で、中小企業振興条例の制定をめざすと答弁があり、これは積極的で評価したい。
 全国もかなり進んでいるが、一番大事なことは、中小業者・関係者の英知を結集することである。行政の条例づくりになってはならないので、岩手県内の中小業者の実態がどうなっていて、現状や課題、要望などを正確につかんで、それに応える条例づくりを関係者と一体となって進めることが一番大事ではないか。そういう意味では、来年2月ということではなく、プロセスが一番大事だと言われているので、そのことについてまずお聞きしたい。

【経営支援課総括課長】
 関係者との意見交換やプロセスが大事だというのはその通りと考えており、先ほどご説明した300程度のアンケート、ヒアリング等もやっており、例えば以前から活動されている中小企業家同友会だとか商工会議所・商工会の役職員さんだけではなく、部会にも出かけ意見交換等させていただいており、そういった過程・プロセスを通じて、理解をえながら検討を進めていきたい。

【斉藤委員】
 ヒアリングやアンケートは大事だが、やはり関係者が一緒になって議論することがもう1つ大事である。そこで全体の認識が発展するし共有できる。全体が求めるものを条例化していくということをやっていただきたい。ヒアリングというのは県が聞く。しかし全体の会議・ワークショップという形で全体が共通の認識になって、またそこで知恵が出てくる。県が聞き取るということではなく、全体が議論して、そこで英知を結集するというプロセスを大事にしていただきたい。
 結論から言うと、中小企業振興条例という形で岩手県は条例制定をめざすべきだと思う。一番のモデルは千葉県だと思う。千葉県の条例はかなり早いのだが、先駆的な中身を持った条例で、すでに毎年条例に基づいて、千葉の中小企業元気戦略というのを立てて、毎年事業の結果を公表して、次の年度に何をやるかということを明らかにしている。ここまで徹底している県条例はあまりないと思うが、そういう意味では、これから条例を制定するのは後発である。後発の強みは、今まで作られた中で一番良いものをつくれるということである。よくそこを研究して、私は千葉県の条例が現段階では一番進んだ条例の1つだと思う。秋田はそれに似ている感じがするが。そういう意味で、中小企業全体を視野に入れたものを。
 先ほど参考資料でも紹介あったように、企業数で99.8%、従業員数で88.1%を占めている。そして製造品の出荷額は大企業より多い。だから、まさに岩手県経済・地域経済の主役であり柱だと。私はこういう中小企業が岩手県の地域経済に果たしている役割をしっかり評価して、そして中小企業が成長することにより地域経済を持続的な発展が可能なものにしていくというものにしてもらいたいと思う。すでにつくられた県条例は33あるが、そこの先進的な内容をどのように受け止めているか。

【経営支援課総括課長】
 他県の条例については、千葉県については時期的には早い条例である。その後も、そういった先行例を参考に各県でつくっており、県によって特徴もかなりあり、各県の内容もよく研究したいと考えている。
 中小企業の役割については、資料でも書いているが、地域経済の中心的な役割を果たしており、これからも果たしていかなければならないということで、その企業がきちんと成長していくことが地域経済・県にとっても基本だと考えており、そういったものがより実現されるような条例の内容にしていきたい。

【斉藤委員】
 中小企業振興条例にすべきだという考え方は、国の動向から見てもそうだと思う。国は、実践が伴わないが、この間中小企業憲章を制定し、小規模企業活性化法、小規模企業振興基本法を制定してきた。ある意味でいくと、ヨーロッパは小規模憲章である。小さい企業も含めて、中小企業全体を視野に入れた条例にすべきだと。全体として中小企業の役割が発揮されているわけなので、元気な中小企業や中堅の中小企業と限定せず、全体の小さな企業も含めて視野に入れてやっていくと。ヨーロッパはそこに今注目している。小企業の役割が発揮されて、地域経済・国の経済が成り立つと。EUなんかは今そういう到達点に立ってきているので、先ほどの表現の中で、「身近なサービスの提供に取り組み、雇用を生み出している中小企業等県内企業や事業者への期待が高まっている」と。だから、頑張っている企業には期待が高まっているが、頑張り切れない企業も課題を抱えているわけなので、そういうところが元気になるような中小企業振興条例にしていかなくてはならない。そういう環境を作っていかなければならない。条例の全文や目的には、きちんと明記すべきではないか。

