2015年3月6日 予算特別委員会
高田一郎県議の総括質疑(大要)
1.青年の雇用対策について
【高田委員】
岩手県における青年労働者の非正規雇用率および年間所得の実態、年代別あるいは雇用形態別、既婚率についてどうなっているのか実態をしめしてください。
【千葉副知事】
@平成24年度就業構造業務調査によると、35歳未満の非正規割合は36.7%で、平成9年と比較して21.5ポイント増加している。
Aまた35歳未満における、年間所得300万未満の割合は、79.1%で比較可能な前々回調査の14年と比較して8.8ポイント増加している。
B同調査から年代別、雇用形態別の既婚率を算出してみると、35歳未満では、37.5%であり、うち、非正規については34.6%となっている。
【高田委員】
若者の非正規雇用率は今答弁ありましたように、9年間で15.2%から36.7%、8割はワーキングプアといわれるような200万以下の所得(者)が、8割を超えている状況です。これが岩手の青年労働者の実態になっています。既婚率をみても男性では正規の半分以下になっている、こういう状態です。いま大学を出ても奨学金を払うだけで精一杯で、「結婚なんてできる状態にない」という声がたくさん出ているわけですけれども、こういった若者の希望を奪うようなこの雇用環境、この改善に岩手県として全力を挙げて取り組んでいかなければならないと思います。この点についてうかがいたいと思います。
同時に正規雇用につながる具体的な取り組みが県としても強く求められているとおもいます。あらためて県として正規雇用につながる具体的な取り組みについて示していただきたいと思います。
【千葉副知事】
@今申し上げました、データのとおりであり、 非正規雇用者や35歳未満における、年間所得300万円未満の層での割合が増加していることが、ワーキングプア、経済的な要因が既婚率の低下に繋がり、また少子化の要因の一つになっていると考える。
Aしたがって、まずもって、県としては、若年労働者の労働環境の改善を図るため、国と連携しながら県内の企業等に対し、正規雇用の拡大など安定的な雇用の確保や、賃金や労働条件の改善等を働きかけるとともに、処遇改善に関する法令や国の助成金制度についても周知をはかっているところ。
B平成27年度の経済・雇用対策の取り組み方針にでは、「長期・安定的な雇用の創出・拡大」を柱の一つに掲げ、「産業振興施策」や「雇用対策基金」を活用した事業などに取り組むことにより、長期・安定的な雇用の場を創出するとともに、正規雇用の拡大にも取り組むものである。
C主なものとしては、事業復興型雇用創出事業の活用により産業振興施策と一体となった雇用の拡大を図るとともに、本年度事業開始した地域人づくり事業により、正社員化を進める企業等の取り組みを支援することとしている。
【高田委員】
今答弁ありましたように、非正規雇用に繋がる対応については、経済団体への要請と国の基金を活用した対策なわけであり、事業復興型といっても限定的な対応となっています。私はもっと県が正規雇用の拡大にもっと思い切った対策をとるべきだと思います。今東京都では、非正規雇用を正規(雇用)化した事業主に対して50万直接支給をすると、若者を応援した中小企業に対しても直接支援をするということを含めて、多様な対策をとっています。そして、8年間で正規雇用を希望して活動する非正規労働者を半分にすると、具体的な目標をもって取り組んでいます。私は、今の県の対策では非正規雇用の(正規雇用への)拡大には繋がらないと思う。もっと踏み込んだ対策が必要ではないかと思いますが、この点について知事にお伺いいたします。
【達増知事】
@県では、産業振興施策や雇用対策基金を活用した事業に加え、岩手労働局等と連携し、安定的な雇用の確保、雇用管理改善等の促進について、企業や経済団体への要請活動を実施するとともに、国の助成金制度の周知等を通じて、正規雇用の拡大など雇用の質の向上を図る取組をおこなっているところ。
Aまた、委員からご紹介のあった事業を含め、東京都では、非正規雇用対策として、平成27年度当初予算案に26億円の事業費を計上していると聞いているところ。
B本県は厳しい財政事情から、直ちに、このような事業を県単独事業として実施することは困難であると考えるが、地方創生に係る国の財源を活用した正規雇用の拡大に資する事業の創設を、県として研究していきたい。
【高田委員】
若い人たちが、本当に劣悪な雇用環境で仕事をせざるを得ないことが本人にとって不幸なことであり、社会にとっても不幸なことだと思います。山形県でもやっていますので、是非参考にしていただいて、検討していただきたい。
