2014年10月15日 決算特別委員会
知事に対する総括質疑(大要)


・被災者の最も切実な住宅再建の課題について

【斉藤委員】
 日本共産党の斉藤信でございます。知事に質問します。
 第一に、被災者の住宅再建は最も切実な課題であり復興の土台です。同時に時間との勝負というべき緊急な課題です。
 陸前高田市の被災者は、最近坪70万円で家を再建したと言っていました。震災前に比べて住宅の建築費はどう推移しているでしょうか。30坪の家を建てる場合の負担増はどうなるでしょうか。

【達増知事】
 県内の建築士・設計事務所・工務店・林業木材産業関係者などからなる岩手県地域型復興住宅推進協議会では、被災地に建設された復興住宅の工事費等の調査を実施しており、その調査結果では、震災前平均坪48.5万円だった工事単価が今年7月の調査では坪54.9万円と約1割上昇している。仮に30坪の家を建てる場合では、この上昇分により約190万円の負担が生じると考えられる。

【斉藤委員】
 この調査は、内陸の業者の方が多く、沿岸の場合には55万3000円というのが坪単価である。そうすると204万円になる。
 高台移転や区画整理事業などの宅地造成の計画が9722戸(13年3月末)から8203戸(14年8月末)に1519戸減少しています。その要因は何でしょうか。

【達増知事】
 防集、区画整理等での計画区画数が減少した要因としては、@自力で移転先宅地を確保し再建した方A災害公営住宅への入居に意向が変わった方がいることなど住まいの再建方法についての意向の変化によるものと聞いている。
 今後とも丁寧な意向確認を行いながら、被災者の希望に沿った形で宅地の供給ができるよう、市町村の復興まちづくり事業を強力に支援していく。

【斉藤委員】
 かなり大幅に減少しているというところに自立再建を諦めざるをえない方々も少なくないと。
 県と市町村の補助、被災市町村のさらなる上乗せ補助は被災者の自立再建を大きく励ましてきたが、この間の建築費の高騰はこれらの支援を飲み込むものである。住宅の再建にさらなる支援が必要と考えますが、どう受け止めているでしょうか。

【達増知事】
 復興を進める上で住宅の再建は喫緊の課題の1つであり、県においては、資材高騰や人手不足など、諸課題についての情報共有等を図りながら全庁あげて住宅再建を推進している。県としても、既存の支援制度に加え、さらなる支援の拡充の必要性は認識しており、このためこれまでも被災者生活再建支援金の増額と、震災復興特別交付税などの地方財政措置による支援の拡大を国に対し機会あるごとに要望してきた。

【斉藤委員】
 30坪の家を建てる場合に約200万円、40坪だと270万円以上の負担増である。知事は、住宅再建への支援の必要性は認めた。国に要望することは当然だが、いま時間との勝負である。いま支援しなければ自立再建ができないとしたら、今こそ県としてさらに100万円の支援を拡充する必要があると思うがいかがか。

【達増知事】
 県としては、厳しい財政状況の中で復興の取り組みを進めているところであり、県独自でさらなる支援の拡充を行うことはきわめて難しいものと認識している。東日本大震災津波のような広域災害においては、本来国において住宅再建が十分に図られるよう制度設計を行うべきと考えており、国による財政支援措置による支援の拡大を引き続き粘り強く求めていく。

【斉藤委員】
 災害公営住宅の1戸当たりの建設費はどうなっているか。空き室の状況はどうか。

【達増知事】
 県が整備するものの戸あたりの建設費は、現在までに設計を終えた団地まで含めた平均で約2020万円となっている。
 空き室は、9月末で県と市町村で754戸の供用戸数に対し延べ667世帯の入居となっており、87戸11.5%が未入居となっている。

【斉藤委員】
 わたしは自立再建を支援した方が絶対に経済的で効率的で被災者も助かる。
 宮古市は、9月議会で利子補給の上限を250万円から470万円に引き上げた。浸水宅地の補助を一律40万円など、さらなる支援策を行っている。
 時間との勝負なので、いま支援を強化しなければ住宅再建できないとしたら、いまやるべきではないか。

【達増知事】
 県としては、災害公営住宅―これは住宅を自力で確保することが困難な方々に提供される公的な住宅であり、将来的には被災者だけではなく低所得者や高齢者などで住宅に困窮される方々にも必要となるものでもあるので、一定数の公営住宅整備は必要と考えている。
 持ち家での再建を望む被災者の意向は、復興に弾みをつけるものであり支援の充実を図ることが重要と考えているが、こちらは被災者再建支援制度の支援額の増額と、震災復興特別交付税などの地方財政措置による支援の拡大を国に対して強く要望していきたい。

