2015年3月18日 予算特別委員会
県土整備部に対する質疑(大要)
・被災者の希望に沿った災害公営住宅の整備について
【斉藤委員】
被災者のもっとも切実な要望の1つだが、残念ながらロードマップを見る度に、整備計画が見直され、後退していくと。去年の12月と今年12月を比べると、今年度末で554戸8%、来年度末だと1276戸20%整備戸数が減る。なぜこのようになるのか。具体的な要因は何か。今後の対策を含めて示していただきたい。
【建築住宅課住宅課長】
災害公営住宅整備の遅れについては、住民意向調査の結果を踏まえて、戸数等の建設計画の見直しを行ったこと、工事の入札不調、資機材や作業員の不足による工事の遅延、面整備事業との調整や、造成工事の進捗にともなう工程の精度に上がったことなどが挙げられる。県としては、建設関連団体との意見交換や、市町村との連携を通じ、復旧復興ロードマップにしたがい、災害公営住宅の建設を予定通り進められるように取り組んでいく。
【斉藤委員】
丸4年経って、そういう中で、10%20%の計画が見直されるというのは、待っている被災者にとっては、こんなに辛いことはない。厳しい要因があることは承知しているが、しっかり進めていただきたい。
整備された公営住宅の空き室の状況、個別の要因があるのではないかと思うが、空き室の要因を示していただきたい。
【建築住宅課住宅課長】
建設にあたっては、被災者の意向等も踏まえ、市町村とともに十分協議しながら建設をする場所だとか戸数等をこれまで決めてきたところである。しかし、災害公営住宅の入居にあたり、入居するか持ち家再建にするか決めかねている方がいること、また利便性が高い等より自分の希望に近い災害公営住宅の完成を待っている方がいること、応急仮設住宅から災害公営住宅に入居することにより、新たに家賃負担が発生すること、一旦入居したものの退居する世帯が生じていることなどの要因により、一部の団地では空き住戸が生じていると考えている。
【斉藤委員】
整備が遅れて、せっかくできた公営住宅に空き室が出るという矛盾。例えば大船渡の場合は、これから整備する公営住宅も含めて、被災者がどこの公営住宅に入るかということがほぼ決まっている。被災者がどういう公営住宅に入りたいのか、きちんと把握をして、間取りも含めて要望も聞いてやる必要があるのではないか。一部では、家賃を心配して3DKが余っているとか、釜石の平田の場合は、アクセス道があまりにもひどいと。道路整備が遅れているために敬遠されている。個別の理由がいろいろあると思うので、きちんとそうした点を同時に解決しながら進めていただきたい。
木造の災害公営住宅の整備計画だが、当初からかなり木造の整備が増えてきたということは良い傾向だと思う。現段階でどこまで見直されているのか。戸建て、長屋形式はどうなっているか。
【建築住宅課住宅課長】
木造災害公営住宅の建設計画だが、これまで設計等が終了するなど木造での建設が確定している災害公営住宅については、1月に公表したロードマップベースで1076戸となっている。検討中のものを含めると1268戸となっている。
戸建て・長屋等については、計画しているもので、戸建てで950戸、長屋で318戸となっている。
【斉藤委員】
一般質問でも指摘したが、大槌町では、町営のものは基本的には木造だが、戸建てを基本にしたものの、被災者のアンケートでは最近は長屋の希望が多数になっている。高齢者の場合は、2階建てより1階のスペースが広い長屋の方が使いやすいという動向のようである。被災者のニーズというのは、絶えずこういう形で変化するので、岩手県もしっかり被災者のニーズをつかんで、災害公営住宅の建設に取り組む必要があるのではないか。
大槌町では、高齢者用の公営住宅も整備する。80歳90歳になると、まだ介護施設に入るまでではないが、自分たちだけで生活するのも大変だという方々も少なくない。そういう高齢者用の公営住宅も整備すべきではないか。新聞報道では、今までの入居者だと思うが、高齢化率が41.9%、うち独居が23.4%になっている。かなりシビアなデータである。県は検討しているか。
【建築住宅課住宅課長】
県営の災害公営住宅を整備するにあたっては、役割というか、一時的に市町村とも十分協議を行い、県が建設する建物については、地域包括ケアの拠点として活用できるような事務室等を設けるということとしている。そういった形での支援員の配置の活用等といったところで市町村に働きかけを行っていくということで考えている。
【斉藤委員】
大槌ではそういう計画があるようなので、県と市町村の役割分担もあると思うが、一番肝心なのは被災者のニーズなので、それを踏まえた公営住宅、とりわけ高齢化して独居の比率がこれだけ高い比率を占めているときに、そういう方々が安心して生活できるような公営住宅の提供を知恵を出してやっていただきたい。