もうひとつは、いまなぜ非正規労働者が、どんどん増えているのかといえば、やはり、労働分野における規制緩和だと思う。今、国会ではさらに非正規をどんどん増やしていく、正規採用をゼロにしていくような、労働法制の改悪案が議論されています。岩手としてやれることは、こうした改悪にたいして、しっかりと“反対”すべきだというメッセージをするべきと考えるが、知事の見解を求めます。
【達増知事】
@現在、国において、雇用制度の見直しについて検討が進められているが、規制緩和の内容によっては不安定な雇用形態が拡大するという懸念の声もあると承知している。
A県としては、今後の国会における議論など、その動向を注視してまいりたい。
【高田委員】
非正規雇用のさらなる拡大につながる中身でありますからしっかりと対応していただきたい。
労働条件にかかわる問題で、県が締結する契約に関する条例制定に伴う県内の労働条件の改善について、今回の条例改定の中身を見ますと、賃金条項が盛り込まれませんでした。なぜ盛り込まれなかったのか。また、本来のこの条例の目的というのは、労働条件の改善を目的に作られたもの。賃金条項が盛り込まれないのであれば、どう労働条件の改善につながるのか、あわせて答弁いただきたい。
【千葉副知事】
@他県におきます市・区が制定している、公契約条例のなかに、賃金条項を定めている例があることは承知している。
この条項については、自治体の契約業務に従事する労働者の賃金下限額を規定するものであり、最低賃金法に定めます最低賃金額を超える下限額を設定することにより、労働者の処遇の改善を誘導しようとするというような政策的目的があるものと理解している。
A今般、県におきましては、本県の条例を立案するに当たりまして、広く様々な関係団体から御意見を伺い、賃金条項につきましては、様々な考え方やご意見があることを把握・承知したところです。
Bしたがいまして、今回の条例案におきましては、なかなかその点について集約が困難だということで、賃金条項については盛り込まなかった。
なお、既に条例を制定しております先際県につきまして、色々と調査も行いましたが、同様の理由により賃金条項は設けていないものだと承知している。
Cいずれ、来年度、知事の諮問機関として岩手県契約審議会を条例で設置することとしていて、その所掌事項の一つとして、「県契約に係る業務に従事する者の適正な労働条件の確保に関すること」という所掌を盛り込んでおり、当該審議会の中で、賃金条項についても御議論がされると考えている。
@この条例においては、県契約に係る業務に従事する者の適正な労働条件を確保することを基本理念として盛り込むとともに、受給者及び下請負者等に対して、賃金及び社会保険に関する法令遵守を求め、さらに、特定の県契約の受給者に、その遵守状況の報告を求め、具体的に確認をするということなどを規定として盛り込んだところです。
A県といたしましては、これらの規定を盛り込んだ条例を制定・施行することで、県の姿勢を明確に示すことによりまして、事業者が適正な労働条件の確保により一層取り組むことを期待している。
【高田委員】
法令遵守という話が出たが、これだけでは全然労働条件の確保に繋がらないと思う。今でも法令を遵守してやっているわけですがなかなか改善にならない。設計労務単価は、現場で働く労働者の賃金であって、本来は丸々賃金を払わなければならないわけですが、実態は6割から7割になっている。この改善が求められているが、今回の条例では改善が一考されない、担保できない中身になっていると思う。審議会での議論があるようですが、適正な賃金と労働条件、あるいは適正な委託、これがあってこそ質の高いサービスに繋がり、労働条件の改善に繋がり、そういうことが、好循環、あるいは地域経済の活性化に繋がるとものなので、そうなっていくように審議会での議論も期待したい。
2.被災者支援について
【高田委員】
被災者支援についてお伺いします。今被災者の現状というは、高齢化と貧困、そして健康の悪化ではないかと思います。東日本大震災から4年になりますが、どんな実態になっているのか、どう受け止めているのか、この点についてお伺いします。
【中村復興局長】
―被災者の健康状態、経済状況、高齢化について―
@岩手医科大学が沿岸4市町で実施した「東日本大震災津波被災者の健康状態等に関する調査研究」の平成25年度結果によると、健康状態が良くないと答えた被災者の割合は男性で14.2%、女性で14.7%となっており、平成23年度の14.3%、15.7%と比べ、ほぼ横ばいの状況となっている。
A同調査で、現在の暮らし向きへの問いに対して苦しいと答えた被災者の割合は男性で43.1%、女性で39.9%となっており、平成23年度の52.4%、49.9%に比べて減少している。
Bまた、被災市町村の高齢化率は、岩手県人口移動報告年報によると、平成26年10月1日現在で、34.0%となっており、被災市町村以外の28.5%と比べると高い割合となっている。
