2015年3月13日 予算特別委員会
復興局に対する質疑(大要)
・復興公営住宅におけるコミュニティ・絆の確立について
【斉藤委員】
復興公営住宅はこの1年間で2321戸整備される。土地区画整理事業や防災集団移転事業、漁業集落を含めて2316区画この1年間で整備される。復興公営住宅と合わせると4400を超える自立再建が進められる。大規模な移動が始まる。
復興公営住宅で絶対孤独死を出してはならないという立場で、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえてあらゆる対策に取り組むべきではないか。
【復興局長】
災害公営住宅に入ると、世帯間の独立性がより強まるということで、お互いのつながりが仮設にいたとき以上に少なくなるという話はうかがっている。居住性は仮設に比べて上がるわけだが、その分つながりが弱くなるというところは、行政としてもしっかりフォローしていく必要があると考えており、そこは行政だけがフォローするということではなく、やはり入っている方々がお互いに自主的につながろうとする取り組みも一方で引き出していかないと、非常に難しい問題だろうと考えている。支援員は市町村の判断で公営住宅に常駐させるということも制度上可能なので、十分市町村と話し合いながら、しっかりしたフォローを引き続きやっていきたい。
【斉藤委員】
津波で助かった命をふたたび犠牲にしてはならないと。ましてや、せっかく公営住宅に入って、そこで孤独死ということは出してはならない。そういう立場で臨んでいただきたい。
生活支援員について、いま仮設・みなし仮設を訪問するだけで手いっぱいである。さらに今復興公営住宅も守備範囲になり、まったく170人程度では対応しきれない。これは生活相談支援員がそう言っている。だから一定規模の復興公営住宅、下和野公営住宅に行ってきたが、集会所が5つもある。ストーブも机もイスもなく集まりようがない。仮設で3年かかって絆・コミュニティがつくられた。特に、大船渡や大槌では、すべての団地に2〜3人の支援員を配置した。被災者の状況を一番知っているのは支援員だと自治会長さんは言っている。この経験を復興公営住宅にも生かすべきである。支援員の事務室まで整備していて、そこに人を配置しないというのは、物をつくって魂入れずということになるのではないか。机やイスは、復興交付金の対象になると国は言っているので、できることはすぐやって、復興公営住宅での絆・コミュニティの確立に取り組んでいただきたい。
入居者の話も聞いてきたが、仮設以上に部屋から出ることがなくなったと。隣に住んでいる人が分からない。自治会がつくられたところもある。しかし、被災者同士で、あまり結び付きのなかった人たちでつくられた自治会に過大な期待はできないと思う。その自治会を支援する体制が必要だと思う。条件があれば、その住宅の中の入居者から支援員を配置してもいい。やはり常時いるからそこに人が集まる。支援員の配置については、復興支援員の制度がある。これは1年〜5年以内ということで、単年度でなく配置できるので、一定は安定した配置になると思う。そういう形で、しっかり支援員、机・イスの配置、仮設には全部カラオケセットもあるので、こういう物も民間の支援などもいただきながら、しっかりやるべきだと思うがいかがか。
【佐野参事】
ご指摘の通り、復興支援員制度がある。これを活用して、大槌町・大船渡市では、かなりの数を配置して巡回等を行い、あるいは仮設団地に常駐しているという状況なので、そういった部分の活用を促すよう市町村に働きかけていく。
集会室における備品については、復興交付金の活用について国と協議しており、具体的な物の査定の段階まできている。民間からの支援による備品の配置も考えられるので、必要とするところがあれば、マッチングを支援していく。
【斉藤委員】
復興公営住宅は、建物は立派だが、仮設団地以上に絆・コミュニティの確立は困難なので、高層になると、階の中でも交流がない、階が違えばまったく分からないという状況なので、一人一人の状況を把握するような支援員の配置が必要である。
集会所の管理・運営費の問題がある。お金がかかるから使っていないというのがある。実は、阪神・淡路大震災で同じような共用スペースや炊事場がつくられた。維持管理を誰がするのかということで、結局は使われなかったということがあるので、仮設のときには共益費の支援をしている。一定期間やはり支援が必要ではないか。
【佐野参事】
供用部分の維持管理費は、従前からの公営住宅のルールと同様のルールで、入居された方々が全体で負担していただくという形にならざるを得ない部分がある。
共益費については、仮設住宅については県の単独事業でやっているが、これについても他の公営住宅と横並びの形で、入居されている方々に負担を求めざるをえない状況である。
住宅の管理の部分については、県土整備部の所管であるので、そちらとも相談させていただきたい。
