2014年10月17日 決算特別委員会
保健福祉部に対する質疑(大要)
・被災者の状況と見守り・支援の強化について
【斉藤委員】
この間、岩手医大、日本医療政策機構の調査、岩手大学教育学部社会学研究室の調査等で示されている被災者の状況はどうなっているか。
【健康国保課総括課長】
岩手医大が沿岸4市町で実施している東日本大震災津波被災者の健康状態等に関する調査・研究の結果について、平成23年度と25年度を比較すると、健康状態が良くないと答えた被災者の割合は、25年度は男性が14.2%、女性で14.7%となっており、平成23年度の14.3%、15.7%と比べほぼ横ばいとなっているが、応急仮設住宅の住民で健康状態が良くないと答えた割合が17.7%と、それ以外の住民に比べ割合が高かった。また、肥満者の割合についても、応急仮設住宅の住民では60歳の未満の男性で45.1%、女性で28.0%となっており、それ以外の住民に比べ割合が高かった。心の健康に問題のある者の割合は、男性が35.2%から22.7%へ、また女性が46.8%から31.6%へとそれぞれ減少しているものの、応急仮設住宅の住民はそれ以外の住民に比べ心の健康に問題のある者の割合が高かった。
日本医療政策機構が平成26年6月から7月に山田町在住者を対象に実施した健康生活に関する調査によると、睡眠の乱れで日常生活に支障をきたしている者が26%だった。また心の健康については、抑うつ症状が疑われる人が28%であり、応急仮設住宅の住民はそれ以外の住民に比べ抑うつ症状のある人の割合が高かった。
岩手大学教育学部社会学研究室が大槌町の応急仮設住宅入居者を対象に実施した調査では、心の平穏について平成24年度と25年度の回答者の割合を比べると、気持ちの面でほとんど変わりがないとの回答が30.8%35.7%へ、かえって厳しくなっているとの回答が27.4%から31.1%へとそれぞれ増加しており、25年度ではこの2つの回答で6割を大きく上回っていた。また25年度に、精神的健康状態について初めて調査したところ、精神的健康状態に問題がある者の割合は41.7%と高かった。
これらの調査は、対象者や調査手法が異なっているので一概には言えないが、相対として、被災者の状況は発災当初よりは落ち着いてきているが、依然として応急仮設住宅の住民は健康全般に問題のある者が多いと認識している。
【斉藤委員】
3年7ヶ月が経過して、被災者の状況というのは厳しいものがあると思っている。
この間岩手県は、保健師による被災者訪問をやっているが、その状況とその内容はどうか。
いま支援が必要な被災者を具体的にどう把握しているか。対応策はどうなっているか。
【健康国保課総括課長】
保健師の被災者訪問の状況は、被災者の健康状態の把握を目的とした健康調査や家庭訪問支援は、市町村を中心に実施しているところだが、県では市町村の要請に応じ内陸部の市町村や保健所、岩手県看護協会などの協力を得ながら、保健師や看護師の派遣を行っている。各市町村では、地域の実情や健康課題に応じ、心の健康状態を中心とした健康調査、あるいは身体状況や食事状況などの健康調査、その他継続的な支援のための戸別訪問を行っているところである。
被災者訪問等の集計結果がまとまっている3市町からの聞き取りによると、訪問健康調査対象者の2%程度が心のケアや生活習慣病などにより保健師の継続的な支援を必要としているところである。
【地域福祉課総括課長】
市町村社会福祉協議会に配布されている生活支援相談員が地域や応急仮設住宅あるいは災害公営住宅等を巡回し、被災者情報の把握に努めている。この際に、各市町村で開催している被災者支援に取り組む各種団体等の連絡会議の場を活用し、必要な支援にかかる情報収集にも努めている。
社協が訪問や相談対応の対象として把握している世帯数は、26年8月末現在で、16354世帯であり、うち1人暮らし高齢者など特に支援ニーズが高いと認められる1505世帯を中心に訪問等による相談支援を行っている。
【斉藤委員】
阪神淡路大震災のときにも、3年を1つの区切りにして孤独死も増える、自殺も増えると報告もされている。
いま話された被災者生活支援員、仮設住宅に市町村が配置している生活支援員、さらには災害公営住宅に1000人以上生活しているが、新たな災害公営住宅に対する支援員の配置が必要ではないか。
【地域福祉課総括課長】