C被災市町村では、厳しい生活環境の長期化や災害公営住宅への転居等による生活環境の著しい変化により被災者の心身の健康状態の悪化が懸念されることから、引き続き市町村等と連携して健康支援を含めた生活支援の取組を推進していく。
【高田委員】
被災地に行って被災者と懇談する機会がありました。釜石では、こんな話がありました。「災害公営住宅に入居が決まったけれど、引越し費用あるいは、家財道具にお金がかかって夜も寝むれない」こういう話をされました。とりわけ高齢者世帯にとっては、一大事業です。そこで伺います、現在の引越し費用はどうなっているのか、また、家財道具購入などに対する支援策も、今の高齢者の実態を考えれば検討するべきだと思うが、この点について答弁願いたい。
【中村復興局長】
引越し費用の支援について、応急仮設住宅の集約をおこなう場合は、応急仮設住宅間の移転費用を市町村を通じて補助する経費を平成27年度当初予算案に計上しているところです。
また、市町村では、震災復興特別交付税を活用して独自に恒久住宅への引越し支援事業を創設しています。
また、備品購入の支援については、日本赤十字社から寄付していただいた冷蔵庫や洗濯機などの家電6点セットはお持ちいただけるほか、応急仮設住宅に入居されていた方が退去した後、当該応急仮設住宅の使用が見込まれないと市町村が判断した場合に、エアコンなどの備品については、譲渡できるよう昨年7月から制度化し譲渡をおこなっている。
【高田委員】
引越し費用については、それぞれ支援策がありますが、実際は領収書の添付を義務付けているということが、多くの自治体であります。だから、業者に頼まなければ、なかなかできないという状況です。しかし、友人とかボランティアとか親戚とかのときは、対応できない。陸前高田市は、領収書の添付を求めない、一律10万円を支給するということで、被災者から大変喜ばれている。引越し費用についても応急仮設住宅の移転に伴う引越し費用についても、被災者が喜ぶような方向で改善すべきだと思うが、この点についても答弁願う。
【中村復興局長】
自前で引越しをして、10万円支給するということは聞いているが、そういった形が、公費の使い方としてはどうなのかという声も聞いている。それについては、応急仮設住宅間の、県が新年度から実施する部分につきましては、どういって制度設計がいいのか充分市町村の意見も踏まえながら、具体的な制度設計をしていきたいと考えている。
【高田委員】
NHKで被災者1万人のアンケートが報じられていました。経済的に困っている被災者、68.5%、震災から4年がたちますが7割近くです。所得が200万以下の被災者が、41.5%。高齢化と所得が落ち込んで大変な状況になっている。被災者の引っ越し費用についても、家財道具の支援についても、今被災者がこういう状態にあるわけなので、なかには今まで、早く仮設住宅を抜け出して、新しい場所で足を伸ばして寝たいとそれが今では、仮設でいいやという状態になっている。昨日は、災害公営住宅の促進を求める声もありましたが、そういうことを考えても、被災者のみなさんに寄り添って、そういったところまで踏み込んでやる時期に来ているのではないかと思うがいかがですか。
【達増知事】
様々な力を結集して、一人ひとりを支えていくということだと思います。ですから、ボランティアあるいは、NPOの活動等で引越し代がいらないような形で、支援するというのもあると思うし、また全ての人々が支援を受けられるとは限らないので、引越し業者に頼んだ場合、その費用を公的に支援することもあり、様々被災者一人ひとり実態に合わせながら、負担を減らし希望を持って復興の主体として、前進していけるように県のほうでも考えていきたいと思う。
【高田委員】
被災者の声とか、被災自治体の声をよく聞いて、被災者が喜ぶ方法が一番良いわけだから、そういう対応をしていただきたいと思います。
心のケア・コミュニティの確立の問題については、生活支援員・相談員などについては、災害公営住宅とか、住宅再建世帯にも拡大したいと前向きの答弁をいただきました。実際はどのように充実されるのかということが一つ、それから、災害公営住宅の集会室の維持管理は、入居者任せではなく自治体の責任で行う。そしてそこにもきちんと人を配置する。こういうことでなければ、新しいコミュニティは確立しないと思います。これをしっかりやるべきだと思いますが、これについてはいかがでしょうか。
【中村復興局長】
@現在、応急仮設住宅においては、市町村において復興支援制度や緊急雇用創出事業など様々な財源を活用し、支援員を配置しているところ。応急仮設での生活の長期化により、高齢の被災者を中心とした見守り等がさらに重要となっていくことから、県では、市町村にも働きかけをして、必要な支援員等を配置していただくようにお願いしているところ。今後も、市町村、社会福祉協議会等と連携しながら、しっかりとした見守り体制が構築できるようにしていく。
