2014年10月16日 決算特別委員会
政策地域部に対する質疑(大要)


・JR山田線の早期復旧について
 
【斉藤委員】
 2月県議会で、山田線・大船渡線について「鉄路の早期復旧」という請願・意見書を全会一致で採択した。「JRの責任で」という部分が大事だと思うが、沿岸首長会議以後、だれとどれくらい協議をしてきたか。

【交通課長】
 先般の沿岸首長会議において、関係市町村間で確認した「山田線の三陸鉄道による運営を鉄路復旧に向けた有力な選択肢」とする対応方針により、JR東日本と協議を重ねているところである。

【斉藤委員】
 県の窓口は交通課長になっているのか。そしてどのぐらいやっているのか。

【交通課長】
 JR東日本との間では、事務レベルでの協議を頻繁に行っているところだが、現在その協議の途中というところである。

【斉藤委員】
 2月11日に、JR山田線の沿線首長会議があり、JRの提案に対して7項目の対応方針が出た。今回4項目になっている。7項目はどのようにJRと折衝して、なぜ4項目になったのか。

【交通課長】
 7つの時点で沿線市町の意見も踏まえた形で、投げ返しという形でJR東日本には回答した。その後、JRとの協議も行いながら、重要な点についてJR東日本に求めている主なものということで求めている。

【斉藤委員】
 7項目は基本的に堅持して、その中の主要な4項目ということか。

【交通課長】
 2月の投げ返しの時点で出したものが、現時点で諦めたということではなく、網羅した形でそういう形の項目立てになっている。

【斉藤委員】
 大きく違うのは、地上設備・用地はJR東日本が所有されることということを2月では提起していた。今回それがない。三鉄が求める鉄道施設等の強化となっているが、これはどうしてそうなっているのか。

【交通課長】
 被災直後からのそもそものあり方とすれば、JRの責任でという言葉は、JRが責任を持って復旧するということと、復旧した後にJRが責任を持つという2つの意味合いだと考えている。そういうことで現在に至っているが、いまJRから三鉄による運営という提案を受けている状況なので、その提案を仮に受けるとした場合という前提でいろいろやりとりしている。

【斉藤委員】
 7項目は基本的に堅持して、主要な4項目の折衝に力を入れているという理解でいいか。

【交通課長】
 やはり地元として一番大事なことは、まずは鉄道復旧を一日も早く果たすということ。運用の形は別としても、地元にとって負担ができるだけ生じない形をきちんとつくるということだと思うので、そういうスタンスで協議を進めている。

【斉藤委員】
 だとすると、7項目というのは2月に出していて、もう7ヶ月経過している。7ヶ月間ずっと協議して、主要な4項目も含めてJRがまともに答えていないということになるか。

【交通課長】
 協議については、JR東日本にはしっかり対応していただいていると考えている。そのプロセスの中では、例えば山田線の被災していない区間も含めての設備の状況がどうなっているかというのも非常に重要な点であるので、そういった点についてはJR東日本・三鉄・県も入るという形で、現地の状況もつぶさに確認しながら協議を反映させるように努めている。

【斉藤委員】
 大事なのは、そもそもJRは震災直後には全線の復旧を言明した。三鉄もそれで今年4月には全線開通した。JRは言明しながら何もしなかった、放置した。そして3年経って山田線については三陸鉄道への経営移譲などということを提起してきた。本当にこれは不誠実な態度だと思う。方針を転換したのはJRである。JRは民間大企業だと言っても「公共交通機関」で、単なる民間ではない。公共性を持ったJRなので、JRの土俵に引き込まれるような交渉は正しくないと思う。やはりJR東日本の社会的責任、公共交通機関としての責任を果たさせるという交渉を堂々とやらないといけない。その根拠は、例えば2013年度のJRの経常利益は3325億円、当期純利益は1999億円と過去最高だと。内部留保は2兆4000億円を超えている。本来こういう利益は国民に還元される、被災地の復興は最優先で行って当たり前だと、そういうことを含めてあまりにもJRの姿勢は理不尽ではないか。そういう被災地・被災者・国民の立場に立って堂々と交渉すべきだと思うがいかがか。

【政策地域部長】
 我々はやはり被災地の交通を一日も早く復活させたいとの思いでやっている。JRの社会的な責任についても、我々の方から交渉の過程でそういう言葉も使っており、ぜひ一生懸命JRに対してそうしたきちんとした対応をするというお願いをしている最中である。


・JR大船渡線について

【斉藤委員】
 2月の復興調整会議で突然、400億円の山側ルートというのが提案された。これは新聞各紙でも「途方もない、現実性のない提案だ」との評価・報道もあった。岩手県は、その真意を確かめると、なぜそういう提案をしたのかということを2月の段階でJRに投げ返したが、7ヶ月経ってこれはどうなっているか。

