2014年10月22日 決算特別委員会
農林水産部(水産・林業部門)に対する質疑(大要)
・漁業・水産業の復興状況について
【斉藤委員】
稼働漁船数は10467隻で震災前の73.2%、養殖施設の整備状況は17329台で震災前の65.4%ということだった。これは漁業者の実態にほぼ合った状況だということか。
【水産振興課総括課長】
漁船については、ほぼ漁業者に行きわたっていると考えている。養殖施設については、漁業者からこれだけの施設がほしいということで整備させていただいている数字である。
【斉藤委員】
そうなれば約3割から3割5分ぐらい漁業者が減ったということになると思うので、これはこれで新しい課題だと思う。
魚市場の水揚げも、生産量で63.9%、生産額は87.3%ということで、生産量から見るとまだ6割台程度ということで、この現状をどう受け止めているか。
【水産振興課総括課長】
25年度の水揚量そのものがかなり少なくなっているが、これについては、サンマが昨年非常に少なかった。24年度は3万トンであったのに対し25年度は25000トン程度であり、こういうことが影響していると考えている。
【斉藤委員】
ワカメ・コンブだが、ワカメは生産量が65.1%で生産額は40.8%、コンブは生産量が58.9%で生産額は57.2%ということで、生産量も戻っていないがそれ以上に額が落ち込んでいる。これでは再生産がおぼつかない状況になっているのではないか。この対策はどうなっているか。
【水産振興課総括課長】
生産量そのものの減少については、特にワカメについては今年春先の水温の低下等が大きく影響し減産したものと見ている。県漁連の方から、当初どれくらい生産できるかということを聞いていたが、いまの施設数であれば震災前には戻らないにしてもある程度近い数には戻ると言っていたので、通常年であればそれくらいには生産は戻っていくのではないかと思う。コンブについても、若干生産者そのものが減少しているので、今後も減少するのではないかとは見ているが、いずれ単価について、金額が減っているのはワカメについては単価が低迷していると。これについても、単価アップの方向に向け生産者の意向や加工業者の考え方などを聞き対応していきたい。コンブの単価については、全体の金額は57%に落ちているが、震災前の97%の単価である。
【斉藤委員】
秋サケの状況について、震災後の漁獲量・漁獲高を示していただきたい。
【水産振興課総括課長】
昨年同時期の漁獲状況が712トン、今年度は現在1046トン・147%となっている。
震災後の漁獲状況は、23年度・24年度が7000トン、25年度は14000トンである。
震災前は20年度が24000トン、21年度25000トン、22年度17000トンである。
【斉藤委員】
漁港・防波堤の整備状況はどうなっているか。
【漁港漁村課総括課長】
9月末までに、潮位に関わらず陸揚げが可能な漁港は99で被災漁港数の9割を超える復旧状況となっており、37漁港では復旧が完了している。
防波堤については、漁船の安全な係留のために、本格的な復旧工事に着手してきており、55漁港で完了している。
今後とも、市町村や漁協等と緊密に連携しながら、27年度までの漁港施設の復旧完了をめざし引き続き漁港や防波堤の復旧整備を推進していく。
【斉藤委員】
水産加工業の復興状況はどうなっているか。
【水産振興課総括課長】
8月1日時点での被災事業所の復興状況調査によると、水産加工業では被災事業所の8割が事業を再開し、または一部再開している。6割の事業所がほぼ震災前の状況に復旧したと回答している。
【斉藤委員】
まだまだ復興の途上だと思うので、担い手の確保や水産加工業と漁業は一体だと思うので、復興のためにさらに取り組んでいただきたい。
・小型漁船漁業の実態と振興策について
【斉藤委員】
県内の小型漁船漁業の実態はどうなっているか。漁業者、小型漁船漁業の生産額、生産量、生活実態をどう把握しているか。
