2015年3月17日 予算特別委員会
農林水産部(農業部門)に対する質疑(大要)


・大震災津波からの農地等の復旧状況について

【斉藤委員】
 牧草の除染と、まだ利用できない牧草地の状況、今後の対策はどうなっているか。
 東京電力福島原発事故による放射能汚染、賠償請求額と支払額、率はどうなっているか。

【畜産課総括課長】
 牧草地の除染については、これまで耕起不能箇所などを除く対象面積12400ヘクタールについて、すべての耕起作業を完了した。うち、これまで汚染牧草の検査を実施した面積としては、約8900ヘクタールあるが、国の暫定許容値および酪農の基準値以下となった圃場は、約8600ヘクタール・97%となっている。この圃場については、利用自粛を解除している。また基準値を超過した約300ヘクタールの圃場については、これまでに約250ヘクタールの再除染を終えている。残りについては、27年度に再除染を行うこととしている。検査未実施の約3500ヘクタールの圃場については、27年度に検査を実施し、基準値以下であることが確認された圃場について、順次利用自粛を解除したいと考えている。
【農林水産企画室企画課長】
 東電に対する賠償請求、支払い等の状況だが、農林水産関係では、農・林・水で4つほど県協議会があり、それぞれで東電にたいし賠償請求を行っている。全体総額は、1月末現在で386億円の賠償請求を行っており、東電からの支払額については、351億円・91%となっている。

【斉藤委員】
 まだまだ4年経っても、放射能汚染は解消されないと。原発事故の影響は岩手にとっても深刻だったと思う。


・米価暴落の影響と対策について

【斉藤委員】
 26年産米の相対取引価格の状況と、農家の減収、例えば10ヘクタール規模の大規模農家、30ヘクタール規模の集落営農について。そして農家全体の減収額はどうなるか。

【農産園芸課総括課長】
 26年産米の相対取引価格について、国が公表している最新データ、27年1月の価格でみると、ひとめぼれが60キロあたり11616円、あきたこまちが10974円、いわてっこが9590円となっている。
 農家の減収について、仮に、ひとめぼれの相対取引価格を用いて試算すると、25年産と比較した場合、作付面積が15ヘクタール規模では約320万円の減収、30ヘクタール規模では640万円の減収と試算される。県内農家全体の減収額は、25年産と比較し、全体で約137億円の減収と試算している。

【斉藤委員】
 137億円の減収ということで、今の農家の一番の課題は、米価暴落対策だと思う。
 この間、農家の営農懇談会が開かれているが、ここで出されている農家の不安、声、来年度作付への影響はどのように把握しているか。

【農産園芸課総括課長】
 現地においては、26年産の米価の下落や、今後の米価の見通し等への不安、経営所得安定対策等の制度の継続性、こういった不安などから作付に悩んでいる農家があると承知している。
 一方で、国からの助成単価の高い飼料用米だとか、麦・大豆等への転換を考えたいという農家、あるいは意欲的に試食用米を拡大したいという農家もあることから、現在市町村や農協においては、地域内での互助制度の実施など、農業者間調整により、生産数量目標の達成に努めていると聞いている。

【斉藤委員】
 安倍内閣が農業政策を出しているが、規制改革のとっぱじめに農協解体をやるのだが、いま一番農家が困っている米価暴落対策に何の対策もとらない。27年産米のみなさんの見通しでも低米価は続く見通しである。これだったら農業をやっていけないのではないか。
 今度も米価暴落が予想されるが、どういう対策が必要か。どういう対策を県として考えているか。

【農林水産部長】
 今回の米価暴落だが、最大の要因はやはり需給バランスが崩れていることにあると思っている。県としては、市場からの隔離などについて国に対して要請してきている。
 将来的には、生産費を安くしながら高く売ると。いわて米のブランドをより高めていくということが基本だと考えている。

【斉藤委員】
 その程度では何ともならないと思う。需給バランスはその通りで、20万トンあふれているというのが米価暴落の最大の原因である。これを流通から隔離する対策をとらなかったら、27年産米も同じ轍を踏む。あとは耐えきれなくなり、米を作っていられないとなりかねない。相対取引価格から見てもそうである。全算入生産費で16000円なのだから。


・いわての美味しいお米生産・販売戦略について

【斉藤委員】
 これは積極的に進めるべきだと思うが、決定打にはならないと思う。「岩手118号」の具体的な効果について、29年度にやっと100ヘクタール、2000ヘクタールを目指すとなっているが、いつまでに目指すのか。

【水田農業課長】
 2000ヘクタールを目指すのは平成32年度である。

【斉藤委員】
 そうすると、いま米価暴落で困っている農家の方々は何年も待たなくてはいけない。そのうちに稲作農家はダメになってしまう。
 全国第5位の相対取引を目指すとなっているが、全国第5位の相対取引価格は26年産米でいくらか。

