2014年12月5日 12月定例県議会・本会議
議案に対する質疑(大要)
・地域防災力強化プロジェクト事業費について
【斉藤議員】
日本共産党の斉藤信でございます。議案に対する質疑を行います。
議案第2号は2014年度岩手県一般会計補正予算(第6号)であります。総額12億9300万円余の補正予算であります。
第一に、地域防災力強化プロジェクト事業費が271万円余計上されています。御岳山噴火を踏まえて、登山者への緊急情報を伝達しようとするものですが、具体的な内容とすべての登山者に伝達されるものなのかどうか。また、岩手県内における火山活動の現状と調査研究体制はどうなっているでしょうか。今後、必要な課題を含めて示されたい。
【総務部長】
今回の補正により実施しようとする内容は、気象台が発表する噴火予報・警報を、いわてモバイルメールを活用し、自動的に情報配信できるよう、気象台から専用回線で県が受領したデータをメール配信可能なデータに変換するためのシステム改修である。また、いわてモバイルメールを活用した火山情報の伝達には、登山者等にあらかじめメールアドレス等を登録していただく必要があることから、多くの登山者等に利用していただけるよう県のホームページ等で周知するとともに、いわてモバイルメールへの登録方法等を掲載したチラシを作成し、市町村や山岳協会、観光協会等と連携しながら関係各所において登山者等に対する普及を図っていくこととしている。
県内の火山活動の現状について。10月23日に、火山噴火予知連絡会が公表した火山活動の評価によると、岩手山および栗駒山は、噴火の兆候が認められず噴火予報は平常。秋田駒ケ岳は噴火予報は平常であるが、地熱活動が続いており、今後の火山活動の推移に注意することとなっている。また調査研究体制については、本県の常時観測火山では、気象庁や大学などにより、岩手山では15ヶ所、秋田駒ケ岳では4ヶ所、栗駒山では2ヶ所の火山観測施設に地震計等の観測機器が設置されている。これらのデータをベースにしながら、有識者や関係機関で構成する岩手山の火山活動に関する検討会において、年2回の火山活動の評価や、火山防災対策への助言等をいただいている。このほか、防災ヘリによる観測や、登山による現地調査を実施するなど、火山活動の把握に努めているが、より的確な火山活動の把握のためには、気象台等による火山監視体制や観測網の充実が不可欠であると考えている。こうした取り組みについて、国に求めていく。
・被災地福祉灯油について
【斉藤議員】
第二に、被災地福祉灯油等特別助成事業費補助が4835万円余計上されました。4年連続の実施となることを評価するものです。助成の対象世帯はどうなっているでしょうか。内陸に避難し住民票を移動している被災者も対象とすべきですが、内陸の避難者の世帯数、人数はどうなっているでしょうか。県内の福祉灯油の実施予定はどうなっているでしょうか。
【保健福祉部長】
この事業は、東日本大震災津波により甚大な被害を受け、財政事情が極めて厳しい中で福祉灯油を実施しようとする沿岸部の市町村を支援するために実施するもの。
事業の対象世帯は、市町村民税非課税の高齢者世帯、障害者世帯、一人親世帯、または生活保護世帯で市町村が必要と認める世帯としており、12市町村合計で19300世帯を見込んでいる。
被災により沿岸部から内陸部へ住居を移している世帯・人数は、復興局の調査では、10月31日現在で約1700世帯・3700人だが、これらの世帯が福祉灯油の対象世帯に該当するかどうかは確認できない状況である。内陸への避難世帯についても、福祉灯油の対象となる要件を満たし市町村が助成する場合には、住民票移動の有無を問わず、県補助の対象とすることとしている。
県内の福祉灯油は、沿岸12市町村すべてで、また内陸部の4町村が灯油購入費の助成や使途を灯油購入に限定しない商品券の交付を行う予定と聞いている。
・地域医療介護総合確保基金について
【斉藤議員】
第三に、地域医療介護総合確保基金積立金が10億1621万円余計上されています。消費税増税分を活用したものですが、地方消費税の増税分の総額はどうなっているでしょうか。10億円余の事業化の状況はどうなっているでしょうか。これまでの国庫補助事業の振り替えがあるようですが、その実態について示していただきたい。
【保健福祉部長】
地方消費税率の引き上げにともなう本県の26年度の増収額は約25億円を見込んでいる。