【斉藤委員】
 グループ補助の場合は、資材高騰等で6割程度まで高騰分を上乗せするとなっている。住宅再建でも必要ではないか。

【達増知事】
 そういった現場の実態を国に丁寧に説明していくことも含め国への要望をしっかり行っていきたい。

【斉藤委員】
 必要なことはやって財源は確保するという構えで取り組んでいただきたい。
 木造公営住宅の建設計画はどうなっているか。戸建て、長屋ごとはどうなっているか。

【達増知事】
 県ロードマップで公表しているものは972戸あり、検討中のものも含め1223戸になる。うち戸建て1024戸、長屋199戸である。
 県では、野田村門前小路地区で26戸の木造長屋建ての災害公営住宅を整備したところだが、今後も市町村と協議しながら必要に応じて木造の災害公営住宅を整備していく。

【斉藤委員】
 木造公営住宅の建設はかなり拡充されてきた。こういう変化があるわけだから、県としても被災者にとって震災前と同じような環境整備のために考えていただきたい。


・防災集団移転事業に関わる土地の買い上げによる影響について

【斉藤委員】
 第二に、防災集団移転事業に関わる土地の買い上げによる影響について質問します。
 国保税の所得割、住民税については控除の特例があるが、これについては各市町村に徹底されているか。

【達増知事】
 事業主である市町村は、土地を買い上げる際に地権者に対して特別控除制度の適用について説明していると聞いており、周知徹底されていると認識している。

【斉藤委員】
 内陸の市町村をふくめ、通知なり出しているか。

【達増知事】
 内陸の市町村において、特別控除が適用されずに国保税の所得割が課税された事例があったという指摘もいただいており、厚労省の見解をもとに今年3月に国保税における譲渡所得の特例について県内市町村に通知し、制度の周知徹底を図った。

【斉藤委員】
 介護保険については、介護保険料について市町村が独自減免できると。すでに仙台市や名取市が減免を実施している。減免できることは徹底されているか。

【達増知事】
 市町村は、介護保険法第142条の規定により市町村自らの判断で減免を行うことは可能であり、減免分は介護保険財政の中で対応するとなっている。
 減免が可能であることについては、市町村に伝えており、仙台市・名取市において減免を行っていることも参考までに情報提供している。

【斉藤委員】
 例えば、200万円300万円の所得が入って、第二段階2500円の月額保険料が第六段階7500円になる。これは大変なことで、できることは徹底して被災者の軽減措置をとるということで徹底を図っていただきたい。

【達増知事】
 やはり大変な負担だと思う。介護保険制度の中で給付を行うことが制度的に困難であって、市町村が個々の事情を踏まえ対応しようとする場合には、独自施策を検討せざるを得ない状況になっているということで、現在各市町村の実情を県としてもうかがっているところであり、その結果を国にも伝えて、被災地の特例的な取り扱い等により国が適切に対応するよう要望していきたい。

【斉藤委員】
 できることはすぐやると。
 介護保険のホテルコスト(食事代、居住費)の補足給付が所得段階に応じて、第二段階の人が100万円近く年間の大幅な負担増となっている。被災土地の売却であって、これは高台の土地を買い取るための費用で再建のためのもの、そのことにより100万円以上の負担増になることは絶対にあってはならないと思うが、この対策はどうなっているか。

【達増知事】
 補足給付について、保険料と同様に所得に応じた段階・区分により対象者が定められてしまうという事態である。これについて仮に保険料の減免が行われた場合には、所得区分は変わらない仕組みになっているということで、介護保険制度の中で給付を行うことが制度的に困難であるので、やはり被災地の特例的な取り扱いについて国に要望していきたい。

【斉藤委員】
 ぜひこの改善に取り組んでいただきたい。


・子どもの医療費助成の拡充について

【斉藤委員】
 第三に、子どもの医療費助成の拡充について質問します。
 若い世代の子育ての切実な要望は、子ども医療費、窓口負担の無料化です。岩手県の償還払いの制度は全国でも10道県と少数派であり、東北では岩手のみですが、この現状を知事はどう認識していますか。

【達増知事】
 ご指摘の通り、償還払いは全国で10道県、東北では本県のみとなっている。現物給付とした場合に市町村の国保に対する国庫支出金が減額されるということで、本県においては市町村と協議した上で償還払いとしている。国庫支出金の減額措置については、本来国が全国統一的に行うべき子育て・少子化対策等に関する地方の努力に反するものであり、地方のみに責任を負わせるものであるので、廃止すべきとして今年の7月に全国知事会が国に対して要請している。本県においても毎年国に対して減額措置の廃止を要望している。

【斉藤委員】
 石川県が窓口無料化に向かうと。そうすると9道県になる。東北で岩手だけ、全国でもこれだけ少ない。そういう岩手の現状をどう受け止めているか。

【達増知事】
 市町村と協議した上で自治として決めてやっていることだが、一方では住民の皆さんの便益、特に子育て世代がより子どもを育てやすくするようにしていかなければならないという状況についても認識している。

