2014年10月23日 決算特別委員会
県土整備部に対する質疑(大要)


・住宅再建のための面的整備事業について

【斉藤委員】
 昨年12月のロードマップと今年6月末のロードマップでは、年度別宅地造成の戸数はどう変わったか。

【まちづくり課長】
 土地区画整理事業・防災集団移転促進事業・漁業集落防災機能強化事業の合計で申し上げると、25年度は182戸の見込みが249戸に、26年度は975戸から859戸に、27年度は3815戸から2762戸、28年度は679戸から1726戸、29年度以降は調整中も含め2860戸から2665戸となっている。合計で8513戸8263戸となっている。

【斉藤委員】
 6ヶ月間の推移ということになるが、27年度は累積で4972戸、これは8513戸に比べると58.4%だったのが3872戸45.4%に減少すると。1100戸分の宅地造成が遅れたと。2年経っても5割もいかないというのは本当に大変なことだと思うが、遅れた主な要因は何か。

【まちづくり課長】
 区画整理においては、仮換地を指定する前に工事に着手していただく起工承諾に時間を要したケース、大規模工事であるので工程調整に時間を要したケース。
 防集においては、多数相続や土地所有者の不明、用地交渉の長期化ということで時間を要したケースがある。

【斉藤委員】
 宅地造成が残念ながらこういう形で遅れるという中で、被災者からこういう話を聞いた。「防集で予定していたが自立再建できなかった」と。このときの活用はどうなるのか。
 もう1つは、80代の被災者は「もう待ち切れない。亡くなってしまう」と。そうした場合に高台に移転する権利が無くなると。こういうことはあってはならない。息子さんが後から帰って建てる場合もあるので。
 こうした点についてどういう対応になっているか。

【まちづくり課長】
 防集により自立再建ができない方が出てきた場合だが、各市町村では設計や用地買収、工事着工等それぞれのタイミングにおいて住民意向を把握しながら、なるべく空き区画の生じないように進めてきた。工事着手後に住宅再建希望者が減ったという場合だが、その区画分については、事業の該当する方から再度募集をするということがある。また緑地や広場・集会施設などの公共施設用地、それから住宅地の中で生活に必要な購買施設等の公益的施設の用地として活用することも考えられる。これらも総合的に鑑み、空き区画を活用するように取り組むこととなる。
 団地が完成する前に対象者がお亡くなりになった場合だが、事業の移転対象者というのは、原則として被災時に移転促進区域に住んでいた方ということになるが、例えばその方が病気療養中で病院にいたなど相当な理由がある場合は資格があるとなっている。相当の理由というのはいろいろあるので、市町村の担当課に相談いただきたいと思う。個別の判断ということになると思う。

【斉藤委員】
 私は亡くなった場合の話をしているので、早く仮申請などをやって権利を認めると。そういう処置をやろうとしている市町村もあるので、工夫してやっていただきたい。
 区画整理の意向調査で、最近陸前高田市では、高台の区画整理の希望が603の計画にたいし285の申し出しかなかったと。今泉地区も267の計画にたいし156の申し出しかなかった。対象者の8〜9割の意向調査のようだが、これはかなり深刻な状況ではないか。県としてはどう把握しているか。
 全体的に区画整理において、そこにもう自分で家を建てないという状況については把握しているか。

【まちづくり課長】
 陸前高田市の高田地区・今泉地区の場合は、元山林だった高台と元市街地だったかさ上げ部に宅地を換地するということで住民の意向調査をした。この地区の他では、事業計画と住民意向のかい離が大きいという事例は掴んでいない。それから区画整理の制度上、建てるか建てないかという調査は現段階ではできない状況なので、数字は把握していない。

【斉藤委員】
 結局これは国や県の取り組みにより宅地造成が遅れていると。待ち切れずに自分で他で自立再建などという事態になっているので、そういう状況をつかんで、最大限被災者の意向に沿った対応をしなければいけない。
 防集の場合は、区域内の住居数が約7747戸と聞いているが、土地の取得率はどうなっているか。

【まちづくり課長】
 移転促進区域の跡地を事業で買い取るわけだが、買い取り対象面積は全県で378ヘクタールほどあり、買い取り済が199ヘクタール・53%程度となっている。

【斉藤委員】
 大槌町に行ったときに、町方地区の区画整理で、20ヘクタールのうち8ヘクタール分を買い上げて、そこで町中防集や公営住宅を建てると。この手法はなかなか良いものだと思う。やはり町中に住民を集めてまちづくりを進めると。結構区画整理でも土地を売りたいという方々は少なくないと思う。陸前高田市でもそうである。バラバラにそのようにするのではなく、きちんとそういうところを買い上げた、そういう手法を県も研究してやっていく必要があるのではないか。

