2015年3月16日 予算特別委員会
教育委員会に対する質疑(大要)


・国連子どもの権利委員会の勧告について

【斉藤委員】
 一般質問でもこの問題を取り上げ、学力テストが実施され、いま学校の現場はテストづけになっていると指摘した。教育委員長は、「テスト対策を主眼とした取組は厳に慎むよう指導している」という立派な答弁だった。しかし学校現場は、そうなっていないのではないか。実態認識をまずお聞きしたい。

【教育委員長】
 国が行う学力調査、県が行う学力調査の実施にあたっては、年度当初の校長会議・研修会等において、学力調査はあくまで、明らかになった課題をもとに指導改善に役立てるのだと。そして児童・生徒の学力向上につなげるために実施するものということを徹底するよう指導してきた。また、昨年12月には、県の通知により、直前のテスト対策を行わないよう留意事項について、改めて各市町村教委を通じ各学校に指導したところである。テスト対策をやっているのかということは、調べてはいないが、もし一部の学校にテスト対策を主眼とした取り組みに偏重している実態があれば是正するよう今後とも指導していく。

【斉藤委員】
 全国学力テストが4月下旬に行われる。ある学校では、2月・11月の学力向上月間、8月・10月はプリント学習、朝学習もやっている。高校の朝学習にも驚いたが、いま小学校の朝学習、これは読書だけではなくて、そういうこともやっている。様変わりしたと思っている。残念ながら、教育委員長の適切な指導が行き渡っていないのではないか。
 今お話された12月の各教育長宛の通知だが、ここでは「調査により測定できるのは学力の特定の一部分であること」、「平均正答率などについては一覧での公表は行わない」と言いながら、「過去の諸調査問題の活用について、日常の指導の一環として、授業および家庭学習等に計画的に取り入れて指導することは推奨する一方、いわゆるテスト対策として調査実施の直前に指導することは調査本来の趣旨を損ねることから厳に慎むこと」と。矛盾している。日常的に学力テスト対策をやったらいいと、それは推奨する、直前にやってはいけないと。こんな中途半端な通知はないと思う。2月・11月の学力向上月間、8月・10月のプリント学習などは推奨されるということになってしまうのではないか。もっと明確に、通常の授業がある。それが学力テストのために歪められているのが実態なので、この趣旨がおかしいと思うがいかがか。

【教育委員長】
 例えば朝学習は、今に始まったものではなく、何十年も前から学校では基礎基本を定着させようと。短時間でも集中してやらせたいという先生方の願い、子どもたちも力をつけたいという願いで、そういう短い時間を使って1時間目の学習にスムーズに入れるようになど、さまざまなねらいをもってやっており、この通知についても熟読しており、必ずしもテスト前にやれと言っているわけでもなく、私は矛盾していないと思う。もし学校が必要であれば、過去問題を遅れている分野について集中的にやるという形で、各学校の実態により取り上げるのは自由ではないかと思っている。これまでも、何もかにも禁じるとあまりにも県教委の言う通りになってしまうと思っているので、学習向上月間でも生徒会活動の一環としてやっている学校もあり、いろんな形で生徒の学習意欲につなげる、学力向上につなげるためにやっているものととらえている。

【斉藤委員】
 朝学習を否定したのではなく、朝学習にまでプリント学習が導入されていると。結局4月の学力テストのために、通常の授業が歪められている。子どもたちが苦しんでいると指摘した。
 国連子どもの権利委員会の3度にわたる勧告の内容だが、「過度の競争に関する苦情が増加し続けていることに懸念をもって留意する。委員会はまた高度に競争的な学校環境が就学年齢にある児童の間で、いじめ、精神障害、不登校、中途退学、自殺を助長している可能性があることを懸念する。極端に競争的な環境による悪影響を回避することを目的として、学校および教育制度を見直すことを勧告する」と。3回とも同じ趣旨、教育についてはきわめて厳しい勧告がなされた。
 岩手県の25年度の問題行動調査で、いじめの認知件数は837件、不登校は小中で863人、高校で373人、高校中退は378人。この実態に、国連子どもの権利委員会が指摘した厳しい状況が示されているのではないか。

【教育委員長】
 子どもの権利条約については、委員から再三再四ご指摘を受けたり勉強させていただいたりしている。この勧告については、国にされたものだが、子どもの生きる権利や育つ権利、守られる権利、参加する権利は子どもだけではなく、我々大人、家庭、教育現場、社会全体で実現・確保されなければならないと思っている。ご指摘の問題も、国の制度としてあるかもしれないが、岩手県においても細かく分析すればあるかもしれないが、教育委員会として、例えばテストをやる、いじめ対策をやる場合においても、子どもの権利条約に抵触するかしないか、それにかけないまでも、それを念頭に置きながら施策を実行しているつもりである。例えば今議会に提案させていただいている「岩手の子どもを健やかに育む条例案」にも、子どもの権利条約を守るようなこと、そして県教委も地方教育行政の規定に基づき検討した結果、異存がないと回答しており、いじめや不登校、体罰の問題など協議する際に、十分に権利条約を念頭に置きながらしているつもりである。さらに、県教委として、人権啓発リーフ「わたしも大切、みんなも大切」というものを作り、子どもの権利を守るようなことを学校現場に啓発しようとしている。遅まきながら、委員の指摘を真摯に受け止めてやっているつもりである。

【斉藤委員】
 私が子どもの権利委員会の勧告を紹介し、県内でも全国的には相対的に少ないかもしれないが、いじめの認知件数は837件、不登校は小中で863人、高校で373人、高校中退は378人というのは、子どもの権利委員会の勧告が指摘した深刻な状況が表れているのではないかと指摘した。
 この勧告、子どもの権利条約というのは、すべての機関で、そして子どもたちに徹底すべきだというのが条約上の義務である。勧告については、地方自治体の関係者に対して伝達し、勧告が完全に実施されることを確保するため、あらゆる適切な手段を講じることを勧告すると。この勧告の内容は、子どもにまで徹底すべきとなっている。県教委では、子どもの権利条約、勧告をきちんと吟味しているのか。そして、その子どもを含めて徹底する手立てをとっているのか。奈良県では、小学校の低学年・高学年、中高生向けに、子どもの権利条約の内容を徹底する文書を出している。徹底状況も含めてお聞きしたい。

【教育委員長】
 県として、リーフを作り各学校に配布するということで、ぜひ見ていただきたい。子どもたちにも徹底するという内容が明確に書いている。またこのパンフには、北上の和賀西小学校でも実践しているというのもあり、さらに、県教委として昨年3月に、岩手県人権教育基本方針というのをつくり、各家庭に子どもの人権を守るための考え方・趣旨等について、勧告の内容についても配布している。それから、学校教育指導指針、先生方を指導するための指針を各小中学校に配布するが、その中にも、人権教育という項目を新たに設けている。そういう取り組みを協議しながら作成し配布している。