10.2億円の事業化の状況だが、この基金の対象となる事業は、病床の機能分化・連携のために必要な事業、在宅医療・介護サービスの充実のために必要な事業、医療従事者等の確保・養成のために必要な事業とされており、事業目的を達成するために必要がある場合は、基金造成前から予算計上して事業を実施することはできると国から説明を受けていたことから、これまで5億円余を予算計上している。また昨年度まで国庫事業として実施していたもので、昨年度末で廃止されたものについては、今年度以降この基金を活用して事業を実施することができると国から説明を受けていたことから、平成26年度当初予算において約3億円を予算計上し、年度当初から事業を実施しているところである。
・県職員等の給料引き上げについて
【斉藤議員】
議案第8号から10号、18号は、人事委員会の勧告基づく県職員等の給料の引き上げを行うものです。今回の引き上げは給与費総額で見ると16年ぶりとなるものです。県職員1人当たりの引き上げ額はどうなるでしょうか。その総額はどうなるでしょうか。医療局・企業局を含めるとどうなるでしょうか。
これまで15年連続で県職員の給与費総額は減額となってきました。この間の県職員1人当たりの賃金引き下げの総額はどうなっているでしょうか。また、その総額はどうなっているでしょうか。その地域経済への影響も示していただきたい。
復興事業に取り組んでいる任期付職員の期末手当・勤勉手当は一般職員と同様に3.95カ月に引き上げられるのでしょうか。特定任期付職員や任期付研究員の期末手当が2.95カ月となっていますが、県職員より1カ月分低い理由は何でしょうか。
【総務部長】
県職員一人当たりの引き上げ額については、行政職の40歳主査級職員をモデルに試算した場合、年間給与額で38000円程度の増となるところであり、その総額は9億7000万円程度と見込まれる。また企業会計については、給与費の補正を行っていないところであるが、その給与改定所要額をもとに試算をすると、普通会計および企業会計の総額で12億2000万円程度と見込まれる。
これまでの給与改定の影響だが、40歳の主査クラスの職員を例に、平成11年度給与改定前と今年度の給与改定後の年収額を単純に比較して試算すると、約104万円の減額となる。また公営企業を除く普通会計で、平成11年度からの給与改定ならびに平成15年度からの給与の減額措置による各年度の減少額を単純に合算した場合、約300億円と試算される。なお、地域経済に対する波及効果については、産業連関表を用いて機械的に試算した場合、約475億円と見込まれる。
任期付職員および任期付研究員の期末手当等について。復興事業に対応するため採用した任期付職員の期末勤勉手当については、一般職の職員の給与に関する条例の規定が適用されるため、任期の定めのない職員と同様に引き上げとなり、引き上げ後の支給月額は3.95ヶ月となる。また特定任期付職員および任期付研究員の給与については、その者が任期中に従事する業務等にふさわしいものとするため、給料の特別調整額勤勉手当など職務の特殊性や期待される業績等と密接に関連すると考えられる手当については、給料水準で一体的に評価をしていることから、その結果期末手当の支給月数が任期の定めのない職員よりも少なくなっているものである。なお、特定任期付職員および任期付研究員が特に顕著な業績をあげたと認められる場合には、特定任期付職員業務手当または任期付研究員業務手当として、給料の1ヶ月分に相当する額を支給できることとしている。
・県施設の指定管理者の雇用の状況ついて
【斉藤議員】
議案第34号から第62号までは、県の施設の指定管理者を指定するものであります。まとめて質問しますが、今回指定対象となっている指定管理者の従業員数と正規職員、非正規職員の数と比率を示していただきたい。非正規職員が多いと思われるが、県の事業でワーキングプアをつくることになっているのではないでしょうか。正規・非正規の賃金水準はどうなっているでしょうか。
【総務部長】
29施設の指定管理者の従業員数については、指定管理予定者からの提出があった配置計画によると、従業員数の合計は275名であり、うち雇用期間の定めのないいわゆる正規職員は108名、有期採用職員は167名の計画くとなっており、正規職員の占める割合は約4割になっている。職員の配置については、基本的に各施設ともそれぞれの機能・性質・設置目的に応じ、運営に必要な職員を確保されているものと理解している。
賃金水準については、各個人の給与にかかる資料まで提出は求めてはいないが、指定管理者制度においても、指定管理者が労働法令等関係法令を順守することは当然求められているところであり、各所管部局において事業完了後の事業報告や実地調査等により、その状況について適宜確認を行っていると聞いている。今後とも指定管理者に対して、労働法令の順守や雇用・労働条件への適切な配慮がなされるよう指導を行っていくとともに、指定管理者制度の円滑かつ適正な運用に努める。
・簗川ダム建設(堤体工)工事の請負契約について