【流通課総括課長】
 27年1月が直近のものであり、15679円、おおむね今年度に関しては15000〜16000円の間で推移している。

【斉藤委員】
 26年産米、単純平均で9月から1月まで平均すると15610円である。全国5位といっても15000円、これで農業がやっていけるのか。そしてせいぜい2000ヘクタール。これだったら、米作農家、日本の米は守れないのではないか。岩手118号が全国5番目に入れば岩手の米は何とかなるという空気だが、何ともならないのではないか。

【農林水産部長】
 岩手118号の新品種だが、まず県産米全体についてイメージを高めていくと。そして今までの販売価格はより引き上げていきたいと。その中で、米の主産地として頑張っていきたいと考えている。

【斉藤委員】
 岩手118号の開発に反対しているものではなく、ただ、これが開発されれば今の米価暴落の中で岩手の米が何とかなるというようなことではない。本気で今の米価暴落対策、国の政策を変えるぐらいのことをやらなかったら、全国5位でも15000円台なのだから。おそらくもっとこれから下がるのではないか。本当に安倍内閣の米・農業政策があまりにもひどいということを、ここを打開することなしに岩手の米も日本の米も成り立たないのではないか。
 県南ひとめぼれは、26年産米含め特Aを20回獲得している。1等米比率も10年連続で90%だと。しかし、相対取引価格で見ると、岩手のひとめぼれは、11616円というのが1月の価格である。特Aでこれだけの評価をされながら、岩手のひとめぼれがこのような状況になっているのはなぜなのか。

【流通課総括課長】
 ご指摘の通り、全国から高い評価を受けているものと考えているが、産地間競争がかなり激しく、県産米の相対取引価格は全国平均を下回っており、品質の高さや味が必ずしも価格に反映されない状況にある。
 全体の需給関係の中でのことであり、やはり本県の主力産米であるひとめぼれ・あきたこまちについては、そもそもの出が本県のものではないというところが非常に大きくなっており、やはり価格がつく場合に、本家本元のところよりも低い価格がつくという傾向がどうしても出てくる。残念ながら今回の概算金で相対取引価格を見ても、ひとめぼれだと宮城県産よりは若干低くなると。そういったことで、今回開発を進めている岩手107号・118号については、岩手のオリジナルということなので、消費者の方々に県産米の良さ・魅力がきちんと評価いただけるものと思っており、そのように取り組んでいきたい。

【斉藤委員】
 県南の米どころの組合長に話を聞いたが、「今のひとめぼれは、特Aであれだけの評価をいただいてブランドを確立している。これに代わるものは簡単にできない」と。これがまた大変大事なことだと思う。ましてや岩手118号は当面2000ヘクタールである。そういう意味で、確立されたブランドをどのように生かすのか、販売戦略をしていくのかと。107号について、118号と連続して出てくるとなると、お互いに薄まってしまうのではないか。ここは上手にやらなければいけないと思う。そこの押し出し方を考えないといけない。
 推進体制について、米全体の販売戦略について、専任の職員の体制、恒常的にどのように進めるのか。

【農林水産企画室管理課長】
 県産米の生産振興や販売促進の業務については、農林水産部をあげて取り組むべきもっとも重要な業務の一つと考えている。専任の職員4名、および県産米戦略室の職員を兼任する農産園芸課や流通課の職員に加え、農政部門の関係室が連携協力し業務にあたるということで進めていこうということである。当面の間、こういった体制で進めたいと考えている。

【斉藤委員】
 今すぐやらなければならない課題は消費拡大だと思う。
 県内の旅館・ホテル・病院・学校給食、特に学校給食は平均週4回米飯給食のところが多いが週3回というところが少なくない。せめて、全体で週4回以上に拡充するということを関係課と協力してやる必要があるのではないか。

【流通課総括課長】
 県内の教育機関における米飯給食の状況だが、現在小中学校では、米飯給食週3.7回、全国平均が3.3回であるので、かなりトップクラスだろうと思っている。ただ、4回というところも、めざすべきと聞く機会もある。その余地があるのかどうかというと、学校給食に関しては、各学校や給食センターにおける栄養教諭の方々がさまざまな栄養バランスを考え献立を作っているので、そういった研修会でご説明の上、県産米の消費拡大についてよびかけてきたところである。また地元での供給体制を確立することが大事であるので、モデル事業として県内2市町において行っており、その市町村内の供給体制の整備を図っている。
 何といっても学校であるので、教育機関である。県教委やその他教育機関と連携しながら、できる限り県産米の消費拡大が図られるよう取り組んでいきたい。

