2015年3月17日 予算特別委員会
農林水産部(水産・林業部門)に対する質疑(大要)


・漁業の復旧状況について

【斉藤委員】
 漁船の確保、養殖施設の整備、共同利用施設等の復旧状況、生産額、震災前との比較で示していただきたい。

【水産担当技監】
 漁船は1月末現在、補助事業で整備した漁船と被災を免れた漁船を合わせた稼働可能漁船数は10527隻で、震災前の漁船登録数に対して74%となっている。
 養殖施設は、震災前の66%にあたる17377台の整備を完了している。
 共同利用施設は、28年度末までの整備目標である、修繕42ヶ所、新設58ヶ所に対し、26年度末までに、修繕26ヶ所、新設35ヶ所の官僚が見込まれている。
 県内産地魚市場の水揚げ金額は、26年4月から12月までの累計で205億円、震災前3カ年同期比でほぼ100%という状況である。

【斉藤委員】
 産地魚市場の生産量はどうなっているか。

【水産担当技監】
 25年度が10万8320トンで、対前年比63.9%となっている。

【斉藤委員】
 26年度でみると、生産額はたしかに100%になっているが、生産量はそこまで及んでいない。
 来年度の予算にも、共同利用漁船等復旧支援事業費が3億2900万円、水産業経営基盤復旧支援事業費が11億2900万円予算化されているが、まだまだ漁船の確保や養殖施設の整備の要望があるということか。どれだけの整備予定か。

【水産担当技監】
 漁船はほぼ九十数パーセントまでいっているので、若干数の整備、共同利用施設もおおむね出来あがっているので、詳しい数までは把握していない。
【水産振興課漁業調整課長】
 27年度の共同利用漁船の事業については、残り40隻ほど計画している。
 水産業経営基盤復旧支援事業の27年度事業の施設数は、作業保管施設等が14ヶ所、養殖施設が2ヶ所16ヶ所を対象としている。共同利用施設復旧事業については、機器整備が対象になるので、箇所数では出せない状況である。

【斉藤委員】
 ワカメ・コンブの生産量、販売額だが、震災前と比べどこまでいっているのか。

【水産担当技監】
 ワカメの養殖については、26年の生産量は15000トン、金額で17億円、震災前3カ年の平均と比較し、生産量は66%、金額は42%となっている。
 コンブでは、生産量は7000トン、金額9億円で、震災前3カ年の平均と比較し、生産量は59%、金額は57%となっている。

【斉藤委員】
 26年産でみると、生産量もまだまだだし、生産額でみると再生産が危ぶまれるような状況だと思うが、再生産に必要な価格から見てどうか。

【水産担当技監】
 ワカメの養殖施設台数自体が震災前よりも減少しているので、なかなか震災前の目標までは難しいとは思っているが、今シーズンは18000トンを見込んでいる。養殖は、なかなか栄養源とかいろんな関係があるので、自身とすれば震災前まで近づきたいとは思うが、今の見込みは18000トン強というところである。

【斉藤委員】
 単価が再生産可能な単価になっているかと聞いた。

【水産担当技監】
 単価については、昨年度よりも1000円程度高くなっているので、まずはいい線まできており、再生産になるかどうかの具体的なコストについては分からないが、浜の方では良い価格だなということで評価はされている状況だと思っている。

【斉藤委員】
 漁業就業者の問題について、漁業経営体も大幅に減っており、新規漁業就業者のこの間の推移について示していただきたい。震災で犠牲になった方もいるし、再開を諦めた漁業者もいる。漁業の復興を考えた場合に、本当に新たな担い手を大幅に確保しないと、本当の意味での復旧にならない。
 新たな担い手ビジョンを作成するというが、例えば、農業だったら年間200人以上ということでやっている。これでも少ないと思うが。漁業だったら、年間どのぐらいの新規就業者が必要なのか。現段階で考えている見通しを含めて示していただきたい。

【水産担当技監】
 新規就業者の推移は、震災前の20年度から22年度には年間48〜77名で推移していた。震災後の23年度から25年度には、年間25〜45人という推移になっており、少なくなっている現状にある。
 毎年度、新たなビジョンを策定するわけだが、漁協ごとの地域再生営漁計画で、漁協ごとに合った担い手対策をとっているので、それを取りまとめたうえで目標を立てていきたいと思っており、現在、新規の目標値というのは今のところおさえていない。

【斉藤委員】
 漁協を訪問して話を聞けば、やはり担い手確保が最大の要だと、問題意識はかなり鮮明になっていると思うが、例えば、宮古とか陸前高田では、市独自に担い手に対して2年〜3年、月15万円などの支援策をやっている。国の支援策、県の支援策はあるのか。これを沿岸市町村に広げる必要があると思うが、取り組み状況はどうなっているか。

【水産担当技監】
 お話された担い手対策については、県の方からは直接の支援というのはない。県では、そういった形の担い手対策への助言などをやっている。
 今後、新たに県と市と漁協とで協議会をつくり、そういった形の担い手対策の役割分担をきちんとさせて、担い手確保に努めていきたいという動きが市町村ごとに出てきていたので、それを通じて担い手対策にしたいと考えており、今のところ、国の補助金と市町村の補助金の2点でやっている。

【斉藤委員】
 沿岸の自治体でも全ての自治体が独自にやっているということではないと思うので、ぜひ県が担い手ビジョンをつくるというのであれば、県がどういう支援をするのか、このことも踏み込んで策定していただきたい。


・岩手県水産基盤整備方針について

【斉藤委員】
 水産審議会の資料でも見たが、これは何を目指して、どういう内容なのか。
 中身を見ると、復興に関わるもの、県民計画に関わるものとがあるということだが、復興に関わるものは継続の事業なのか、新たな事業なのか。