生活支援相談員等の配置状況だが、9月末現在、県社協および20の市町村社協に172名が配置されており、支援相談員の活動範囲は、応急仮設住宅やみなし仮設住宅のみならず、災害公営住宅あるいは自宅を再建した世帯まで拡大し、地域全体を対象とした活動を展開している。このほか、災害公営住宅のためには復興住宅ライフサポート事業により、現在1市において3名の復興住宅サポーターが配置されている。
【斉藤委員】
災害公営住宅は釜石市だけがやっている。いま災害公営住宅が建設中ということもあるが、すでに1000人以上が入居している。これが活用されない理由・原因をどう受け止めているか。
【参事】
災害公営住宅の拠点の事業については、その移行にともない、主に高齢者の方々の生活変化への困難というものがあるだろうということで、各市町村に対してその事業を勧奨し、各種の研修を通じてその重要性を県としても伝えてきているところだが、まだ災害公営住宅の建設が各市町村において想定よりも進んでいないことや他の災害関連事業などもありなかなか着手に至っていない現状であると認識している。
【斉藤委員】
せっかくの制度が使われなかったら意味がないので、本来必要な事業なのでよく実態を把握して対応していただきたい。
・学童保育事業について
【斉藤委員】
306クラブ12010人ということだった。1年〜3年が9104人だが、全体の児童の中でどういう比率か。4年〜6年が2906人だったが、全体の中でどういう比率か。
【子ども・子育て支援課総括課長】
登録児童数が12010人、1〜3年が75.8%、4〜6年が24.2%となる。
【斉藤委員】
今度の新制度で市町村が設置基準をほぼ9月に決めているが、国通りに決めたところ、国の基準を超えて決めたところはどうなっているか。
【子ども・子育て支援課総括課長】
市町村においては現在、制定または制定を進めている放課後児童クラブの設備や運営に関する基準を定める条例については、制定済および制定予定の32市町村において、おおむね国が示した基準の通りとなっているところだが、1市についてのみ1クラブを40人以下とする国の基準を60人以下としている。残る1自治体については、現在放課後児童クラブがないことから、いまのところ条例を制定する予定がないものである。
【斉藤委員】
学童保育クラブというのは、特に低学年は学校にいる生活より長い。こうした子どもたちの遊びと生活を支えるというのが学童保育で、多様な子どもたちを受け入れるという点で、本当に専門的な資格をもった指導員が必要だと思うが、小学校6年生まで今回は拡充されると。そして条例で定めるということなので、指導員の質も高めなければいけない。そういう点で量的拡充、質的強化はどう図られるのか。
【子ども・子育て支援課総括課長】
指導員の量的拡充・質的拡充だが、平成26年5月1日現在で306クラブに指導員1235人配置されている。現在の指導員については特段の資格要件がないが、来年度から施行される新たな新制度においては、現在の放課後児童指導員に代わり設置される放課後児童支援員に対する研修を県で実施することとされたが、これについては来年度以降適切に対応するよう検討していきたい。
この研修を実施することにより、当然その職員の質の向上ということについては、現在よりも向上が見込まれるところであり、対応等についても、子ども・子育て支援新制度の質の改善として、放課後児童クラブの常勤職員の処遇改善が盛り込まれているところであり、県では国に対して着実な実施を図るための財源の確保を要望したところであり、今後の放課後児童クラブに対する財政支援の拡充に向け要望をしていきたい。
【斉藤委員】
量的拡充も質的強化も必要だと。法律には経過措置というのがあるが、おおむね40人以下、そして不十分だとは思うが40人基準で資格を持った人が1人以上となっているが、この経過措置についてはどのように市町村では決定されているか。
いま1235人の指導員がいるが、基本的にはすべて資格を持って学童保育にあたるべきだと、さらに指導員は増えると思うが、いますべての指導員を対象にした研修はやられるのか。
【子ども・子育て支援課総括課長】
市町村で定める設備および運営にかかる基準の経過措置の状況だが、市町村の条例の内容を見ていくと、32市町村のうち、設備の基準について経過措置を設けているのが15市町村で、経過措置の内訳としては「5年間」が3自治体、「当分の間」が12自治体である。40人以下ということについて経過措置を設けているのが17自治体で、「5年間」が3自治体、「当分の間」が14自治体ある。
