2015年1月16日 東日本大震災津波復興特別委員会
産業再生、コミュニティの形成に関する質疑大要


【斉藤委員】
 大変分かりやすい話をありがとうございました。特に、大槌町を例にとった人口減少のメカニズムがよく分かりました。
 5つの政策というのも大変重要な課題だし、県立高校の死守というのも今高校再編を考える上で、岩手における、特に被災地域における高校の大事な存在意義を改めて痛感させられた。
 そこで、高校世代の流出抑制に関わって、勤め先の確保について、これがもう1つ働く場ということで、いま復興需要で県内も被災地も雇用保険の被保険者数は増えている。ところが、地場産業の中核である食料品製造業はだいたい1500人弱減っている。ある意味でいくと、建設関係は増えているが、おそらくこれは平成30年ぐらいまでではないかと。長く続いてもあと5年。そうしたときに、地元で働きたいと、雇用の場、産業の再生がきわめて決定的ではないかと思うが、産業再生についての考え方をお聞きしたい。

【岩手大学広田教授】
 産業再生の重要性・必要性はすごく分かっているつもりであり、1つは、三陸の地域ブランドという考え方があるが、三陸ブランドの確立が重要だと思っており、三陸という言葉がつけば他の商品より高く買ってもらえるとか、三陸という言葉がつけば行ってみようと思うことがブランドだと思う。日本で一番有名なブランドは京都だが、そういう存在に三陸をもっていくというのは重要だと思っており、昨年県庁でも知事の前でお話して、もしまたそういう機会があればお話したい。いま三陸ブランドをつくるにはいい時期だと思う。というのは、三陸というとこれまで印象が少なくて世界の4大漁場の1つぐらいの印象だったと思うが、いま復興再生に向けたいろんな動きがあって、若い人たちが外から入ってきて、やりがいをもってやっているような、コンセプトとして今三陸に行けば復興や再生に関われるということがあるので、ただ再生だとか居場所だとかコンセプトを含んだ三陸ブランドをつくっていって、三陸に行くと楽しいと、大槌はそのような形で若い人たちがやっているが、そういうブランドを定着をさせていくにはそれなりの行政との努力が必要だが、三陸の価値やブランドに見合った企業―既存の企業誘致や新しく起業する、三陸のブランド価値を高めるような企業をこちらから選んで来てもらうというような戦略も必要ではないかと思っている。そうはいっても立地条件の問題があるが、三陸縦貫道ができると相当便利になるので、陸前高田も仙台圏になるので、一方でのブランドづくりと企業誘致と。それから人材の問題が実はあり、ここを何とかしなければいけない。これまでの企業誘致でないような考え方の企業誘致や産業起こしのようなものは非常に必要だと思っており、そのためには人が重要で、地元で新しい仕事をつくれる人たちを集めている。もちろん今回の復興にあたってもそういう人たちを集めようという制度もあるが、あれをもう少し体系的にやっていくのが重要ではないかと。新しい仕事をつくれる人たちをどうやって三陸に来てもらうかというところがかなりポイントだと思っている。

【斉藤委員】
 今の復興の取り組みが今の人口減少を加速させてしまうかどうかの大事な課題で、岩手にとってみれば、やはり被災者本位の復興を前に進めるということが大前提になると。
 その点で、ちょうど阪神大震災から20年が経ち、毎日のようにその教訓というのが出ているが、今日のNHKでは、被災者の方々は「復旧はまだ半ばだ」と言っている。今日の岩手日報で、萬相談所で支援してきた方は「制度では人は救えない。人は人によってのみ救われる」と。これは先生の言われたコミュニティ・絆ということで、そこなんだと思う。孤独死が1000人を超え、毎年40人〜50人。これは絶対東日本大震災で繰り返してはならないと思っており、その1つは復興公営住宅だと思う。県北は戸建ての公営住宅なのでかなり違うと思うが、県南は100戸単位の大規模な公営住宅で、高齢化も阪神より高いので、本当に孤立化するのではないかと。仮設団地と同じように、支援員を配置して、いつでも人が集まれるようにすべきではないか。また、住宅説明会をやっても高齢者は説明を聞いても分からないと。支援員が何度も説明して理解すると。そういう特徴が1つあるのではないか。その点で、復興の中でどう絆・コミュニティをつくっていくのか、先生から問題提起があったが、そういう復興住宅にも仮設団地と同じような支援員の配置が必要ではないか。集会所に机もイスもないと。これだったら集まりようがない。大船渡市役所も言っていたが、5年ぐらいは必要だと。ただそういう事業がないので、制度も新しく作っていく必要があるのではないかということを感じたので、その点についてご意見をうかがいたい。

【広田教授】
 コミュニティの形成についてはおっしゃる通りだと思っており、災害公営住宅の集会所の備品がない。陸前高田市の下和野公営住宅に行って入居者とコミュニティづくりをやっているが、カーテンがない、暖房がない、椅子と机はどこかから借りてきてあるが、復興交付金もたくさんあるので、全部の集会所に整備しても大したお金にならないと思うのでそれぐらいは何とかしてほしい。
 支援員については、当然仮設住宅の入居者対応で支援員をつけることはやっているので、釜石は専従も置いているので、ただ全体として私が強調したいのは、支援員の待遇改善・任期である。いま一年ごとで、優秀な人がなかなか居つけない。できれば3年5年ぐらいの契約でコミュニティ形成支援員などということで、複数任期の支援員を配置できるような仕組みがほしいと思っている。女性の方が多く彼女らの存在は非常に重要で、とても優秀な方が支援員をやっていて、あの人材を使わないのは非常にもったいない。福祉系でも、介護の人材としても重要な戦力になると思うので、そういう方々をまちづくりの人材として使えるように是非待遇改善をお願いしたい。