【斉藤議員】
議案第64号は、簗川ダム建設(堤体工)工事の請負契約案件です。139億円余の契約金額となっています。簗川ダム建設事業そのものが先にダムありきで進められた事業でありました。また、談合疑惑にも指摘されてきた事業でもあります。この間の事業の経過を示していただきたい。簗川ダムは、簗川と根田茂川の合流点の下流に建設されるものですが、根田茂川のほうが流域面積が大きく、なだらかで、自然の流れで洪水を調節してきた河川であります。簗川自身が掘り込み河道であふれた洪水が戻る特徴を持っており、ダム問題の専門家もダムは必要ないと具体的な調査結果を示して指摘してきました。来年度が5年ごとの大規模事業評価の時期であり、その結果を待って本体工事を進めるべきではないでしょうか。また、東日本大震災津波からの復興事業も今が一番工事が集中する時期でもあります。不要不急のダム建設は延期すべきではないでしょうか。
【県土整備部長】
事業の経緯としては、洪水調節や盛岡市・矢巾町の水道用水の確保等を目的とした多目的ダムとして平成4年度に建設採択となり、水道事業者等と道路建設事業に関する基本協定を締結。平成8年度に補償基準妥結調印、9年度に付け替え国道工事に着手したところである。その後18年度に、水道事業者等との基本協定の変更およびダム建設事業全体計画の変更を行い、25年3月には簗川道路が開通、付け替え県道も一部供用開始した。
簗川ダムの大規模事業評価については、17年度・22年度に専門委員会に諮問し、いずれも事業継続は妥当であるとの答申をいただき、事業を進めてきた。22年度には、国からの要請に基づき、ダム検証を並行して行い、事業継続とした検証結果を大規模事業評価専門委員会に諮問し、妥当であるとの答申をいただき、国にこの結果を報告し、国では県の検証内容は妥当であるとして、平成23年8月に対応方針を継続と決定した。
その後簗川ダム建設に関しては、流域の状況等に大きな変化がなく、ダムの詳細設計・事業用地の取得・付け替え国道および県道の整備がおおむね完了したことから堤体工事を進めるものである。
ダム建設の延期については、本県においても昨年・一昨年と各地で大雨による浸水被害が発生するなど、記録的な豪雨災害が頻発していることや、簗川については、下流域に市街地が広がっていることなどから、流域住民の生命や財産を守るため、事業の緊急性・必要性は高いと判断しており、ダム建設事業を着実に進めていくこととしている。
・山田町北浜地区の災害公営住宅の請負契約について
【斉藤議員】
議案第65号は、山田町北浜地区の災害公営住宅新築建築工事の請負契約案件であります。15億8747万円余の契約金額、請負率97.78%となっています。見積もりによる随意契約となっていますがその経過はどうだったのでしょうか。1戸当たりの建設費はどうなっているでしょうか。この間の建設費はどう増加しているでしょうか。また、集会所も整備されますが、仮設団地と違って支援員の配置がありません。机やいすの設備もありません。これではカギのかかったままの集会所となってしまうのではないでしょうか。支援員の配置、必要な設備の設置でコミュニティの確立、絆の構築が必要ではないでしょうか。
【県土整備部長】
建築工事について、今年8月22日に入札公告したが、応札者がなかったため、随意契約の手続きに移行し、10月14日を期限として県内外の建設業者41社に見積もり依頼を出した。しかし予定価格以外で見積もりを提出した者がなかったため、予定価格等を見直した上で、再度見積もり依頼を行ったところ、3社が見積もりを提出し、もっとも提示金額が低かった建設業者と契約することとしたものである。
この間にも、建設費の増加については当初の予定価格は税抜きで14億4100万円、一度目の見積もり依頼時の予定価格は14億4700万円、2度目の見積もり依頼時の予定価格は15億300万円、決定金額は14億6980万円となっている。一戸当たりの建設費は、外工・造成費を除く本体工事で約2200万円となっている。
また災害公営住宅におけるコミュニティの確立は重要な課題と考えており、北浜団地においては、支援員が常駐することが可能な事務室を集会所に隣接して設けるとともに、一般の公営住宅の平均的な集会所の面積よりも約1割広い計画としている。
災害公営住宅への支援員の配置や、集会所への机・椅子等の備品を設置することについては、市町村において福祉コミュニティ復興支援事業等を活用することにより、対応が可能であり、県としては市町村がそれらの事業を積極的に活用するよううながすことにより、災害公営住宅におけるコミュニティの確立に取り組んでいく。
≪再質問≫
・指定管理者における雇用状況について
【斉藤議員】