【斉藤委員】
今年大規模に復興公営住宅が整備されるので、そういう実態を把握して、県土整備部とも連携しながらやっていただきたい。一番大事なのは、絶対孤独死を出さないということで、必要な手立てを1つ1つとっていく、その姿勢を明確にして取り組んでいただきたい。
・仮設住宅団地のコミュニティと集約化について
【斉藤委員】
2月末時点で、仮設住宅で生活している方々は10115戸・21930人、ピーク時の69%がいまだ応急仮設住宅で生活している。しかし、この1年で大規模な移動が起こるのも事実である。取り残される方々が、一番悩み、苦しみが拡大する。やはり残された方々に対しては、今まで以上の支援、フォローの体制が必要である。
学校の校庭等の仮設については、できるだけ早く撤去するのも切実な課題だが、入居者の状況を踏まえて、仮設から出るときには公営住宅に入れる、自立再建ができるというタイミングが一番大事ではないか。そこを重視して、慎重に新たな負担をかけることがないような手立てが必要ではないか。
【佐野参事】
応急仮設住宅での生活の長期化により、高齢の方々を中心として、見守りをさらにということはその通りと認識している。引き続き、生活支援相談員や仮設団地支援による見守りやお茶っこ会等を開催して、コミュニティづくりの支援を行っていく。県としては、今後、市町村社協等関係機関と連携しながら、応急仮設住宅に暮らす住民の支援をしていく。
一方、応急仮設住宅の集約化については、県としては、今後応急仮設住宅の空き室の増加が見込まれることから、団地内のコミュニティの維持や、安全・安心の確保のため、市町村において集約化を計画的に行うことが必要と考えている。現在、集約化計画については、釜石市と大船渡市が策定・公表しているところだが、今後、各市町村で集約化計画を策定するにあたり、県としては、入居されている方々に、応急仮設住宅集約について、市町村から丁寧に説明し、理解を得ながら計画的に行っていくことが必要だと考えている。
【斉藤委員】
来年度予算に、仮設から仮設への移転については10万円を限度に補助すると。これは積極的だと思う。同時に、市町村も独自に仮設から公営住宅、自立再建への移転費用、引っ越し費用を補助する対策がとられているが、5〜25万円と幅がある。もう1つは定額で、例えば、陸前高田市の場合は定額10万円でやっている。他のところは、領収書添付だったり、運送業者じゃなければいけないというような、いろんな引越しのパターンがあると思うので、岩手県の支援も定額10万円にして、使いやすいものにすべきではないか。
【佐野参事】
27年度当初予算案に計上している、応急仮設住宅移転費用負担金については、入居者の方々にご負担をおかけしないよう、応急仮設住宅集約を行う場合の応急仮設住宅間の移転費用の財源として、引っ越しされる方ご本人に補助するものではなく、市町村にたいし補助するものである。使いやすいようにということだが、税金が財源になっているので、やはりさまざまな制約がおのずとあろうかと思う。いずれこの運用については、市町村とよく話し合っていきたい。
【斉藤委員】
岩手日報の3月9日付の報道だが、災害公営住宅に今入っている人たちは、高齢者が41.9%、一人暮らしが23.4%と。こういう方々が今引っ越ししている。わずかなお金で、領収書が必要だと、あまり効果的ではない。定額で補助すれば、それで安心して引っ越し費用をまかなえる。引っ越しというのは、新しい家財道具も買ったり新たに多額のお金が必要になる。家財道具に対する支援も必要ではないかと思うが、柔軟な対応をぜひ考えていきたい。市町村でそのようにやっているところもあるので。
・防災集団移転事業、区画整理事業について
【斉藤委員】
計画戸数・区画の推移について、1年間でどのように変化しているか。
【まちづくり再生課総括課長】
社会資本の復旧復興ロードマップにおいて、まちづくり面整備事業としての防集事業の推移は、1年前の25年12月末時点2633区画から、26年12月末時点では2372区画と261区画の減少となっている。
区画整理事業では、5451区画から5454区画と3区画増加している。
【斉藤委員】
防集事業は1年で261区画減った。区画整理事業は全体では3区画プラスだが、山田町が322区画から661区画と倍以上に増えた。これはなぜか。
【まちづくり再生課総括課長】
山田町において、区画整理事業の区画数の見直しにあたっては、仮換地の設計が進み、計画区画数を精査した結果と聞いている。
【斉藤委員】
山田町が1年で倍以上に増えたのは少々ずさんな感じはするが、それを除くと区画整理事業も350区画近く減少している。やはり自立再建を諦めざるをえない状況になっているのではないか。
・住宅再建へのさらなる支援について
【斉藤委員】
