2015年6月25日 東日本大震災津波復興特別委員会
質疑大要


・被災自治体の一部負担問題について

【斉藤委員】
 きわめて残念であり、復興に水を差す安倍政権の暴走ではないかと思うが、当初岩手県は90億円、73億円が県、16億円は市町村負担ということで。若干の軽減があったが、岩手県の負担額は当初の試算と変わっていない。これはなぜか。

【大友副局長】
 最初の案で議案等説明会でもご説明しているが、その後に、福島県の横軸の道路といったものが対象から外れたといったことがあったが、本県該当分がなかったので、数字は前回と同じという結果である。

【斉藤委員】
 結局岩手県にしてみれば、何らの軽減策もとられなかったということになる。
 岩手県の73億円というのは、岩手県にしてみれば大変な額である。借金を認めるというが、とんでもない話である。税収が増える見込みがないのだから。本当に岩手県から許し難いやり方だと。今後、あきらめないで、あらゆる場でこの軽減策を強く求めていくべきだと思うがいかがか。

【復興局長】
 お話あった通り、この金額は県にとっても決して小さくはない金額だと考えている。ただ一方で、復興そのものをこのために遅らせるということがあっては決してならないと考えているので、財源対応については具体にはこれからの検討になるが、いろいろ国への要請等も含めてしっかり対応していきたい。

【斉藤委員】
 実は、一部負担の総額は220億円だと。そのうち90億円が岩手県と被災3県で特に重かったと。ただ、220億円というのは、国全体の中で本当に取るに足らないものである。財政的効果はほとんどないといってもいいぐらいだと思う。特に国は、被災地以外に復興予算を1兆6000億円も使ってしまった。「被災地にもう一段ギアを上げろ」などと言っているが、ギアが外れっぱなしだったのは政府・復興庁だったのではないか。だいたい復興特別法人税を1年前倒しで止めてしまった。年間8000億円である。それを考えたら、220億円わざわざ、これだけ被災地が悩みに悩んで負担せざるを得ないというのは、本当に本末転倒。そして財政効果はほとんどない。被災地をいじめただけだと思うが、率直にどう思うか。

【復興局長】
 私もいろいろな思いはあるが、県・市町村・関係県含めて、負担額を限りなく小さくするように努めてきたが、一旦そういった決定がすでになされたということなので、それはそれとしてしっかり受け止めながら、お話があったように、いろいろな制度の活用その他も含めて、国への支援要請等も一方ではやりながら、他方では復興事業そのものはしっかり進めていかなければならないということでもあるので、そこをうまく両立するように今後とも考えていきたい。

【斉藤委員】
 局長は、新聞にもコラム的なことを書いており、かなり言いたいことを言っていたと思う。岩手県からすれば、何の軽減策もなかったわけなので、粘り強く頑張っていただきたい。


・被災者の医療費・介護保険利用料の免除措置の継続について

【斉藤委員】
 復興の最大の課題は、被災者の生活再建だと思う。この点で、応急仮設住宅等の入居者数が5月末で25913人(ピーク時の59%)、4年3ヶ月余が経過して約6割が応急仮設住宅・みなし仮設住宅での生活を強いられていると。ここに本当に被災者の生活再建のもっとも深刻な課題があるのではないかと思う。
 今度の議会に、被災者の医療費・介護保険利用料の免除継続を求める請願が出される予定のようだが、岩手県保険医協会が今取り組んでいる被災者負担アンケート(中間集計)では、窓口負担が発生した場合、「これまで通り通院する」が40%、「通院回数を減らす」39.1%、「通院できなくなる」12.6%、実に50%を超える方々が「回数を減らす」「通院できなくなる」という深刻な状況の結果になっている。特に、3百数十人の生の声が出ているが、「仮設暮らしが始まり3回の手術。その後も検査や通院が欠かせません」「仮設からなるべく早く出るように環境を整えてください」「最低限必要な通院・投薬にしています。仮設生活はストレスだらけです。今の免除措置がなくなればますます大変」という声がある。4年3ヶ月経って、ストレスも限界という声がリアルに寄せられている。被災者の医療費・介護保険利用料の免除措置は、12月末までとなっているが、被災者の状況が現段階で仮設暮らしがまだ6割、年度末になっても大きくは変わらない。そうした場合に、客観的な状況としては、被災者の医療費・介護保険利用料の免除継続が必要ではないかと思うが、局長としては、被災者の状況をどのように受け止めているか。

【復興局長】
 お話あった通り、4年以上が経過した中で、仮設で暮らしている方々が約6割近くいらっしゃるということは、我々も非常に心苦しく思っている。そういった方々に、できるだけ寄り添った対応をしていく必要があると考えている。被災者の医療費・介護保険利用料の免除については、とりあえず現行制度そのものは12月までとなっているが、それを継続するかどうかについては、財源を含めて初歩的な検討が必要であるので、それについては全庁的な検討をしっかり進めて結論を出していきたいと考えている。