【交通課長】
 過去の経緯だが、乗客の安全を確保するということで山側にルート変更しなければ復旧が難しいという話が出たところである。これについては、私は昨年度4月から今の職に就いてずっと関係してきたが、25年9月の時点では「案の1つ」という形で話が出てきた。その後2月の復興調整会議では「これでなければ復旧できない」という言い方に急に変わったということで、この点については非常に違和感を覚え、JRには、まずは危険だというのであれば具体的にどこがどのように危険なのか、それを局所的に回避する方法もあるのではないかと。例えば避難路だとか避難塔ということもあり得るのだと思う。そういったところも、まずきちんと示してほしいということを復興調整会議の場などでJR東日本に対してはしっかりと申し上げたところである。
 それが2月であり、現時点においてまだ復興調整会議が開かれていないという状況もあり、これについては年度が変わってからも国に早期開催をお願いしており、9月にも東北運輸局に早期開催をお願いし、その場面でJRにはしっかり説明させてほしいとお願いしている。

【斉藤委員】
 本当に二重三重にJR東日本の対応というのは不誠実だと思う。突然400億円の提案を3年経ってから行うという。そしてそれに対しての真意を問いただしても7ヶ月間答えていない。国も一緒になり迎合している。
 だいたいダブルスタンダードである。今日NHKのニュースで八戸線の避難訓練を放送していたが、海側を通っているルートでわずか1年で復旧した。七十数ヶ所の避難場所も設置したと。八戸線は1年で復旧したのに、なぜ大船渡線は復旧しようとしないのか。まったく理不尽なダブルスタンダードである。この400億円の山側ルートという途方もない提案は撤回を求めるべきであると思うがいかがか。

【交通課長】
 山側へのルート移転という話がJRから提案されており、これを仮に受け止めるという形になると、莫大な地元負担が生じる。それが財政的に国の支援がやられるスキームというのはまったくないので、非常に厳しい状況なる。したがい、なぜ山側でなければいけないのか、危険なのであれば根拠を示せというところを再三お願いしているので、その点をしっかり説明を求めていくというスタンスで今後望んでいきたい。

【斉藤委員】
 3年7ヶ月経過した中でのJRの不誠実な態度、被災地のまちづくりはJRが復旧されることを前提に進められている。そういうときに鉄路が通るかどうか分からないという、このぐらい被災者に背を向けた態度はないと思う。復興に逆行していると言わなければならない。そういう点でぜひJRの社会的な責任、復興に協力するのか逆行するのか、そういうことで逃げの姿勢を打ち破る交渉をしっかりやっていただきたい。JRの土俵に引きずり込まれるような形ではなくやっていただきたい。県民はみんな応援している。


・消費税の影響と県内経済の状況について

【斉藤委員】
 県民の消費支出、労働者の実質賃金はどう推移しているか。
 総務部の質疑で、10%に増税されたら1世帯当たり10万2500円の負担増だと。県内経済に対する影響はどうなるか。

【調査統計課総括課長】
 総務省の家計調査によると、平成26年8月の盛岡市の2人以上の世帯1世帯当たりの消費支出は25万4200円で、これは前年同月比7.8%減となっている。
 労働者の実質賃金は、厚労省の毎月勤労統計調査によると、平成26年7月の基本給に当たる決まって支給する給与というのがあるが、これは従業員5人以上の事業所で23万5989円となっており、前年同月比2784円1.2%増加している。ただ、これは物価変動を除いた実質賃金指数によると、対前年同月比で2.5%減となっており、消費税増税後の実質賃金指数が前年同月比がマイナスを継続している。

【斉藤委員】
 そういう意味では、消費支出もこれだけ落ち込み、実質賃金は全国的には14ヶ月連続マイナスという中で、10%増税というのは許されないものだと思う。


・市町村への派遣職員の健康問題について

【斉藤委員】
 この間、派遣職員の自殺という事例もあった。病気で孤独死するという例も昨年・今年あったと思うが、どういう状況になっているか。

【市町村課総括課長】
 被災市町村への派遣職員で、昨年1人、今年1人病気で亡くなったという報告を受けている。

【斉藤委員】
 派遣職員の1人のケースは病死だと思うが、誰にも看取られずに孤独死のような状況で亡くなったと。昨年のケースは、病院に入院した直後に亡くなったというケースだった。本当に大変な残念な事態である。
 こうした死亡した原因は何だったのか。健康管理の上で問題はなかったのか。そこをしっかり把握して、今後再び起こさないような対策を講じるべきではないか。

【市町村課総括課長】
 本当に残念なことだが、市町村課は派遣職員のメンタルヘルスを中心に健康管理を各市町村と一緒にやっているが、職員の健康管理については、市町村に対して、人材派遣会議の場を通じて、あるいは市長と会った場合などを通じ、職員の健康管理をしっかりするよう昨年度も実施しており、今年も派遣職員の面談を通じたときにも各市町村の総務担当に一緒に行き、健康管理をしっかりするように、あるいは公務災害補償基金の事業を利用して、職員の健康管理をするようにということで訴えている。今後とも引き続き職員の健康管理に十分留意するよう市町村に要請していきたい。