指導員1235人これらすべてについて新たな支援員としての研修を受けさせるべきではないかということだが、今後国からの具体的な研修カリキュラム、あるいは手続き的なもの、要項等が示された上で、個別具体に検討を加えながら、また予算の中でどのように反映させていくかについては今後検討させていただきたい。
【斉藤委員】
新制度が学童保育の画期的な拡充に結び付いたとなるよう市町村と協力してやっていただきたい。
・1人暮らし老人の実態と対策について
【斉藤委員】
全国600万人いて、120万円の生活保護基準以下が200万人だと言われている。NHKの報道では、老後破壊ということで特集した。岩手の場合は1人暮らし老人の実態はどうなっているか。
認知症高齢者の1人暮らし、行方不明者の実態と対策はどうなっているか。
【参事】
本県における65歳以上の高齢単身世帯数は、平成24年国勢調査結果によれば、県内で43479世帯となっている。これらの方々の収入の状況については把握していないところであり、厚労省の平成25年国民生活基礎調査によると、平成24年の高齢者世帯の1世帯あたりの平均所得金額は309万1000円となっている。
認知高齢者の実態について、数については3月末時点で42347人となっているが、このうち一人暮らし高齢者については把握していない。行方不明の実態と対策については、県が6月に市町村を通じて行った実態調査では、行方不明となり居住する市町村外で発見された事案は19件となっている。このような調査結果を踏まえ、県では行方不明者の早期発見のため、県内各市町村や他の都道府県警本部との情報共有の仕組みを構築し、9月から運用を開始した。また県では、市町村による徘徊者SOSネットワークの構築を支援し、認知症高齢者を地域全体で見守り支え合う仕組みづくりを促進していきたい。
・国保の問題について
【斉藤委員】
平成25年度決算における国保だが、1世帯あたりの国保調定額、課税所得負担率はどうなったか。資格証明書・短期保険証の発行状況、これに改善があるか。
資産の差し押さえについて、3820件13億円余の差し押さえがされているが、滞納が増えている中で、少なくとも給与の差し押さえはやるべきではない。生活を保障する原則に反するのではないか。
【健康国保課総括課長】
国保税の負担率について、所得税法に関する数値については、国の公表データを基に把握しているところであり、昨年度の数値についてはまだ公表されていないことから、平成24年度の数値についてお答えしたい。24年度における1世帯当たりの総所得金額は111万9000円であり、この金額から基礎控除33万円を差し引いた課税所得額は78万9000円、国保税額は13万9000円となっており、1世帯あたりの課税所得額に占める国保税の割合、いわゆる負担率は17.6%となっている。
9月1日現在で資格証・短期被保険者証の発行状況は、資格証明書発行世帯数が212世帯で昨年同期比114世帯の減少、短期被保険者証発行世帯数は8306世帯で前年同期比1069世帯減少している。
平成25年度における滞納処分、いわゆる差し押さえは、差し押さえ件数3820件で対前年度比2163件増加している。差し押さえ金額は13億円で対前年度比3億5000万円増加している。給与を差し押さえたのは23市町村となっている。滞納処分については、税負担に関する公平性等を確保するため、担税能力がありながら納付していただけない方に対して市町村により十分な調査を行ったうえで実施されているものと認識している。給与や年金などについては、国税徴収法の規定の例により、ひと月につき本人分として10万円、生計同一親族がいる場合はこれに一人当たり45000円を加えた額までは差し押さえができないこととされており、一定の生活への配慮がなされているものと考えている。県としては、納付できない方は、失業や疾病などに起因する経済的理由による場合など、さまざまなケースがあることから、分納相談等にきめ細かく対応するよう市町村に対し助言している。また、滞納者の資産を調査した結果、滞納税を支払う資力がないと判断された場合は、滞納となっている国保税については、漫然と滞納状態を継続することなく、適切に執行停止や不納欠損処理を行うなど引き続き市町村に助言するということである。