正規職員は40%弱だった。6割は非正規、おそらくワーキングプアだと思う。これは各委員会でもぜひ吟味してほしいが、県が発注する事業でこういうワーキングプアをつくっていいのか。いま指定管理者制度のあり方が根本から問われている。
【総務部長】
正規職員4割、非正規6割ということだが、これは受託団体の性格や指定管理者の受ける業務の内容、あるいは形態によりそれぞれその割合が異なっているものと承知している。
各施設における県の予算措置にあたっては、県の積算基準や過去の実績等を参考に、指定管理料の適切な積算を計上しているところであり、各所管部局において、こうした考え方を踏まえ、給与条件や支給実態等を確認うえ、適切に指定管理者を指導するように改めて周知を図っていきたい。
・被災者福祉灯油について
【斉藤議員】
4年連続実施は評価するが、毎回内陸の被災者も対象にするというが、内陸の被災者がどれだけ対象になっているか全然調べていない。実際に内陸では、北上・奥州・金ヶ崎・花巻・二戸は被災者を対象にやろうとしている。そういう内陸の自治体に補助すれば、内陸の被災者も確実に対象になる。実態調査して、やはり内陸にいる被災者も同じである。差別すべきではない。なぜ実態調査をしないのか。すべての被災者が対象になるような体制にすべきだと思うがいかがか。
【保健福祉部長】
この事業は、東日本大震災津波により甚大な被害を受け、財政事情が極めて厳しい中で福祉灯油を実施しようとする沿岸部の市町村の支援という事業なので、内陸部の市町村の支援とは少し趣旨が違うかなと思っている。ただし、内陸部への避難世帯についても、市町村が助成する場合には対象とするということである。
・簗川ダムについて
【斉藤議員】
簗川ダムが多くの市民・県民に明らかになったのは、三百数十億円が五百数十億円に突全事業費が倍近くになって社会問題になった。それまでは誰も知らなかった。本当にダム先にありきで、道路整備のために進められた事業だと思う。
そして「西松トンネル」と言われるような談合にまみれた事業にもなってしまった。本当にそういうことを総点検すべきだし、やはり不要不急で、いまコンクリートなど資材が足りないと言っているときに、132億円の事業を並行してやらなければいけないのか。これは延期するなり慎重に検討すべきではないか。
湯田ダムでは、溜まった土砂・ヘドロが和賀川に流され汚染された。簗川ダムも同じような構造ではないかと指摘されている。構造上に欠陥があるのではないか。そういう対策はどうなっているか。
【県土整備部長】
ご指摘の通り、復旧・復興工事については、発注ルートの拡大や作業員確保等さまざまな手立てを講じながら事業を進めているところでありそのピークということで、非常に厳しい中ではあるが、できる限りの手立てを探りつつ進めていく。
簗川ダムについては、作業に関わる技術者や現場で作業する専門の技能職の方、これらは復旧・復興工事の方と必ずしも重複しない、あるいはコンクリート等については現地でプラントを造ってダム専用のコンクリートを製造しているということで進めていくので、復旧・復興工事への影響はないものと考えている。
放流設備については、簗川ダムは選択取水という言い方をしているが、任意の水位で水温の状況あるいは汚れている状況を見ながら、放流できるような設備としていくので、下流への濁流等の流出等はないものと考えている。
・災害公営住宅の集会所について
【斉藤議員】
通常より1割広い集会所を整備しているということで良いことだと思う。
仮設団地で切実に言われたのは、仮設団地には集会所があり人が配置されて、いつでもそこに集まれる、だから3年8ヶ月絆がつくられた。災害公営住宅にはまず人がいない、机も椅子もない、集まりようがない。ぜひ緊急雇用事業を使って、集会所にも人を配置する、必要な施設・設備も配備して、それが新たなコミュニティ・絆をつくる場所にしなくてはいけないのではないか。阪神・淡路大震災で孤独死が1000名を超えている。昨年は46人亡くなっている。絶対に二の舞にしてはならない。引き続き仮設住宅にたくさんの方が住んでいるので、ここでの支援員の配置は継続すべきだし、新たな災害公営住宅におけるコミュニティ・絆というのは、仮設団地以上に難しい。扉を開ければそれで孤立してしまう。今からそういう手立てをしっかりとるべきではないか。
【達増知事】
災害公営住宅がいわば復興公営住宅ということで、復興そのものと言ってもいい大変重要な住まいであるので、答弁にあったように、市町村において福祉コミュニティ復興支援事業等を活用することにより、支援員の配置等の対応が可能ということではあるが、やはり災害公営住宅におけるコミュニティの確立というのは非常に重要なので、県としてもしっかり見て必要なことはしていきたい。