【斉藤委員】
 2人の派遣職員が病死すると。本当に残念な事態で、あってはならない。しっかり経過を踏まえて、今後こういうことがないような、心のケアはもちろんだが、健康管理にしっかり取り組んでいただきたい。
 現在、700名余の応援派遣職員を市町村に送っていると思うが、今年の状況、不足数について。来年がピークと言われるが、来年に向けた取り組みはどうなっているか。

【市町村課総括課長】
 今年度の被災市町村への派遣職員の状況は、10月1日現在で各被災市町村から必要職員の人数を聞き取りしたところ745名、それに対し県内市町村や総務省・復興庁などから派遣されている人材が703名ということで不足数は42名となっている。今後とも被災3県合同で、全国市長会・町村会を歩き要望活動も行っており、被災自治体にも応援自治体に行き派遣を要請するなど今後とも継続していきたい。


・人口減少問題への対応について

【斉藤委員】
 日本創生会議・増田座長の提案をどう評価しているか。

【政策地域部長】
 中身を読んでいくと、提案の中に「ストップ少子化戦略」だとか、「女性人材活用戦略」ということで女性や高齢者の活躍などを推進しようとしている。こうしたものについては、本県が進めようとしている取り組みと同じ方向性ということで、参考としていきたい。
 一方で、「地方元気戦略」というのがあり、その中で、選択と集中に基づいて地方拠点都市に投資と施策を集中するという考え方が提唱されているが、我々としては、周辺市町村などにさまざまな影響があると考えられ、慎重に検討していくものと考えている。

【斉藤委員】
 増田提案というのは、政府と一体となって出された。政府はそれを最大限利用して「地方創生」という形で来年の選挙対策にしようとしているが、地方消滅といっても、なぜ地方が消滅するかという根拠が何も示されていない。自治体が消滅するなどとんでもない話である。本当に根拠の欠落した、危機感だけを煽ると。
 部長からあったように、対策といえば、地方拠点都市に人材も財政も集中すると。ではその地方拠点都市とは何か。これは総務省が20万人以上と言っている。県内だったら盛岡市しかない。盛岡市に集中したらあとの市町村はどうなるのか。そんなことをいったら本当に消滅してしまう。本当に矛盾に満ちた提案で、自民党流の新たな地方破壊となるのではないかと思うが、その点はいかがか。

【政策監】
 日本創生会議の提案については、若者に魅力ある拠点都市を創出しようとするものであり、地方の中核都市が大都市圏への人口流出の一定の歯止めとなる提案であったとは考えている。ただ、ご指摘の通り、そういう都市にのみ財源・施策を集中してしまうと、地方全体が元気になるという観点からいくと、根本的な対策にならないと考えている。
 例えば、平泉と一関で行われている定住自立圏の取り組みだとか、連携教育のさまざま取り組みによる活力ある地域社会をつくっていくことが重要だと考えている。

【斉藤委員】
 人口減少・少子化対策というのなら、その原因を明らかにして対策をしないと正しい処方箋にはならない。一番深刻な問題は、若者の不安定雇用だと思う。例えば、内閣府の調査で、30代の既婚率が男性で23.3%である。非正規雇用の場合は実に5.6%と。結婚できない状況に陥っているのではないか。やはり若い世代が安心して働き、結婚ができる状況をつくることが大前提の問題ではないか。
 結婚した後の問題は子育て支援だと思う。ところが子育て支援で経済的負担が課題だと言いながら、施策の方向性についてはそれに対するものは1つも書いていない。子育ての経済的負担を解消する施策の方向性はなぜ示さないのか。

【政策監】
 自然減への対策としては、結婚から出産・子育てに至るまで、各ライフステージでどうやって安心して育てられるか、この環境をつくることが大事だと考えている。その点については、中間報告をもとに検討を進めながら深堀りしていきたい。

【斉藤委員】
 地方拠点都市に選択集中するというのは、形を変えた市町村合併、道州制への道だと思う。その点で、全国町村会が平成20年10月に学者・専門家を集めて、市町村合併の実態と評価というのをまとめた。合併したところの大きな矛盾、自立したところが自主的に改革して頑張ったという、これを参考にしてきちんとした地域づくりを進めるべきだと思うがいかがか。

【市町村課総括課長】
 この調査の検証結果としては、地域自治組織の活用や、支所機能のあり方を見直すなどして、地域を尊重したまちづくりの重要性が指摘されている。この調査は、全国の合併団体(当時約570団体)のうちの9自治体を対象に実施されたものであり、岩手県内の自治体は対象になっていなかった。したがい、一概に本県の自治体に当てはめることは難しいということで、合併に対する1つの意見として受け止めたところである。
 しかし、本県としては22年1月に、市町村関係者や住民への聞き取り調査を行い、合併を契機として地域行事等への支援が進むなど、地域の活性化や地域住民の参画が図られたといった効果も挙げられている。ただ一方で住民からは、合併以前のようなきめ細かなサポートが享受できないこと、周辺の商店に活気がないこと等への不満や不安などの課題も出されている。
 このようなことから、合併自治体においては、それぞれの地域の実情に応じて、住民サービスの維持・向上をはじめ、地域の活性化に創意工夫をもって取り組むことが重要だと認識している。