A一般の公営住宅においては、集会室を含む団地の管理が適切に行われるよう、各団地において管理人を選定し、集会室の鍵の管理や集会室を含む共用部分で要した光熱水費の徴収などの管理業務を有償でお願いしている実態がある。また、公営住宅の集会室においては、光熱水費、備品や消耗品に要する費用は、利用者である入居者に負担していただいている状況がある。災害公営住宅の集会室については、特に新しいコミュニティの形成といった面で非常にしっかりと進めて行く必要があることから、復興交付金を活用して机や椅子などの備品については配置できないが、現在、国と協議しており、国の方から基本的にはOKをいただいている。これについては速やかに配置できるように事務手続きをすすめて行く。公営住宅の支援員の配置についても、先ほどお話しした制度等を積極的に活用し、しっかり見守りができるように引き続き進めていく。
【高田委員】
災害公営住宅への集会室維持管理は、自治体がしっかり責任もって管理し、人の配置をしないと、新しいコミュニティはつくれませんので、ぜひ実現していただきたいと思います。
3.一関市に計画されている仮設焼却炉について
【高田委員】
最後に、原発で汚染された農林業系廃棄物を処理する仮設焼却炉について、一関市で計画されていますが、この間、どんな支援を行ってきたのでしょうか。
【千葉副知事】
@一関市におきましては、大量の農林業系汚染廃棄物を抱えていることに加え、老朽化した一関清掃センターにおきます処理が困難な状況であることから、平成24年度から市の要請を受けて、国に対し仮設焼却炉の設置に向けた協議を重ねてきたところでございます。その結果、仮設焼却炉は国が整備することとなり、市の処理に対する財政支援についても制度化されたところでございます。
Aまた、市の要請に応じまして、住民説明会への職員派遣等、早期処理に向けて連携して取り組んできたところでございます。
【高田委員】
今一関では、仮設焼却炉と新しい焼却炉、そして最終処分場、この3つの処分場を引き続き一関市の狐禅寺地域に建設しようとしています。しかし、新しい焼却炉の建設にあたっては、同じ狐禅寺地域には建設しないと、当時の市長と地元自治体、地元住民が覚書をむすんでいる。にもかかわらず、これを守らないでこの地域に建設しようとするのは、非常に問題があると思います。地方自治の根本が問われている問題だと思うが適切な助言、指導をおこなうべきではないか。
【千葉副知事】
一般廃棄物処理施設の建設にあたりましての市と狐禅寺地区との覚書につきましては、県として申し述べる立場にございませんが、一関市では、廃棄物処理における環境保全技術の向上、放射線物質に汚染された廃棄物の早期処理など、覚書締結当時とは状況が大きく変化したことから、同地区に整備することとした、ということについては聞いているところでございます。
【高田委員】
覚書について県として申し述べる立場にないというのはそのとおりであるが、汚染廃棄物の処理には相当時間がかかる。丁寧な説明と行政は言っているが、一方で住民は覚書を尊重すべきだということで真っ向から反対し、膠着状態である。32年も経過している焼却炉についても早く建設しなければならない、汚染農林業系副産物は処理に困って農家からも早期の処理の改善を求められている状況にある。
こういう状況であることから、一関市の問題だけでなく、広域処理をするということから、県としても責任をもって解決にあたる必要があると考えるがいかがか。
【千葉副知事】
この問題につきましては、一関市から個別の御要請があるものについては、きちんと県として支援しておりますし、現在のところ、覚書の関係につきましては、まさに生活に密着した市町村の中での非常に大きな課題として議論されていることから、現時点で県は申し述べる立場にないと申し上げたところでございます。
いずれ市の要望要請があった場合には、県として必要な支援をしてまいりたいと考えている。
【高田委員】
どうすればこの問題が解決するのかということが求められている。こうした膠着している状況ではいつまでたっても解決できない。覚書は市長が変わっても守るべきものだと思う。覚書を尊重し、ゼロから議論するということを行ってこそ本当に解決することだと考える。そういう方向で、県もしっかり努力していただきたいと思うが、知事いかがか。
【達増知事】
覚書とは意志の合致を上に書いたものであるので、本質的に重要なのは集団的意思決定による意志の合致だと思います。もちろん覚書には時間が経っても変わらないという安定性という要素も必要でありますが、一方で、事情変更の法理というものもあり、事情が変更しているのであれば、当初の合意というものが、それ以外のことは認められるという法理も一般的にはございます。そういった解釈も含めて、地方自治として意志の合致が得られるように、県としても支援して参りたいと思っております。