2014年9月2日 商工文教委員会
公契約条例の制定に関する質疑(大要)


【斉藤委員】
 公契約条例の制定の取り組みもスケジュール的には煮詰まってきたと。中身はどうなのかということだが、今の説明で、今後の方向と条例制定のねらいという部分で、「公契約に携わる労働者の労働条件の改善等を狙いとした公契約条例を制定する」となっている。ここはきわめて重要だと。その点でいうと、何が核心かというと、賃金条項である。千葉県野田市から始まり、市町村レベルの大勢はこの賃金条項を定めている。残念ながら県レベルの長野・奈良というのは、理念条例にとどまった。これは先進事例にはならないと。実際に長野県は、時期的には一番早く制定されたが、全然報道も注目もされていない。これは行政が勝手につくったという形で、こういうものではいけない。やはり請願の趣旨を踏まえ、「労働者の労働条件の改善等を狙いとした公契約条例を制定する」というのだったら、全国都道府県レベルでは初の賃金条項を明記した条例にすべきだと。ここに最大の核心があると思っているがいかがか。

【労働課長】
 現在、庁内の法務担当部署も交えて鋭意検討を進めているが、検討・整理されるべき実績や課題がたくさんあり、立案作業に時間がかかっており、まだ方向性は固まっていない。盛り込む条項については、長野・奈良の条例の分析なども進めながら課題を整理して固めていきたい。

【斉藤委員】
 そこが問題である。ではどうやって労働条件の改善を図るのかと。以前も紹介したが、例えば建設関係でいくと、たしかにこの間設計労務単価が引き上げられてきている。大工でいくと18500円。ところが実際現場で働く大工さんには13000円ぐらいしか払われていないというのが実態である。せめて、野田市を含め多数派の公契約条例は、設計労務単価の90%を基準にするというのが大勢である。これは契約なので、どうしても落札率が100%で契約されるわけではないので100%の保障は難しいが、最低90%という形で労働者の賃金を守っている。それは経営者にとっても、きちんとして賃金確保できるし、労働者も最低の基準が守られるので、両方にとっても好評である。法律的な問題があると言っているが、例えば、神奈川県川崎市は政令市である。県レベルの政令市でもやっている。そして実際に問い合わせもしており、地方自治体でそういう取り組みをしても法的に問題ないという回答である。だから、技術的に問題がないわけではないかもしれないが、法的問題はないというのが正式の国の回答なので、だからこうして実際に取り組まれているので、その点について、全国の先進的な水準、大勢、労働条件の改善を狙いとした条例という点でいけば、核心的な賃金条項を外したら、請願者の期待に応えられないのではないか。

【商工労働観光部長】
 本県で定めようとしている公契約条例のあり方については、現在さまざまな形で、雇用・労働フォーラム等も先般開催した。また先進地の事例調査等も行ってきている。それから、本日ご説明した長野・奈良についても、まだ具体的な形での条例の効果等の把握は難しい状況である。さまざまこの問題については、経営者・労働者双方のご意見で、どのような形の中で、労働条件の透明性を確保を図っていくかということについて、十分ご意見を踏まえた上で判断していく必要があるものと考えており、そういった中では、議会の各会派にもご説明等させていただいてきた経緯もあるが、そういったご意見等も踏まえて、どのような形の賃金条項を導入すべきかどうかも含めて検討させていただきたい。

【斉藤委員】
 なかなか煮え切らない答弁だった。
 実は、都道府県レベルの公契約条例で一番注目されているのは岩手県である。長野・奈良というのは全然注目されていなかった。岩手県議会で請願が採択されて、それを踏まえて条例制定に取り組んでいるからである。そしてその土台というのは、すでに14市区で制定されている公契約条例は、賃金条項を規定するものが多いとなっている。いわば、今まで制定されている公契約条例の一番大事なポイントはここにあると。だから請願の趣旨を踏まえて取り組んでいる岩手県が実は全国で一番注目されている。岩手県が一番最初に制定するのではないかと言われていたが、知らないうちに長野と奈良が制定した。岩手県の公契約条例が請願の趣旨、県民の期待、全国のこれまでの到達点を踏まえたものにならないと、肩すかしになってしまう。ここは真剣に考えていただきたい。実質初の公契約条例に岩手県はすべきだと、そういう意気込みで取り組んでいただきたい。

