2015年3月9日 予算特別委員会
政策地域部に対する質疑(大要)


・安倍政権の「地方創生」の2つの側面について

【斉藤委員】
 安倍政権が「地方創生」を打ち出して、その背景に「増田レポート」があり、これはかなり一体的に、悪く言えば謀略的に組まれたと言ってもいいと思うが、「地方創生」を考えるときに、現状分析が出発点だと思う。地方が衰退したのはどこに原因があったのか、どこに責任があったのか。私は長年の自民党政治にこそ地方衰退の最大の原因があると思うが、農林水産業の衰退、非正規雇用の拡大、平成の大合併、消費税の増税―。「地方創生」を考えるときに、地方の衰退と要因、責任について県はどう考えているか。

【政策監】
 昭和30年代以降、高度経済成長が起こり、本県をはじめ地方から大都市圏へ大量な人口移動が起きた。大都市圏で過密化が起こる、一方で地方で過疎化が起こると。これまで国において、これを是正するために、昭和37年の全国総合開発計画からさまざまな計画を実施し、国土の均衡ある発展等を目指してきたところではあるが、依然として東京一極集中が解決されていないということが問題かと思っている。我が国が安定して成長していくためには、地方が活性化し、大都市への人口流出を食い止めることが必要かと考えている。

【斉藤委員】
 東京一極集中というのは結果で、それを進めたのが歴代自民党政治の大企業の利益優先、いわば農林水産業が衰退すると。特に90年代から今日にかけては、労働者派遣法の改悪で非正規雇用が拡大すると。そして、地方が衰退すると、大企業が海外進出ということで、地方から大企業が撤退すると、これまた地方の衰退をもたらした。そして平成の大合併というのは、ある意味では強制的に進められて、合併された周辺地域というのは、自立した地域と比べても衰退は激しいのではないか。

【政策監】
 今回の人口減少対策の中心となるのが、すべての地域が活性化するというところがポイントかと思っている。そういう意味で、これまでさまざまな施策等が行われてきたが、今後においては、すべての地域を活性化する、これを一丸となって取り組んでいきたい。

【斉藤委員】
 安倍政権というのは矛盾に満ちていて、「地方創生」と言いながら、東京を世界一のビジネス都市にすると言っている。だから、東京一極集中はやると。一貫しない取り組みをしているのではないか。
 岩手県の「ふるさとを消滅させない―人口問題に関する報告」というのがまとめられて熟読をした。基本的な考え方を示していただきたい。

【政策監】
 今回の報告案では3つの基本目標を掲げている。人口減少対策を進めていく上で、すべての基本となる事項について、しっかりとやっていくというものと、社会減・自然減それぞれ喫緊の課題であるので、産業振興や定住・移住の促進等をしっかりやっていくという柱でもって進めていくという考えである。

【斉藤委員】
 報告案の22ページで、日本創生会議の提案について、「住民一人一人の暮らしに目を向けた施策が必要なそれぞれの地方において、人口減少対策を立案する基本的な考え方としては不十分」と、増田レポートの考え方、選択と集中についてこう触れている。これは正しいと思う。そして、県の考え方として、「人口は人数という数量で把握されるものだが、それを構成する一人一人がすべて異なる業種にあり、生業があることを忘れてはならない。それぞれの地方において、個々の地域、さまざまな人々が抱えている課題を丁寧にくみ上げ、各地域で豊かに暮らしていくために必要な施策をきめ細かく実施していくことが我々地方に課せられた使命」だと。これは評価したい。この考え方は、東日本大震災津波の復興の取り組みの中で貫いてきた考え方だと。この基本的な考え方というのは、安倍内閣の「地方創生」に対峙する、地方からの筋道だと思う。ただ、基本的な考え方はいいが、どう具体化するかということになると、今までの継続事業の寄せ集めである。政府は、補正で4200億円、当初1兆円の「地方創生」の予算を出した。これは今回どのように岩手の場合は具体化されたのか。

【政策監】
 平成27年度当初予算と26年度補正の分があるが、27年度当初予算においては、若い方々の創業のチャレンジを支援するもの、結婚支援センターの設置、子ども医療費の助成の対象拡大・現物給付化など、主な事業として185の事業・458億円を措置した。また26年度の補正においては、国の交付金等も利用させていただき、県外企業の設備投資の補助だとか、結婚支援センターや医療費助成拡大等のPR事業(18事業・17億円)で一体的に取り組むこととしている。

