2015年3月10日 予算特別委員会
保健福祉部に対する質疑(大要)
・被災者の命と健康を守る取り組みについて
【斉藤委員】
NHK・早大による被災者1万人アンケート結果が報道されている。「持病が悪化した」35.4%、「新たな病気にかかった」32.4%、「生きていることがつらい」43.5%という深刻な実態が、4年を経過する中で示された。岩手県内の実態、これに対応する来年度の取り組みはどうなっているか。
【健康国保課総括課長】
ご指摘のアンケート結果については把握していないが、岩手医大が沿岸4市町で実施した、被災者の健康状態等に関する調査・研究によると、「健康状態が良くない」と答えた人の割合が、25年度は、男性15.2%・女性14.7%、23年度の男性14.3%・女性15.7%と比べほぼ横ばいとなっている。特に、仮設住宅の居住者では、健康状態が良くないと答えた人の割合が17.7%と、それ以外の住民に比べ割合が高かった。
被災市町村では、依然として仮設住宅等における厳しい生活環境の長期化や、災害公営住宅への転居等による生活環境の変化により、被災者の心身の健康状態の悪化が懸念されることから、27年度も引き続き、仮設住宅集会所等において、定期的な巡回健康相談を実施するほか、市町村等と連携して健康づくりの普及啓発や活動支援などの健康支援を推進していくこととしている。
【斉藤委員】
少し古いデータで決算のときと同じデータだった。26年度の調査、特定検診もやったが、その中身は分からないか。
【健康国保課総括課長】
26年度の特定検診の結果については、現在とりまとめておらず手元にデータがない。
【斉藤委員】
生活支援相談員の取り組みがきわめて重要だと。26年度の実績でどういう取り組みをしているか。相談件数も多いが、生活支援相談員が解決した問題、他機関と連携した問題、連携先で一番多いところはどこか。
【地域福祉課総括課長】
25年度の生活支援相談員の活動状況だが、相談内容は、全体として9974件の相談に応じ、生活支援相談員のみで対応したものが5939件、他機関との連携が2825件となっている。他機関については複数の機関がカウントされているので、合計で一致しないところがある。
【斉藤委員】
生活支援相談員は、復興の第二期計画で3年間継続するという位置づけだった。ところが、今年度210名ほど予算措置したが、170名程度しか確保できなかった。1年雇用のために、せっかく貴重なスキルを持ちながらも、確保できなかった要因になっているのではないか。来年度の目標はどうなっているか。これだけの取り組みをしているので、やはり必要な人員を確保することが必要である。そして生活支援相談員の待遇改善だが、来年度は被災者健康生活支援総合交付金でやれるのではないか。交付金であれば、3年間継続して第二期計画ですることが必要ではないか。
他機関との連携で2825件ということだった。この中で一番多いのは、仮設の支援員である。これが730件。仮設の支援員は市町村事業で配置しているが、この仮設の支援員が果たしている役割がきわめて重要で、仮設の自治会長に聞くと、仮設入居者の状況を一番知っているのは支援員だと。生活支援相談員と、仮設・公営住宅の支援員が一体となって、被災者の絆・コミュニティをつくっていく必要があるのではないか。
【地域福祉課総括課長】
27年度の生活支援相談員は191名計画しており、これは基本的に各市町村社協等から、現地の状況を踏まえた要望を踏まえたものである。
生活支援相談員の27年度以降の財源だが、大きい枠での交付金の中の1つにある。
今後の連携だが、例えば26年度においても、当初の計画の人員確保が難しかった面もあるので、そういう面も含めて現地の市町村で配置している支援員等と連携し、十分な支援にあたっていきたい。
【斉藤委員】
その他にも問題提起したので、しっかり受け止めてやっていただきたい。交付金の活用も柔軟にできると思うので、待遇改善も含めてやっていただきたい。
震災関連の自殺、仮設・復興住宅での孤独死の実態と具体策はどうなっているか。
【鈴木参事】
震災関連自殺は、内閣府が23年6月以降行っている調査では、23年は17人、24年8人、25年4人、26年3人の計32人である。震災関連自殺を防ぐ具体的取り組みだが、岩手県こころのケアセンターを設置し、震災こころの相談室での医師による相談、訪問による戸別支援を行っているほか、心の健康教育、ゲートキーパーなど、自殺対策を担う人材養成に関係機関が連携して取り組んでいる。また、被災地において傾聴・相談支援などを行う民間団体への支援も含まれている。