【水産担当技監】
 今回の大震災津波により壊滅的な被害を受けた漁港施設等の復旧に全力で取り組んでいるところだが、地域ニーズや国の動向等を踏まえ、今後の水産業の復旧に向けた水産基盤を重点的に推進していく必要があると認識しており、このため、社会情勢や水産施策の動向、水産業再生の方向性を踏まえ、国で行っている漁港・漁場整備長期計画との整合を図りながら、地域ニーズに基づいて、今後の水産基盤の具体的な方向性を示すことを目的に策定したものである。
 主なものとしては、@漁業生産の効率化、就労環境の向上への対策、A漁港における防災・減災対策、B漁港内からの早期避難対策―。これらの内容に基づき、漁港等の機能の充実強化を図っていくものであり、復旧とは別に、新たに整備するものである。

【斉藤委員】
 位置づけとすれば、復興に関わる部分があると。これは当然復興交付金の事業だと受け止めていいか。

【水産担当技監】
 復興枠というものもあるが、基本的には災害復旧とは別の事業になっているので、新たに国の交付金制度を活用するとか、そういう形のもので整備をしていきたい。


・小型漁船漁業の現状と対策について

【斉藤委員】
 小型漁船漁業の現状と県の振興策はどうなっているか。

【水産振興課漁業調整課長】
 小型漁船漁業の経営体数は、漁業センサスで、無動力船と20トン未満の動力船の経営体数で、震災前の20年度で2519経営体、25年度では2125経営体となっている。経営状況については、小型漁船経営体の統計データではなく、国の被災地域の漁業経営体の経営状況でみると、震災前の22年度の漁業所得を100とした場合に、25年度で74と公表されている。
 漁船漁業は、本来天然資源を利用する産業である。そのため、その振興には、まずは秩序ある操業ができる漁場を確保することが必要であるということから、県は、漁業調整、漁業権の免許等の事務を適正に行うことなどが必要だと考えており、漁業取り締まり・監視等により秩序を維持していくことが必要と考えている。特に、小型漁船漁業については、経営規模が小さく、水揚げ魚価も不安定である。このことから、今後は、資源管理、経営安定対策事業、漁業セーフティーネット構築事業を導入・支援し、経営の安定化を図り振興を図っていきたい。

【斉藤委員】
 規模は小さいが、経営体は8割を占める。この小型漁船漁業が、借金をしながら船を確保して、大変苦労している。そこに対する支援、資源管理や漁場の確保はいいのだが、技監が言われたように、所得の確保がなかったら経営が成り立たない。そこに立ち入った振興策が必要ではないか。
 漁民からは、「刺し網の許可」に関する申請が県に出された。108名におよぶ漁民の申請ということだが、県はこの間どのように対応して、現状はどうなっているのか。

【漁業調整課長】
 昨年9月30日と11月4日に、漁業者計101名から、固定式刺し網漁業の許可に関する変更申請と新規申請の提出があった。また1月31日には、新たに12名から固定式刺し網漁業の許可に関する新規申請の提出と、先の変更申請についてはすべて取り下げるという変更があり、現在108名の漁業者から提出されている。
 県は、これらの申請内容について、現在補正を求めている。その補正が現在完了していない状況であり、申請書類が整い次第、適切に審査していくこととしている。

【斉藤委員】
 補正を求めているということは、申請書類の不備ということか。それで正式な受理に至っていないということか。

【漁業調整課長】
 そもそも、申請書に間違いがあったり、添付書類と突合しない部分があったり、こちらの求める添付書類がなかったりと、その補正を求めている。書類については一応受理はしており、書類が整うのを待っている状況である。

【斉藤委員】
 いずれ、切実な実態があり、要望があるので、きちんと誠意をもって対応していただきたい。


・軽米町における大規模太陽光発電開発について

【斉藤委員】
 林地開発と環境への影響に関わって、軽米町における太陽光発電は、どういう規模のものか。

【森林保全課総括課長】
 軽米町で現在、森林等を開発して太陽光発電施設の設置を計画しているのは、4ヶ所695ヘクタールと聞いている。これ以外に、太陽光発電事業計画者が、初期の計画調査を行っている場所が4ヶ所1367ヘクタールあると聞いている。

【斉藤委員】
 再生可能エネルギーの推進は、一般的には大いに推進することだが、1つの町で2000ヘクタールを超えるような規模で森林を伐採してやろうとしている。町全体18000ヘクタールの10%を超える。そういう規模になれば、まさに環境に対して、防災に対しても大変重大な影響を与えると思うが、県はどのように認識しているか。

【森林保全課総括課長】
 太陽光発電の設置場所が、地域森林計画で規定する森林区域で、1ヘクタールを超える開発を行う場合については、林地開発許可という制度が定められており、再エネ法については許可ではなく、同意をすることにより許可とみなす規定になっているが、許可と同意もやることは同じである。したがい、申請が出てきた段階については、森林法に基づき、しっかり対応していきたいと考えている。

【斉藤委員】
 当初の計画は、約700ヘクタールで、これも大規模だと思うが、町長選の直前に、町長がどこにもはからずに、アメリカ系の企業と立地協定書を結んだ。これが1367ヘクタール規模、国内最大規模のメガソーラーだと。やり方も異常だと思うが、町の森林面積の1割を超えるような、計画そのものがあまりにも乱暴ではないか。県としてきちんと対応していただきたい。

【森林保全課総括課長】
 先ほど述べた林地開発許可については、4つのポイントがあり、@災害防止、A水害防止、B水の確保、C環境の保全というファクターがあり、この点についてしっかり法律に基づいた審査を行い対応していきたい。