【斉藤委員】
 185事業・458億円というのは何度も議会で答弁されているが、ほとんどが継続事業ではないか。この中で新規事業はいくらあるのか。

【政策監】
 27年度の主な事業のうち、純然な新規事業が27事業・62億円となっている。

【斉藤委員】
 基本的な考え方は良いが、やはりまだ戦略・方針は煮つめられていないという感じを受けた。
 26ページで、安定した雇用の確保ということで中小企業の位置づけが書かれている。県内においては、企業の99.8%が中小企業であり、事業者の88.1%が中小企業で働いていると。ローカル経済の振興というのが打ち出されている。今回、中小企業振興条例が出されて、軌を一にするのだが、このローカル経済、循環型経済といってもいいが、本当にこの88%を占める中小企業労働者の安定した雇用をつくっていくということが決定的に大事ではないかと。そこに雇用の場があり、そこで地域の土台がつくられると思うが、中小企業、ローカル経済を振興させる具体策はどう示されているか。

【政策監】
 人口の社会減を食い止めるため、生活しやすい環境をつくるためということで、安定した雇用の確保が重要と考えている。そのため、ローカル経済の振興と合わせ、地場企業において活性化しなければならないということで、外貨から得たもの、これをエリア内で循環させる仕組みづくり、しかも労働・生産性を高めて個々の従業員の方々に反映させる、そういう仕組みづくりが大切ということで、企業支援だとかさまざまな施設補助などを事業にさせていただいている。

【斉藤委員】
 ローカル経済の土台となる中小企業、東日本大震災津波の復興でいま商工業の再生もそうだが、やはり中小企業のネットワークが大きな力を発揮している。やはり思い切って中小企業の振興策を、県をあげてやっていく必要があるし、雇用の問題でも、中小企業というのは、求人を出す時期が遅いし少ないと。大手で全然太刀打ちできない。大手と太刀打ちできるような雇用確保策も示していかないと、県内にいろんな可能性があっても組みつくされていないのではないか。ぜひそれを受け止めて、方針を充実させていただきたい。


・人口減少対策―若者や女性の生きにくさの解消について

【斉藤委員】
 知事は「やれることは何でもやる」と。その覚悟のもとで、総力をあげて取り組むと知事演述でも表明した。生きにくさの要因、県の具体策はどうなっているか。

【政策監】
 全国的には、昭和50年頃から低下傾向にある。こうした状況には、育児だとか子育てに支出する支出の上昇だとか、出産と育児の両立を可能とするようなワークライフバランス、働き方の問題、非正規就業の増加などの雇用情勢の悪化があるものと考えている。こういうことを「生きにくさ」と表現させていただいているが、これを丁寧に解消していくことということで、子どもの医療費の助成拡大、ワークライフバランスの周知・広報等を進めることにしている。

【斉藤委員】
 これだけ知事も述べ、報告書でも指摘されている「生きにくさ」、原因も示している。だとしたら、例えば非正規雇用が拡大している問題、どうやって正社員化するのか、しっかりした計画・目標・取り組みが必要ではないか。これは高田県議が総括質疑でも取り上げた問題である。
 もう1つは、「女性の活躍」を知事も県も強調しているが、女性が活躍しにくい状況を打開していく必要がある。子どもの医療費助成の拡充は大きな一歩だと思う。ただ一歩である。全国平均並みになったかどうか。あの取り組みでとどまったら、本当に女性の生きにくさ、若者の生きにくさを打開することにはならない。引き続き、子どもの医療費助成の拡充も計画をもってすすめる必要がある。
 野田村がいま脚光を浴びている。毎年出生数を増やしている。この要因を県はどう受け止めているか。

【政策監】
 野田村においては、昨年34名の方々が産まれ、23年から増加傾向にあるというのは聞いている。これまでも、ブロックごとの市町村との意見交換会の際にいろいろ聞いているところだが、野田村においては、2歳児までの保育料の無料化、高校生などの医療費無料化の拡大などを行っており、こういったさまざまな施策、これが総合的に効いているのではないかという報告を受けている。

【斉藤委員】
 被災地の中からそういう実例が生まれている。これは注目すべきことである。そういう努力が被災地で起きて、出生数を毎年増やしているということは、大変貴重なものではないか。その教訓を県としても受け止めて、大きな一歩で終わらせないで、二歩三歩と拡充させていくと。
 非正規雇用が拡大している中で、雇用の問題は若者にとって一番の経済的土台である。ここが安定しないと、ふるさとで働こうとはならない。その点もきちんと計画をもって進めるべきではないか。

【政策監】
 今回、報告案を出して予算化等を提案させていただいているが、今後5年間の計画、27年度のうちの地方版総合戦略ということで取りまとめることとしている。その中での位置づけ等については、今後検討を進めていきたい。

【斉藤委員】
 良いことは早く具体化してやっていただきたい。


・JR大船渡線の早期復旧について

【斉藤委員】
 山側ルート400億円の事業費の根拠が1年間もJRから示されない。本当に異常な事態で、大船渡市長・陸前高田市長にお会いしてきたが、「JRは本気で鉄路を復旧する気があるのか、ないのか。そのことを質したい。そうしなかったらまちづくりが進まない」と。いわば、JRが復旧することを前提に、そこを中心にして区画整理事業が始まっている。1年間も放置している。
 もう1つ驚いたのは、陸前高田市役所仮庁舎の前に立派なBRTの駅ができている。BRTだけは立派にしている。鉄路については1年間まったく音沙汰がない。時間稼ぎ、諦めさせるやり方ではないか。
 国もまったく無責任で、1年間放置していること自身が被災地に背を向けた姿だと思うが、どう打開する決意と方針か。