【まちづくり課長】
 たしかに区画整理は市街地の部分が多いので、そこに人を集めるということで、区画整理の中に災害公営住宅や防集団地を整備するということを各市町村も考えており、現在土地区画整理事業は18地区あるが、うち13地区において災害公営住宅を計画している。5地区では防集の宅地を設けるということで取り組んでいる。

【斉藤委員】
 宅地の次が住宅の再建ということになるが、地域型復興住宅の取り組みはどうなっているか。
 沿岸では住宅建設の今後の需要に対応できる供給体制がつくられているのか。

【住宅課長】
 地域型復興住宅だが、8月には16戸、累計では843戸の住宅を受注している。また一部の事業者においては、建設途上の住宅で現場見学会を開催するなど、住宅復興の大きな力になっているものと考えている。
 沿岸での住宅建設の需要への対応だが、今後面整備事業における宅地の供給が本格化してくることなどから、住宅を建てる職人の不足が懸念されている。そこで県では、遠方から来る職人が泊まって仕事ができるよう、空いている仮設住宅を工務店に無償で貸与する住宅建設にかかる宿舎貸与事業を間もなく開始するところであり、6月に運用を開始しているマッチングサポート制度により、職人の紹介等を引き続き行い被災者の方々の住宅再建が円滑に進むように取り組んでいきたい。

【斉藤委員】
 地域型復興住宅には期待した。県産材も使って地元の業者が請け負うと。いま答弁あったように843戸受注しているが、うち被災者の分は258戸である。今まで加算支援金で家を建てたのが5108戸で、そのうちの258戸ということは5%にすぎない。おそらく内陸では結構やっているかもしれないが、被災地では十分浸透していないのではないか。もっとこの取り組みは被災地でこそ進めるべきではないか。

【住宅課長】
 復興住宅の取り組みについては、発災以来被災地の方で住宅再建の相談会等をやらさせていただいているが、相談にいらした方々には説明をさせていただくとともに、事業の案内の資料等をお配りしPRに努めている。

【斉藤委員】
 せっかく立派なパンフを作って三県共同でやっているが、被災者の住宅再建のうち5%程度。もっと地元の業者の力で、地元の県産材を活用した住宅再建を進めるべきではないか。

【県土整備部長】
 ご指摘の通りと思っているので、一層努力していきたい。


・災害公営住宅の建設について

【斉藤委員】
 年度別完成戸数はどうなるか。建築費高騰の状況はどうなっているか。
 災害公営住宅における入札不調の状況はどうなっているか。

【営繕課長】
 県内では昨年度までに574戸がすでに完成しており、今後は26年度に1148戸、27年度2626戸、28年度以降に1598戸が完成する予定となっている。
 建設費の高騰の状況は、県が整備している災害公営住宅のうち鉄筋コンクリート造の災害公営住宅では、外溝工事や造成工事を除いた建物の本体工事費で、24年は戸当たりが約1420万円、25年が戸当たり約1800万円、26年度は戸当たり約1920万円となっており、約500万円・35%の上昇となっている。
 入札不調の状況は、24年度は公告件数18件のうち1件、25年度は35件のうち10件、26年度は28件のうち6件、率にして21.4%が入札不調となっている。

【斉藤委員】
 災害公営住宅も他の建設工事とあまり変わらない深刻な入札不調があったと思うが、これにどう対応したのか。これにより工期が遅れることはなかったのか。
 災害公営住宅の中で、木造公営住宅、戸建ての住宅の建設の計画がこの間大幅に増えている。どのぐらい増えたのか。理由は何か。
 岩手県がつくるのはほとんど集合住宅だが、こういう状況の変化の中で、県営の公営住宅も木造の公営住宅を検討する必要があるのではないか。

【営繕課長】
 災害公営住宅における入札不調対策だが、建設業者等への聞き取りの中で、例えば工事期間が不足する、入札予定価格とのかい離が生じているということで入札に参加できなかったといったような理由を挙げている。工事の発注にあたっては、建物の階数・整備戸数・特殊基礎工事の有無などの工事内容を踏まえた適切な工期の設定、市場価格とのかい離が認められる工種については、実績価格を反映する見積もりの活用など実践に即した予定価格の設定に努めるとともに、工事発注後についても物価上昇等への的確な対応に努めている。
 入札不調が生じた場合の完成時期の遅れについて。県では入札不調が生じた場合、災害公営住宅については直ちに随意契約に移行している。基本的にはこれまで契約に至っているため、完成時期が大きく遅れる状況にはなっていない。
【住宅課長】
 木造公営住宅にかかる状況だが、初期の時点では600戸程度の予定だったが、7月末に公表したロードマップでは900戸を超えるということである。増加理由は、土地等の手当がついたことが大きな要因ではないかと思っている。
 公営住宅の建設については、土地の取得がこれまで一番大きな課題になっていたところである。県営については、おおむね土地の取得の見込み等が立っているところだが、県が建設する公営住宅で設計を行うものについて、市町村との協議を踏まえ、必要に応じて木造公営住宅を整備していきたい。