【斉藤委員】
 被災者の状況が大変深刻で切実だということは、局長も私と同じ思いだと思う。そして、この問題は知事の政治決断も求められる課題だと思うので、本会議でも、請願の審査でも、この6月議会で一定程度の方向性が示されなくてはならない課題だと思う。


・復興における独自の取り組みについて

【斉藤委員】
 この間の復興の取り組みは、被災3県と比べても、前向きの取り組みが少なくないと。復興は遅れているが、前向きで積極的な取り組みが少なくないと思っている。
 住宅再建に関わっては、岩手県が市町村と共同して100万円の補助、これは被災3県で岩手だけだが、最新の実績はどうなっているか。
 被災者生活再建住宅支援の取り組みも、かなり網羅的な補助で、宅地復旧や県産材活用、バリアフリー、住宅改修まで支援されているが、今まででどのぐらいの実績になっているか。

【生活再建課総括課長】
 県単補助の被災者住宅再建支援事業費補助の実績だが、5月末現在で4816世帯にたいし66億9813万円余を交付している。
【建築住宅課総括課長】
 生活再建住宅支援事業だが、手元に年度別の数値しか持ち合わせていないので、後ほど合計した数字を報告させていただきたい。
 23年度〜26年度の合計で、13604件・56億6000万円となっている。

【斉藤委員】
 中小企業に対する独自補助も、岩手県は震災直後の4月から修繕費補助、被災資産復旧費補助をやっている。これも大変前向きな取り組みだったと思うがこの実績はどうか。

【経営支援課総括課長】
 中小企業被災資産修繕事業費補助の件数は、23年度分で427件で15億1900万円。
 中小企業被災資産復旧事業費補助は、23年度〜25年度で274件・8億9300万円余、26年度分は26件・1億4700万円余となっている。


・公営住宅への支援員の配置、備品の配置について

【斉藤委員】
 かなり被災者の生活再建を支援する独自の取り組みというのは評価できるものだと思う。
 2月議会で取り上げた復興公営住宅における集会所に対する支援員の配置、机やイス・カラオケセットの設備まで求めてきたが、人を配置する事業もあり、机やイス等は復興交付金の対象にもなるというところまで回答をいただいた。その後県は、どのように対応して、市町村は今どうなっているのか。先日の新聞では、大船渡市が議会答弁で、復興公営住宅を見守る支援員の配置を行うということだったが、県の対応、今の状況を示していただきたい。

【生活再建課総括課長】
 災害公営住宅における支援員の配置について。報道にあった大船渡市は、常駐という形ではなく、巡回という形で災害公営住宅を回るという形にしている。同様に巡回という形をとっているのは、岩泉町・宮古市である。
【建築住宅課総括課長】
 県営の災害公営住宅の集会所への机・イスの配置については、復興交付金の効果促進事業の使用が認められ、いま予算の執行ができる状態になった。これから各担当の出先機関の方にお願いし、住民とも調整の上、必要量の購入をしていきたい。市町村の災害公営住宅については、4月に、効果促進事業を利用できるという案内をしたところである。

【斉藤委員】
 先日県警から聞いたが、仮設住宅での孤独死は29人、公営住宅での孤独死は4人、震災関連の自殺は32人ということだった。これは氷山の一角だと思う。厳密に認定されたのはこの数で、そういう点では、津波で助かった被災者を再び犠牲にしてはならないと、命を守る復興でなくてはならないという点で、阪神大震災では1097人の孤独死、公営住宅で867人にものぼっている。復興公営住宅での孤独死が大問題だった。初動が大事なので、そこできちんと被災者一人一人を見守り、絆をつくりコミュニティを確立すると。それを被災者任せにしないで、被災者を支援する人の配置や机・イスの配備を提起した。県土整備部は、4月27日付で、市町村に「災害公営住宅の集会所における備品の整備について」という通知を出している。2ヶ月前にこういう通知が出ていて、まだ具体的な動きが見えず、市町村の反応が鈍いのではないか。整備されるものは、「座布団・机・カーテン・石油ストーブ・ガスコンロ・事務机・イス・書棚・ホワイトボード」と。ここまで具体的に復興庁も認めているので、できるものは早く、被災者に寄り添うというのであれば、そういう立場でこの取り組みを進めていただきたい。

【復興局長】
 災害公営住宅に移ってからも、しっかりと心身のケアについて考慮していくことはきわめて大事だと考えている。特に、公営住宅に移った人ほど寄り添いといったようなご指摘もいただいているので、支援員が一定程度フォローするということもあるし、できれば入っている方々相互の関係性の中でお互いが見守り合うといったような形も含めて、しっかりした関係が構築できるよう今後とも努めていきたい。