【交通課長】
 1年間復興調整会議が開かれていないということで、我々としても、国には何度もお話しているところである。「またその話か」と思われていると感じることもあるが、そこはしっかりお願いしている。復興調整会議にこだわっているのは、そもそも復興調整会議の目的が「鉄道と沿線地域の復旧・復興に向けた課題を抽出・調整する場」ということがある。それから、山側ルートというのも、復興調整会議の場で提案されたということで、そこはしっかりと土俵の上で議論を進めるべきだということで、これまでお願いしてきているところである。
 県としての考え方は、すべてとは言わないが、一定程度はご理解いただけているものとは考えているので、引き続き国やJRに働きかけを強めていきたい。

【斉藤委員】
 JR八戸線は、現行ルートで1年で復旧した。山田線も防潮堤をつくって基本的に現行ルートである。大船渡線だけは、防潮堤をつくっても山側ルートだと、まったく根拠がない。岩手県選出の国会議員も東北の比例も含めてこういうときに活躍しなければならない。丸4年経って、鉄路の復旧が明確化されない異常な事態、やはりJR東日本を孤立化させなければならない。そういう取り組みをぜひしていただきたい。


・被災市町村への応援職員の確保について

【斉藤委員】
 応援職員、市町村職員のメンタルヘルスの取り組みはどうなっているか。応援職員の事業も復興交付税、これも5年間しか示されていないし、メンタルヘルス対策については一部しか認められていない。

【市町村課総括課長】
 被災市町村においては、医療機関等の支援を受けながら、派遣職員を含め職員に対するストレスチェックや産業医による面談、カウンセリングなどを実施している。これに加え、派遣職員に対しては、定期的な帰省を促すなど、心身のリフレッシュに努めている。県においても、被災市町村に出向いて職員に対する面談を年3回、23年度から実施している。また、各地の派遣職員を対象に、メンタルヘルス研修を開催し、市町村の職員のメンタルヘルスケアに努めている。
 財源については、復興財源で認めてられている部分は、このメンタルヘルス研修と一部であるが、引き続き財源措置されるよう要望していきたい。

【斉藤委員】
 おそらく来年度がこれまでで一番多い派遣職員となると思う。そして、残念ながら自殺者が出たり、孤独死が出たり、そういう事態も起きているので、本当に万全の手立て・体制でこの問題は取り組んでいただきたい。


・ILCをめぐる状況について

【斉藤委員】
 私たちは、科学技術の発展という立場で、ILC誘致には反対しない立場だが、国内外の状況を見ると、決して単純な状況ではないのではないか。何よりも、国の財政が大変厳しく、アベノミクスが破たんしつつあると。こういう状況が一番大きいと思うが、昨年の11月14日に、国際リニアコライダーに関する有識者会議第2回が開催され、2つの作業部会における審議状況が報告されている。この報告の内容のポイント、今後の論点、どういう形で報告・議論されているか。

【ILC推進課長】
 第2回については公開で開催されており、その中で今後の課題の指摘事項について、2つの部会からそれぞれ出された。これについては、委員の方々一人一人の発言ということで、課題として、それぞれ7つと4つという形で伝えている。ですから、どれが主な課題ということではなく、それに基づきまた各部会で検討を進めていくという状況になっている。

【斉藤委員】
 2つの部会からきちんと報告されている。そして今後の論点ということが議論されている。
 雑駁に読んだ範囲で言うと、ILCとLHCの研究項目は基本的にダブっていると。LHCの成果を踏まえて、ILCにどういう意味があるのかというのが、研究されて報告されている。
 もう1つの作業部会でいけば、コストも出されていて、研究施設だけで8300億円と。ランニングコストで350億円、人件費がさらに100億円で500億円はかかると。おそらく今の物価上昇で1.2〜1.3倍になるかもしれない。
 本当にさまざまな大事な問題がここでは指摘されているのではないか。そして何よりも、これだけのプロジェクト、そのまま予算が増えるのならすべての科学者が賛成する。しかし、文科省の予算が基本的に同じだったら、科学者の全研究分野に関わる問題になるので、単純ではない側面があるのではないか。もう少し丁寧に今の出されている論点を示していただきたい。

【ILC推進課長】
 LHCの研究の成果に関わらず、ILCが必要だという意見もあり、一方でその成果を待ってという意見もある。あるいは、コストに関しての検討も進められている。そのようなさまざまな問題があり、今後各部会でさらに検討が進められていくと。今年の4月に中間とりまとめが出る見込みであるということで検討状況を報告させていただく。