いま公営住宅には、集会所と支援員の事務室まで整備されている。ところが実際は活用されていない、人も配置されていない、備品もない。せっかく阪神・淡路大震災の教訓を踏まえて集会所・支援員の事務室まで整備しているが、この活用策を県土整備部としてどのように考えているか。
【建築住宅課住宅課長】
備品等の扱いについては、県の方で、災害公営住宅とは別に、通常の公営住宅を管理しているわけだが、そちらの集会所の備品等については、これまで入居者の方々、自治会の方々で用意して下さいというお願いをしていたところだが、やはり災害公営住宅の場合、必要最低限のものは必要だろうと、そちらの整備について国の方に復興交付金の活用を要望している。
【斉藤委員】
塩崎先生が出した「復興災害」という本の中で、「仮設から次の住まいに移る際の道筋により、コミュニティの分断など孤独死が起こり得る」と。これを復興災害と言っている。これは阪神・淡路大震災の大きな教訓なので、避難所から仮設、仮設から公営住宅と、2度3度コミュニティ・絆が分断されて 公営住宅に入る。公営住宅に入って終わりと絶対にしないで、ここで新しい人間関係をどう築くか、絆・コミュニティをつくらないと、それが復興災害になるという意識でやっていただきたい。
災害公営住宅の1戸あたりの建設費は急増していると思うが、この間年度ごとにどのぐらい高騰しているか。
【建築住宅課総括課長】
県が整備した鉄筋コンクリート造の災害公営住宅で、外溝工事と造成工事を除いた建物本体の工事価格で比較すると、24年度1420万円、25年度1820万円、26年度1950万円となっている。
【斉藤委員】
500万円近くこの間高騰しているのは大変なことである。それだけに、自立再建をしようとしている人たちに思い切って支援をして、災害公営住宅を最大限縮小する政策をとる必要がある。大槌の場合は980戸だが、世帯数の2割である。長期的な維持管理を考えると大変であるので。
大変いま不安なのは家賃の問題である。政令月収が基準で家賃が示されているので、まったく分かりにくい。どういう方々が減免されるのか。共稼ぎの世代で、例えば400万円500万円の収入があった場合、高額な家賃になるのではないかと不安を抱えている人が少なくない。どういう方が減免になって、働き世代の共稼ぎの場合はどういう家賃になるのか。モデルケースでいいので示していただきたい。
【建築住宅課総括課長】
基本的には、計算方法は公営住宅法の政令の方で決まっている。ベースとなる家賃が決められており、その収入に応じて決まってくる。政令月収の基本的な考え方は、サラリーマンの場合には、所得金額(所得税控除後)に対して、さらには家族が増えると38万円控除、老人の方や高校生の子ども、大学生の子どもがいると、またいくらか控除ということで、安くなる。分かりにくいというご指摘はその通りだと思うので、対面式の説明などによりご理解いだけるようにやっていきたい。
モデルケースだが、5人家族共働きで3人の子どもがいる世帯の場合、釜石市の平田のモデルケースだと、所得なり世帯の控除後の収入が、控除前の年収を500万円だとすると、控除後の政令月収というのが202万円を12で割った数字となり、3DKに住んだ場合に23400円の家賃となる。
【斉藤委員】
家賃については、ぜひモデルケースを示して、収入と書いているが実際は政令月収であるので。さまざまな控除もあって、共稼ぎで500万円の収入でも、子ども3人という想定だが23000円程度で入れるということになるので、分かりやすくやっていただきたい。
・区画整理事業の取り組みについて
【斉藤委員】
いわゆる街中防集、区画整理の中に公営住宅や防集事業を取り組んでいるところ、街中に最大限集中させるべきだと思うが、取り組み状況を示していただきたい。
【都市計画課まちづくり課長】
26年12月末現在で、土地区画整理区域内に災害公営住宅を計画している地区が53地区・1123戸分が予定されている。防集の宅地を計画している地区が5地区・247戸分の宅地を整備する予定となっている。
現在、各市町村では、最新の調査結果をもとに、災害公営住宅や防集の団地規模の見直し等を行っており、これらの戸数は変更になる見込みである。
【斉藤委員】
実は区画整理事業は、まちづくりで一番遅れる。だから街中に防集もやる、公営住宅もしっかりつくるという取り組みを重視してやる必要があるのではないか。
・応急仮設住宅の改修について
【斉藤委員】
床がブヨブヨ、すき間ができて大変だという状況が今でも出されるが、この間の改修についての相談件数と対応状況はどうなっているか。
結露と黒カビの発生が深刻だが、喘息などの健康被害が出ていると思うが、こうした実態を把握しているか。抜本的対策が必要ではないか。
【建築住宅課総括課長】
保守管理センターへの相談件数は、昨年4月から今年2月までに4474件寄せられている。