【商工労働観光部長】
 県議会における請願採択は、1つの経緯ということであるが、他方で、近年は公契約に対する社会的要請が多様化してきているのも事実である。政策推進にあたっての公契約を活用する動きが広がりを見せてきているが、公契約条例もそのような流れの中の1つの手法と考えている。そのような位置づけをもって、条例の必要性を踏まえ、請願の趣旨も踏まえながら案づくりに取り組んでいきたい。

【斉藤委員】
 この点でも、たしかに経営者と労働者側のニュアンスはまだ違っているかもしれない。これもヒアリングだけにとどめていてはいけない。必ず共通理解、納得が得られる中身だと思う。そういう努力、もっとざっくばらんな議論から進めて、結果的には経営者にも労働者にもプラスというのが実践しているところの実際の経験と教訓である。そういう意味でいくと、ぜひ共通のテーブルでの喧々諤々の議論を通じて、熟さない中でのものではなく、熟した中での条例制定を考えていただきたい。
 付随する問題についてだが、公契約条例を制定する場合には、適用の範囲が問題になる。この点では、長野も奈良も適用範囲を広げているということなので、その適用範囲を請負契約だけではなく、業務委託契約も含めたものに広げていくべきだと。
 賃金条項の場合の下限額は先ほど言ったように、先進事例でいくと公共工事の設計労務単価のだいたい90%が大勢、これが基準になるのではないかと。業務請負契約の場合には、例えば公的機関が定める労務単価、賃金構造基本統計調査に基づく設定とか、建築保全業務労務単価を基準にしているところもあり、業務請負契約の場合でもそういう設定は十分可能だと思うが、この問題についてはいかがか。

【労働課長】
 先行事例で申し上げると、賃金下限額を制定する場合の単価設定は90%ないし85%という範囲で設定している例が多い。委託契約については、委託契約というのは、施設のメンテナンスや清掃・警備等だが、こちらの場合だと、生活保護基準を用いるところ、職員の給与を基準にもってきているところ、すでに委託している業務の労働者の賃金を参考にするなどさまざまで、どれがいいか一概にこれがベストというのはないものと思っている。
 公契約する者の適用範囲については、自治体の規模等もあるかと思うが、こちらも自治体によってさまざまな設定がある。あくまで賃金条項を設定する場合という前提になるが、どのような範囲に絞るべきか、これは論点の1つになろうかと思っている。

【斉藤委員】
 公契約条例の最大の目的は、公契約に関わる労働条件の改善だと思う。今問題になっているのは官製ワーキングプアである。県や市町村が発注する事業でワーキングプアがつくられる。そういうことがあってはならない、最低限の生活を維持する賃金条項が最大の目的になるし、そのことが公共サービスの質の確保にもつながる。いま公共サービスが劣化している。民間委託がどんどん進み、契約する度に価格が落ちていく。どこにしわ寄せがいくかというと人件費である。そういうものを抜本的に見直す時期にきているのではないか。公契約に関わる労働者の労働条件を改善すると同時に、公共サービスの質を確保する。そういう意味で、実のある公契約条例の制定に向けて汗をかいてほしい。
 2月に提案したいということで前向きだが、時期ありきではなく、本当に関係者が納得するようなものにしっかり仕上げる必要があるのではないか。

【商工労働観光部長】
 公契約条例の制定の時期ありきではないという指摘もいただいた。その分、内容をしっかりとしたものにすべきであるということかと理解している。
 いただいたご意見等を踏まえ、課題は多数、議論の分かれる、論点の分かれる議論もしていかなければならないと考えているが、そのようなプロセスをしっかり踏まえて、労使にとって意義のある、公共サービスの質の向上ということにもつながるような条例の制定に向け鋭意検討を進めていきたい。