いまだ仮設住宅での生活を余儀なくされている方がいる一方、災害公営住宅等への転居により、生活環境の変化があるので、傾聴ボランティア等の養成や活動支援、被災地への支援者との連携による訪問支援、サロン活動など孤立化を防ぐための取り組みなど、地域の人材育成・ネットワークづくりを重点的に行い、一人でも多くの方に支援が届く体制づくりを推進していく。
【地域福祉課総括課長】
沿岸被災地の仮設住宅で一人暮らしをされ、自宅内で亡くなられた後に発見された方は、県警の調査では、発生から今年1月末までで27人となっている。災害公営住宅で亡くなられた後に発見された方は、県の担当課・市町村に確認したところ、本年1月末までで4人となっている。
被災者の孤独死を防ぐための取り組みとしては、民生委員や生活支援相談員等が被災者宅を個別訪問し、安否確認や相談、見守りを行うとともに、住民同士の交流の機会の提供に取り組んでいる。特に、今年度は生活支援相談員の資質向上に向け、専門知識が必要なケースをテーマとした研修、仮設住宅からの転居による生活の変化に対応するための災害公営住宅への移行研修を開催しているほか、相談員同士による情報交換会を開催している。今後においても、市町村や関係機関等と連携し、仮設住宅から災害公営住宅まで、被災者一人一人に寄り添った切れ目のない見守り・相談支援を継続していく。
【斉藤委員】
今年は大規模に災害公営住宅への移動や高台移転・区画整理などでの自立再建がはじまり、被災者の中に格差と孤立化が生まれるので、今年こそ被災者のいのちと健康を守る取り組みは正念場だと。そういう立場でやっていただきたい。
・改正医療法に基づく病床機能について
【斉藤委員】
改正医療法に基づく病床機能の分化と連携はどうなっているか。国の地域医療構想策定ガイドラインの案が2月に示されたが、二次医療圏の設定や地域医療構想の策定をどのように進めるのか。
【医療政策室長】
医療介護総合確保推進法により医療法の一部が改正され、県では来年度以降、高齢化が一段と進む2025年に向け、将来の病床機能ごとの医療需要を踏まえた、目指すべき医療提供体制をまとめた地域医療構想を策定し、病床機能の文化と連携を進めていくこととしている。この地域医療構想の策定にあたっては、現在の9つの二次保健医療圏を基本として、公的医療機関が地域医療に大きな役割を担っている本県の特殊性や、広大な県土を有し、県内各地域において高齢化や医療・介護資源の状況が異なることなどを踏まえ、地域の医療関係団体などの意見も聞きながら、地域医療構想の策定に取り組んでいく。
【斉藤委員】
9つの二次医療圏を基本にということで、県立病院の経営計画の中で、現体制で診療体制を確立するということになっているので、そういう基本的な考え方でぜひ進めていただきたい。
・介護保険制度改悪への対応について
【斉藤委員】
介護報酬の引き下げによる県内事業所の具体的な影響はどう推計されているか。盛岡市では、介護職員を確保できず、廃止が1事業所、休止が6事業所という報告があった。県の事業による介護職員確保の実績、職員不足による事業所の廃止・休止の状況はどうなっているか。
【斉藤参事】
県内の介護事業所への影響は現時点では把握していない。全国老人福祉施設協議会では、1施設あたり全国平均で1500万円程度の減収となると試算している。
今年度の県の事業による介護職員の採用者数は、27年1月時点で293人となっている。
26年度現時点で、廃止・休止の届け出において、職員の確保が困難などを理由としたものは、盛岡市所管分を含め、廃止が7事業所、休止22事業所と把握している。
【斉藤委員】
介護報酬の引き下げで、例えば、盛岡の介護事業所、居宅介護サービスが中心だが、1700万円の減収だと。陸前高田市の特養など多面的にやっている社副法人は、2000万円の減収だと。だから介護職員を増やすどころではない。この影響を緊急に把握してやらないと、第6期計画どころではないと思う。廃止が7事業所、休止22事業所という深刻な事態も出ているので、県としてしっかり把握して、必要な手立てがあれば国にもしっかりものを言うとすべきではないか。
第6期介護保険事業計画による保険料はどうなっているか。6000円を超える市町村はどれだけになっているか。5000円を超える段階でも耐えきれないと言われた。6000円を超えたら、本当に生活を圧迫する、保険あって介護なし。介護を切り捨てるのではないか。
【斉藤参事】
第6期介護保険事業計画における保険料だが、現時点で県が把握しているデータでは、県平均が5548円と見込まれている。第5期と比較して、標準月額で約700円の上昇となる。また各保険者の介護保険料において、6000円を超える保険者は5保険者と見込まれている。
【斉藤委員】