【斉藤委員】
 各県から岩手県に転勤されてきた方がどう言っているか。「福島の実家が中学生まで窓口負担なし。診療の待ち時間に加え会計待ちの時間だけでも負担が大きい。用紙を書くのも薬局分が別なので子どもが3人いると1年間で70枚ぐらい消費する。ムダが多い」と。秋田県から盛岡に来たお母さんも「びっくりした」と。そういうことで人口減少対策や少子化対策に取り組めるのか。全国並みに改善・改革する必要があるのではないか。

【達増知事】
 市町村と協議した上で償還払いとしているわけだが、特に人口減少対策・子育て支援という観点からは、今年度に入って市町村とのやりとりを強化しているところでもあり、償還払いの現状についても「このままでいいのか」とさらに市町村と協議していきたい。

【斉藤委員】
 対象年齢の拡充について、小学生以上に拡充している全国の動向、県内市町村の動向はどうなっているでしょうか。

【達増知事】
 全国において平成26年4月1日現在、小学生以上としているのは、通院では14都府県、入院では24都道府県となっている。
 県内市町村において平成26年10月1日現在、小学生以上としているのは、通院では27市町村、入院では28市町村となっている。

【斉藤委員】
 全国でも、さらに県内28市町村で対象年齢を拡充している。高校生までが5町村、中学生までが11市町村となっている。この点でも岩手県は遅れているのではないか。

【達増知事】
 先ほどの助成対象の拡充と現物給付ということと合わせ、対象年齢の拡充についても、現在県の人口問題対策本部においても、人口減少対策として総合的な子育て支援施策について検討しているところであり、市町村等と助成対象の拡充と窓口負担の現物給付について協議していきたい。

【斉藤委員】
 来年度予算編成方針でも、子ども子育て支援は重点課題となっているので、ぜひ来年の予算編成で必ず実現するようにしていただきたいと思うがいかがか。

【達増知事】
 今まさに担当のところで来年度予算に向けた準備を始めたところだが、人口減少対策、総合的な子育て支援についてはいろいろ工夫されるものと期待している。

【斉藤委員】
 工夫でなくぜひ具体化をしていただきたい。


・DIOジャパンによる緊急雇用創出事業について

【斉藤委員】
 第四に、DIOジャパンによる緊急雇用創出事業について質問します。
 緊急雇用創出事業で交付された補助金、対象人員と現在移行した事業所を含めた従業員はどうなっているか。

【達増知事】
 コールセンターは県内7市町に立地し、緊急雇用創出事業として平成24年度から25年度まで、県から総額15億4203万円余が交付され、事業による新規雇用者数は24年度は延べ535人、25年度は延べ303人となっている。
 10月1日現在、事業が行われている3事業所の従業員数は計43人となっている。さらに本年11月に奥州市で事業を開始する事業所では50人程度の雇用を見込んでいる。

【斉藤委員】
 838人の人材育成をやって今42人と。完全に破たんした、失敗したと思うがいかがか。

【達増知事】
 DIOジャパンの緊急雇用事業については、事業が終了した後も安定的な雇用が継続されることを期待していたわけであり、事業終了後間もなくコールセンターの閉鎖や解雇の事態が生じたこと、現在も賃金未払いが解決していないことも合わせ誠に遺憾である。

【斉藤委員】
 リース料の総額はどうか。事業終了後、無償譲渡されたリース額はどうか。

【達増知事】
 別会社が出資運営している一関市コールセンターを除く6事業所のリース料は計4億7055万円余である。うち事業終了後に無償譲渡が確認されたのは5事業所で、それにかかるリースは24年度分のみであり計1億229万円余となっている。
 25年度以降の事業においては、25年5月13日付の厚労省通知によりリース契約終了後に無償で所有権を譲渡する旨の特記のあるリース契約は認められないものとされている。

【斉藤委員】
 わずか7ヶ月のリースで翌年無償譲渡、こういうのはリースに値するのか。実質買い取りではないか。

【達増知事】
 厚労省においても、25年度以降の事業についてはリース契約終了後に無償で所有権を譲渡する旨の特記のあるリース契約は認められないものとしたわけであり、そういう趣旨だと思う。

【斉藤委員】
 代表監査委員にお聞きしたい。今のようなリースで1億数千万円も無償譲渡されるというこんなリースはあるか。

【監査委員】
 きわめて一般的ではあるが、拝見したかぎりは、ちょっと異質ではあると理解する。

【斉藤委員】
 異質というよりもあり得ない。一般のリースではあり得ないのではないか。

【監査委員】
 ありえないと断言することはできかねると思う。

【斉藤委員】
 どういう場合にあるのか。

【監査委員】
 相対の取引であるので、当事者同士が了解すればひょっとすればあり得るものではないかとも思っている。

【斉藤委員】
 これは国民の税金を使った事業である。そしてこれは事実上買い取りになる。50満恵印以上の財産取得ができないのだから、1億数千万円の買い取りができないのは当たり前である。24年度認めたということは間違いだと思う。厚労省含め、これは間違いだと思うが知事はどう思うか。