【斉藤委員】
 例えば、小学校で週3回は39.2%、4回が44.9%、3回以下にとどまっているところもこれだけあるということである。週5回学校給食があるので、1回は県産小麦を使ったパン食でもいいと思うが、しかし4回は岩手のおいしいお米を使った米飯給食で、子どもの時代においしい日本型食生活を確立することが、その後の消費拡大の決定的な力になると思う。だから、平均で見ずに、3回以下にとどまっているところを4回にするだけでかなりの改善になると思う。
 また、国体に向けて、ぜひ旅館・ホテルで岩手県産のおいしいお米を出して岩手ファンをつくるという取り組みをぜひやっていただきたい。


・TPP交渉、農協改革等について

【斉藤委員】
 日米TPP交渉の状況を具体的にどう把握しているか。米や牛肉の関税引き下げ、完全に国会決議に違反しているのではないか。
 県が先頭に、行政・農協・県民をあげて行動をとるべきではないか。

【農林水産企画室企画課長】
 TPP交渉については、25年7月に日本が協定交渉に参加して以降、これまで閣僚級の会合だとか閣僚級の会合に先立っての首席交渉官による会合、このほか、日米間の閣僚級の協議が開催されており、今年2月には10回目となる日米間の実務者協議、3月にはTPPの首席交渉官会合、さらに2度の日米実務者協議といったものが開催されたと承知している。
 交渉の内容については、さまざまな報道が行われていることは承知しているが、国からは何ら情報提供、公表されていないので、県としてはどのような交渉が行われているか情報を持ち合わせていないところである。

【斉藤委員】
 そのような答弁ではいけない。本会議で知事はもっとまともな答弁をしている。
 だいたい秘密交渉なので政府は出さない。これが重大である。しかし、実務者交渉の内容はそれなりに出ている。米は5万トン以上輸入額を拡大すると。牛肉は38.5%の関税を妥結した直後に20%以内まで引き下げて、最終的に9%まで下げると。こんなことをやったら、いま米があふれて暴落しているときに、米も畜産もダメになってしまうのではないか。

【農林水産部長】
 すでに試算している通り、本県農業における影響はきわめて大きいと認識している。県としては、関税撤廃を認めないこととした衆参両院の農林水産委員会決議を踏まえ、国益にそぐわない交渉を行わないよう国に対しさまざまな機会をとらえて引き続き要請していきたい。

【斉藤委員】
 本当に国民に隠して秘密交渉で、日本の米や農業を売り渡すような交渉をやっていることは絶対に許されない。
 その一方でやろうとしているのは農協解体である。これは第一弾で、第二弾は全農の株式会社化、単位農協、信用共済事業を分離させ、准組合員を制限すると。完全に農協・農村を破壊する。こういう安倍自民党政権の農業つぶしは許されない。


・農地の転売問題について

【斉藤委員】
 平成15年12月22日に、矢巾町の太田地区・下矢次地区で、政治家の妻が農地を買ったと。太田地区は12056平米・3653坪、ところが6年後に岩手医大の学長に転売したと。本来農地というのは、農業をやるためでなければ買えないはずである。政治家の妻にしても医大の学長にしても、農地を買える資格があったのか。
 重大なことは、農地転売に現職の町長が関わっていると。農地を紹介したのは現職の町長である。こんなことは許されないのではないか。

【農業振興課総括課長】
 農地を取得する場合には、農地法第3条において、その権利を取得しようとする者、あるいは世帯等、そういった者が保有している農地を耕作すること、または農作業に従事すること、または原則50アール以上購入・取得するということなどの要件が指定されており、お尋ねの案件については、町の農業委員会がこれに基づいて取得できると判断し許可したものと聞いている。

【斉藤委員】
 実際には、全面的な委託だった。そして6年足らずで転売したと。買った人が医大の学長なので、とてもではないが農業をやる人ではないと思う。
 そしてもう1ヶ所、消防学校の隣接地、ここは農地として使われていない。こういうことは許されるのか。草が生い茂っており、草刈りもしていない。当時は農業をやるということで農業委員会は認めたかもしれないが、結果としては農地法に違反することになるのではないか。

【農業振興課総括課長】
 昨日、委員からの質問の中身をお聞きし、情報を収集してみたが、1つは、農作業委託によってやるということについては、農作業委託により適正に管理しているということで、農業委員会が毎年確認しており、それについて問題はないということである。
 藤原さんという方については、どのようにしているかと聞いたところ、草刈りはきちんと行っている、管理している、確認を農業委員会がしていると聞いている。
 双方の農地は、いわゆる農振農業用地区域に入っており、唯一転用は認められない農地である。仮に、その区域を除外したとしても、市街化調整区域にあたり、通常の第1種農地よりも厳しい甲種農地に該当し、農業上の理由以外ではなかなか難しいところである。
 片方の農地は、軽トラでしか搬入できないような農地で、ここも将来にわたり農地になる場所であるので、そういったことも含めて判断されたものと承知している。

【斉藤委員】
 農地の売買というのは、現職県議会議長の時期にやられた。これは県議会としては残念なことである。そして、医大の学長や現職の町長がからんでいる。本当に県民から不信を抱かれるようなことをやってはならない。