保険料が引きあがる、介護サービスが良くなるかというと、要支援は切り捨てられる。特養は3以上に限定される。補足給付も減らすと。何も良いことがない。値上げで介護サービスは削減と。制度の欠陥がはっきり出ているのではないか。国の負担をしっかり位置付けないと、高齢者が増えれば負担が増える仕組みを根本的に改めるべきではないか。
第5期計画での特養ホームの整備計画はいくらで、実績はどうだったのか。待機者の状況、第6期計画はどれだけ必要になるか。
【保健福祉部長】
県としては、国に対して、介護報酬改定にともなう保険料上昇を緩和する厚生制度の創設など、被保険者の負担が過大にならない支援策を講じることについて引き続き要望していきたい。
【斉藤参事】
第5期計画期間における特養ホームの計画数は、広域型および地域密着型の合計で8291床となっており、整備見込み数は合計で7987床となっている。
待機者の状況だが、特養ホームに入所を申し込まれている方は、26年3月末時点で6642人、うち早期に入所が必要と判断されている方は1321人となっている。特養ホームにかかる市町村の具体的な第6期整備計画は、現時点では策定されていないところだが、サービス見込み料と第5期実績の見込みとの差は、991床となっているので、その程度の整備が必要になると推計されている。
【斉藤委員】
計算が合わないのではないか。早期入所が1321人必要で、991床整備では全然足らない。3年前も数百の規模で整備したが、待機者が増えたのである。待機者が増え続ける計画になっているのではないか。
いま建設費が高騰して、計画を立てても、1.4〜1.5倍の建設費になったらやっていけないという悲鳴が上がっている。
・岩手医大への県補助の実績、来年度予算の状況について
【斉藤委員】
岩手医大に対する県補助、震災分を含めてどうなっているか。
【医療政策室長】
27年度当初予算では、総合周産期母子医療センターや高度救命救急センターの運営費助成など、地域医療の確保を図るための、いわゆる通常分として約10億円、震災対応分が約7億6000万円、計17億6000万円となっている。
26年度当初予算と比較し、通常分は前年度並みだが、震災対応分については、災害時においても電力確保を図り、災害拠点病院として継続的な医療体制を維持するためのエネルギー施設整備に対して助成することとしており、計6億8000万円の増となっている。
【斉藤委員】
大変な県の補助が医大にいっていると思うが、岩手医大が岩手の医療にかけがえのない役割を果たしていると、そのことを評価するものだが、この補助にふさわしい取り組みを岩手医大はやっているのか。医大病院の移転計画は、建設費が1.5倍ぐらいに高騰している中で、変更はないのか。事業費はどう見積もられているか。
若林教授の覚せい剤使用疑惑、週刊誌でも大きく報道され、調査委員会がつくられた。調査委員会の結果は全然公表されていないが、どうなったのか。
【医療政策室長】
現在は、移転用地の造成工事等が行われているとともに、附属病院の設計作業が進められており、28年度から建設工事を開始し、31年度の開院予定と聞いている。事業費として、当初の計画では、医学部・歯学部の基礎部門および附属病院の移転事業にかかる費用として560億円を見込んでいるものと聞いていたが、移転にかかる具体的な事業費については、現在行っている基本設計等の作業の中でさらに精査している。
【健康国保課総括課長】
覚せい剤使用疑惑については、平成26年7月24日発売の週刊文春に記事が掲載されたことについては承知している。調査については、警察の聴取もあり、お話する立場にはないのでご了承願いたい。
【斉藤委員】
これだけ世間を騒がせた、覚せい剤問題は重大な犯罪行為である。県警で聞くが、大学が調査委員会をつくり、半年以上音沙汰がない。聞いたら、12月で退職したと。こんな疑惑にフタをするようなやり方でいいのか。
学長が、政治家の妻から平成22年に、12000平米の農地を購入したと。普通は農業をやる人しか買えない。それがわずか6年足らずの農地の転売だった。こんな疑惑を持たれることでいいのか。17億円もの補助を岩手医大にやるわけだから、県民から疑惑を持たれないようにきちんと襟を正すべきだと思うがいかがか。
【保健福祉部長】
覚せい剤使用疑惑、用地売買の県については、我々では承知していない。
岩手医大に対する補助だが、岩手医大については、本県唯一の医師・歯科医師・薬剤師の育成機関である。深刻な医師不足等の状況を踏まえ、医療人材育成支援の視点から助成しているとともに、附属病院は、高度医療、救命救急医療などさまざまな政策的な医療の中心になっている医療機関であることから、政策医療を確保する観点から助成するものである。