【漁業調整課長】
漁業センサスによると、小型漁船漁業の経営体数は平成20年に2519経営体、25年には2087経営体になっている。小型漁船漁業のみの生産についてはデータがなく把握していない。生活実態についても、特にデータがないので県としては把握していない。
【斉藤委員】
漁船漁業主体の経営体の漁業所得水準という資料をいただいているが、平成22年を100とすると25年は74ということではないか。
【漁業調整課長】
所得水準については、国の調査により被災3県の全体の数値は出ており、ご指摘の通り平成22年を100とすると、23年55、24年が62、25年が74となっている。ただ本県の小型漁船経営体のみに特化した調査は行われていない。
【斉藤委員】
小型漁船漁業の方々は、借金もして漁船も確保して、そして生産量が減少して大変な状況の中で岩手の漁業を支えていると思うが、小型漁船漁業の県の振興策はどうなっているか。
【漁業調整課長】
基本的に漁船漁業は、天然資源を利用する産業であるということなので、その振興にはまず秩序ある操業ができる漁場を確保することが必要である。県は漁業調整、漁業許可の発行、漁業権免許の事務を適正に行うこと、漁業取締により漁業秩序を維持していくことが重要と考えている。
また小型漁船漁業は経営規模が小さく、水揚げや魚価も不安定である。資源管理経営安定対策事業や漁業セーフティーネット構築事業の導入を促進し、小型漁船漁業の経営安定化を促進していきたい。
【斉藤委員】
9月30日に、小型漁船漁業の方々がサケの刺し網漁の許可を求めた申請を行っている。11月には第二次の申請も行おうとしているようだが、この小型漁船漁業者の許可申請に対し、県はどう検討し対応しようとしているか。
【漁業調整課長】
9月30日に、県内の漁業者38名から県に対し、固定式底刺し網漁業にかかる漁業許可の内容変更申請の提出があった。この変更申請は、許可証の制限または条件というところの禁止事項の変更にかかる初めてのケースなので、現在慎重に申請内容を審査している。
【斉藤委員】
これは海区漁業調整規則にも関わるが、これは知事に対する許可申請なので、今後のプロセス、県としてこの申請をどう受け止め、海区漁業調整委員会でどう議論されるのか。それともそれ以前に漁業者間の話し合いや協議のようなものが行われるのか。
【漁業調整課長】
申請は、県知事許可にかかる変更申請であるので、いずれ県知事が判断を行う。今回一部の申請者の変更について、書類の添付不足があり、補正を相手方に求めている最中である。それを待って申請を行い決定したい。
【斉藤委員】
そうすると、知事の判断で対応するということか。海区漁業調整規則の見直しが必要になってくると思うが、それは県が判断した上で海区漁業調整委員会に提案するということか。
【漁業調整課長】
県の判断というのは、申請内容について良いか悪いかを判断させていただく。海区に求めるということではなく、県の判断で行う。
【斉藤委員】
小型漁船漁業というのは1トン〜20トンで漁船の8割を占める。文字通り岩手の漁業を支えている。そういう方々が大変借金を抱え船を確保し、しかし魚が獲れないと。特にこの時期は獲る魚種がないということで大変苦しんでいる。小型漁船漁業をどう進行させるかと、これは県自身が一緒になって考えるべき問題だと思う。
先ほど課長は「秩序ある操業」と言ったが、秩序ある操業で規制されている。借金をしたが返すあてもないと。一緒になって小型漁船漁業はどうやったら成り立つのか、そのことを県自身が一緒になって考えなかったら、この問題は本当の意味で解決しないと思うがいかがか。
【漁業調整課長】
小型漁船漁業の振興については、県の重要な課題だと思っている。まずは経営安定等の対策を進めるようなことを進めていきたい。
【斉藤委員】