防集・区画整理の戸数が減っている中で、住宅再建へのさらなる支援が求められている。私の調査では、震災直後に家を建てた人は坪50万円だった。いま坪70万円以上である。20万円以上引きあがっているのが実態ではないか。実態を把握しているか。
【佐野参事】
被災3県の住宅復興に関する実態把握調査というのを岩手地域型復興住宅推進協議会で実施している。それによると、岩手県の場合、震災前の木造住宅新築工事単価が平均で坪あたり48.5万円、26年7月の調査では、54.9万円ということで、13.2%の上昇というような結果を公表されている。
【斉藤委員】
地域復興型住宅は、残念ながら被災地では利用が少ない。8割方が大手ハウスメーカーである。それでも、坪当たり7万円以上上がっている。坪100万円という話も出ている。20万円坪単価が上がったということになれば、30坪の家を建てるのに600万円の新たな負担増になっている。だから諦めざるを得ない。これだけ資材不足や人件費の不足、建設費の高騰を招いたのは国の責任、アベノミクスではないか。本来なら、被災者生活再建支援金を500万円に引き上げるのは本当に国の責任だと思う。しかし、今年・来年と自立再建がピークを迎えるときに、国がやらないからといって、県もできないということでは、自立再建が進まないのではないか。
【復興局長】
被災地でかなり住宅建設費が高騰している話を聞いている。そういったこともあり、お話あったように、国に対しても再三にわたり、被災者生活再建支援金の加算支援金の増額については強く要望してきたところである。委員からは、県でもさらなる独自支援をということだが、我々としても重々、やれることであればやりたい気持ちはあるが、一方でなかなか厳しい財政状況のもとで、いろんな取り組みをしていかなければならないという判断、現時点でも県では市町村と共同で100万円の補助をやっており、市町村では別途独自に100〜300万円程度の支援をしている。引き続き国の方にはしっかりと要望し、早期に対応していただくよう求めていきたい。
【斉藤委員】
県と市町村で100万円の補助は被災3県では岩手県だけなので評価するものだが、2月末で2月末で4575件対象になった。支援額の総額はいくらになるか。県の負担額はいくらになるのか。
【佐野参事】
復興実施計画における住宅再建支援事業補助の目標数値は、全体計画で9518戸となっている。複数世帯・単数世帯あるので、単純に200万円の倍数とはならないが、全体として県事業として負担を見込んでいる額は59億1200万円ほどである。
・復興基金の活用状況、復興財源の確保について
【斉藤委員】
復興基金300億円、県は積極的に活用していると思うが、26年度末でどこまで活用し、今の事業だけでどこまでもつのか。新たな施策の余地はまったくないのか。見通しはどうなっているか。
【復興推進課総括課長】
これまで約725億円を積み立てており、うち425億円を市町村に交付、残り300億円が県の活用分となっている。
具体的には、既存の制度で手の届かなかった部分として、住宅再建費用の一部助成等に約92億円、中小企業被災資産の復旧等に約11億円、三陸鉄道の駅舎整備等に約20億円、国保・後期高齢者医療制度における一部負担免除に要する経費などに充てている。
今後の見通しについては、今年度末の残高を約151億円と見込んでおり、現在想定している事業への充当により、30年度中にも基金残高がなくなる見込みであることに加え、今後の復興のステージの変化による新たなニーズ等に対応できるよう、追加措置について引き続き国に対して要望していきたい。
【斉藤委員】
300億円の復興基金、岩手県は積極的に事業化してきたと思う。答弁にもあったように、今の事業だけでも30年度には枯渇するということなので、復興財源を新たに確保することが大変大事だと。
復興大臣が、「5年区切りで被災自治体に地元負担」と、本当に実態を無視している。これは絶対に突破しないと、復興が止まってしまう。陸前高田市は来年度の予算が1200億円である。通常の予算は120億円である。仮に1割負担になってしまったら通常の予算がなくなってしまう。県も来年度4400億円の復興予算である。そういう意味では、絶対に復興財源のは至上命題だし、取り崩し型の復興基金の追加措置、そして市町村が強く求めている交付税措置について、新しい人口で交付税算定されたらそれだけで減らされてしまう。この特例措置を必ず実現しなくてはならない。こうしたことについての決意と取り組みについて示していただきたい。
【復興局長】
28年度以降の復興財源について、我々も最重要課題の1つと考えている。新年度早々になり、被災各県と連携し、国にもまたしっかりと要望していきたい。
普通交付税の算定等の話もあったが、先般沿岸市町村の復興期成同盟会からもそういった要望が国に出されている。国では、過去の例を参考にしながら検討を進めるといったような話をされたと聞いているので、そういった面でもしっかりと被災地に目を向けた対応をとっていただくよう要望していきたい。