【斉藤委員】
 6月のロードマップでは900戸だったが、最近は1100戸ぐらいまで伸びている。ほとんどは戸建てである。被災者の要望に沿った災害公営住宅の計画になってきているのではないか。県としてもそういうところをしっかり踏まえて対応していただきたい。


・簗川ダム建設事業について

【斉藤委員】
 昨年度と今年度の進捗状況、事業費・道路・ダム分ではどうなるか。
 ダム本体工事の事業費と進捗状況はどうなっているか。
 大規模事業評価委員会にかかるのはいつか。

【河川開発課長】
 事業の進捗状況については、関連工事を含めて25年度末の事業費の累計が484億円で進捗率は68%、26年度末の事業費の累計が497億円で進捗率は70%となっている。
 付け替え国道が25年度に完成し、付け替え県道は26年度の完成を見込む工事を実施中である。
 ダム本体工事については、今年度工事発注手続きを進めており、設計額は税込154億円余となっている。26年8月26日に入札公告を行っており、入札予定日は10月27日となっている。12月議会での議決後に本契約の締結を予定しており、工期は平成33年3月31日までとなっている。
 大規模事業評価における再評価については、前回22年度に諮っているので、次回は5年後の27年度を予定している。

【斉藤委員】
 簗川ダムのダム建設事業費は530億円であった。これは317億円まで今年度中に進捗するということで59.9%、道路分は全て完了したと。ダム本体は38.3%で、拡幅する分の道路事業費というのが合わせて709億円の事業費となる。
 大変な事業だと思うが、基本的には道路は完成したと。こういう時こそダム本体の見直しをすべきだと思う。湯田ダムの濁水が大きな問題になっているが、「簗川ダムも堆砂を抜く排砂ゲートなどを設置しない計画だ。長期的なコストや環境負荷を考慮してもなお巨大構造物が必要か。人口減少が進む中で現代の住民は十分考慮する責任がある」とある新聞がこのように書いて、なかなかの卓見だと思うが、来年大規模事業評価なので、本当に必要なダムなのかどうか。来年の大規模事業評価できちんと検討する必要があるのではないか。

【県土整備部長】
 簗川ダム建設事業については、平成22年度に大規模事業評価を行っており、その時点で事業の継続は妥当という判断をいただきこれまで進めてきている。社会情勢等に大きな変化はないものなので、引き続き事業を進めていくということで今回本体発注を進めるものである。
 人口減少の話があったが、簗川の下流域については大きな市街地ができており、そこの安全を守るということは我々にとって大きな責任と思っており、簗川ダムの必要性は変わらないと思っている。

【斉藤委員】
 簗川ダムは堆砂を抜く排砂ゲートを設置しない計画と。これは環境に配慮しない、湯田ダムと同じようなことが起きてしまうのではないか。
 環境対策でいけば、例えば希少猛禽類のクマタカ等の生息・繁殖状況があったわけだが、これはどうなっているか分かるか。簗川の鮎というのは、鮎グランプリで受賞するような素晴らしい鮎が生息している。そこでダムをつくったら、そういう自然環境が守られるのか。ましてや排砂ゲートもない。今の時代に合わないダム建設ではないか。

【河川開発課長】
 簗川ダムの環境調査に関してだが、毎年環境調査をしており、さらには専門家による委員会も開催している。クマタカ等希少猛禽類についてはモニタリングをして、付け替え道路工事等についてはこれまで配慮しながら工事してきた。
 鮎については、平成22年・25年・26年と簗川については準グランプリということで、全国で7河川ありそのうちの1つに選ばれたところである。鮎の漁獲高については、ほとんどがダム下流部で漁獲されており、ダムの完成により河道の河川に配慮することで鮎への影響はほとんどないものと考えている。
 堆砂に関しては、排砂ゲート等を特に設けないということだが、堆砂については、100年間で溜まる量の堆砂容量を設けることで対応している。


・津付ダム建設事業について

【斉藤委員】
 今年度で中止ということになる。建設事業費はどこまでかかったのか。昨年度14億3000万円だったが。これは良かったと。県はダムを造る財源もないという話もしているようだが、津付ダムについては、取り付け道路も整備されてダム本体のところで中止と。絶好のタイミングだったと思うがいかがか。

【河川開発課長】
 関連工事を含めて25年度末で102億円、26年度末で107億円ということで、ダムは中止することに決定したわけだが、進捗率は60%ほどとなっているが、平成26年度に県の対応方針として中止を決定したところである。