中身のない答弁だったが、漁民の方々は「隣の宮城や青森では固定刺し網はできる」と。隣県では獲れて県内では獲れないことに矛盾と苦痛を感じている。宮城県と岩手県の違いは示してほしいが、宮城県は岩手県よりサケの回帰率が良い。宮城県の漁獲量がいくらで、そのうち固定刺し網でどのぐらい獲っているのか。サケの回帰率はどうなのか。
【漁業調整課長】
平成22年の岩手県の漁獲尾数だが、約500万尾が岩手県に帰ってきている。そのうち定置で470万尾余を漁獲している。一方宮城県は165万尾余を漁獲しており、うち約100万尾余を定置で確保し、刺し網で約53万尾を獲っている。平成25年になると、岩手県の漁獲尾数で470万尾余であり、そのうち435万尾余を定置で漁獲している。宮城県は220万尾余のうち162万尾余を定置で、刺し網では55万尾余を獲っている。
宮城県の回帰率は把握していないが、岩手県では約1.3%程度となっている。
【斉藤委員】
単純に比較すると、岩手県は平成22年は507万尾、25年が470万尾に若干減った。宮城県は165万尾が221万尾に増え、そのうち55万尾は刺し網で獲っている。岩手の場合は定置が主力だということもあるが、宮城県はある意味では刺し網で獲ってもサケは増えているのではないか。刺し網で獲れば減るということにはならないのではないか。そういう検討はしているか。
【水産振興課総括課長】
漁法別に、どのような漁法にすれば資源への影響があるかという検討はしていない。
【斉藤委員】
漁民の切実な願いに応えるためには、漁民が感じている疑問や意見にしっかり耳を傾けて、科学的にきちんと応えて、合理的なものについては受け止めていくということが大事だと思う。
大変難しい問題ではあるが、岩手県の漁業を支えているこういう方々の経営が成り立ってこそ、岩手の漁業も水産加工業もうまくいくので、そういう取り組みをきちんと県としてやっていただきたい。
・県産材の活用状況と木質バイオマスの取り組みについて
【斉藤委員】
県産材活用100%というが実績報告書であるが、県産材はどこにどのように使われているか。
木質バイオマスについて、チップボイラーが今年はかなり普及したという報道もあったが、木質バイオマスの取り組みはどう進んでいるのか。今後の見通しはどうか。
【林業振興課総括課長】
県産材だが、公共事業や民間事業で使われているが、公共事業においては、例えば住田町や紫波町の役場庁舎など地域の木材を活用した建築物が注目を集めており、県営施設でも、花巻農業高校の校舎だとか、農業研究センター南部園芸研究室などで活用されている。
木質バイオマスの取り組みについては、25年度だと、木質バイオマス発電施設や木質燃料ボイラーだとか燃料生産施設の整備を支援しており、また利用拡大ということで整備を検討している事業体が多いわけなので、木質バイオマスコーディネーターという名前で学識経験者や深い技術を持った方々をお願いし、技術指導に行っていただいて、大変好評を得ている。燃料の安定供給が大事であるので、合意形成のために、材がここからここに出るということをきちんと把握してコントロールしないと上手くいかないので、そのための会議などを県として主催して対応している。
【斉藤委員】
災害公営住宅も1100戸程度が木造だが、例えば、大槌町も頑張っているがミサワホームとか大手がやっている。県産材の活用になっているのか。
被災者の住宅再建もうまくいけばこれから8000の規模で行われるが、そういう県産材の供給能力・体制はあるのか。
【林業振興課総括課長】
公共施設・災害公営住宅・復興住宅などでだいぶ木材の利用が今後進む。私も現場にいろいろ足を運ぶが、例えばプレカット工場だとか合板工場の大きな工場もあるので、根太を見たり柱を見たりするとマークがしてあるが、思いのほか使われている。
大手のハウスメーカーが入っているが、大手のハウスメーカーがどことやりとりをして材を確保するかということで、岩手県は森林林業県で材の出し手であるので、当然岩手県でハウスメーカーが建てるときも岩手の材をきちんとカウントして設計なり施工なりをしていると聞いている。