【達増知事】
 県の方からは、これはおかしいと思って厚労省に知らせたわけだが、厚労省においては25年度以降の事業においては認められないという判断をしたわけであり、さまざまな観点から検討した上でそういう通知がなされたものと受け止めている。

【斉藤委員】
 厚労省も共犯だと思う。こんなものは会計監査院通らないと思う。そんなことをやったら、50万円以上の財産取得ができないという原則が無視されてしまう。だとしたら、こういうリースはあり得ないのではないか。

【監査委員】
 いわゆる購入とリースの法的な境目については、正確に詳しく存じ上げているわけではないので、ここでは答弁を控えたいと思う。

【斉藤委員】
 県が不安を感じて厚労省に問い合わせたというのはよかったが、これは認めたら共犯である。
 このリース料自身も、25年度以降はダメだが24年度認めたこと自身が矛盾している。あり得ない。徹底して総点検すべきである。
 そして研修の実態、わたしが従業員から聞いた限りではほとんど実態がなかった。せいぜい3ヶ月。そして研修中に仕事をさせられその事業収入は未報告、業務日誌の虚偽報告など、こういう異常な人材育成事業の実態を把握しているか。完了検査では見逃したのか。

【達増知事】
 平成25年1月から3月の間に、DIOジャパン関連のコールセンター関係者と思われる方から、業務日誌の書き換えを指示されたなどの情報が4件寄せられたことから、立地市町を通じた事実確認や当該事業所への指導などの対応を行ってきた。
 また、市町の完了確認時においては、従業員の業務日誌を研修計画や出勤簿と突き合わせて齟齬が生じていないかを確認したものだが、現在国からの指示を受けて改めて立地市町において調査を行っており、この過程で研修中に業務に従事させていたと疑われる事案が確認されている。県としては、研修中の営業行為は不適正な事案と認識しているので、DIOジャパンに対して立地市町への資料提供を申し入れるなど調査に協力している。

【斉藤委員】
 市町の調査の状況はどうなっているか。今後の見通しはどうなっているか。

【達増知事】
 現在国からの指示にもとづき、立地市町がDIOジャパンおよび関連会社の法的手続きの開始に備えて、未申告の収入等の調査を継続しているところであり、今後国の見解を確認しながら内容を精査していく。また未申告の収入等の全容を把握するためには、DIOジャパン本社についても調査する必要があるが、市町には制約があるので、県としてはDIOジャパン本社に対して取引にかかる帳票の市町への提供を申し入れるとともに、国に対して主導的な役割を果たすよう要請している。

【斉藤委員】
 DIOジャパン問題は、徹底してこの決算特別委員会で究明すべきである。集中審議を求めたいので委員長よろしくお取り計らいをお願いしたい。


・山田町NPO問題における県の検証結果の再検証について

【斉藤委員】
 外部の方に個別に所見を求めることではなく、第三者委員会で再検証すべきではないか。
 再検証に当たっては、県議会での議論を踏まえたものとすべきだと思うがどうか。

【達増知事】
 第三者委員会での再検証だが、裁判や会計検査院の検査により事実関係がより客観的な形での究明が行われており、現在県としては裁判の動向を注視するとともに、会計検査に協力・対応していく立場にあると認識している。裁判が継続中で関係書類や関係者による事実関係の確認が困難であり、また会計検査院による補助事業の妥当性等の検査が行われている中で、一定の結論を導き出すような検証を行える状況にはないと考えている。
 一方、県議会の決議に具体に対応すべく、外部の方に検証委員会における検証結果の内容について所見をいただくような方法も1つの選択肢ではないかと考えており、その対応の方法を具体化していく中で、議会での議論も踏まえたものとなるよう検討をすすめていきたい。

【斉藤委員】
 山田NPO問題の1つのポイントは御蔵の湯だった。あれをリースで認めたというのが乱脈経理の出発点だった。リース問題である。それを反省しないから今回のDIOジャパン問題になっている。いかがか。

【達増知事】
 リースをめぐる判断については、それぞれ町の判断、町から県への情報提供など過去の議会で答弁しているが、東日本大震災からの復興という岩手にとって決定的に重要な事業、そしてオールジャパンで、国民の税金、国民全体からの財政負担も大きな額をいただいて進めているものであるので、検証委員会の検証結果に基づき今年度当初からさまざま体制の強化等を行っているところだが、さらに対応については検討を進めていきたい。