カビの関係だが、相談件数は24年度は14件、25年度27件、26年度は33件(2月末)となっている。カビを何とかしてほしいといったような相談であり、具体的な健康被害については発生していないと認識している。実態調査も行ってはいない。結露や黒カビの発生防止だが、なかなか構造上は防ぎづらいところがあるので、例えば加湿器の使用や石油ファンヒーターの使用をできるだけ控えていただいたり、定期的な喚起をしていただくというような住まい方での解決を、入居時と年2回の定期点検のときにお知らせすることなどにより注意を促している。
【斉藤委員】
石巻の仮設住宅、ダイワリースで造ったものということだが、検出したカビが一般住宅の50倍〜100倍だと。喘息の発生率も普通よりも20%高いという深刻な事態も調べたところでは出ているので、しっかりやっていただきたい。
まだまだ応急仮設住宅での生活が長引く。県は抜本的な改修に向けて調査もしたと思うが、この抜本的な改修をどう進めるのか。「必要ない」という報道もあったが、調査の結果と抜本的な改修の見通しはどうか。
【建築住宅課住宅課長】
昨年10月から11月にかけて実施した定期点検において、今後の使用に備えて点検等を行った。結果、早期の改善が必要と考えられる事例はなかったが、一部の団地では木ぐいの劣化等が始まっていることが確認された。点検結果と市町村の応急仮設住宅の集約の意向等を踏まえ、27年度は約5000戸程度の木ぐいの補強等の改修を計画している。
長期化している応急仮設住宅の生活に支障が出ないよう、今後点検等を通じて、課題の早期把握に努め計画的に改修を行うことにより住環境の維持に努めていきたい。
・簗川ダム建設事業について
【斉藤委員】
今年度末の進捗状況、来年度の事業費と中身を示していただきたい。
来年度は、大規模事業評価にかかると思うが、どういう中身がはかられるのか。
【河川課河川開発課長】
事業の進捗状況は、完了工事も含めて26年度末の事業費の累計が497億円、進捗率は70%となっている。ダム本体工事については、26年12月に請負契約を締結し、現在工事着手に向けた準備を行っている。トンネル工事については、付け替え国道が25年度に完成し、一部供用の付け替え県道は27年5月末の完成を見込み工事を実施している。
27年度の建設事業費は、19億7254万円となっており、ダム本体工事については、河川の流れを切り替える転流工、基礎掘削工、ダム用仮設備工、補修工事としては、道路の付け替え工事を実施予定である。
大規模事業評価については、前回評価の22年度から5年経過しているが、事業が完了していないことから、政策等評価に関する条例に基づき、27年度に再評価を実施するものである。評価内容としては、事業の進捗状況、社会経済情勢等の変化、コスト縮減対策、代替案立案の可能性を総合的に評価して作成する県の対応方針案を委員会に諮問し審議いただくものである。
・土砂災害対策について
【斉藤委員】
土砂災害危険地域の調査が行われており、調査結果が出たところからすでに公表されてホームページで見たが、問題は、対象地域、対象世帯にどう周知徹底するか。この手立てはどうなっているか。
【砂防災害課総括課長】
改正土砂災害防止法が1月18日から施行されることを受け、土砂災害のおそれのある範囲を調査した基礎調査結果について、本県においても3月16日から公表を開始した。公表方法については、国の指針に基づき、県のホームページで公表するとともに、広域振興局や市町村等において、図面等で公表するということを基本としている。さらに、地域住民の方々に知っていただくということが重要なので、その周知を図るため、市町村の広報や地域の回覧板等で公表状況をお知らせするなど、市町村と連携しながら取り組んでいきたい。
・釜石市の平田・源田沢線について
【斉藤委員】
平田ニュータウンと源田沢を結ぶ道路・トンネルについて釜石市長さんから強く要望され、地元では署名運動も行われている。この要望についてどう対応されているか。
【道路環境課総括課長】
平田・源田沢線、平田・上中島線の要望について、釜石市からは、県道昇格による要望が出されている。県道は、道路法・県道認定要件に合致するかどうかといったことを踏まえ、さらに地域の道路網において、現に県道として管理する必要があるかといったことを総合的に判断し認定を進めることとしている。
そういった中で、平田・上中島線が県道として幹線道路網に該当する道路かどうか、その位置づけがまず最初に必要になってくる。正直な話、平田・上中島線が県道になれる要素をもっているかというと、なかなか厳しいというのが現実的なところである。そういった中で、釜石市の方でまず市道としての整備ができるかどうかということを検討していただくことというのが大事ではないかと考えている。