【経営支援課総括課長】
 小規模企業についても、県内での役割は大事なものがあり、当然そういったものを含めて元気になっていただけるような条例の内容にしていきたい。

【斉藤委員】
 やはり岩手県独自の条例にすることもまた大事な点である。アンケートでは、製造業関係が40%台の回答ということで多いが、岩手の製造業の特徴、たしかに自動車・半導体・医療というものづくりのポイントにしているが、製造業全体の出荷額・従業員数、食料品製造業が第1位を争う。震災前は確実に第1位だった。沿岸で見ると、沿岸では完全に食料品製造業が第1位の基幹産業である。この食料品製造業の位置づけと役割をきちんと評価すべきではないか。岩手県の製造業の現状や特徴をどうとらえているか。

【経営支援課総括課長】
 条例の中の理論で言えば、業種ごとの施策なり位置づけをどの程度書くかというのは、今後検討していかなければならないと考えており、食料品製造業が本県の特徴的な産業であることはその通りだと考えている。

【斉藤委員】
 産業経済交流課の佐藤総括課長はいかがか。

【産業経済交流課総括課長】
 いま経営支援課総括課長からも申し上げたように、食料品製造業については、本県の中小企業の中でも企業数も含め、原材料を地場の産物を使うなど、地域資源との関連性等においても重要と、内容については十分いろいろと関係課と調整したい。

【斉藤委員】
 やはり食料品製造業が現実的に果たしている役割というのは、製造品出荷額でも、従業員数でもなおさら、これは自動車産業の何倍という規模である。そして今復興が最優先課題だが、沿岸では、食料品製造業がまさに最大の基幹産業になって、ただ労働局の雇用状況の報告を見ると、沿岸で食料品製造業の雇用が震災前と比べて約1500人以上も少ない。建設関係は増えているが。そういう意味では、復興でも復興途上と。岩手県全体でもそういう大きな役割を占めているという点では、しっかり据えた条例にしていく必要があるのではないか。
 千葉県の特徴としては、地域づくりに果たす中小企業の役割というのが千葉県の条例では明記されている。経済だけではなく地域づくり、地域の伝統文化、特にお祭りというのでは地元の中小業者・商店の人たちが担っている。だから中小業者は、地域づくりの大きな役割を担っているということも大事な視点ではないか。
 もう1つは、千葉の条例の17条では、中小企業振興施策の公表ということで、知事は毎年1回県の中小企業の振興に関する主たる施策の実施状況を取りまとめ公表すると。だから、条例に基づいて、千葉の元気戦略プランというのを提起して、それに基づく具体的な事業を一覧表にして、それがどう取り組まれたのか、来年度どうするかと。ホームページで見たが、膨大なもので、当初予算が決まった3月26日付で公表され、実績が示され、次の年に反映されると。こういう理念にとどまらない施策がきちんと検証されて、発展させられるという条例にしていく必要があるのではないか。

【経営支援課総括課長】
 企業が地域づくりなどに果たす社会的な役割、そういったものもどういう形になるか分からないが、大事なのはその通りで、条例としてどのように位置づけるかは今後検討していきたい。
 また具体的な施策を条例でどう位置づけるか、千葉県のものはそのような形で位置づけており、他県を見るといろいろバラエティに富んでいるので、他県の条例も研究しながら検討していきたい。

【斉藤委員】
 千葉の条例で先駆的だと言われているのは、18条のところで、「県は施策の立案および実施にあたっては、当該施策が中小企業の経営に及ぼす影響について配慮するよう努めるものとする」と、配慮事項と言われるもので、これは中小企業政策ではなく、県全体のさまざまな施策が中小企業にどんな影響を与えるかということをきちんと配慮・検討しなさいと。これはヨーロッパの憲章で定められたもので、ヨーロッパ水準だと言われている。ここまで盛り込んだというのは、本当に早い時期につくったものとしては大変素晴らしい中身を持っているのではないか。こうしたことも含め、先行事例の良いところは組みつくし、岩手的な実態に合った条例にすべきだと思うがいかがか。

【商工労働観光部長】
 千葉県の条例の先駆性についてご紹介いただいた。これまでたくさん条例が制定されているわけなので、後発の強みを存分に生かしながら、できるだけ多くの中小企業者の方々のご意見・ご要望等を踏まえながら、施策の振興にあたって、実績、次年度への反映といった部分についても、他県の先行事例等も参考にしながら、そしてまた本県として取り組んできたアクションプランの中では、これまでは中小企業経営の経営力の向上という項目で、毎年その実施状況の成果等も把握してきた経過もあるので、そういったノウハウも本県は有しているので、そういったこととの関連性も含め、しっかり検証させていただきながら、条例の制定に向け取り組みを着実に推進していきたい。